今日の内容はすごくいいので紹介します。
◆もしも、の英会話入門[軍隊式英会話術] vol.71 Takashi Kato
◆第71話 特別編《気まぐれ心旅》9
「言葉は諸刃の剣」
オバマ大統領が今日13日に初来日します。これからどのような日米関係を創出して行くのか、2人の会談の行方を注目したいと思います。
さて、そのオバマ大統領が、憎悪による凶悪行為(hate crime)を連邦犯罪(federal crime)とみなす法案に署名しました。
これは人種や性的志向、性別認識、身体障害を動機とする個人への暴力を禁じたもので、同性愛者の権利を擁護する初めての連邦法でもあります。
(This is a law prohibiting a violent assault on an individual because
of his/her sexual orientation, gender identity and handicap, the first
federal gay rights legislation as well)
発端となったのは、1998年に相次いで起きた2つの憎悪犯罪でした。マシュー・シェパードは21歳のワイオミング州立大学の学生でしたが、同性愛者を嫌悪する者たちに言葉巧みにおびき出され、人里はなれた牧場で拷問されました。
拳銃で頭蓋骨が陥没するほど殴られたうえ、牧場のフェンスに両手を縛り付けられたまま冬の寒さの中に置き去りにされたのです。
翌日、通りかかったサイクリストに発見され病院に運ばれましたが、マシューは意識を回復することなく5日後に亡くなりました。
黒人のジェームズ・バードは、テキサス州で白人至上主義者(white supremacists)に誘拐(kidnap)されました。
彼らはジェームズの衣服を剥ぎ、足首を鎖でトラックにつないだまま5キロ近く引きずるという残忍なやり方で殺害したのです。
(They stripped James naked, chained him by his ankles and dragged for
3 miles behind a pickup truck killing him)
これらの事件に共通しているのは、常軌を逸した憎しみが動機になっているにもかかわらず、被害者と殺人犯たちに面識がないという点です。
つまり、人種(race)とか性的志向(sexual orientation)といったレッテル(label)を相手に貼り付けることによって、赤の他人に病的な嫌悪や恐怖を抱くにいたったということです。
言葉が持つ「一般化」という働きの危険な一面です。
(That is a dangerous aspect of words called "generalization")
この一般化と言うのは、実は人間が生き残っていくためには必要な知的作業です。
(What is called generalization is actually a necessary mental task for
our survival)
言葉がなかったら、例えば薬草と毒草、食用キノコと毒キノコを選別することはいつまでたっても出来ません。
言葉というレッテルを使うことによって、個体がもつ細々とした違いを無視し、共通の特性を際立たせてグループに区分することが出来るわけです。
焚き火の炎でもマッチの炎でもアセチレン溶接の炎でも火山の炎でも、炎のあるところに近づきすぎると危ないということは「炎」という言葉があるから体験的知識として受け継いでいくことが出来るのです。
同様に「アメリカ人」とか「日本人」「タリバン」「ユダヤ人」「イスラム教徒」「レズビアン」「芸能人」「ホームレス」「障害者」「ホモ」「朝鮮人」「イラン人」などというレッテルを貼り付けると、個人々々の性格や人柄や特徴が消え去り、社会がそのグループに対して抱いている大雑把な印象のみが誇張されます。
個人の顔が失われると、相手に対する誤解(misunderstanding)や偏見(bias)、不信(mistrust)、そして悪意(malice)、敵意(hostility)、恐怖心(fear)などが剥きだしの状態です。
したがって目の前の人を「人間」とか「同胞」として見ないことも可能になります。
(It becomes possible not to see a person in front as "human" or "fellow")
戦中は誰もが口にした「鬼畜米英」や「非国民」。今も中国で使われているという「小日本」などのレッテルが掻き立てる敵愾心(animosity)や侮蔑(contempt)、怨恨(grudge)がこの典型でしょう。
このような心理が集団で起きた場合、人がどれほど冷血(cold-blodded)で、残忍(brutal)になれるものかは、マシューとジェームズの最期が物語っています。
子供の頃、日本はアメリカやヨーロッパに比べて人種問題が格段に少なく、宗教心の薄い日本人社会は同性愛者に対しても偏見が少ないと思っていました。
しかし最近では、若者がホームレスを襲撃し生身の人間に火をつけたりするという蛮行(brutality)をよく耳にします。これなども「ホームレス」というレッテルを貼り付けることによって路上生活者の人間性、尊厳、人格を消し去り「人間ではない」と感じるようになった結果でしょう。
他国の人種差別(racial discrimination)や同性愛者憎悪(homophobia)と変わるところはありません。
言葉を侮ると、どれほど危険かということがここでもわかります。
(Here we understand again that taking words lightly is dangerous)
本メルマガの読者には、言葉に興味を持つ人が多いと思います。言葉は諸刃の剣であることを忘れないでください。
(Remember that words are a double-edged sword)
動画サイト:http://www.youtube.com/watch?v=1hJgDw6Fk2g
http://www.youtube.com/watch?v=YSPvpIPYriI
(加藤喬)
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