こんな予算は、戦争末期に軍事費がふくれあがった時しかなかった | 日本のお姉さん

こんな予算は、戦争末期に軍事費がふくれあがった時しかなかった

☆ 多額債務団体=日本国の未来(前編) ――――――― 2010/04/14

「こんな予算は、戦争末期に軍事費がふくれあがった時しかなかった」――。

仙谷由人国家戦略相は1日、TV番組の収録で、国債発行額が税収を上回った今年度予算について反省の弁を述べた。予算編成に携わった閣僚としては異例の発言だが、

厳しい財政事情を訴えることで、参院選に向けてマニフェストの「大幅修正」につなげる狙いが見え隠れする。とAsahi.com(2010/04/01)は伝えている。

国債発行額が44兆円で税収は37兆円なのだが、これは日本敗戦の翌1946年以来63年ぶりのことなのだ。そりゃー、敗戦の翌年には税収より国債発行しないとやっていけないのは分かるが、

この経済大国になってこのようになること自体、何かが欠落しているからとしか思えない。ーーーそして平成21年度末の国の負債総額は871兆円ということになった。

大前研一氏がメルマガで「もはや国債の発行余力を失った日本政府」という題で国の借金問題を論評している。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20100309/214836/

論旨は以下の通りだ。
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1.政府部門の正味資産が2009年末についにマイナスに転落したらしい。

正味資産とは、政府部門の資産=具体的には土地や株式など)から負債=国債や借入金など)を差し引いたものだ。

2.政府部門の正味資産は、

1991年末にピークの350兆円だったが、その後は一貫して減少し、1998年以降の落ち込みは激しく、2008年はプラス11兆円ぐらいだった。

3.しかし、政府部門の正味資産の内容を検討してみると、

資産部分は「非金融資産」として「道路・土地等」が491.2兆円、「金融資産」として「現金・有価証券等」の504.2兆円があるのだが、道路等は売ることのできない資産で、もともと大赤字だったと考えたほうが良い。

4.この負債に「年金という隠れ債務」が含まれていないことが大問題だ。
これを加味すると、実際には1500兆円ぐらいのマイナスになってしまう、という試算もある。そうすると2008年以前からずっと赤字が続いていたことになり、政府は都合のいいように計算して数値上は黒字にしていただけのことである。

5.これまで自民党政府は、

「正味資産はプラス」としていたから、気前よく国債を発行していた。しかし「実は正味資産がマイナスでした」と国が認めた、となれば、国債を引き受ける側が困る。

国債を買っていた国民からすれば、「資産があるというから買っていたのに」
「本当は資産なんてありませんと今さら言われても」と恨むのが普通だろう。

6.海外の投資家が日本の公的債務をまだ比較的安全と見ているのは錯覚に基づいている。

つまり、危なければ誰も買わないか、高利回りにしなくてはいけないだろう。
現に、ギリシャが先週行ったユーロ建て10年もの国債発行では6.25%もの利回りとしなくてはならなかった。

それが日本の場合には、まだ1%台で発行し、買い手がいるのだから安心なのだ、という錯覚である。

7.もう一つの錯覚は、

「外国人が持っているわけではないから(ギリシャやアメリカなどとは違う)」というものである。しかし、約6%=44兆円)は外国人が所有している。

彼らが一斉に売り浴びせればダイナマイトどころのインパクトではすまない。
日本の金融機関も当然パニックに襲われ、狼狽売りせざるを得ないだろう。

8.金融も財政も、すべては物理学の法則に従う。

将来から借金すれば、誰かが将来払わなくてはならない。呼び方や経路を変えても「質量保存の法則」のように、マジックはなく、収支が一致しなくてはいけない。

借用証書を書いて時間軸をずらすことはできるが、負債が消えることはない。
とくにデフレ下で人口減少とくれば、より少ない人で過去の太った借金を返していかなくてはならない。
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これに対して、民主党の議員がブログで異論を唱えているのだが、真意がよく分からない。→
http://blog.guts-kaneko.com/2010/03/post_505.php

金子洋一参議院議員という人だが、今年48歳になる東大経済卒、経済企画庁からOECD等を経て平成21の選挙で当選という経歴である。経済に関して決して素人ではないのだが、言っていることが私には分からない。

論点は、
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1.国には徴税権と紙幣発行権があるので大前氏の言うような企業会計のバランスシートの概念は適合しない。

2.税収は50兆円ある=景気回復すれば)ので、それを全て国債の金利償還に使えるとすれば、今の国債の金利1.5%で借りられる場合3333兆円まで借金ができる。無理に金利を3%とすれば1667兆円まで借りられる。

3.仮に40兆円を住民サービスに使うとすれば、10兆円残る。これで借入をすれば666兆円ないしは333兆円借りれる。

4.また、通貨発行権だが、毎年80兆円の通貨を流通させられる価値をどう評価すれば良いのか分からないが、徴税権と通貨発行権をあわせるとマイナスではなくプラスである。

5.年金に関しても、積み立て不足との指摘があるが、単年度の収支が大幅に赤字になり、年金特別会計の残高が激減するなどして存続できないような事態になれば、必然的に給付水準を下げるという方向での制度変更が生じるため、今回の計算の趣旨を考えると、債務の大きさを強調するのはミスリーディングだと思う。

6.ギリシャはEUに加盟したため、各国の中央銀行は存在しないので通貨発行権は持っていない。徴税権は持っている。しかし付加価値税はEU指令にもとづいて既に15%から25%の間に設定されているなど、増税の余地は限られています。
またEU内では、人モノカネの域内の移動が簡単ですから、増税した場合に富裕層は国外逃亡するかもしれません。日本と全然異なります。

7.国債を強制的に買わされておらず、売買が市場で通常通り行われている以上、「外国人が国債を売り浴びせる」ということも起こりえません。

8.そもそも「正味資産がプラスなら国債が発行でき、マイナスなら発行できない」という発想自体、企業会計に引きずられた考え方です。その理由は最初に述べたように、国には徴税権と貨幣発行権があるということにあります。

実は我が国には、国債の「発行余力」は有り余るほどあります。毎年毎年国債の発行残高は増える一方で、我が国の個人金融資産も増えていきます。特に、個人の現金と預金は最近、景気が悪くなれば残高が増えるのです。
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そして、結論的には、
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個人がお金を使う気にする環境を作れれば、すなわち物価が下落しているデフレの状態を脱出することができれば、景気は簡単に回復します。現時点でその唯一有力な手段が、経済をデフレから脱却させることを政策の目標としているリフレ政策なのです。
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として終わっている。

ぐだぐだと書いてある項目の1~5は、政府の借金能力に関する見解だ。

借金する能力は、貸す側がどれだけ相手の返済能力を信用するかということで決まる。通常、企業なり団体なりに貸すときには、もし返済不可能になったときにどのようにして貸付金を回収するかを貸す側は考える。

それが具体的な形で現れるのが、担保というものであったり、保証人であったりする。

金子氏は、徴税権と通貨発行権があるからいくらでも借りられると主張するが少し検討してみよう。

税収は50兆円と言っているが、景気が良いといわれた2007年でも46兆円程度である。が、まあ本質ではないので良しとしておこう。

しかし、今年の歳出は92兆円、例年80数兆円、だから税収の1円たりとも借金返済には使えないのである。それを金子という代議士は、

税収全額を金利返済に充てるといくら借りられるのかと、3333兆円とか、金利3%ならば1667兆円を提示する。

しかし事実は、全く金利支払いに使えないから、1銭も借りられないはずである。それを、10兆円は金利支払いに当ててなどと誤魔化しもいいところの話で論理を組み立てている。

金利支払いができない団体に貸付ができるかどうかは、どれだけ財産をもっているかどうかだろう。その財産は正味資産であり、それがマイナスになっていることはそれなりに大きい話である。

それを、正味資産など意味がない、企業とは違うのだ、などという金子議員の論理のほうが間違いなのだ。彼は企業との違いを、徴税権、貨幣発行権を政府が持っていることを挙げる。しかし、

企業も収益を上げる手段として新製品発売があり、徴税権と同じように税収に相当する経常利益を上げることができるのであるので、金子議員の主張するように政府と企業は違うという主張はあまり説得力がない。

それよりも、民主党政権は、徴税権を行使しよう等と思っていないことのほうが問題だ。参議院選挙があるからという理由だけで、4年間消費税を上げないと国民に媚びた政権公約を出しているのである。

だから、徴税権があるあるという金子議員の主張など、屁のような話で何の役にもたたないように思う。

その事実を分かっていながら大前氏に論拠なき異論を唱えること自体、贔屓倒れの詭弁であり、国の進むべき方向を曲げるものである。

日本政府の負債である国債を償還するには増税が必要だ。

IMF=国際通貨基金)の試算によれば、プライマリーバランスの赤字を半減させるだけでGDPの14%以上の増税が必要になる。これを消費税だけでまかなうと40%以上の税率になる。

=結論先送りしか得意技が無い鳩山首相には考えることすらできないことであろうし、権力執着心だけの塊である小沢氏は一顧だにしない課題であろう。

こういうことを正直に国民に言えて、増税を提案できる政権誕生を願うのだが増税できる国民経済にすることが先決の話であることは当り前のことである。

こういう話を紹介している「CRAZY の戯言」というブログがある。
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昨年11月8日、サウジアラビア西部「ラービグ」で、日本の住友化学とサウジアラビア国営の「サウジ・アラムコ」とが共同で建設した巨大化学石油プラントの完工式が賑々しく執り行われた。

日本からは住友グループ各社の幹部、東京電力会長はじめ財界人、また政界からも日本・UAE友好議員連盟会長などを務めた前総理福田康夫、前衆議院議長河野洋平、政府特使として前民主党衆議院議員岩國哲人らが参列した。

サウジアラビアとの友好関係維持は国策にほかならないが、そればかりではなく、UAEが当面4基の原子力発電所の導入の最終コンペを迎えている。

その点では同国の最高権力者である国王、アブドゥラー・ビン・アブドゥルアズィーズの出席も予定されていたこの完工式は、日本が、国として日本の原発メーカーを売り込む絶好の機会であった。だからこそ、サウジアラビア国王に見合った政府特使の派遣が重要だったのである。

結果からいえば、

政府特使として、国際的には全く無名の岩國が来ることを知り、サウジアラビア側は国王の出席を見合わせ、石油鉱物資源相の出席にとどめてしまった。

当初、経済産業省が官邸に推したのは元首相福田康夫。「自民党で“戦犯”の1人とはいえ中東へのパイプは太い。現地でも名前を知られた数少ない政治家であり、やはり首相経験者という肩書きは重い」(経済産業省幹部)けれども、首相の鳩山由紀夫が選んだのは岩國だった――――。

なぜ岩國だったのだろうか?

首相周辺から聞こえてきたのはこんなものだった。
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鳩山さんとは古い付き合いで…。それに岩國さんから「海外を相手にしたコンサルタントの仕事をしたいからよろしく」と言われていたから、鳩山さんはそのへんを考慮したらしい。
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ーーーとても国策などとは呼べるようなものではなく、ただ単に鳩山の友人だからというのがその理由のようだ。これぞ“友愛”ということなのか?
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以上は引用だが、恐らく事実なのだろう。

これもあって、原子力発電受注は韓国に奪われた――――。

ーーーこれでは増税できる経済状態になどなるはずがない――――。

金子議員の話ではこういうことは全く考えず、いくらでも国債増発が可能だと主張しているのだ。

===視点が狂っているのでは、と思ってしまう話である。

 = この稿つづく =
http://aizax.fc2-rentalserver.com/argue3/1015.html