欧米に対して芽生えた優越感によって、チュウゴクの経済ナショナリズムに拍車がかかっている
海外資本はもう不要?加速する中国の経済ナショナリズム
2010年 3月 17日 17:33 JST
【北京】中国での経験が長い企業幹部、弁護士、コンサルタントらは本紙の取材に対し、中国の環境が外国企業にかなり厳しいものになったと指摘する。彼らは一様に、こういった変化は、中国政府が、2001年の世界貿易機関(WTO)加盟に代表される外国企業への経済解放のスタンスを再検討しており、国営企業重視路線に向かいつつあることを示していると語る。
複数の業界の幹部が、中国のWTO加盟によって加速したはずの自由化の動きが止まりつつあると話す。風力タービンや太陽光パネルの海外メーカーは、再生可能エネルギーの大型プロジェクトから閉め出されているという。会計事務所プライスウォーターハウスクーパーズによると、昨年6月時点で中国の生保市場にしめる海外企業の割合は4.7%。損保市場にいたってはわずか1%だ。
外国企業の幹部の多くは、リセッション(景気後退)が進むなか、世界を席巻した中国の経済力と、失墜した欧米の経済運営に対して芽生えた優越感によって、中国の経済ナショナリズムに拍車がかかっていると指摘する。
ナショナリズムの存在は、「ナショナルチャンピオン」として業界を支配する国営企業が、海外企業ばかりか国内の民間企業を犠牲にしてまで保護されている状況からも明らかだ。航空会社から石炭鉱業、乳業に至るまで、政府の政策は公的部門の拡大を後押ししている。
1年前、中国の規制当局は、米コカ・コーラによる中国果汁飲料大手の匯源果汁集団(ヒュイアン・ジュース・グループ)の買収提案を独占禁止法違反として却下した。両社を統合しても中国の飲料市場で5番目の規模にしかならないにもかかわらずだ。
7月には、英豪系資源大手リオ・ティント幹部4人が、「国家機密」を盗んだとして拘留された。鉄鉱石の価格をめぐって張り詰めた交渉が行われるなかでの出来事だ。その後、容疑は収賄と商業機密の取得に減じられたが、リオ・ティント側は4人の容疑を否定している。
インターネット検索大手米グーグルと中国政府との対立は、外国企業の懸念を象徴するような問題だ。中国の検閲規則に悩まされてきたグーグルは1月、サイバー攻撃にあったとして中国からの撤退検討を表明した。似たようなサイバー攻撃はほかの外国企業にも起きている。グーグルは中国向け検索サイト「Google.cn」を近く閉鎖する可能性が高いが、その後は4億人のインターネット人口を擁する中国市場を国内企業が支配することになる。
米法律事務所ウィルマー・カトラー・ピッカリング・ヘール・アンド・ドア社のマネージングパートナー、レスター・ロス氏は「グーグルの一件は、問題を明確にする効果があった」とし、中国での事業展開の難しさについて「政府、企業幹部、そのほかの関係者の意識が高まった」と説明する。
今回の取材に応じるにあたって海外企業の幹部らは匿名を条件としたが、昨年12月には、北米、欧州、アジアの34の経済団体が中国政府にあてて、要望書を提出している。その内容は、中国が政府調達で自国で開発されたものを優先しており、海外企業を「差別」しているというものだ。中国当局は調達ルールには差別するような要素はないとしている。
中国で事業を展開する多数の多国籍企業にとって、現在の利益は、長年の投資の結果だ。その投資の多くは、中国政府が行ってきた(海外)資本を集める政策によって促進されてきた。
巨大市場に参入するという多国籍企業の夢が現実となった今、繁栄を謳歌(おうか)する中国にとって海外資本は以前ほどの魅力はない。対中投資は中国経済の中でも減速が著しく、09年の国内総生産(GDP)に占める割合は1.8%。94年のピーク時は6%だった。
また、中国政府は、欧米諸国が中国の経済的地位の向上を邪魔したいのではという疑念を抱き続けてきた。そのような不信感が海外企業に対する制限強化につながっているとアナリストは分析する。
市場開放を擁護する意見は依然としてあるが、「中国を保護主義、ナショナリズムの方向にもっていこうとする声の方が大きい」とロス氏は指摘した。
http://jp.wsj.com/Economy/node_42633?Yahoo=f0975981dbaba8ded1285f3b451775f5
2010年 3月 17日 17:33 JST
【北京】中国での経験が長い企業幹部、弁護士、コンサルタントらは本紙の取材に対し、中国の環境が外国企業にかなり厳しいものになったと指摘する。彼らは一様に、こういった変化は、中国政府が、2001年の世界貿易機関(WTO)加盟に代表される外国企業への経済解放のスタンスを再検討しており、国営企業重視路線に向かいつつあることを示していると語る。
複数の業界の幹部が、中国のWTO加盟によって加速したはずの自由化の動きが止まりつつあると話す。風力タービンや太陽光パネルの海外メーカーは、再生可能エネルギーの大型プロジェクトから閉め出されているという。会計事務所プライスウォーターハウスクーパーズによると、昨年6月時点で中国の生保市場にしめる海外企業の割合は4.7%。損保市場にいたってはわずか1%だ。
外国企業の幹部の多くは、リセッション(景気後退)が進むなか、世界を席巻した中国の経済力と、失墜した欧米の経済運営に対して芽生えた優越感によって、中国の経済ナショナリズムに拍車がかかっていると指摘する。
ナショナリズムの存在は、「ナショナルチャンピオン」として業界を支配する国営企業が、海外企業ばかりか国内の民間企業を犠牲にしてまで保護されている状況からも明らかだ。航空会社から石炭鉱業、乳業に至るまで、政府の政策は公的部門の拡大を後押ししている。
1年前、中国の規制当局は、米コカ・コーラによる中国果汁飲料大手の匯源果汁集団(ヒュイアン・ジュース・グループ)の買収提案を独占禁止法違反として却下した。両社を統合しても中国の飲料市場で5番目の規模にしかならないにもかかわらずだ。
7月には、英豪系資源大手リオ・ティント幹部4人が、「国家機密」を盗んだとして拘留された。鉄鉱石の価格をめぐって張り詰めた交渉が行われるなかでの出来事だ。その後、容疑は収賄と商業機密の取得に減じられたが、リオ・ティント側は4人の容疑を否定している。
インターネット検索大手米グーグルと中国政府との対立は、外国企業の懸念を象徴するような問題だ。中国の検閲規則に悩まされてきたグーグルは1月、サイバー攻撃にあったとして中国からの撤退検討を表明した。似たようなサイバー攻撃はほかの外国企業にも起きている。グーグルは中国向け検索サイト「Google.cn」を近く閉鎖する可能性が高いが、その後は4億人のインターネット人口を擁する中国市場を国内企業が支配することになる。
米法律事務所ウィルマー・カトラー・ピッカリング・ヘール・アンド・ドア社のマネージングパートナー、レスター・ロス氏は「グーグルの一件は、問題を明確にする効果があった」とし、中国での事業展開の難しさについて「政府、企業幹部、そのほかの関係者の意識が高まった」と説明する。
今回の取材に応じるにあたって海外企業の幹部らは匿名を条件としたが、昨年12月には、北米、欧州、アジアの34の経済団体が中国政府にあてて、要望書を提出している。その内容は、中国が政府調達で自国で開発されたものを優先しており、海外企業を「差別」しているというものだ。中国当局は調達ルールには差別するような要素はないとしている。
中国で事業を展開する多数の多国籍企業にとって、現在の利益は、長年の投資の結果だ。その投資の多くは、中国政府が行ってきた(海外)資本を集める政策によって促進されてきた。
巨大市場に参入するという多国籍企業の夢が現実となった今、繁栄を謳歌(おうか)する中国にとって海外資本は以前ほどの魅力はない。対中投資は中国経済の中でも減速が著しく、09年の国内総生産(GDP)に占める割合は1.8%。94年のピーク時は6%だった。
また、中国政府は、欧米諸国が中国の経済的地位の向上を邪魔したいのではという疑念を抱き続けてきた。そのような不信感が海外企業に対する制限強化につながっているとアナリストは分析する。
市場開放を擁護する意見は依然としてあるが、「中国を保護主義、ナショナリズムの方向にもっていこうとする声の方が大きい」とロス氏は指摘した。
http://jp.wsj.com/Economy/node_42633?Yahoo=f0975981dbaba8ded1285f3b451775f5