「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 | 日本のお姉さん

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」

 「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
     平成22年(2010年)3月17日(水曜日)貳
          通巻2911号 

 米国はイスラエルを的に回せるのか?
  強硬姿勢、ヒラリー国務長官が一転して軟化へ
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 正面に見据える敵は少ない方が良い。
 米国の真っ正面の敵は嘗てソ連、いまはテロリスト、アルカィーダ、タリバンだ。
潜在的はパキスタン、パレスチナ。敵対的競合的関係はロシア、中国、ベネズエラ。。。。。

 ならばイスラエルを敵に回すのか?
 いや米国外交にそれほどの余裕があるのか。
 
3月12日にヒラリー米国務長官はCNNテレビのインタビューに出演し、おりからのバイデン副大統領イスラエル訪問中に東エルサレムで新入植地建設を発表したイスラエルの対応は「侮辱的だ」と批判した。
 
その日、ネタニヤフ首相と緊急に電話会談し(電話は五十分に及んだ)、「イスラエル政府は言葉だけではなく、具体的な行動を示す必要がある」と入植中止を仄めかし、イスラエルは態度を硬化させた。

 ヒラリーはネタニヤフ首相に対して「米国は(入植地建設の)発表を、二国間関係の取り組みに対するイスラエルの非常に否定的なシグナルと考える」とした。

 イスラエル・パレスチナ和平交渉は米国が仲介した暗礁に乗り上げたまま。そうこうしているうちに東エルサレムへの新入植地建設を発表したため、国連、欧州連合(EU)、ロシア、米国の4者グループも「イスラエルの決定を非難する」と声明をだした。

 ところが四日後、ヒラリー国務長官はイスラエルとの関係に言及し、「緊密で揺るぎない絆が両国間には存在する」として関係悪化説を否定した。
「米国はイスラエルの生存に深く関心を共有し、絶対的にイスラエルの安全に関与していることに変化はない」

 3月16日、東エルサレムではアラブ系民衆と警官隊が激しく衝突し数十名が重軽傷を負っている。警官隊は三千が動員され、ゴム強化弾、催涙ガスなどで暴徒を鎮圧したが、旧市街を中心に暴動は拡大している。
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 中国の現実を知れば知るほどに抱腹絶倒、やがて哀しき虚勢の大国!


   読者の声 どくしゃのこえ 

(読者の声1) 大阪で「気鋭の女性作家が日本の教育を斬る」講演会があります。
ゲストはいま話題の学研新書『エリートの条件』の著者=河添恵子氏(ノンフィクション作家)。
かわそえけいこ女史の略歴は千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、1986年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。主な著書に『エリートの条件 -世界の学校・教育最新事情』(学研)、『台湾新潮流』(双風舎)、『アジア英語教育最前線』(三修社)、『世界がわかる子ども図鑑』(学研)、『中国人とは愛を語れない!』(並木書房)など。訳書に『中国マフィア伝』(イースト・プレス)など。4月上旬『中国人の世界乗っ取り計画』(産経新聞出版)を出版予定。取材は30ヵ国以上。産経新聞や『正論』『WiLL』などでも執筆中。
        記
日時: 3月24日(水) 18:30 ~ 20:30(開場18時)
    ゲスト基調スピーチ & 双方向トーク
場所: 中央電力株式会社 2Fセミナールーム
  (大阪市中央区本町2-2-7本町ビル、06-7731-2000
   地下鉄堺筋線 「堺筋本町」駅16番出口直結)
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会費: 社会人1000円 / 学生500円
連絡先: o4-yui@hotmail.co.jp (近畿大学 押川唯)
    <当日> 090-8825-4224
 (お申込みの際は、御名前/通勤通学先/連絡先をメールでお願いします)
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アンディ・チャンの台湾コラム
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<< 体制外運動はもっと反中華民国を拡大し、選挙に惑わされて踊るような愚を冒してはならない。体制外運動は反政府運動であり、これが台湾人民の意思である。体制外運動を活発にすることが民意を鼓舞し、民進党の応援となるのである >>

『選挙と体制外運動』

数人の候補者を選ぶだけでバカ騒ぎをしても中華民国体制はビクともしない。勝っても負けても中華民国政権は倒れないのである。選挙は民進党に任せて民衆は反体制運動をすべきである。
選挙は国民を疲弊させるだけでなく革命のエネルギーも奪う。選挙で民間の反政府エネルギーを浪費させ、経済、社会を疲弊させることが中華民国の安全に?がることを忘れてはならない。

●続く選挙のバカ騒ぎ

2月の(台湾国会議員)補欠選挙で4議席のうち3席を民進党が勝利したので台湾人は大喜びである。これに続いて年末に行われる5大都市市長の選挙の候補者選びで国民党、民進党は大騒ぎしている。党員でもない台湾の中間層、つまり野次馬が大騒ぎして民進党の代表を誰にすべきかと侃々諤々の議論を毎日続けている。
 党員でもない野次馬が候補者を論じ、誰が国民党候補に勝てると言っても無駄である。候補者は政党が決める、野次馬には影響力がない。野次馬が民進党を支持するのは反中国感情が根強い証拠だが、このエネルギーを体制外運動に持ってくればもっとよい結果が得られる。

民間の反馬英九、反政府を活発にすれば自然と民進党の応援になる。体制外の指導者たちはこの選挙騒ぎの時期を利用して、選挙と体制外運動を連結させるべきである。
 
●選挙は国民を疲弊させる

なんの為に選挙をやるのか? 選挙で政権を取れると思ったら間違いである。 政権を取っても中華民国体制は潰せない。
人民は独立のためなら民進党支持を惜しまないが、民進党が政権をとって中華民国を維持するのなら援助しても意味がない。選挙は民間の金を吸い取り、反政府エネルギーを消費させる効果がある。しかし反政府エネルギーを消費させて中華民国を倒す運動が沈静化すれば台湾独立にとってはマイナスである。

去年の選挙から数ヶ月の間に三度も選挙があり、民進党候補が優勢を占めたので、民衆はまるで将来の選挙も民進党が勝って、立法委員の選挙でも大多数を獲得し、続いて中華民国の総統選挙でも台湾人が当選、続けて中華民国を倒せるような錯覚に陥っている。
 三回の選挙で反政府エネルギーを消費しても、結果は立法院127議席のうち33議席を取っただけだった。三分の一の議席ではどんな法案を出しても表決では通らない。つまり中華民国体制は崩せない。

●選挙は政府安全の護符

選挙で反政府エネルギーを消費つくしてしまえば中華民国体制は安全だから、蒋系中国人にとって選挙は安全お守り、護符なのである。国民党の選挙とは金、ヤクザ、戸籍制度、各社会団体を把握して公然と贈賄選挙ができるようになっているから民進党に勝ち目はない。過半数を取らなければ中華民国政権はビクともしない。

民衆は選挙が民主国家の象徴であり、選挙ができるのは民主国家であるような錯覚を持っている。もしも「中華民国のような独裁国家は、独裁を維持するために選挙を行うのだ」と教えたら民衆は驚くだろう。孫悟空がいくら飛び跳ねてもお釈迦様の掌から出ることができなかったように、民進党が選挙で中華民国体制を潰すことはできない。体制外運動とは中華民国の掌から飛び出すことである。亡命政府を支持する民進党は間違っている。
 もちろん選挙になれば台湾人は体制外、体制内を問わず「台湾」に投票する。しかし打倒政府を忘れてはならない。民進党は選挙を目標としているが、いくら世間で議論をしても民進党は派閥闘争に明け暮れて民意を聞き入れるほど成熟した政党ではない。
 
●相続く選挙で民衆を虚脱させる

一月と二月の補欠選挙は、前の選挙で国民党候補の贈賄行為の証拠が挙がって当選無効を宣告されたから補欠選挙となったので、国民党はワイロを使えなかった。相手がワイロを使えず民進党が勝ったといっても、五都市選挙になれば国民党が再度黒金選挙で臨むのは確実だ。

二月の選挙が終わるとメディアは直ちに両政党の候補者選びを報道して民衆があれこれ論評するようになった。つまりメディアを使って民間のエネルギーを消費する戦略である。この状況が秋まで続くと体制外運動の人々も選挙に浮かれて反政府運動は薄れてしまう。
 それだけでなく、秋の五都市の市長選挙が終われば、勝ち負けについての議論が起き、続いて2012年の総統選挙と騒ぎは続くのである。
これが続けば反体制運動は忘れる。これは危険である。

国民党は終戦後に台湾の日本資産を勝手に没収したので金持ちである。これに比べて台湾人の民間が民進党に投資して選挙をやり、金を出し続けるのは大変である。国民党は資金面で優勢だが、違法資金をストップさせれば台湾人に勝ち目が出てくる。

●五都市選挙の見通し

今年秋に行われる五都市選挙とは、台北市、新北市、台中市、台南市、高雄市の市長選挙である。現在の状況分析では、南部の高雄と台南は民進党優勢で、中部と北部の台北、台中、新北は国民党優勢、つまり民進党と国民党の比例は2対3である。五都市で総人口の60%を占める選挙だから、2012年の総統選挙に大きな影響を与える。

もしも選挙の結果が今と同じように2対3なら民進党は勝ったことにならない。次に3対2で余計に一つ取れば民進党がやや優勢となるが、これで次の選挙に勝算がでてきたことにならない。総統選挙で優勢を取るには4対1か、5都全勝でなければならない。
 民進党が勝つかどうかは民衆の支持が大切である。
つまり、民進党の政策が民衆に受けるかどうかである。台湾は小さな島であり、台湾の問題は各都市によって違うことはない。経済、失業率、治安などの問題を見ても、政府の無能、馬英九の無能、中国接近などを批判すればよい。ところが民進党は別のことを考えている。

●民進党の「十年政治綱領」

民進党の蔡英文党首は、八月の民進党党大会で「十年政治綱領」を討論し政党の中期目標として発表すると述べた。蔡英文はこの綱領は選挙のためではないと述べたが民間では選挙がらみと見ている。
民進党が1999年の党大会で「台湾前途決議文」を発表してから11年になるが、このときの決議文は:(1)台湾は独立した国家で、領土は台湾、澎湖、金門、馬祖である、(2)独立国家だから中国と関係はない、(3)台湾独立の現状を変えるには全体国民の投票で決める、などである。つまり独立を主張しないと決めたのだった。

民進党はこの決議文に基いて独立を放棄し、中間路線で選挙をしてきた。つまり独立を主張しない現状維持である。台湾人民の独立願望を無視した民進党が失敗した主な原因である。
次の10年綱領で民進党がどのような主張を示すかで選挙の結末を予測できる。民進党が続けて中華民国を支持する、「台湾は既に独立国家」を主張するなら中国の併呑に反対の民衆は失望するだろう。

●反体制運動を怠るな

民衆の票を集めるなら、民衆に最も関心のある問題を優先しなければならない。台湾の安全防衛、台湾独立、反ECFA(対中国経済協定)を主題とすべきである。民衆の最大の関心は中国の台湾併呑にであることを忘れてはならない。
 民進党は反政府を主張せず体制外運動に任せている。
矛盾したことに民進党は反政府の民衆が民進党を支持することを期待している。民意がECFA反対を主張しているのに民進党が主張しない。民進党は中華民国に反対せず、民間の支持を求めるという矛盾を抱えている。
体制外運動はもっと反中華民国を拡大し、選挙に惑わされて踊るような愚を冒してはならない。体制外運動は反政府運動であり、これが台湾人民の意思である。体制外運動を活発にすることが民意を鼓舞し、民進党の応援となるのである。

(アンディ・チャン氏は在米評論家)
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  三島由紀夫研究会『公開講座』のお知らせ
次回『公開講座』は3月24日
●どなたでも予約なしでご参加いただけます! 当日サイン会も予定しております!

桜林美佐さんが三島事件以後、不在となっている防衛問題を基軸に語ります。
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とき     3月24日(水曜日) 午後六時半(六時開場)
ところ    市ヶ谷「アルカディア市ヶ谷」四階会議室
http://www.arcadia-jp.org/access.htm
(JR、地下鉄市ヶ谷駅徒歩二分)

講師     桜林美佐さん 「ひとり語り『拉孟に散った花』」
       http://www.geocities.jp/misakura2666
会場分担金  おひとり2000円(会員&学生は1000円)
         ◇
 三島さん不在の日本を生きてきて、また、防衛問題に携わっての感想などからひとり語りに移ります。

<<< 桜林美佐さんのプロフィール >>> 昭和45(1970)年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作。その後、ジャーナリストに。著書に『奇跡の船「宗谷 ―昭和を走り続けた海の守り神』『海をひらく ―知られざる掃海部隊』(ともに並木書房)、『終わらないラブレター 祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』(PHP研究所)。現在、国防問題を中心に取材・執筆。 ニッポン放送『上柳昌彦のお早うGoodDay』「ザ・特集」にリポーターとして出演。

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
     平成22年(2010年)3月18日(木曜日)
          通巻2912号 

 世界銀行、IMFも人民元切り上げ要求の合唱団に加わる
  経済成長予測を9・5%に上方修正、懸念はインフレとバブル破裂
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 世銀は09年第四四半期にだした中国経済の成長率予測の8・7%から、今年度予測を9・5%へと上方修正した。

 世銀は同時に人民元切り上げが国際的要求である現実を鑑みて、人民元の事実上のドルペッグ制からの離脱を示唆した。

 世銀分析の焦点は金利上昇とインフレである。
 不動産バブルがもたらす経済的悪影響にも言及し、成長率は9・5%、GDPは世界第二位となって日本を抜き去ると明瞭に予測した。

 「09年は政府の財政出動と銀行の信用供与膨脹により、中国はリセッションを回避したが、輸出依存が高まり、中国だけが世界シェアを伸ばした。マクロ経済のリスクとは不動産バブルと地方政府の不良債権が露呈することである」(ヘラルド・トリビューン、3月18日付け)。

 「金利を上げて通貨供給量を引き締めるには為替レート政策が重大となるが、いまのようなドルベッグ制度を続ける限り、世界中からの批判は鳴りやまないだろう」と世銀報告は続ける。

こうして人民元は人工的に操作されているという非難は欧米に拡がっている。
ストラウス・カーンIMF理事もブラッセルのEU議会で「人民元はあまりにも過小に評価されている」と演説し、温家宝首相の人民元為替レート死守演説(3月14日全人代)を強く批判した。

米議会では「人民元の不当な為替操作は米国人から職を奪っている」とする不満を背景に議員たちは財務省の対中姿勢(中国をいまだ為替操作国とは認定していない)を批判するという具合である。
   ◎●◎
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◎宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/

(読者の声1) 貴誌2911号の米国とイスラエル問題ですが、両国のいまの境遇が「冷戦」と言う語彙は米国のメディアには見当たらないですね。
まだ定義ずけるには時期尚早なれど、イスラエルに対しては、「オバマよ、もっとタフになれ!」というWP記事(インド人記者グプタ)。「中国はビジネス相手だが、イスラエルは戦略上の同盟国で旧友だ」と定義しています。
となると、日本も同盟国であり旧友だわね?
合衆国という集合体は、システムに忠実なのです。民主主義はいいが、選挙システムに問題ある。だが、民主主義をやめるわけではないです。
当該記事でも、「どんなに外国政府に押されても、オバマはあと3年間大統領だ」とイスラエルや中国に警告している。その通りです。オバマの性格が弱いから、アメリカは弱い?というのは早とちりです。
(伊勢ルイジアナ)


(宮崎正弘のコメント)ワシントンポストはやっぱり理知的、ですね。ベトナム戦争の頃は随分とハト派だったけど、首都のクォリティペーパーとしては、朝日新聞のような寝言を言っているわけにはいかないのでしょう。世界のインテリが同時に読んでいるわけですから。
 オバマは優柔不断だけれど、国防政策は事実上ボブ・ゲーツが舵取りしている。外交はヒラリーに任せている、という構造が見えてきました。



  ♪
(読者の声2)先日の東京MXテレビを二週分、拝見しました。西部さんとの会話は日ごろのメルマガやご著書によって常に啓蒙されているため、失礼ながら目新しい内容ではありませんでした。
しかし動く映像の、宮崎先生の笑顔から発せられる表現は、内容の深刻さにも関わらず久々に明るく心底に響きました。この話術こそは豊富なバックデータに基づく先生の最高技だといつも感嘆します。
 さて下野後の自民党の体たらくは見るも無残ですが、再建機運は敗因を短期で見ている限り的外れもいいところです。再起は望めそうにありません。
議員を職業・稼業にしている政治家からは「維新」は起こせない、保守の定義すらまともでないし、国家観もないのではと思わざるを得ないのです。
民主党の正体は外来政党というか日本の政治ではないと感じ始めている人もいるのですが、思考停止に慣れ切った層がまだまだ圧倒的多数のようです。
   (HS生、豊橋)


(宮崎正弘のコメント)小鳩(この場合は由紀夫の弟の意味)はフライングでしたね。
だが、参院選挙前の胎動でしょう。これからダイナミックな流れがでる、と観ています。



  ♪
(読者の声3)先生の焦燥感がわかる。だってさ、日本人の話題は、子供手当て~外国人参政権(通るはずないのにねえ)~マグロ規制~鯨、、日本以外の国は、そんな贅沢な話ないよ~! ドンパチが起きているんだから。
日本人の「被害者意識」は病気ですね。横浜の京急百貨店のエレベーターがいっぱいだった。途中の階で降りるおばさん(60ぐらいの)が後ろで固まっていた。ドアが開くなり、「セニアです、セニアです」と一斉に叫び始めた。驚いた。ボ~と、ドアの前で立っている大人。さっと、降りてドアを開けたままに抑えるというボランテイアがいない。つまり、他人を助ける意思がない。国防意識?ないでしょう。
   (HO生、在米)


(宮崎正弘のコメント)数年ほど前、佐賀でバスジャックがあって十七歳だかのガキがナイフを振り回し、乗客の老婆をひとり殺した。今度の西部邁氏との対談本(『日米安保、五十年』(海龍社))のなかでも指摘したのですが、「あのバスには男客もいた、何をしていたのか」と。つまり身を守る術も他人の安全に協力するという基本さえ忘れているんです。日常生活でも危機と隣り合っていることが分からない。日本は国防どころじゃないんです。
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  樋泉克夫のコラム  樋泉克夫のコラム   樋泉克夫のコラム

 樋泉克夫のコラム
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  ――理想的で野心的な発展計画が成功していたら・・・
   『全面規画 加強領導』(上海人民出版社編 上海人民出版社 1974年)



この本では、文化大革命において農村の社会主義化が全国各地で如何に順調・確実に進展・深化したかが自画自賛気味に綴られている。
まあ、いまになって振り返ってみれば、その大部分が例の如くに超上げ底のデタラメだったことは、いうまでもないことですが。

さて特筆すべき成功例として上海県嘉定県安亭公社新!)大隊の例が挙げられている。同生産大隊が制定した「1974~1980年農業発展規画(修訂草案)」なる計画が、まことに意欲的で、野心的で、革新的で、革命的で、建設的で・・・慶賀に耐えない。ホントです。

冒頭に「遠大なる目標は、人の視点を目先の物事に捉われることなく一歩前に踏み出させる」との毛沢東の指摘を掲げた後、「我ら新!)大隊全体の幹部と社員(=農民)が人民公社における集団経済の基盤をより強固にし、迅速に農業生産を発展させ、社員の生活水準を確実に向上され、農村の社会主義陣地を強固にし、プロレタリア独裁の任務を社会の基層部分にまで定着させるため、この7ヵ年計画を定めた」とし、27項目の計画が詳細に綴ってある。
そこで、概要だけでも見ておきたい。

1:毛主席の革命路線の指導の下で人民公社の集団経済の優越性を十分に発揮する。
2:1980年段階の食糧、棉、油の生産を、それぞれ73年の2倍、2倍、3倍にする。
3:養豚を軸に鶏、家鴨、魚を生産し、椎茸や葡萄の栽培を進め経営の多角化を目指す。
4:住居、集落の四囲、道路脇、河川沿いを緑化する“四傍緑化”を実現する。
5:農地の構造改良を進め、洪水、日照りなどの自然災害に影響されない田畑を作る。

6:丘陵地や山地を崩し平坦に均し田畑を拡張する。
7:自然肥料を増産し土壌改良を進める。「機動船隊を建設し、上海市街区から雑肥を運搬する」とあるが、“機動船隊ガンダム”を組織して上海に向かおうというわけではない。エンジン付の小船で上海から「雑肥」、つまり残飯や人糞を集めようというだけのこと。
8:種苗田を作り、良質の種苗を開発し、大隊を種苗生産基地とする。
9:病害虫駆除を徹底する。
10:科学種田センターを組織し試験田で科学的農業技術開発を進める。

11:全面的な機械化を進め農民の過労を防止し生産速度を速める。
12:農道を補修し、一般道を改良し、農村道路網の経済的・有機的な運用を進める。
13:現に経営している鏡生産、農機具修理、農産品生産に加え農機具部品生産などを進め、大隊の集団経済を多角化する。
14:生産拡大を基礎に、社員の増収を目指す。

以下、食糧備蓄の拡大、スーパー・マーケット式商店開設、住宅の改築と建設、中学校教育普及と文盲解消、疫病防止と害虫駆除、医療充実、婦女・幼児教育の整備、余暇の充実(“1大隊にテレビ1台”)、計画出産、貧農下層中農による自主的なマルクス主義理論学習、生産大隊の民兵連隊化、幹部の労働参加と続き、「計画執行情況を毎年春節前後に予定されている社員大会で検討・精査し、経験を総括し、工作を改め再度挑戦する」で終わる。

この計画が大過なく達成されていたら、今頃はステキでハッピーな農村が出現していたはずなのに・・・そうならなかったワケは、天知る地知るも君知らず、デス。
《QED》

  編集後記 へんしゅうこうき 編集後記(宮崎正弘の日記)
  ▲
(某月某日) 何年ぶりかで映画館へ行って封切り映画を視た。その昔、アメリカに滞在のおり、ニューヨークで寿司を食べながら相手が「宮崎さん、スターウォーズ、いま上映してるから必ず見ると良いですよ」と推薦の弁。1978年頃だろうと記憶する。会話の相手は当時、国連にいた小尾敏夫氏(いまは早稲田大学大学院教授)。
 私はSFにほぼ興味がなく、聞き流して雪道をあるいてホテルへ帰った(タクシーが掴まらないため)。
翌々日だかに大雪のシカゴ。飛行場からバスで市内に入るのだが、吹雪いているのに町中に長蛇の列が出来ている。
 (何の騒ぎだろう?)
 それがスターウォーズの上映館だった。異様なことが起きているナ、これは日本に帰ったら見なければと心が急いた。途中のコロラド州デンバーだったと思うが、スケジュールが突然、半日ほど空いたので当該映画を見た。驚いた。これぞ未来の戦争、コンピュータが中枢の武器になる。
 インターネット革命が近いことを如実に知らされたのは映画『ネット』(サンドラ・ブロック主演)だった。97年だったと記憶する。拙著「インターネット革命」を上梓した直後だったので一層鮮烈だった。
 そうはいうものの映画は一年に一本も見ない。
例外が近未来技術革新の方向性を示す画期性を持つモノ、思考概念の変革を迫るような中味のモノはどんなに無理をしても見に行く。国際政治の舞台裏を描くインテリジェンスの映画も必ずと言って良いほど観ている。ソ連から亡命者のスリリングな映画はよく観た。ランボーという乱暴な映画を見たのもベトナム戦争、アフガニスタン戦争が背景にあり、戦争の犬たちという映画も傭兵の暗黒を活写していた。最近(ト言っても三年前)、ジョージ・クローニーが主演の中東のテロリストと欧米インテリジェンスと某産油国王家の改革派の確執をえがく映画を見た(題名は忘れた)。
 というわけで三年ぶりに映画館へ行った。
何を見たか?「ハートロッカー」である。イラク戦争の爆弾処理班、テロリスト、純粋なイスラム教徒、米国で待つ家族を淡々とイデオロギーを入れずに描いていて、なにかどえらい賞も貰ったらしい。題名には棺桶の意味もあるという。
 感想はと言えば、この作品は日本人には理解しにくい映画だろうなぁと思った。平和のぬるま湯に六十年以上も浸かっている民族には、平和がこれほど壊れやすく、また政治の本質が暴力であることを理解しにくいであろうから。
 ただし当該映画の軍人OBの評価は必ずしも芳しくないらしく『全米イラクアフガン帰還兵協会』のリークホフ会長は「間違いだらけ」と言い、「主役の軍曹が、少年を捜すために基地を抜け出すシーンは荒唐無稽」であり、「軍は訓練と任務に誇りを持つ。単独行動はしない」と強い反論をしている(『ニューズウィーク』日本版、10年3月24日号)。

 ▲
(某月某日) 夜七時、二番町のスタジオにはいると出演者全員が揃っていて定刻前十五分、わたしが一番乗りと思っていたらとんでもない間違いだった。「戦後の長い平和の昼寝から目覚めよ」という刺激的なタイトルのもと、西部邁、秋山祐徳太子、木村三浩の三氏とMXテレビの討論会。三十分 x 二回分を一度に録画するため、間に休憩。楽屋でネクタイを替える。ビールが出る。
 この番組、小生の出演は何回目だろうとディレクター氏に尋ねる。四回目だそうです。いつも愉しいのは西部さんの言葉に対する真剣勝負の姿勢、原義的解釈を重んじられるので知的好奇心に刺激を注がれる。
 控え室での会話。西部さんは70年代に「まだ中央アジアのパリ」と呼ばれていた頃のカブールに滞在したことがおありという。小生は、「カイバル峠まで行って半歩だけアフガニスタンに足を突っ込んだだけです」と。木村三浩氏は、これまたイラクへ二十二回も渡航歴がある。「いやいや、小生も88年にサダム・フセインから招待されてバグダッドに一週間、バスラからファオ半島の戦闘現場にも連れて行かれた」と、そういう会話をしているうちに二回目の収録開始。
 収録を終えると雨、タクシーに分乗し新宿のスナックへ。なにかお目出度いことがあるらしく来週、ここでパァーッとやろう、と西部氏。どうやら某某賞をいただけることになったので、その賞金で三十人ほどで呑もうという魂胆。「宵越しの銭は持たない」という主義は似ている。ワインを空けて焼酎に移る頃、となりのカウンターにこれまた賞男の若松孝二監督が入ってきて小さな店が満員となる。早めに失礼した。

  ▲
(某月某日)「正論大賞」の受賞祝賀パーティ。というより恒例の産経新聞主催、保守論壇新年会の趣きが濃厚な宴である。
出席者に知り合いが多いので改めて個々に会いに行く時間も節約できるとばかり社交に使っている人も多い。受付クロークに並ぶと、前にも後ろにも知り合い、とくに小堀桂一郎氏とは三年連続してクロークで会うのも不思議。そこへ井尻千男氏がやってきて立ち話をしているとドイツから駆けつけたマン川口惠美さん。大雪のドイツから粉雪舞う東京へ。だから「雪女」?
 ところで今年二十五回目の受賞は佐瀬昌盛氏、新風賞は遠藤浩一氏。
歴代受賞者も半分以上が出席するので賑やか。ちなみに歴代受賞を記憶している限りで列挙すると初回は渡部昇一氏、それから堺屋太一、竹村建一、石原慎太郎、江藤淳、田久保忠衛、西尾幹二、西岡信勝らが続いた。屋山太郎、曾野綾子、岡崎久彦、小堀桂一郎、中嶋嶺雄、佐々淳行の各氏も受賞している。ともかく延々と多くの人と会場で話しこむから酒量は進んでも食事を摂る暇もなく、中仕切りが終わって高山正之、石平、川口恵美さんと別館のバアへ移って軽食がてら飲み直した。
帰路も小雪降り止まず。

 ▲
(某月某日) 講演で金沢を日帰り往復の強行軍をする日。
雪のシーズンなので飛行機を避けて往復を列車にしたのは賢明だった。文字通り「トンネルをぬけると雪国」となる越後湯沢で乗り換え。飛行機は便利なようで羽田空港まで行く時間と待ち時間、飛行時間。小松から金沢へのバス時間を考えると列車とさぼど変わらない。新幹線で越後湯沢まで行って、「ほくほく線」、上越から北陸線となる特急で合計四時間ほど(私が高校生のころは夜行列車十一時間だったが。。。)。
 会場のホテルへ着くと事務局の人がにこにこ笑いながら「宮崎さん、下からこられて良かった。今日は霧で小松空港が閉鎖されています」。
霧の広島空港は有名だが、数年前も広島に前夜入っていたので間に合ったり、いつぞや長崎、佐世保講演旅行では台風接近のため急遽前夜に現地入りしたことを思いだした。そういえば交通機関の事由による講演会ドタキャンの経験を我が人生ではまだ一度もしていない。
 金沢経済同友会での演題は中国。二時間熱演して喉がかれる。翌日の北国新聞に載せるというので記者とカメラマンが来ていた。
 講演が終わり、ロビィで待機してくれた弟の車で母の入院する病院を見舞い、駅へ戻って遅い遅い昼食(トいうより早めの晩飯)をとり、特急に飛び乗る。朝七時すぎ東京駅発、夜十時前、上野駅着。汽車の中でと文庫本二冊を持参したが一ページも開かず、殆ど寝ていた。隣の客が驚いていた。
 ◎

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