可視化された取調室で、命をかけて組織を売るような取引に応じる犯罪者はいない。
司法取引、ダム中止…新閣僚発言に関係者動揺
司法取引の導入やおとり捜査の拡大、指揮権発動-。鳩山政権の新閣僚から17日、次々に「新機軸」が打ち出され、関係者の間に動揺が広がっている。一方、前原誠司国土交通相は「費用がかかっても」と改めて群馬県の八ツ場(やんば)ダム中止を明言。地元からは「今さら」と落胆と怒りの声が渦巻いた。
[フォト]八ツ場ダム完成で、水没する予定だった川原湯温泉
■「可視化」反対崩さず
中井洽国家公安委員長は17日の記者会見で、犯罪の容疑者が捜査機関に情報提供する代わりに、訴追時点で有利な扱いを受ける「司法取引」の導入や、おとり捜査の適用範囲の大幅な拡大などの制度改正に前向きな考えを示した。
中井委員長は導入のねらいを、「取り調べ当局に犯罪摘発率を上げ、スピード化できる武器を持たせてあげたい」とする一方、「一方的な全面的可視化だけでは…」と話し、導入が民主党の推進する「取り調べの全面可視化」を補填(ほてん)する措置であることを明らかにした。
検察と警察が「容疑者が萎縮(いしゅく)する可能性が高く、犯罪の真相解明に支障を来す」と全面的な可視化に反対していたことに配慮を示した形だ。
ただ、司法取引について、警察幹部は「すでに特捜検察の捜査では、犯罪の解明に役立つ供述をした容疑者について情状面をくむなど実質的な司法取引がある」と指摘。おとり捜査についても、司法関係者は「既に捜査現場に導入・浸透しており、可視化で損なわれる捜査力の補填になるとはいえない」と疑問視する。
警察庁OBは「可視化された取調室で、命をかけて組織を売るような取引に応じる犯罪者はいない。司法取引と全面可視化は相いれない制度だ」と指摘。全面可視化への反対姿勢を崩さなかった。
■「指揮権」検察は淡々
千葉景子法相は就任会見で、法相による検事総長への指揮権発動について、「恣意(しい)的、党派的なものを排除する。国民の視点に立ち、検察の暴走をチェックする点で対処すべきだ」と、一歩踏み込んだかのように発言した。
この発言について、検察幹部は一様に「制度論を言っているだけだ」と冷静に受け止めている。ある幹部は「検察の捜査は厳正中立、不偏不党が原則。それが損なわれた場合に、指揮権発動という法務大臣の権限がある」と話す。
別の幹部は、千葉法相が、西松事件での小沢一郎民主党幹事長秘書の逮捕について暴走ではないとの認識を示した点を重視。「指揮権発動の『検察の暴走』とは、恣意的で証拠に基づかない捜査のことを指すのだろう。大騒ぎするような発言ではない」と淡々と語った。
■ダム中止明言に地元怒り
前原国交相の八ツ場ダム(長野原町)の建設中止明言に対しては、地元自治体や住民から怒りの声が相次いだ。
群馬県の大沢正明知事は17日、「建設を中止としたことは言語道断で、極めて遺憾。1都4県と連携し、すみやかに政府に抗議する」とのコメントを発表。水没する地区に住む中嶋藤次郎さん(68)は同日、代替地に引っ越したばかり。「ダム建設をしないのであれば、なぜ明治時代から受け継いできた土地と墓を処分しなければいけなかったのか」と強い口調で訴えた。
埼玉県の上田清司知事も同日の定例会見で「日本国政府と契約しており、政府が契約破棄する場合は相当な理由がなければできない」と述べた。
[フォト]八ツ場ダム完成で、水没する予定だった川原湯温泉
■「可視化」反対崩さず
中井洽国家公安委員長は17日の記者会見で、犯罪の容疑者が捜査機関に情報提供する代わりに、訴追時点で有利な扱いを受ける「司法取引」の導入や、おとり捜査の適用範囲の大幅な拡大などの制度改正に前向きな考えを示した。
中井委員長は導入のねらいを、「取り調べ当局に犯罪摘発率を上げ、スピード化できる武器を持たせてあげたい」とする一方、「一方的な全面的可視化だけでは…」と話し、導入が民主党の推進する「取り調べの全面可視化」を補填(ほてん)する措置であることを明らかにした。
検察と警察が「容疑者が萎縮(いしゅく)する可能性が高く、犯罪の真相解明に支障を来す」と全面的な可視化に反対していたことに配慮を示した形だ。
ただ、司法取引について、警察幹部は「すでに特捜検察の捜査では、犯罪の解明に役立つ供述をした容疑者について情状面をくむなど実質的な司法取引がある」と指摘。おとり捜査についても、司法関係者は「既に捜査現場に導入・浸透しており、可視化で損なわれる捜査力の補填になるとはいえない」と疑問視する。
警察庁OBは「可視化された取調室で、命をかけて組織を売るような取引に応じる犯罪者はいない。司法取引と全面可視化は相いれない制度だ」と指摘。全面可視化への反対姿勢を崩さなかった。
■「指揮権」検察は淡々
千葉景子法相は就任会見で、法相による検事総長への指揮権発動について、「恣意(しい)的、党派的なものを排除する。国民の視点に立ち、検察の暴走をチェックする点で対処すべきだ」と、一歩踏み込んだかのように発言した。
この発言について、検察幹部は一様に「制度論を言っているだけだ」と冷静に受け止めている。ある幹部は「検察の捜査は厳正中立、不偏不党が原則。それが損なわれた場合に、指揮権発動という法務大臣の権限がある」と話す。
別の幹部は、千葉法相が、西松事件での小沢一郎民主党幹事長秘書の逮捕について暴走ではないとの認識を示した点を重視。「指揮権発動の『検察の暴走』とは、恣意的で証拠に基づかない捜査のことを指すのだろう。大騒ぎするような発言ではない」と淡々と語った。
■ダム中止明言に地元怒り
前原国交相の八ツ場ダム(長野原町)の建設中止明言に対しては、地元自治体や住民から怒りの声が相次いだ。
群馬県の大沢正明知事は17日、「建設を中止としたことは言語道断で、極めて遺憾。1都4県と連携し、すみやかに政府に抗議する」とのコメントを発表。水没する地区に住む中嶋藤次郎さん(68)は同日、代替地に引っ越したばかり。「ダム建設をしないのであれば、なぜ明治時代から受け継いできた土地と墓を処分しなければいけなかったのか」と強い口調で訴えた。
埼玉県の上田清司知事も同日の定例会見で「日本国政府と契約しており、政府が契約破棄する場合は相当な理由がなければできない」と述べた。
9月18日0時57分配信 産経新聞