なぜ今「人民元」? (原田武夫) 中国は多分、人民元の切り上げを決めている。(ルモンド) | 日本のお姉さん

なぜ今「人民元」? (原田武夫) 中国は多分、人民元の切り上げを決めている。(ルモンド)

なぜ今「人民元」? 各国勢の思惑を透かし見る!(その2)


(振り返り)

過去も、現在も、そして今後も
メディアに話題を提供するであろうテーマ。
それが米国による中国への「人民元切り上げ」要求です。

ところが、これを中国側から捉えるとどうなるか?
中国勢の言い方は、むしろ人民元の「自由化」「国際化」。
一層の経済成長の準備として、むしろこちらに力点を置くのが
中国勢の立場です。

では、この人民元の「国際化」シナリオは、
最近になって突然出てきたものなのか?

さにあらず。
では、そのシナリオは、いつ、どこで、提示されていたのでしょうか?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ここに、一冊の本があります。
タイトルは、『元切り上げ』(日経BP、2004年1月)。

著者は黒田東彦氏。
2004年発刊のこの本表紙の名前横には
「一橋大学大学院教授」とともに、
「(前財務官・現内閣官房参与)」と書かれています。

つまり、財務官として通貨政策に深く関わった人物が、
当時から各所で話題となっていた「人民元切り上げ」について
論じた著作です。

さて、この本の48頁に、興味深いくだりがあります。


   ブームの拡大破裂やハイパーインフレーション、
   あるいは突然の急激な為替切り上げを防ぐためには、
   中国当局はできるだけ早く中期的戦略に基づく
   為替調整を始める必要がある。それには三つの方策がある。


その一つとして挙げられるのが、次のものです。


1. 直ちに通貨をフロートするとともに資本規制を廃止する。


著者はこの方策(1. )の「危険」を指摘した後に、次の案を提示。


2. 通貨を一気に15%~25%切り上げ、
  ドル・ユーロ・円の主要通貨バスケットにペッグする。


しかし、この案(2. )も相対的に安全ではあるものの、
それでも「大幅な切り上げが中国経済を短期的に損なう
恐れがある一方、長期的にはそれでも不十分な可能性」も
指摘され、問題があるとされます。

上記の二つの方策の難点を示した後、著者が推奨するのが
次のものです。


3. 数年にわたって人民元が緩やかに上方調整するのを認める。
  その度合いは最大でも年間7%~10%。

そして、この方策ならば、
「中国経済に対するショックを回避し、それゆえに
世界経済に対するショックも回避することを可能にするだろう」と
述べています。

興味深いのは、引用箇所が含まれるこの節の結び(同書49頁)に
「(本章は、二〇〇三年一一月六日に行われた中国社会科学院における
講演を元に加筆した)」と書かれていることです。

上の三方策、とりわけ同書著者推奨の方策(3. )は、
中国で既に、日本の通貨政策、その人脈に連なる人物の発言として
語られていたということです。

そして更に興味深いのは、米国勢による「人民元切り上げ要求」
に対し、最近の中国勢がこれを「人民元自由化・国際化」と
捉え直す態度を見せていることです。

これは、まさに中国自身が人民元の緩やかな上方修正を
認めるという、上記3. の方策と平仄の合う事態です。

そして、その「シナリオ」は数年前の時点で、
それもほかならぬ日本勢によって、示されていたのではないか──
このようにも考えられるのです。

もちろんこうしたことは、上掲書の著者という一個人によるものではなく、
より大きな意味での日本勢によって進められていた、
進められているのではないかと考えるのが自然です。

では、中国勢が人民元の「自由化」「国際化」を言いだした
最近、日本勢と中国勢との関係は、いかなるものになっているでしょうか?

この点につき、
「IISIAデイリー・レポート」(2010年4月9日号)でIISIAは、
次のような分析を提示しています。
【「IISIAデイリー・レポート」(2010年4月9日号より抜粋)】
( 
http://haradatakeo.com/link/repo.php?to=dr&fr=m1&dt=100414  )


─金融メルトダウンが“最終局面”を迎える中、
 「人民元自由化」のために絶対的に必要な外貨の調達を
 米国勢に代えて、日本勢から行おうとする中国勢は
 自ら対日接近を行うインセンティヴを持っているというのが
 IISIAの基本的分析。

 ここに来て日本人受刑者の死刑執行により
 やや関係悪化が“演出”されたことも、
 全体として日本勢との包括的交渉(パッケージ・ディール)を
 進めようとする中国勢による戦略的な行動であった可能性大。

 とりわけ中国勢からの対日輸出の象徴的存在であったのが
 「食品」であるだけに、このことについて日本勢の要求を聞くことは
 中国勢にとっても利益になるタイミングが到来している点に要注目。

 その意味で、これは日本勢による中国製品の輸入促進、
 逆にいえば中国勢による外貨獲得の橋頭保と
 なり得る会談であるため、そもそもこれが実現されるのか、
 また過度な日中接近をこれまで阻止してきた米国勢が
 硬軟織り交ぜた形でのアプローチを日中両国にどのような
 形で見せ始めるのかを中心に、引き続き事態の推移を要注視。


※ 引用文中の「パラメーター」は、
  マーケットとそれを取り巻く国内外情勢に関する、
  IISIA独自の定点観測ポイントを指します。

  全部で85を数える「パラメーター」は、
  2010年を見通すIISIAの予測分析シナリオ
  “Complexio Oppositorum”(コンプレクシオ・オポジトルム)に
  記載されています。
  ご関心の方は、今スグ下記リンク先をご覧ください。

 ⇒ 
http://haradatakeo.com/link/repo.php?to=sc&fr=m1&dt=100414
  

少なくとも、こと通貨政策、とりわけ人民元の
取り扱い方に関し、何らかの仕方で日本勢が
「入れ知恵」を行っていた可能性も想定できることになります。

では、もしそのとおりだとすれば、
日本勢の「入れ知恵」はいかなるものなのか?
それは何を参照項に行われているのか?

気になるこの点も含め、明日以降も本コーナーでは
「IISIAデイリー・レポート」において実際にIISIAが提示した分析をもとに、
この問題を考えていきたいと思います。(続く)

※「IISIAデイリー・レポート」については下記リンク先をご参照ください!

 ⇒ 
http://haradatakeo.com/link/repo.php?to=dr&fr=m1&dt=100414


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http://haradatakeo.com/link/semi.php?to=is&fr=m1&dt=100414


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日本はチュウゴクに入れ知恵しているとは

思わないけどね。チュウゴク大好き日本人が

個人的に入れ知恵はしているかも。

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 【世界の新聞「101紙」の視点】

        ~2010年4月19日(月)の紙面より~

独断と偏見はご容赦!
【最近の社説の、ここに注目】

3月15日付「人民日報 日本語版」
『米国には人民元相場についてあれこれ言う資格はない』
4月14日付「ルモンド」(フランス紙)
『人民元切り上げの効用』
の、評論・社説。


人民日報・日本語版。
『英紙「サンデー・テレグラフ」は14日、「金融危機を前に、米国を含む西側諸国は自らの内に原因を探すべきだ。中国などの発展途上国に罪を着せてばかりいるべきではない。人類史上最大の為替操縦国である米国が人民元相場問題についてあれこれ言う理由はない」と報じた。記事の概要は次の通り。』

『サブプライム危機は米国が一国でもたらしたものだが、米政府は過ちを認めることを拒否し、反対に新興国の台頭やそれによる世界経済の均衡喪失に罪を着せた。』

『西側から見ると、これらの国々は世界の他の地域で必要な製品を生産し、巨額の貿易黒字を得、大量の外貨準備高を蓄積することにより、西側世界にたゆまぬ貸付と大量消費を「強いている」というものだ。』

『こうした分析は全く論理的でないばかりか、いささか愚かですらある。だが西側諸国の政府とその「御用」経済学者の間では、これは通用する考え方で、さまざまな公的場で繰り返し用いられているのだ。』

『人民元相場の問題で、中国が米国の圧力に屈することはない。中国の問題への対応において、西側は現実を直視すべきだ。米国が人民元の切り上げを要求すればするほど、中国はそのようにしなくなる。』

『中国政府は社会の安定を非常に重視し、経済成長と雇用創出に対する輸出の重要性を考慮している。中国が西側に屈服することもありえない。』

『オバマ米大統領は最近、人民元相場の「一層の市場化」を中国に促した。米財務省も4月中旬に中国を「為替操縦国」に認定するか否かを決定する。』

『米政府のこうしたやり方は火遊び同然だ。実際、米国の為替操縦は人類史上最も深刻なものであり、近年来ずっと米ドルの価値を下げることでその外債の価値を下げているのだ。』


ルモンド。
『中国は多分、人民元の切り上げを決めている。そうであれば中国を含め、全世界にとって朗報である。それはアジア、欧州、米国、そして新興経済大国すべてから望まれていた進展だ。世界経済に好結果をもたらすだろう。』

『この問題はワシントンで4月12日、オバマ米大統領と胡錦濤中国国家主席との会談で取り上げられた。人民元の為替レートが会談のメニューに含まれたという、その事実だけでも示唆となる。』

『つい数週間前まではまだ、人民元と他の通貨との交換率をあえて問題にすると、中国指導者たちには決まりきった回答しかしなかった。』

『われわれの通貨は過小評価されていない。切り上げに引き込もうとする圧力は、すべて保護主義である。保護主義は中国に対する侵害である-。』

『圧力を及ぼしたのは、どこよりもまず米国だった。しかしそれはもっとひそかな形で、インド、ブラジル、南アフリカその他からも発せられていた。』

『その理由は、人民元の過小評価が中国輸出企業への変装した補助金だということにある。』

『この不公正により、中国は自国の輸出に競争力の優位を備える。それは2008年半ば、衰え始めていたドルと人民元を結びつけるという、北京の決定で際立った。』

『その中国は今、方向転換の兆候を見せる。中国人民銀行など関係当局の責任者たちが送り出すメッセージは、人民元を切り上げるかもしれないということだ。』

米国はそれを銘記し、中国が為替レートを操作しているとの、表立った非難は一時控えることにした。

『専門家の評価によると、普通に交換できる人民元であれば10%から25%まで値上がりするだろうという。レートのそのような変化はよい方向に進むだろう。』

世界経済の大きな不均衡が、それによって改まろう。輸出の巨人、中国は巨額の黒字をため込むが、他の諸国には赤字を累積させるという不均衡である。

『切り上げは短期的に、過熱の恐れがある中国経済でインフレリスクを遠ざけることになろう。長期的には中国経済を大躍進ではなく、自国が必要とする大均衡の道に乗せるだろう。』

『切り上げられた人民元は家計に購買力を添えるだろう。それによって国内消費が強まり、従来とは違う発展モデルへの移行を助けよう。輸出ではなく内需にけん引される経済である。』

『生気に満ちた過去30年の中国経済実績の継続は、その成功物語の新たな1章を開くよう促す。人民元の切り上げである。』


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ほんの1ヶ月前まで、

『人民元相場の問題で、中国が米国の圧力に屈することはない。中国の問題への対応において、西側は現実を直視すべきだ。米国が人民元の切り上げを要求すればするほど、中国はそのようにしなくなる』(人民日報・日本語版)

としていた中国が、今では、
『多分、人民元の切り上げを決めている』(ルモンド)とのことのようだ。

この1ヶ月の間に、何かあったのだろうか。
米中間で何らかの密約が交わされた…ということではないのだろうが。


ルモンドは、人民元の切り上げについて、
『世界経済に好結果をもたらすだろう』
『生気に満ちた過去30年の中国経済実績の継続は、その成功物語の新たな1章を開くよう促す。人民元の切り上げである』として、世界にとっても中国にとってもよいことだと主張している。

こうした見方には今現在、おおむね異論はないようだ。

しかし、たとえばフランスはドル基軸通貨維持に否定的という立場にあるなど、各国それぞれの思惑があることだろう。

今後、人民元切り上げをめぐって、各国様々な駆け引きが展開されるかもしれない。
(桐鳳)


【編集後記】

毎年、特に冬になると、手の親指がひび割れてしまうことに悩んでおりました。

これまで、どんなに素晴らしい効果を謳うクリームなどを塗っても、一向に改善されなかったのです。

しかし、今年は「ワセリン」を塗ることで、その悩みから開放されました。
水を使ったあとや風呂上り、乾燥を感じた時などに、こまめに塗るのです。

塗ったあとのベタベタ感が難点ですが、おかげで今年は1度もひび割れせずにすみました。

その昔、顔に塗りたくっていたワセリンを、再び使用することになるなど思いもしなかったのですが、まわりまわって元に戻ったという感じでしょうか。

大きな容量のものを買って、小さな容器に移し替えて使用しています。


「大洋製薬 白色ワセリン 500g【第3類医薬品】」
http://bit.ly/dscAcr
(桐鳳)

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http://archive.mag2.com/0000174275/index.html