軌道物体―衛星と宇宙ゴミ 「最終的には地球に戻ってくる」 | 日本のお姉さん

軌道物体―衛星と宇宙ゴミ 「最終的には地球に戻ってくる」

軌道物体―衛星と宇宙ゴミ
軌道物体について

 地球の空は、大小の人工的な天体で満ちあふれている。アメリカの宇宙監視ネットワークでは、大きさが10センチを超えるその種の物体を1万3000個以上もレーダーで追跡している。このような天空の散乱物には、国際宇宙ステーション(ISS)やハッブル宇宙望遠鏡を始めとする稼働中の構造物から、寿命が尽きた人工衛星、ロケットの使用済みステージ、さらには宇宙飛行士がとり落としたナットやボルトに至るまでさまざまなものがある。また、塗料の細片やプラスチックの破片など、さらに小さく追跡が困難な物体も無数にある。

人工衛星

 この半世紀、人類はさまざまな機能を果たす衛星を、地球を回る軌道に乗せてきた。1957年10月、ソ連はその開発能力を証明するためにスプートニク1号を打ち上げ、その4カ月後にアメリカはエクスプローラー1号で対抗している。

 それ以来、約2500個もの人工衛星が空高く打ち上げられている。例えば、ハッブル宇宙望遠鏡とISS、ロシアの宇宙ステーションミール、27個の衛星から成るグローバルポジショニングシステム(GPS)のほか、通信、テレビとラジオの放送、天気予報といったさまざまな目的を持った人工衛星が多数存在する。

 これらの人工の天体は、近地点で240キロ、遠地点で3万6200キロの範囲の軌道で地球を公転している。地球低軌道(LEO)の人工衛星は地表からの高度800キロ以内にあって、地球の大気に引き戻されないように極めて高速で移動しており、その速度は時速2万7000キロ以上になる。地球を回るほとんどの人工衛星はLEOの範囲にある。

 ほかの衛星は地球からはるか遠くへ運ばれ、静止軌道と呼ばれる領域に配置される。この軌道に乗ると人工衛星の公転は地球の自転と同期して、常に同じ地点の上で「空中静止」することができる。通常、気象衛星と放送衛星はこのカテゴリーに属している。

宇宙のゴミ

 軌道デブリとは、機能していない人工の宇宙ゴミを表す専門用語で、丸ごと放棄された人工衛星だけでなく、破損した人工衛星の欠片、分離したロケットのステージ、人の固形排泄物、その他のさまざまなもの(1965年の歴史的な宇宙遊泳で宇宙飛行士エドワード・ホワイトがなくした手袋など)が含まれる。知られている中で最古の軌道デブリは、1958年の観測衛星ヴァンガード1号で、この衛星は1964年にすべての機能を停止したがいまだに軌道上にある。最も新しいものの1つには、冷蔵庫サイズのアンモニアタンクがある。2007年7月、宇宙ステーションからそれ以外に捨てられるものはないというNASAの決定に従ってその軌道上に放り出されたのである。

 人工衛星と同じように、低軌道デブリは時速2万7000キロ以上で地球の周りを高速移動している。しかしながら、この種の天体の軌道は、方向、軌道面、そして速度の面で千差万別だ。つまり、いずれ衝突は避けられないということだ。そのような超高速度であれば、微細なゴミであっても、人工衛星や宇宙探査機、宇宙遊泳中の宇宙飛行士に深刻な被害をもたらすことになる。

 私たちが軌道に乗せたものはすべて重力によって引き寄せられるため、最終的には地球に戻ってくることになる。いままでのところ地球に戻ってきたスペースデブリが原因で死んだ人はいないが、NASAの推定では平均して1日に1個のデブリが地球に帰ってくるという。

 NASAなどの宇宙に関する国家機関は軌道デブリを深刻な問題と捉えており、既存の宇宙ゴミを減らし、将来のデブリを抑制するためのプランを考えているところだ。

http://www.nationalgeographic.co.jp/science/space/solar-system/orbital.html