日本の技術が企業ごと、チュウゴクに金で買われていく | 日本のお姉さん

日本の技術が企業ごと、チュウゴクに金で買われていく

中国経済:BYDのオギワラ買収が示唆する将来の日本=田代尚機
V【経済ニュース】 2010/03/29(月)08:51

  BYD(01211)が日本の金型メーカー「オギワラ」の工場を買収するそうだ。BYDは今や自動車メーカーである。2009年6月中間決算における部門別売上高をみると、自動車・自動車関連は55.0%、携帯電話用部品は33.0%、電池・関連製品は11.9%。08年12月期の自動車・自動車関連は全体の32.3%に過ぎず、昨年事業の重心が自動車部門へと大きくシフトしたことが分かる。

  バフェットは08年秋、BYDが注力する電気自動車の将来性を高く評価、関連会社を通じ約10%の株式を取得した。これをきっかけに、BYDの知名度は大きく高まった。もともと電池メーカーとしての技術力には定評があったが、自動車部門でも地味だが非常に重要である金型の高い技術を手に入れたことで、今後数年以内に本格化するだろう電気自動車市場での競争において、ますます有利な立場に立てそうになってきた。

  最近、中国企業による日本企業の買収が目立つようになってきた。

  2009年12月にはオルゴールから自動車部品まで手掛ける寧波韻昇(上海A株:600366)が日興電機工業の株式を約8割取得した。この日興電機工業は1999年に会社更生法を適用申請して上場廃止となった会社である。

  その他、2010年2月には、一旦経営破たんした本間ゴルフが中国系企業であるマーライオンHDに買収されている。09年6月には経営不振の続くラオックスが中国最大の家電量販店である蘇寧電器(深センA株:002024)に買収されている。

  ある中国系のM&A仲介企業によれば、内装工事、建設、不動産などにも興味があるようだ。ただし、不動産については開発対象としてではなく、あくまで“投資(投機)物件として”であろうが……。うまくアレンジする業者がいれば、中国企業によるM&Aはもっとたくさん成立しそうである。

  このまま日本の資産がどんどん中国に流出してしまえば、いずれ日本の産業は中国企業に支配されてしまうのではないかと心配する方もいるだろうが、少なくとも現時点では杞憂といえそうだ。

  “高い技術を持った日本の中小企業は国際的に高い評価を得ている”というのはその通りであろう。しかし、中国企業が興味を示すかどうかとなると、これは別の問題である。まず、国有企業について考えれば、彼らがM&Aを行う条件は、資源の確保、国際ブランドの育成など、国家の方針に沿っているかどうかである日本企業がM&Aの対象になるとすれば、国際的に高いブランド力を持った大企業であろう。レノボがIBMのパソコン部門を買収したが、そういったレベルの案件であれば中国側は興味を持ちそうだ。前出のように技術力は高くても、規模の小さな案件にはそれほど興味はないだろう。

  もちろん、民営企業、あるいは地方政府系ではあるが国有色の弱い企業であれば話は別である。しかし、どうしても案件の規模は小さくなる。また、ここで示したような金型、自動車部品、家電量販店、ゴルフ製造や、IT関連など国家による関与の弱いニッチ産業に限られてしまう。

  現時点で、大勢では中国による産業支配を心配しなくてもよさそうだが、将来はどうだろうか。人民元は早晩再び上昇し始め、緩やかではあるが着実に上昇を続けよう。日本企業の不振が今後もさらに続くようであれば、中国企業と日本企業との間でビッグディールが生まれるかもしれない。中央系国有企業が日本企業を買い始め、日本政府がそれを阻止しないとすれば、10年後の日本の姿はどうなっているのだろうか……。幸い足元で世界経済は回復に向かいつつある。日本企業においてはここでしっかりと業績を立て直して欲しいものだ。(執筆者:田代尚機 TS・チャイナ・リサーチ(株)代表取締役 編集担当:水野陽子)
レッド・センセーション on サーチナ 第90回-田代尚機
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