オゾン層保護は地球温暖化を加速する?北米の寒冷化は地球温暖化と矛盾しない
オゾン層保護は地球温暖化を加速する?
ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト1月28日(木) 15時37分配信 / 海外 - 海外総合
地球上のほとんどの地域が温暖化するなかで、南半球の一部では一向に温暖化する気配がない。不思議なことに、オゾン層に穴が開いていることが原因だ。オゾンホールをふさぐための対策すべてが、実は南半球の全域で温暖化を加速させる可能性があるとする研究が発表された。夏の間、オゾンホールが遠因となって通常より明るい色の雲が形成され、これが太陽光を通常より多く遮断し、数十年間に渡って地球温暖化に対する防護壁となっているという。
この研究の責任者でイギリスのリーズ大学に所属するケン・カーズロー氏は、「オゾン層が修復され雲が消えていくにつれて、(南半球の一部では)予測モデルで算出されている温暖化のスピードより速く気温が上昇するだろう」と話す。
1985年、南極上空の上層大気のオゾン層に巨大な穴が開いていることを英南極調査所が発見した。上層大気のオゾンは太陽からの有害な紫外線を吸収する働きを持つ。
その後、オゾン層破壊の大きな原因となる化学物質であるクロロフルオロカーボン(CFC)を全廃することで世界的な合意が得られ、これによってオゾンホールの拡大は抑制された。これは20世紀における環境保護対策の最大の成功例の1つとされている。
しかしオゾン層修復の速度は遅い。1980年代の初め以降、オゾン層の破壊で上層大気が変化したために南極周辺の周極風が強まっている。
コンピューターモデルと20年分の気象データから、カーズロー氏の研究チームはこの風が気温低下に繋がっていることを突き止めた。風が強まって海上の波が高くなると、大気中に巻き上げられる塩の粒子が増えて通常よりも明るい色の雲の形成を促進し、その雲が太陽光を宇宙に跳ね返して気温を低下させる効果を生むという。
1980年代以降のオゾンホールによる夏の気温低下は、二酸化炭素排出量の増加による温暖化をほぼ相殺していたとカーズロー氏は言う。
この研究は2010年1月27日公開のオンラインジャーナル「Geophysical Research Letters」誌に掲載されている。
By Kate Ravilious for National Geographic News
ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト1月28日(木) 15時37分配信 / 海外 - 海外総合
地球上のほとんどの地域が温暖化するなかで、南半球の一部では一向に温暖化する気配がない。不思議なことに、オゾン層に穴が開いていることが原因だ。オゾンホールをふさぐための対策すべてが、実は南半球の全域で温暖化を加速させる可能性があるとする研究が発表された。夏の間、オゾンホールが遠因となって通常より明るい色の雲が形成され、これが太陽光を通常より多く遮断し、数十年間に渡って地球温暖化に対する防護壁となっているという。
この研究の責任者でイギリスのリーズ大学に所属するケン・カーズロー氏は、「オゾン層が修復され雲が消えていくにつれて、(南半球の一部では)予測モデルで算出されている温暖化のスピードより速く気温が上昇するだろう」と話す。
1985年、南極上空の上層大気のオゾン層に巨大な穴が開いていることを英南極調査所が発見した。上層大気のオゾンは太陽からの有害な紫外線を吸収する働きを持つ。
その後、オゾン層破壊の大きな原因となる化学物質であるクロロフルオロカーボン(CFC)を全廃することで世界的な合意が得られ、これによってオゾンホールの拡大は抑制された。これは20世紀における環境保護対策の最大の成功例の1つとされている。
しかしオゾン層修復の速度は遅い。1980年代の初め以降、オゾン層の破壊で上層大気が変化したために南極周辺の周極風が強まっている。
コンピューターモデルと20年分の気象データから、カーズロー氏の研究チームはこの風が気温低下に繋がっていることを突き止めた。風が強まって海上の波が高くなると、大気中に巻き上げられる塩の粒子が増えて通常よりも明るい色の雲の形成を促進し、その雲が太陽光を宇宙に跳ね返して気温を低下させる効果を生むという。
1980年代以降のオゾンホールによる夏の気温低下は、二酸化炭素排出量の増加による温暖化をほぼ相殺していたとカーズロー氏は言う。
この研究は2010年1月27日公開のオンラインジャーナル「Geophysical Research Letters」誌に掲載されている。
By Kate Ravilious for National Geographic News
北米の寒冷化は地球温暖化と矛盾しない
ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト1月 6日(水) 15時40分配信 / 海外 - 海外総合
2008年、北アメリカ全域で平均気温が低下した。地球温暖化が進んでいるという議論と矛盾するようだが、そうではない。最新の研究によると、この寒冷化現象は地球の大気循環のパターンが自然に変化したことによるもので、地球温暖化の影響を一時的に覆い隠しているが、温暖化はむしろ進行しているという。
北アメリカ大陸の全域で見られた気温の低下は、ラニーニャ現象によって太平洋の水温が例年より長期に渡って低下したためであることが、コンピューターシミュレーションに基づく今回の研究で示された。
ラニーニャが起きると熱帯太平洋東部の海面温度が下がる。平年より摂氏4度も下がることもある。
ラニーニャは数年ごとに発生し、約1年続くのが普通である。しかし、研究の責任者である米国海洋大気庁(NOAA)のジュディス・パールウィッツ氏によると、2007年に始まったラニーニャ現象はおよそ2年間続いたという。これがジェット気流のパターンと、北アメリカ一帯のいわゆる低気圧経路に影響を与えた。「熱帯太平洋の海面温度が低下すると、冷たい空気が北アメリカに入り込むような大気循環のパターンが生じる」。
NOAAの気象学者で今回の研究に参加していないデイビッド・イースターリング氏は、2008年の北アメリカの気温は平均を下回ったが、地球全体ではむしろ記録的な高温だったと指摘する。「自分が住む地域のことだけ気にして、地球全体の気候を考えない人は多い」。
研究チームは2008年の海面温度の観測データを用いて、同年の海面温度の変化が北アメリカの年間地表気温に与えた影響をコンピューターを使ってモデル化した。
このモデルでシミュレーションを行ったところ、モデルによる地表気温の理論値が実測値とほぼ一致した。例えば、実際の観測データとコンピューターモデルのどちらを使った気温分布図でも、北アメリカ北西部の気温が過去と比べて低いことが示された。
研究チームは、火山の噴火や太陽活動など、気温低下の原因となりうる別の要因も検証した。しかし観測された気温の低下を説明できるような火山の噴火は起きていなかった。また、2008年は太陽活動が11年ぶりの低い水準に縮小したが、その影響は小さく、気温の低下を引き起こすほどではなかったと研究チームは結論づけた。
イギリス気象庁ハドレー・センターで気候変動の監視と原因究明を担当する部署の責任者を務めるピーター・ストット氏は、今回の研究は2008年の北アメリカ寒冷化の説明として説得力があると評価する。「2008年に観測された海面温度のパターンが、アメリカのここ数年で最大の寒冷化にどう繋がったのかを、この研究は極めて明確に示している」。なおストット氏は今回の研究には参加していない。
また同氏は、地球温暖化が進行しているからといって気温が毎年上がるわけではないと付け加える。
例えば、地球温暖化の気温のパターンは、細工したサイコロを使った博打によくなぞらえられる。サイコロを振るたびに毎回6のゾロ目が出るわけではないが、サイコロに不正が無い場合よりも6が出る回数は増える。つまり人間は温室効果ガスを大気中に放出することで“気候のサイコロ”に細工をしたことになるという。
ラニーニャなどの自然現象があれば、地球温暖化が進行していても平年より気温が下がることは必ずある。しかし地球の平均気温が上昇するにつれて「平年」の基準となる気温も徐々に上がっていくとストット氏は警告する。
アメリカの国立大気研究センター(NCAR)の大気科学者ケビン・トレンバース氏も今回の研究には参加していないが、ストット氏の意見に賛同する。「気温の平均水準が変化しても人間はそれに順応するし、これからも年によって気温は変動するだろう。地球温暖化だからといって、毎年すべての場所で容赦なく気温が上昇するわけではないのだ」。
この研究は2009年12月8日発行の「Geophysical Research Letters」誌に掲載された。
Ker Than for National Geographic News
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100106-00000000-natiogeo-int
北アメリカ大陸の全域で見られた気温の低下は、ラニーニャ現象によって太平洋の水温が例年より長期に渡って低下したためであることが、コンピューターシミュレーションに基づく今回の研究で示された。
ラニーニャが起きると熱帯太平洋東部の海面温度が下がる。平年より摂氏4度も下がることもある。
ラニーニャは数年ごとに発生し、約1年続くのが普通である。しかし、研究の責任者である米国海洋大気庁(NOAA)のジュディス・パールウィッツ氏によると、2007年に始まったラニーニャ現象はおよそ2年間続いたという。これがジェット気流のパターンと、北アメリカ一帯のいわゆる低気圧経路に影響を与えた。「熱帯太平洋の海面温度が低下すると、冷たい空気が北アメリカに入り込むような大気循環のパターンが生じる」。
NOAAの気象学者で今回の研究に参加していないデイビッド・イースターリング氏は、2008年の北アメリカの気温は平均を下回ったが、地球全体ではむしろ記録的な高温だったと指摘する。「自分が住む地域のことだけ気にして、地球全体の気候を考えない人は多い」。
研究チームは2008年の海面温度の観測データを用いて、同年の海面温度の変化が北アメリカの年間地表気温に与えた影響をコンピューターを使ってモデル化した。
このモデルでシミュレーションを行ったところ、モデルによる地表気温の理論値が実測値とほぼ一致した。例えば、実際の観測データとコンピューターモデルのどちらを使った気温分布図でも、北アメリカ北西部の気温が過去と比べて低いことが示された。
研究チームは、火山の噴火や太陽活動など、気温低下の原因となりうる別の要因も検証した。しかし観測された気温の低下を説明できるような火山の噴火は起きていなかった。また、2008年は太陽活動が11年ぶりの低い水準に縮小したが、その影響は小さく、気温の低下を引き起こすほどではなかったと研究チームは結論づけた。
イギリス気象庁ハドレー・センターで気候変動の監視と原因究明を担当する部署の責任者を務めるピーター・ストット氏は、今回の研究は2008年の北アメリカ寒冷化の説明として説得力があると評価する。「2008年に観測された海面温度のパターンが、アメリカのここ数年で最大の寒冷化にどう繋がったのかを、この研究は極めて明確に示している」。なおストット氏は今回の研究には参加していない。
また同氏は、地球温暖化が進行しているからといって気温が毎年上がるわけではないと付け加える。
例えば、地球温暖化の気温のパターンは、細工したサイコロを使った博打によくなぞらえられる。サイコロを振るたびに毎回6のゾロ目が出るわけではないが、サイコロに不正が無い場合よりも6が出る回数は増える。つまり人間は温室効果ガスを大気中に放出することで“気候のサイコロ”に細工をしたことになるという。
ラニーニャなどの自然現象があれば、地球温暖化が進行していても平年より気温が下がることは必ずある。しかし地球の平均気温が上昇するにつれて「平年」の基準となる気温も徐々に上がっていくとストット氏は警告する。
アメリカの国立大気研究センター(NCAR)の大気科学者ケビン・トレンバース氏も今回の研究には参加していないが、ストット氏の意見に賛同する。「気温の平均水準が変化しても人間はそれに順応するし、これからも年によって気温は変動するだろう。地球温暖化だからといって、毎年すべての場所で容赦なく気温が上昇するわけではないのだ」。
この研究は2009年12月8日発行の「Geophysical Research Letters」誌に掲載された。
Ker Than for National Geographic News
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100106-00000000-natiogeo-int