実はオバマ米大統領のアメリカは、中露を道徳的に超えて正義の国になっている。 | 日本のお姉さん

実はオバマ米大統領のアメリカは、中露を道徳的に超えて正義の国になっている。

ロシア政治経済ジャーナル No.611
 2009/10/13号

★オバマ、ノーベル賞受賞の背景


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RPEは、オバマさんが大統領選挙に勝利した直後、


「オバマは、アメリカのゴルバチョフになるのではないか?」


と書きました。

なぜかというと、二人のおかれた立場があまりにも似ていたから。

何が似ているのか?

1、二人とも衰退期の指導者である
2、二人とも前任者から戦争をひきついだ
3、二人とも前任者から大不況をひきついだ
4、二人とも「変革」叫びながら登場した。そして「変革」の中身が具体的でない
5、二人とも現体制に矛盾を感じていて、修正を加えたい


二人が「どれだけ似ているか?」詳しくはこちらをご一読ください。

http://archive.mag2.com/0000012950/20081107172511000.html
(2008/11/07 【RPE】オバマはアメリカのゴルバチョフ?)


さて、よく似ている二人に、もう一つ「類似点」が加わりました。



6、在任中に「ノーベル平和賞」を受賞した



ゴルバチョフさんは、1990年受賞です。

オバマさんは、2009年。

そうそう。


オバマさん、おめでとうございます!(^▽^)


オバマさんの受賞について、だいぶ評価がわかれているようですね。

大部分の日本国民は素直に祝福していることでしょう。

しかし、世界を見ると「具体的に何もしてないじゃないか!」という批判があります。

アメリカのテレビを見ていても、「おお~、我が国の大統領がノーベル平和賞!」という素直な反応が見られない。


「具体的になにもしていない」のは、そのとおり。


前大統領のブッシュさんから引き継いだ問題も、そのまま残っている。


・イラク問題
・アフガニスタン問題
・イラン問題
・北朝鮮問題
・イスラエル・パレスチナ問題


等々、オバマさんになって平和が達成された、「平和にむけて前進した」わけでもないのです。

とはいえ、実をいうとオバマさんは、すでに多くのことを成し遂げたともいえるのです。


▼ソ連崩壊とアメリカ一極世界の到来


以前本にも書きましたが、国際関係には「主役」「準主役」「その他大勢」がいます。

冷戦時代、主役はアメリカとソ連でした。


アメリカのスローガンは、「自由」。

ソ連のスローガンは、「平等」。


そして、アメリカの周りには、いわゆる「西側陣営」とよばれる「準主役」たちがいる。

ソ連の周りにも、いわゆる「東側陣営」とよばれる「準主役」たちがいる。


そして、アメリカとソ連が、その他大勢をとり合うわけです。

いってみれば、民主党と自民党が「無党派層」を取り込もうとするのと同じ。

その他大勢にもいろいろな動機があると思いますが、


・どっちにつけば儲かるかな?

・どっちにつけば安全かな?


が主な動機でしょう。



オイルショックがあった70年代、ソ連は「原油高」で非常に潤っていました。

それで、世界を共産化するために、多くの国々を支援した。


一方、アメリカはベトナム戦争に敗北し、日独に押されて経済も苦しい。

アメリカは70年代、暗黒の10年だったのです。


しかし、80年代になると立場が逆転します。

レーガンはソ連を「悪の帝国」とよび、「アメリカはNO1だ!」と繰り返し、強いアメリカを復活させました。

一方ソ連は、原油価格下落に苦しんだ。

さらに、アフガニスタン侵攻の軍事費が増大し、経済がガタガタになってしまいます。



1991年、ソ連は崩壊。

米ソ二極世界は崩壊し、アメリカの一極世界が到来しました。

ちょうどこのころ、「リベラル民主主義=歴史の終わりである」とするフランシス・フクヤマさんの本が大流行。



<●人類歴史に影響を与えた名著です。ご一読ください。

歴史の終わり」フランシス・フクヤマ 三笠書房
(詳細は→上 http://tinyurl.com/cnn5u    
       中 http://tinyurl.com/9p4z5
       下 http://tinyurl.com/9cc9j     )   >



「このまま世界は、リベラル民主主義一色になるのかな~」と楽観的なムードが漂っていたのです。

アメリカは90年代、ただ1国繁栄を謳歌していました。

ライバルたちはこんな感じ。


・ライバルソ連は崩壊。15の独立国家に分裂

・経済のライバル日本は、「バブル崩壊」で暗黒の10年

・西欧は、貧しい東欧を吸収して苦しい

・中国はまだ問題にならないほど弱小


ただアメリカだけは、ITバブルにより、空前の好景気に沸いていた。



しかし、2000~01年にかけて、ITバブル崩壊。

そんなとき、あの人がアメリカ大統領になったのです。


▼アメリカを「悪の帝国」にしたブッシュ


さて、ブッシュさんはアフガニスタンとイラクを攻撃しました。

アフガニスタン攻撃については、「9.11」の衝撃が大きく、ほとんど反対する国はありませんでした。


しかし、イラク攻撃は別です。

アメリカにはイラクを攻撃できる正当な理由がありませんでした。

理由は、「フセインはアルカイダとつながっている」と「大量破壊兵器を保有している」。


ブッシュが主張していたこの二つの理由は「大ウソ」だったこと、
アメリカ自身が認めています。




<米上院報告書、イラク開戦前の機密情報を全面否定

【ワシントン=貞広貴志】米上院情報特別委員会は8日、イラク戦争の開戦前に米政府が持っていたフセイン政権の大量破壊兵器計画や、国際テロ組織アル・カーイダとの関係についての情報を検証した報告書を発表した。>(読売新聞 06年 9月9日)」



ここがとても重要。




<報告書は『フセイン政権が(アル・カーイダ指導者)ウサマ・ビンラーディンと関係を築こうとした証拠はない』と断定、大量破壊兵器計画についても、少なくとも1996年以降、存在しなかったと結論付けた>(同上)



「米英情報ピラミッド」の中にいる日本国民は、この辺あまり気にしないかもしれません。

しかし、常識的に考えてみてください。

アメリカは、イラク人を最低でも10万人、多くて100万人殺している。(正確な犠牲者数は誰も知らない)

しかも理由は全部「ウソだ」とばれている。

これは、大変なことではないですか?



ところで、アメリカがイラク戦争をした真の理由はなんなのでしょうか?

グリーンスパンさんは「あれは石油だよ」と断言しています。




<「イラク開戦の動機は石油」=前FRB議長、回顧録で暴露
07年9月17日15時0分配信 時事通信

【ワシントン17日時事】18年間にわたって世界経済のかじ取りを担ったグリーンスパン前米連邦準備制度理事会(FRB)議長(81)が17日刊行の回顧録で、2003年春の米軍による

イラク開戦の動機は石油利権だった
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
と暴露し、ブッシュ政権を慌てさせている。>



まあ、この他にも


・ITバブル後苦境に陥ったアメリカ経済を、アフガン・イラク攻撃で復活させた(公共事業)

・イスラエル防衛


等々、いろいろ考えられるでしょう。

そして、もっとも大きな理由の一つがおそらくこれ。




<イラクの旧フセイン政権は00年11月に石油取引をドルからユーロに転換した。

国連の人道支援「石油と食料の交換」計画もユーロで実施された。

米国は03年のイラク戦争後、石油取引をドルに戻した経過がある>

(毎日新聞06年4月17日)



要するに、フセインがドル体制に公然と挑戦したので、アメリカはイラクを攻撃した。


「石油」「ドル体制防衛」「イスラエル防衛」「景気対策」


真の理由がどうであれ、ブッシュ・アメリカのしたことは明確な悪です。


(アメリカはそれまでにも「悪事」をしてきたが、アメリカが「正義」になるよう、たくみに世論を操ってきた。

例えば、「リメンバーパールハーバー」→第2次大戦参戦等々。

今回は、世界中に「悪事」がばれてしまった。)



イラク戦争は、大部分の日本人が考えている以上に、アメリカの威信を失墜させることになったのです。

これを見てください。




<ブッシュ大統領は世界の脅威2位 英紙の世論調査


【ロンドン=本間圭一】ブッシュ米大統領が、北朝鮮の金正日総書記やイランのアフマディネジャド大統領よりも、世界平和の脅威だ──。3日付の英紙ガーディアンは、世界の指導者で誰が平和への脅威になっているかに関して聞いた世論調査でこうした結果が出たと1面トップで報じた。
 調査は、英国、カナダ、イスラエル、メキシコの4か国でそれぞれ約1000人を対象に世論調査機関が実施した。

 英国民を対象とした調査によると、最大の脅威とされたのは国際テロ組織アル・カーイダ指導者、ウサマ・ビンラーディンで87%。

これに続いてブッシュ大統領が75%で2位につけ、金総書記69%、アフマディネジャド大統領62%を上回った。

ビンラーディンは他の3国でもトップとなった>

(読売新聞06年11月4日)



調査が行われたのはイギリス・カナダ・イスラエル・メキシコ。

いずれも親米国家。

親米国家でこの結果。

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▼中国・ロシアが正義の味方に?!


さて、ブッシュの悪行により、「民主主義の守護神」から「悪の帝国」に墜落したアメリカ。

世界12億のイスラム教徒も、11億のカトリックも、2億の東方正教会も、13億の中国も、11億のインドも、

みんなが、「アメリカの一極世界は危険だ!」と思いはじめた。

そこに新しいアイディアを提示した国々があった。


イラク戦争に最後まで反対したのは、ドイツ・フランス・中国・ロシア。

フランス・中国・ロシアは、国連安保理で拒否権を持つ常任理事国。


これらの国々が何を提案したか。


「アメリカの一極世界は危険すぎる。多極世界を作りましょう!」


この提案にもっとも魅力を感じたのが、世界の独裁国家群。

だってブッシュは、「世界民主化」をスローガンに掲げている。

しかも、イラクの例をみれば、これといった理由がなくてもイチャモンをつけて戦争をはじめる。


それで、世界中の独裁者たちが、「多極世界をつくろう!」というアイディアを支持したのです。

ドイツやフランスが彼らを軍事的に攻撃することはありえない。

中国やロシアは、自国が独裁国家なので、「世界を民主化しよう!」なんていわない。



アメリカにとって困った事態が生じました。

ただの独裁国家群なら別に放置してもいい。

ところが、どういうわけか石油・天然ガスが集中しているのは独裁国家ばかりなのです。


中東しかり、中央アジアしかり。


アメリカが今後も覇権国家にとどまるためには、どうしても資源をおさえておく必要がある。

ところが資源をもった独裁国家はアメリカから離れていく。


そればかりではありません。

イランのように、「もう原油はドルで売りません。ユーロ・円で売ります!」と宣言された日にゃあ。

この流れが世界的潮流になれば、ドル基軸通貨体制は崩壊し、アメリカは「ただの借金大国」に転落し、没落します。

どうすればいいんだ?


アメリカは、「変化」する必要がありました。


▼アメリカの変化


1917年、「資本家皆殺し、労働者よ団結せよ!」をスローガンに、ロシアで「共産革命」が起こりました。

びびった欧米諸国は、「革命起こされちゃたまらん」ということで、ある策を講じました。

そう、「労働者の権利」を向上させたのです。

要するに、共産党の主張を一部受け入れることで、自国の体制を守ったのです。


1929年、アメリカ発の世界恐慌が起こりました。

しかし、共産主義のソ連では恐慌が起こらなかった。

世界の人々は、「資本主義より共産主義の方がすぐれてるんちゃうの?」と考えはじめた。

アメリカはどうしたか?

資本主義と共産主義をミックスさせたケインズ主義を採用することで、苦境を乗り切ったのです。


このようなプロセスを、ヘーゲル的に「正」「反」「合」といいます。


「正」→古典派資本主義(国は経済にかかわらないのがいい)

「反」→共産主義(国が全部計画してやる)

「合」→ケインズ主義(国が有効需要をつくる)


こうやって、人類は進歩していくのですね。


今回オバマさんは何をしたか。

ブッシュのアメリカは、

・アメリカ一極主義
・国連軽視
・キリスト教重視、イスラム教軽視

でした。

これに対し、中国・ロシアを中心とする多極主義陣営は。

・多極主義
・国連重視(戦争反対)
・宗教・政治体制の違いは問題にしない

(例、中ロが主導する「上海協力機構」(SCO)には、

キリスト教(ロシア正教)ーロシア
イスラム教ー中央アジア諸国・イラン(準加盟国)・パキスタン(準加盟国)
ヒンズー教ーインド(準加盟国)
チベット仏教ーモンゴル(準加盟国)
唯物無神論ー中国

が混在している。

政治体制も民主主義・独裁・なんちゃって民主主義までさまざま)


で、オバマさんはどうしたか。

・多極主義
・国連重視
・宗教政治体制の違いは問題にしない



・多極主義と国連重視について

ノーベル賞委員会が発表した平和賞授賞理由にはこうあります。




<オバマ氏は国際政治に新たな環境をもたらし、国連をはじめ国際機関の役割を重んじる多国間外交が中心的な位置を回復した。>



・国連をはじめ国際機関の役割を重んじる

・多国間外交を重んじる


ブッシュの時代と正反対になっています。


・宗教政治体制の違いは問題にしないについて、



オバマさんは就任演説の中で、こんなことをいっています。


<我々は、キリスト教徒やイスラム教徒、ユダヤ教徒、ヒンズー教徒、それに神を信じない人による国家だ。

我々は、あらゆる言語や文化で形作られ、地球上のあらゆる場所から集まっている。>



アメリカは「キリスト教国」であることを正式にやめたのです。

また、こんなことも。




<イスラム世界よ、我々は、相互理解と尊敬に基づき、新しく進む道を模索する。>



このように、オバマさんのアメリカは、中国・ロシアの主張をほとんど丸ごと受け入れ、

・多極主義
・国連重視

の国に変化していることがわかるでしょう。


▼「核兵器のない世界」という大義名分



ノーベル賞委員会が発表した平和賞授賞理由にこうあります。


<本委員会は国際的な外交と諸民族間の協力強化に向けたオバマ大統領の比類なき努力を理由に授賞を決めた。

とりわけ「核兵器のない世界」の構想とそれに向けた取り組みを重視した。>



「核兵器のない世界」(^▽^)



中ロの主張を取り入れたアメリカ。

しかし、彼らを追い抜くためには、もう一つ何かが必要です。

それが大義名分。


ヒトラーは政権についた時、「アーリア人種は世界一優秀だ!」というスローガンを掲げました。
当然、ユダヤ人・スラブ人・その他の民族は反発する。



一方、ソ連建国の理念は、「全世界の労働者を解放する」こと。

世界には貧乏人の方が圧倒的に多いので、広範な支持を得ることができたのです。

(しかし、共産国家が独裁になり、資本主義諸国で労働者の権利が向上すると、勢いは衰えた)


オバマさんは「核兵器のない世界!」(^▽^)という、誰も反対できないスローガンを叫ぶことで、独裁国家中国とロシアを道徳的に超越す
ることができました。

多くの人々が、「オバマには何の実績もないじゃないか!」と批判しています。

しかし、ブッシュ時代「悪の帝国」に堕ちたアメリカを、オバマさんは再び「善の帝国」に戻すことに成功したのです。



彼がノーベル平和賞を受賞したのは、

「ブッシュは欧州を軽視・無視しつづけてきたが、それを転換してくれてありがとう」ということでしょう。


さらに、


「これからもブッシュのようにならないでね!」


と、彼の行動を抑制する意味もあります。


なぜなら、アメリカは再び戦争を画策しはじめている。

前にも書きましたが、アメリカの行く道は二つ。



1、イラク攻撃時のように国連を無視してイランを攻める

そして、再び「悪の帝国」に逆戻り


2、イラン攻撃をあきらめ、同国や中東産油国がドル以外の通貨で原油を売ることを容認する

すると、ドルは下落し、アメリカは没落する


この場合、世界経済は大変なことになりますが、アメリカの没落で、欧州の地位は相対的に上がることになるでしょう。


この辺の事情については、最近触れたので書きません。

詳細は、以下をご一読ください。

http://archive.mag2.com/0000012950/20091008200159000.html
【RPE】ドルで原油が買えなくなる???



ところでアメリカがこんなピンチな時、日本はどこへむかったらよいのでしょうか?

ここでは長くて書ききれません。

「日本自立」のための具体策を知りたい方は、いますぐこの情報をゲットしてください。

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山もり資料付きで全部わかります。

(おわり)

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