「くい打ち桟橋方式」こそ生態系の破壊だ 泉 幸男(頂門の一針)
「くい打ち桟橋方式」こそ生態系の破壊だ
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泉 幸男
前から疑問に思っていたことがある。
名護市辺野古(へのこ)の沖合の浅瀬に杭(くい)を打って巨大な「桟橋」をつくる案。何でそれが「自然を保護する」ことになるのか。
「桟橋」案という言い方に惑わされてはいけない。辺野古の「桟橋」は、そんじょそこらの港にある桟橋とはまったく別ものだ。
面積じつに140ヘクタール。東京ドーム総面積の30倍。甲子園球場の総面積の36倍。「桟橋」というより「海上人工地盤」と言ったほうがよい。
人工地盤の下で、たしかに海流は以前と同じように流れるだろう。しかし生き物は生きていけるのか。
■ 小沢政権の算盤勘定 ■
小沢一郎氏が「きれいな海を埋め立ててはだめだ」と言っているそうだ。
だから、民主党政権が当分つづくなら「くい打ち桟橋方式」が採用され
る可能性が現実的に存在する。
(以後、このコラムでは「くい打ち桟橋方式」と言わず「海上人工地盤方式」と呼ぶことにしよう。 「桟橋」という言い方は誤ったイメージを与えるから。)
5月1日の日経報道によれば「海上人工地盤」案は、元々の「埋め立て」案に比べて工期は2年延びて7年ていど。費用は、なんと1.5倍になる。
もともと海上人工地盤方式は、工法が高度なため沖縄の土建業者が手がけられる部分が少ないことが最大のネックとなって放棄された。逆にいえば、小沢一郎氏につながる本土の土建業者へは、海上人工地盤方式のほうが莫大な利益をもたらす。
そんなことは おくびにも出さず「きれいな海を埋め立ててはだめだ」と言い続けていればよいとすれば、願ったりかなったりだ。
■ 地球上にこれまでなかった生態系 ■
海上人工地盤の下には太陽の光は届かない。 「藻場は全滅。周辺への影響は未知」と日本政府が米国側に明かしているという。(5月1日の日経報道)
海上人工地盤の下は、超大型の下水管の中みたいなものだ。温かい海水は流れても光が差さないのだから、珊瑚も藻も育つはずがない。
しかし、死の世界ではない。光の差さぬ深海にもさまざまな海洋生物が棲息するのだから、まして海上人工地盤の下の浅瀬には、太陽の光を必要としない生き物が大量に増殖するだろう。それは、地球上にこれまで存在しなかった生態系である。
面積140ヘクタールにわたり、太陽の光は届かないが温暖な海水がつねに流れ込むという、自然界にこれまで存在しえなかった地形が生まれるのだ。
東京ドームの総面積の30倍の広さの新たな生態系。
■ 有害生物や病原菌の増殖の恐れ ■
海上人工地盤の下は、太陽の光を必要としない生物の天下となる。これまで、海に面した洞窟のように、ごく限られた狭い場所にだけ存在しえた生態系。
これが、珊瑚礁の海にぱっくり口を開けたかたちで、巨大な存在として名護市辺野古に出現すると、どういうことになるのだろう。
珊瑚や藻に害をおよぼす海洋生物が、この未知の生態系で大量に培養される恐れはないのだろうか。想像もしなかった軟体動物や甲殻類が大量発生するとか。
紫外線で消毒されることのない暗黒の浅瀬で、未知の病原菌が進化・出現する可能性はないのだろうか。
これを検証するには、大規模で長期にわたる環境アセスメントを行う必要があるから、現状としては政府も「周辺水域への影響は未知」としか言えないのだ。
■ 埋め立て案のほうが安心だ ■
素人考えで言っても、海上人工地盤方式は埋め立て方式より恐ろしいことになりそうだ。
海を埋め立てれば、埋め立てた場所は海でなくなるわけだから、そこに珊瑚はなくなり、魚も棲めない。かわりに草が生える。あたりまえだ。
しかし、それは要すれば海岸線の形を変えることに過ぎない。海洋汚染の防止に努めていれば、何十年か先には、新たな海岸線にかつての海岸線の生態系が確実に再現される。自然には、そういう ちからがある。
海上人工地盤方式は、そうではない。海上人工地盤の下の浅瀬は、これまで沖縄の海に存在しなかった生態系である。
*
わたしは「くい打ち桟橋案」に反対だ。理由は、述べたとおり。民主党の議員よ、反論があれば聞きたい。わたしの批評つきで全文を掲載して進ぜよう
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泉 幸男
前から疑問に思っていたことがある。
名護市辺野古(へのこ)の沖合の浅瀬に杭(くい)を打って巨大な「桟橋」をつくる案。何でそれが「自然を保護する」ことになるのか。
「桟橋」案という言い方に惑わされてはいけない。辺野古の「桟橋」は、そんじょそこらの港にある桟橋とはまったく別ものだ。
面積じつに140ヘクタール。東京ドーム総面積の30倍。甲子園球場の総面積の36倍。「桟橋」というより「海上人工地盤」と言ったほうがよい。
人工地盤の下で、たしかに海流は以前と同じように流れるだろう。しかし生き物は生きていけるのか。
■ 小沢政権の算盤勘定 ■
小沢一郎氏が「きれいな海を埋め立ててはだめだ」と言っているそうだ。
だから、民主党政権が当分つづくなら「くい打ち桟橋方式」が採用され
る可能性が現実的に存在する。
(以後、このコラムでは「くい打ち桟橋方式」と言わず「海上人工地盤方式」と呼ぶことにしよう。 「桟橋」という言い方は誤ったイメージを与えるから。)
5月1日の日経報道によれば「海上人工地盤」案は、元々の「埋め立て」案に比べて工期は2年延びて7年ていど。費用は、なんと1.5倍になる。
もともと海上人工地盤方式は、工法が高度なため沖縄の土建業者が手がけられる部分が少ないことが最大のネックとなって放棄された。逆にいえば、小沢一郎氏につながる本土の土建業者へは、海上人工地盤方式のほうが莫大な利益をもたらす。
そんなことは おくびにも出さず「きれいな海を埋め立ててはだめだ」と言い続けていればよいとすれば、願ったりかなったりだ。
■ 地球上にこれまでなかった生態系 ■
海上人工地盤の下には太陽の光は届かない。 「藻場は全滅。周辺への影響は未知」と日本政府が米国側に明かしているという。(5月1日の日経報道)
海上人工地盤の下は、超大型の下水管の中みたいなものだ。温かい海水は流れても光が差さないのだから、珊瑚も藻も育つはずがない。
しかし、死の世界ではない。光の差さぬ深海にもさまざまな海洋生物が棲息するのだから、まして海上人工地盤の下の浅瀬には、太陽の光を必要としない生き物が大量に増殖するだろう。それは、地球上にこれまで存在しなかった生態系である。
面積140ヘクタールにわたり、太陽の光は届かないが温暖な海水がつねに流れ込むという、自然界にこれまで存在しえなかった地形が生まれるのだ。
東京ドームの総面積の30倍の広さの新たな生態系。
■ 有害生物や病原菌の増殖の恐れ ■
海上人工地盤の下は、太陽の光を必要としない生物の天下となる。これまで、海に面した洞窟のように、ごく限られた狭い場所にだけ存在しえた生態系。
これが、珊瑚礁の海にぱっくり口を開けたかたちで、巨大な存在として名護市辺野古に出現すると、どういうことになるのだろう。
珊瑚や藻に害をおよぼす海洋生物が、この未知の生態系で大量に培養される恐れはないのだろうか。想像もしなかった軟体動物や甲殻類が大量発生するとか。
紫外線で消毒されることのない暗黒の浅瀬で、未知の病原菌が進化・出現する可能性はないのだろうか。
これを検証するには、大規模で長期にわたる環境アセスメントを行う必要があるから、現状としては政府も「周辺水域への影響は未知」としか言えないのだ。
■ 埋め立て案のほうが安心だ ■
素人考えで言っても、海上人工地盤方式は埋め立て方式より恐ろしいことになりそうだ。
海を埋め立てれば、埋め立てた場所は海でなくなるわけだから、そこに珊瑚はなくなり、魚も棲めない。かわりに草が生える。あたりまえだ。
しかし、それは要すれば海岸線の形を変えることに過ぎない。海洋汚染の防止に努めていれば、何十年か先には、新たな海岸線にかつての海岸線の生態系が確実に再現される。自然には、そういう ちからがある。
海上人工地盤方式は、そうではない。海上人工地盤の下の浅瀬は、これまで沖縄の海に存在しなかった生態系である。
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わたしは「くい打ち桟橋案」に反対だ。理由は、述べたとおり。民主党の議員よ、反論があれば聞きたい。わたしの批評つきで全文を掲載して進ぜよう