鳩山首相の最後っ屁が心配だ 泉 幸男 (分かりやすい記事です。) | 日本のお姉さん

鳩山首相の最後っ屁が心配だ 泉 幸男 (分かりやすい記事です。)

鳩山首相の最後っ屁が心配だ
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泉 幸男(頂門の一針メルマガ)

軍事基地の移設は、つまるところ移設先の住民への補償金をどれだけ積むかの交渉ごとだ。

かりに移設予定先の自治体の住民に1世帯あたり4千万円の補償金を支払うための予算が確保できたなら、移設先さがしは一気に解決する。

どうしても反対だという住民だって、4千万円あれば引越しして家を建て、おつりが来る。

反対派の引越し費用という意味で「1世帯あたりの補償金」を思い浮べたが、それだと偽装離婚が急増するなぁ。戸籍の上でだけ離婚すれば、もと夫婦に8千万円が転がり込む。

駆け込み引越しで、移設予定先の自治体の人口は一気に増えるだろう。

掘っ立て小屋を建てて住みつき、補償金をもらい、基地反対派住民が転出してできる空き家を待てばよい。

 ……と、のっけからバカなことを書いた。


■ 条件闘争に時間をかけるのは税負担低減のため ■

実際には交渉「即決」できるような潤沢な補償金はとても出せないから、長い長い条件闘争になる。

政府提示の条件は最低線からスタートし、移設先自治体は「ノー!」からスタートする。

ただでさえ、反米・反軍の外野席は 「ノー! と言え」とはやし立てるのだから、日本のどこに、いきなり「イエス!」から交渉を始める自治体があろう。

派手な反対集会を行えば行うほど、補償条件はよくなる、はずだ。

歴代の自民党政権は、名護市辺野古(へのこ)への移設案の交渉に長い時間をかけた。

名護市側は巨額の補償の受取りを夢みる。その夢に、ゆっくりと、冷水を浴びせつづけた。

名護市辺野古案の交渉に長い時間をかけたのは、全国民の利益のためだ。
補償の条件をいかに低いところで抑えつつ、名護市辺野古案に落ち着かせるか。

補償の条件を抑えられれば、国民の税負担増は最小限で済む。


■ 民主党の暴挙で国民の税負担が増す ■

ようやく落ち着いた名護市辺野古のV字型滑走路の案を、無責任な小沢政権が反古(ほご)にした。

これで、普天間移設にともなう国民の税負担がさらに高まることが確実になった。新たな移設先と短期間の交渉で決着するには、よほど高額の補償条件を示さざるをえないから。

そして、最終的に自民党政権下のV字型滑走路案に戻すにしても、名護市は言うだろう。「補償の条件は、当然、再交渉ですな」。

だから、国民の税負担は確実に増す。民主党のせいで。

こういう条件闘争の中身は、最後まで報道されない。住民が知ったら欲が出てしまい、収拾がつかなくなるから。

気がついたら 見違えるように立派な道路が出来、 豪華なプールつきの市民文化センターが建ち、地元の土建業者が羽振りがよくなって、あぁなるほどね、だ。


■ 鳩山大臣の最後っ屁が心配だ ■

5月末までに普天間基地の新たな移設先が決められるなどと、真面目に考える人は、もはや いないだろう。

この事態を批判する気もない。もともと、小沢政権の鳩山大臣に出来るわけがないと思っていた。

当誌1月3日号「元旦社説読み比べ」で、『朝日新聞』の元旦社説を評して、こんなことを書いた。

≪「いま 日 米 両 政 府 が 迫 ら れ て いるのは、これらの問題(= 普天間や“密約”問題) も直視しつつ、日米の 両 国 民 が より納得できる同盟のあり方を見いだす努力ではなかろうか。」(『朝日新聞』元旦社説より)
 
あのね、米国政府はまったく何も「迫られて」ません。米国民もまったく関心がありません。小沢政権が勝手に騒いでいるだけ。普天間基地問題? 日本側が決断しない限り、現状のままでしょ。米国は何も困らない。≫

小沢政権の、出来そうもない公約を真に受けるフリをした沖縄県の姿勢のことも、将来の歴史家らは「不まじめ」と評するだろう。

普天間基地移設は、沖縄県にとって真に喫緊の要請ではないのだろうか。

わたしが唯一心配なのは、暗愚の鳩山大臣が政権末期の最後っ屁として、反米論に打って出るのではないかということだ。
 
もちろん、小沢一郎氏の指示で。


■ 沖縄人と米国人の直接対決? ■


見識の狭い小沢一郎氏の考えそうなことは、こうである:


「民主党が悪者にならないためには、沖縄人と米国人が直接対決する図式にもっていくしかない。

せっかく、誠意をもって、普天間基地移設先の案を米国政府に提示したのに、わがままで不当な米国政府はこれを真剣に検討しようとしない、とね。

けしからんのは米国政府だ! と煽(あお)り立てれば、日本のマスコミは条件反射的に同調してくれるさ」。

インディアンの部族同士を対決させ争わせることで領土をもぎ取る「国づくり」をした米国人だ。そんなことは、お見通しである。

だから、米国政府は「沖縄人と直(じか)に向き合う」ワナには、はまらない。相手にするのは霞ヶ関の日本政府だけだ。


■ 地元の理解を含めた公式な提案を待つ ■


4月15日の日経夕刊1面記事「米大統領、首相に不信感  核サミット夕食会席上」に、キャンベル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)の
発言が引用されている。


≪「(移設先は) 日 本 国 内 の 政 治 力 学 と 我々米国側の運用上の要求の双方を反映したものでなければならない」と述べ、地 元 の 理解 を 含 め た 実 現 可 能 性 を重視するよう求めた。≫

 4月14日にワシントン直轄市内で記者団に語ったものだ。

ルース駐日米国大使も「日本政府から今まで受け取ったのはアイデアだ。
公式な提案は受け取っていない」と指摘している。当然の発言だ。

普天間基地の移設を望むのは、つまるところ、直近の選挙での勝利をもくろむ日本の政権側である。米国側は、普天間基地を移設する必要など、べつに無いのだ。

だから移設の実現のために、移設先を探し回ったり、新たな補償条件を提示したりする気など、米国側には一切ない。

基地移設先の住民への補償条件を交渉するのは、あくまで日本政府だ。
その決着が見えるまで、米国側は1インチも動かない。

◆■■■国際派時事コラム「商社マンに技あり!」■■■◆
http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/
■■■■第289号■■平成22年4月19日発行■■■◆転載。