日本の援助50億ドルは真面目に使われるか?
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成21年(2009年)11月18日(水曜日)参
通巻2777号 <臨時増刊号>
カルザイ(アフガニスタン大統領)明日、再選就任式
欧米があきれる腐敗分子たちの政権。日本の援助50億ドルは真面目に使われるか?
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カルザイ大統領は一回目で過半数に1%弱不足し、11月7日に決選投票を予定したのも欧米の不正選挙疑惑への強い抗議とやり直し選挙要求だった。しかし対立候補のアブドラが土壇場で再選挙不出馬を表明したため、自動的に再選された。
欧米の強い抗議が集中したポイントは、カルザイとチケットを組んだ副大統領の入れ替えだった。
しかしカルザイは聞く耳を持たなかった。
カルザイ政権貳期目の第一副大統領はファヒム。
タジク人。北部同盟のボス、麻薬取引の黒幕。対ソ連戦争時代はCIAに協力し、武器を横取りして貯蔵し、93年のハザラ人800名虐殺事件でも影の主役と言われる。
第二副大統領はカリム。
ハザラ人。人権抑圧の張本人、敵対部族の誘拐、レープ、虐殺の凶暴さで知られる。
カルザイがなぜ、この二人を副大統領とするかは簡単な理由である。
カルザイはパシュトン出身だが、カブールの政権は連立政権。タリバン壊滅のためにCIA、米軍の支援をうけて闘ったのは主として「北部同盟」(タジク人が主体)、各地でゲリラ戦争に協力したのが、ハザラ人とウズベク人。つまりアフガニスタン政権は「部族連立」の性格が濃厚な上、軍と秘密警察はタジク人が主である。
ファヒムとカリムは、カルザイ再選のために地域のボスを統治し、カルザイへの投票をし向けた。カルザイにとっても恩人である。
いってみれば外国援助独占の利権共有のための連立政権といえるだろう。
▲アフガニスタンが「民主化へ向かっている」という寝言は聞き飽きた
さらにウズベク人のドスタム将軍ともカルザイは連立を模索し、ドスタムはトルコへ亡命したが、呼び返して要職に就ける用意をしている。
ドスタムはアフガニスタンとウズベキスタンの国境マザリシャリフ地区をおさめる、いわば山賊の首魁のような存在。
かくてアフガニスタンが、西側の期待と援助とで、オバマ政権がいうような「民主化」のプロセスに有るとは信じがたいことであり、「ますます腐敗は深まるだろう」(アルジャジーラ、11月18日付け)。
現在、アフガニスタン警官8万人の給料の半分を日本が寄付している。
ところが警官が八万人も本当にという証拠はなく、警察を束ねるトップがおおよそのカネを独占していることは火を見るよりも明らかであり、部族社会のアフガニスタンでは、当然のことでもある。
こんな国に日本はインド洋上の給油活動をにげるためにあらたに50億ドルを援助すると鳩山首相はオバマに約束した。
欧米があきれる腐敗分子たちの政権。日本の援助50億ドルは真面目に使われるはずがあろうか。
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●◎ブックレビュー
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玉村豊男『丘永漢の“予見力”』(集英社新書)
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玉村豊男氏といえば食通のエッセイストとして知られ、ご自分でもワイナリーを持っておられる。
味にうるさくご自分でも台所にたつ人、というイメージがある。
一方の丘さんは株式投資の神様、お金の神様として知られるが、嘗ては台湾独立運動の闘士だった。逮捕寸前、香港へ逃げて、ペニシリンの小包貿易をやりながら小金をためて、日本へ事実上亡命し、作家へ。事実上のデビュー作は『香港』と『濁水渓』。これらの小説はいまもみずみずしい感動を誘う名作だが、『女のいくさ』を最後に、もう小説を書かれなくなって二十年以上?
だから玉村氏と丘さんとの結びつきがよく分からない。どういう接点があるのだろうと訝しい気持ちを抑えながら本書を読み進むと、すべて氷解した。
お二人とも食いしん坊。
昔、じつは小生も渋谷のQビルに一年ほど住んでいた(計算すると32年前のこと)ので、毎朝『大家』さんでもあった丘さんと顔を合わせ、昼もときおり近くのQさん経営のホテルの食堂で食事を隣り合ったり、御自宅に呼ばれて台湾から連れてきたコックのつくる、凄まじく旨い食事をご馳走にもなった。
御礼に九段の料亭にお招きして食事したこともある。
魚を綺麗に骨だけ残して食され、あ、猫またぎ。政治の話より経済の話が多かった。
さて本書は「食いしん坊」でワイン通でもあるふたりが中国へ行って和牛のような高級牛の飼育牧場やらプアール茶の産地やらを訪ね歩き、ワインをつくる場所を探したりの東奔西走、忙しい旅日記の中に、丘さんの経営哲学が滲み出る仕組みとなっていて、読んでいて愉しかった。
大連の近くに黒牛牧場、雲南省の山奥に珈琲農場と、丘さんの事業熱は冷めることがないようだ。
台湾独立運動の闘士が、しかし、なぜ共産中国への投資にのめり込まれたか、その謎も本書の中に何気ない会話で、なるほどこういう考え方をされるのか、と理解できる。暗い面をみない、楽天主義。未来信奉者である。
そして最後の予言は『工業力はいずれ飽和になるが、食料が最大の問題。中国はいずれ近いうちに食糧不足に陥るだろう』と。
小生のように中国のリアリティを暗部にも焦点をあてて病理を抉り、客観的に分析する者としては、こういう明るい、楽天的中国観察のベクトルが意外に参考になるのである。
つまり同じ独裁政権を批判的にみる態度は通底しながらも中国の共産党幹部とつきあえる丘さんとはいったい、度量が広いのか、根っからの商売人なのか?
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中国に靡く日本人の深層心理には何が潜むのだろう?
日本へ来て20年、ついに聞かした元中国人インテリはこう分析する
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石平『なぜ日本人は日本を貶める中国に媚びるのか』(ワック)
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前掲書とまるで対極。
悲観論者、石平さんの最新評論はマスコミによく登場する似非保守論客や似非政治家を激しく批判しつつ、民主党政権の媚中外交を徹底的に売国的行為と詰問する。その切り口の鋭さには舌を巻かされる。
かれらはどこで基本を間違えたのか?
まず媚中文化人の代表として浅井基文、中江要介、橋本恕ら外務省「チャイナ・スクール」の所謂「論客」たちが展開する支離滅裂な中国擁護を論理的に粉砕し、つづいて河野洋平、野中広務、小沢一郎、福田康夫ら「媚中政治家」への辛辣な批判が展開される。
さらに本書では進歩派ブンカジン代表格として大江健三郎が俎上に乗せられる。
これらは保守の人々にとって当然のことであり、本書それ自体に新味はない。
本書の読み方は違うところにある。
第一に従来の保守が批判した媚中派への論理を越えるものは何か、といえば、石平氏が元中国人であり、中国人の体質からみた似非の見分け方が分かる。日本人評論家にはない独自の視点が鮮烈である。
第二に石平氏の視点は、鳩山とかカンとかの似非日本人、もっと言えば「反日・日本人」の戦後の思考体系のぬるま湯に冷や水を浴びせかけている、その切り口、その批判精神の独創性ともいえるが、別個性にもある。
第三に、この書は「哲学的」なのである。
おそらく、このポイントが一番大事ではないか、と思う。
左派ならびに体制内似非保守の論客を法律論でめった斬りにする潮匡人氏の論理展開は「法律家」の視点、つまり法学部の論理である。法律の条文が頭の中に入っている人の文章はかくばかりかといつも感心する。
かつて「進歩的ブンカジン」を批判した福田恒存氏の切り口は「思想家」の視点だった。
我が師=林房雄の批判の原典は「日本人の心情」だった。
こうした文脈からみると石平氏は「哲学」の視点から左派、進歩派、媚中派を批判するので、論理の構築に思考の積み重ねを発見する。好きか嫌いかは別として、ヴィトゲンシュタインの哲学論理の組み立て方を想像しつつ、評者(宮崎)にとっては二重に参考になった。そうか、石さんは哲学家なんだ、と。
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◇読者の声◇◆
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(読者の声1)貴誌を読んで初歩的な質問で恐縮なのですが、アメリカと中国が共同に世界を統治するので「中美共治」というとのことですが、これは中国共産主義が美しく治めるという意味も有るのではないですか・
(TY生、岐阜)
(宮崎正弘のコメント)中国で「美」は米国を意味します。あれほど敵愾心を燃やすアメリカが「美しい」というアンビアレンツが中国人の潜在意識に存在するのです。
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(読者の声2)オバマ大統領の中国訪問を日本のマスコミは高く評価している。中国も都合の良いところだけ熱狂的に報じているという。しかし先生のメルマガでは米国の評価は冷淡だという。
ほかの国々は米中会談をどう評価したのでしょうか?
(MY生、世田谷)
(宮崎正弘のコメント)世界全ての反応を調べておりませんが、英国だけ。フィナンシャルタイムズは「失敗、成果ナシ」と報じました。同英紙「テレグラフ」も、「重要議題で米中、物別れ」と書いています。
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インフォメーション ご案内
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「チャンネル櫻」からお知らせ
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番組名:「闘論!倒論!討論!2009 日本よ、今...」
テーマ:経済討論第8弾!~民主党政権と経済問題(仮)
放送日:平成21年11月21日(土曜日)20:00-23:00
日本文化チャンネル桜(スカパー!217チャンネル)
インターネット放送So-TV(http://www.so-tv.jp/
)
パネリスト:50音順敬称略
田代秀敏(エコノミスト・ユーラシア21研究所研究員)
廣宮孝信(経済評論家・作家)
藤井厳喜(国際問題アナリスト)
三橋貴明(経済評論家・作家)
宮崎正弘(作家・評論家)
司会:水島総(日本文化チャンネル桜 代表)
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三島由紀夫研究会からのおしらせ
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いよいよあと6日です! 憂国忌
http://mishima.xii.jp/39th/index.html
「益荒男のたばさむ太刀の鞘鳴りに 幾とせ耐えて今日の初霜」(三島由紀夫)
「今日にかけてかねて誓いし我が胸の 思いを知るは野分のみかわ」(森田必勝)
「散ると嫌う世にも人にも先駆けて 散るこそ花と吹く小夜嵐」(三島由紀夫)
第三十九回 三島由紀夫氏追悼会
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と き 11月25日(水曜日)午後六時半(六時開場)
ところ 星陵会館 二階ホール
http://www.seiryokai.org/kaikan.html
開会の挨拶 松本徹(三島文学記念館館長)
シンポジウム 「現代に蘇る三島思想」
パネラー 富岡幸一郎(文藝評論家、司会)
杉原志啓 (評論家、徳富蘇峰研究家)
西部 邁 (評論家、『表現者』顧問)
西村幸祐 (評論家、『撃論ムック』編集長)
会場分担金 お一人 1000円
記念冊子(12p)とメルマガ合本(20ページ)をお渡しします。
過去の憂国忌ポスターを頒布します。
http://mishima.xii.jp/kaiso/poster/index.html
どなたでも予約なしで入場できます。
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< 宮崎正弘の近刊 >
宮崎正弘『朝日新聞がなくなる日』(ワック、980円、全国主要書店発売中)
http://web-wac.co.jp/publish/bunko.html
マスコミ・エリートの挫折 斜陽産業の典型が朝日新聞となった!
< 宮崎正弘のロングセラー 絶賛発売中 >
http://miyazaki.xii.jp:80/saisinkan/index.html
これらの書籍は比較的入手が容易です。また下記アマゾンからも申し込めます。
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宮崎正弘 + 内田良平研究会 編
『シナ人とは何かー内田良平の『支那観』を読む』(展転社、定価1995円)
『中国分裂 七つの理由』(阪急コミュニケーションズ、1680円)
『人民元がドルを駆逐する』(KKベストセラーズ、1680円)
『絶望の大国、中国の真実』(石平氏との共著、980円。ワック文庫)
『やはりドルは暴落する! 日本と世界はこうなる』(ワック文庫、980円)
『中国がたくらむ台湾・沖縄侵攻と日本支配』(KKベストセラーズ 1680円)
『トンデモ中国、真実は路地裏にあり』(阪急コミュニケーションズ、1680円)
◎宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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