◎世界の新聞「101紙」の視点 | 日本のお姉さん

◎世界の新聞「101紙」の視点

独断と偏見はご容赦!
【最近の社説の、ここに注目】

米中首脳会談について書かれた社説を見てみる。

朝日。
『両首脳は二国間の問題にとどまらず、経済や安全保障、核、気候変動など世界的な幅広い問題での協調を誓いあった。』

『オバマ氏は今回のアジア歴訪で最長の日程を中国訪問にあて、中国側は胡氏ら指導者総出でそれに応えた。「米中G2」とも呼ばれるようになった時代を象徴するできごとだ。』

『米中の経済が切っても切れない関係に深まり、両国の協調なしに21世紀の世界的な問題は解決できないことを、両首脳が確認し合ったともいえる。』

『たとえば気候変動問題。オバマ氏の言う「世界最大のエネルギー消費者、生産者として」米中は、来月の気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)で、具体的な効果のある合意を目指すことで一致した。』

『世界的な経済不況から立ち直る動きが確かでないなか、あらゆる形の保護主義に反対することで一致したが、タイヤや鋼管など米中間でくすぶる貿易摩擦では進展はなかったようだ。』

『両国の協調はまだ、できることから始めている手探りの段階だ。』

『北朝鮮やイランの核問題については協力を強めることで一致したものの、中国からの具体的な提案はなかったようだ。エネルギー確保のためイランに圧力をかけにくいなど、中国側の事情がみてとれる。』

『オバマ政権は発足以来、中国に対して、チベットやウイグルの民族問題や人権、自由といった面で強く働きかけることをせず、内外からの批判も浴びていた。』

『それを意識したのだろう。オバマ氏は胡氏との共同記者発表でチベット問題に言及し、ダライ・ラマ14世側との対話再開を求めた。だが、共同声明には記されなかった。』

『会談で米国は、強大で繁栄し世界的にさらに大きな役割を果たす中国を歓迎すると表明した。中国は米国を地域の平和と安定、繁栄のために努力するアジア太平洋国家として歓迎すると応じた。』

『しかし、オバマ氏が今回の歴訪で強調する「米国のアジア回帰」には、この地域で影響力と存在感を増す中国への牽制(けんせい)の意図も当然含まれる。』

『米中の協力の深化は一本調子に進むものではなく、「G2」が唱えられることに日本の埋没感を覚える必要はない。』

『北朝鮮問題の解決は米中がかぎを握る。一方で経済や地球環境など、日本なしに米中が突破できない課題は非常に多い。そうした重層的な役割分担を構想する時代になった。』


産経。
『米国がアジアを重視し、巨大パワーに成長した中国との協力関係を促進すること自体は自然の成り行きである。ただし、「G2」と呼ばれるまでになった両国が実利追求に走り、地域や世界の安寧を損なう恐れがないとはいえない。

『というのも米中会談が中国ペースで進み、世界が懸念する問題で米側は踏み込むのを控えた気配が濃厚だからだ。』


『注目された環境問題でも、二酸化炭素排出量が世界のトップ2を占める両国は、削減目標を打ち出さなかった。』

『中国は自国を含む途上国の経済発展を阻害すべきではない、と目標値設定に反対してきており、米側はそれを容認する結果になったとみられる。』

『われわれが懸念するのは、軍備増強を続ける中国に対し、オバマ大統領が自制も軍事費の透明化も求めなかったことだ。』

『オバマ訪中に先立ち、米国は「戦略的保証」という、中国に責任分担させる新戦略を打ち出した。』

『アフガニスタンやパキスタン問題から海賊対策まで、中国の役割への期待が背景にあるが、中国側は中国の軍備増強や海洋進出の容認と受け止めよう。』

『その結果、中国との領土、領海紛争を抱えるインドや東南アジアの軍拡競争に拍車をかける危険性が高まる。』

『これは日本にとって重大な問題だ。米国は日米安保体制をアジア戦略の基軸にしてきたが、世界規模の問題に対処するため、中国との提携に重心を移したともいえるからだ。』

『日本としては、日米同盟を堅固にし、「米中G2」の独走に歯止めをかけるべきだ。迷走しているひまはない。』


東京。
『日本の存在感が薄れると心配するより、新たな環境で発展のチャンスを探るべきだ。』

『訪中前に東京で「強く繁栄した中国の台頭は国際社会の強さの源になりうる」と述べた大統領の言葉通り、地球レベルの問題に両国が手を携え挑むことになった。』

『二十一年連続して国防費を二けたで伸ばし急速に国力を強める中国が米国と関係を深めることに周辺国は関心を持たざるを得ない。』

『ましてや普天間飛行場移転問題などで米国との同盟関係が、ぎくしゃくしている日本では日本が忘れられると心配する声も出よう。』

『しかし、日本をはさむ二大国(G2)が対立し、米国が中国の封じ込めを図ったらどうか。』

『日本と中国の交流ばかりか、米国との往来も制限され、日本のビジネスに大きな影響が出るに違いない。両国の協調は対立より日本に、より多くの機会をもたらす。』

『地球温暖化問題でも京都議定書策定には、人ごとのような態度を取っていた温暖化ガスの二大排出国が排出削減の合意達成に努力するようになったことは心強い。』

『日本は大胆な削減目標を打ち出し、環境・省エネ技術では世界的にも定評がある。米中両国に協力することは温暖化防止に役立ち、新たな商機も生む。』

『大統領が会談で人権や自由の問題を提起したように、米中の間には根本的な価値観の違いが横たわる。中国で人権抑圧や宗教迫害が表面化すれば両国関係は、ただちに動揺するもろい一面がある。』

『米国と価値観を共有しながら、中国と同じ東洋の国として深いつながりを持つ日本は今後も、米中の間で日本にしか果たせない独自の役割を発揮できるはずだ。』


日経。
『両国は(中略)地球温暖化対策での協力も約束した。』

『中国はグローバル経済での影響力を高め、米中二大国つまり「G2」とまで呼ばれるようになった。世界金融危機の根っこにある経常収支の不均衡は、米中間で際立っている。』

『不均衡問題に関連して大統領は、米ドルに事実上固定されている人民元の切り上げを促す意向を事前に示していた。』

『会談後の記者会見では、中国政府が「市場指向の為替制度の改革を進める意思を示した」と述べるにとどまった。最大の米国債保有者である中国への配慮ともいえる。』

『中国の硬直的な為替政策が、世界経済の不安要因になっているのは否定できない。通貨高圧力に直面する他のアジア諸国は大迷惑だ。』

『中国は為替政策を柔軟にすると同時に、内需主導の成長を促す国内改革を急いでほしい。』

『首脳会談の具体的な成果として両首脳が強調したのは、「クリーンエネルギー研究センター」の設立である。』

『米国は消費主導の成長が難しくなった経済の立て直しの切り札として、環境分野に期待する。その有望な市場である中国に足場を築くことを狙った。』

『残念なのは、米中ともに(中略)地球温暖化ガスの削減目標を具体的に打ち出していないことだ。共同声明で格調高く温暖化対策での協力をうたいあげてはいるが、世界の二大排出国として責任を果たしているとは言い難い。』

『人権や台湾問題では中国の立場への配慮が目立った。』

『米中首脳は2国間関係にとどまらず、世界を語り合った。普天間基地の移設問題に足をとられた鳩山由紀夫首相との会談に比べ、米中は国際問題での意見交換が際立っていた。』


毎日。
『「台頭する中国」に対して、「唯一の超大国」である米国が、従来の米中関係を転換しようとするのが今回の会談のねらいだ。』

『米国は、ブッシュ前大統領時代にアジアを軽視し、中東外交に没頭した。その間に中国は劇的な経済成長をとげた。』

『「初の太平洋大統領」を自任するオバマ大統領は、歴訪の最初の訪問地東京で演説し、「中国を封じ込めない」と封じ込め放棄を保証した。中国には「責任ある役割」を果たすよう求めた。』

『これがオバマ政権の新中国政策である。「戦略的保証(ストラテジック・リアシュアランス)」政策と呼ばれる。』

『オバマ政権が、中国重視の方向に踏み込んだことは明白である。だが、これが、アジアにおいて米中のみの協調体制を構築しようとするのであれば、アジア版G2構想ではないか。アジアに安定をもたらさない。』

『インドなどでは、すでに中国脅威論が高まっている。胡主席が最近、(中略)インド洋への関心を示したこともあって、今後も尾を引くだろう。』

『米国内の保守派からも、「中国が勢力拡大の野望を放棄するはずはない」という懐疑論が出ている。』

『オバマ大統領は首脳会談で胡主席に地球温暖化問題で中国の貢献を求めたり、チベット問題の解決を促したりした。本意は率直な協調関係を築くためだろう。』

『しかし、中国はまだオバマ政権を信頼しているとは言い難い。米国がミャンマー軍事政権との対話に転換したことなど、中国へのけん制と警戒している。』

『米国の外交がアジアに関心を向けることは歓迎すべきだ。中国の影響力が強まることも自然の成り行きである。』

『だが、それが覇権争いになったり、米中2国だけの協調関係で終わるのでは、地域の安定はかえって損なわれる恐れがあるだろう。米の責任は重い。』

『鳩山由紀夫首相は「東アジア共同体」外交をかかげている。あいまいである半面、地域全体に開かれた寛容さが特徴だ。アジアの安定を維持するために、日本も発言力を強めていくべきだ。』

読売。
『すべての問題で合意したわけではないが、両国が互いに協調し、今後も課題解決に向けて、首脳間で話し合っていくことを確認した点に意義があったのだろう。』

『オバマ政権の下で、両国は体制の違いを直視しつつも、実利を優先させる
新たな時代に入ったとも言える。実利優先はいいが、米国は自由・民主・人権
といった原則の尊重を中国に引き続き求めていくべきだ。』

『来月開かれる気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)への対応では、会議の成功に向けて努力することで一致したが、具体策の合意はなかった。』

『人民元の切り上げ問題では、米国は、貿易不均衡の是正に向け、人民元の上昇を望んできた。しかし、中国当局は為替介入を実施し、昨夏ごろから相場はほとんど動いていない。』

『会談の内容は明らかでないが、人民元を徐々に変動させていくという中国の従来の方針を、大統領が容認したとみられる。』

『中国は米国債の最大の保有国だ。結局、早急な人民元高を避けたい中国の意向が通った形だ。中国マネーに頼る米国の弱みを浮き彫りにした合意と言えよう。』

『共同会見で、大統領は少数民族の人権や宗教の自由尊重などが「普遍的な権利である」と強調した。』

『台湾問題では、最近の中台協議の進展を称賛し、米国は「一つの中国」の原則を認めると同時に、米国内法である「台湾関係法」に基づいて台湾問題を処理していく方針を再確認した。』

『米国として譲れない原則を表明したのは当然のことだろう。』

『大統領の訪中に先立ち、中国当局は、人権改善を求める民主活動家や、民間活動団体(NGO)の関係者を一時的に地方に強制連行したり、身柄を拘束したりした。オバマ大統領への直訴を恐れたものだ。極めて遺憾である。』


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予想通り、右系紙はネガティブに、左系紙はポジティブに捉えているようだ。

特に、環境対策について。

「気候変動枠組み条約第15回締約国会議」や「排出削減の合意達成」などに触れる新聞が多い中、産経紙には、

『注目された環境問題でも、二酸化炭素排出量が世界のトップ2を占める両国は、削減目標を打ち出さなかった』

『中国は自国を含む途上国の経済発展を阻害すべきではない、と目標値設定に反対してきており、米側はそれを容認する結果になったとみられる』

とだけしか書かれていない。

このあたり、かなり印象が変わってくる。


先日紹介したとおり、産経紙は日米関係を「友人」にたとえている。

それについて私は、
「“中国”という、最近急に魅力的になってきた女に興味を示し出した亭主関白のダンナに、棄てられまいとして健気に尽くす古女房」という印象を受けると書いた。

以下の、産経紙社説の一節。

『米国は日米安保体制をアジア戦略の基軸にしてきたが、世界規模の問題に対処するため、中国との提携に重心を移したともいえる』

『日本としては、日米同盟を堅固にし、「米中G2」の独走に歯止めをかけるべきだ。迷走しているひまはない』

このあたりを読むと、やはり私の見立てのほうが合っているような気がしてしまう。
(桐鳳)

【編集後記】

先日、「市橋容疑者の口元が私に似ていて驚いた」と、書きました。

しかし、よく検証してみたところ、正確には「10年ほど前の私の口元」と言うべきだと気付きました。

悲しいことに、今の私の顔にはクッキリと、「ほうれい線」が現れておりました。
(桐鳳)

最後までご覧いただき、ありがとうございます。
あなたに素敵なことがいっぱいありますよう…。

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