◎世界の新聞「101紙」の視点 靖国 代替施設では慰霊できぬ
独断と偏見はご容赦!
【最近の社説の、ここに注目】
16日付
「産経新聞」『8月15日の靖国 代替施設では慰霊できぬ』
「毎日新聞」『国立追悼施設 今度は議論途切らすな』
の社説。
産経。
『終戦の日を迎え、東京・九段の靖国神社には炎暑の中、今年も多くの国民が参拝に訪れた。(中略)親子連れや若いカップルが年々増え、この日の靖国詣でが広く国民の間に浸透しつつあることをうかがわせた。』
『だが、閣僚では、野田聖子消費者行政担当相がただ一人参拝し、麻生太郎首相ら他の閣僚は参拝を見送った。予想されたこととはいえ、寂しい限りだ。』
『首相が国民を代表して、国のために亡くなった人たちを慰霊することは、
一国の指導者としての務めである。参拝見送りは残念な判断である。』
『野田氏は「閣僚であろうとなかろうと、この日を大事に思っている」と述べ、「国務大臣」と記帳したことを明らかにした。野田氏の行動を評価したい。』
『終戦の日の閣僚による靖国参拝は、以前は半ば慣例になっていた。だが、平成4年の宮沢内閣で12人の閣僚が参拝したのをピークに減少に転じた。』
『中国や韓国との外交問題化を恐れたためとみられるが、情けないことだ。首相をはじめ閣僚が、普通に参拝する光景が早くよみがえってほしい。』
『一方、民主党の鳩山由紀夫代表は「靖国には天皇陛下も参拝されない。心安らかに行かれる施設が好ましい」と述べ、靖国神社に代わる国立戦没者追悼施設の建設に意欲を示した。』
『岡田克也幹事長も、民主党政権になれば、それを検討する有識者懇談会を設置する方針を示した。』
『小泉内閣でも同じような懇談会が設けられ、いったんは国立追悼施設建設の方向性が打ち出されたものの、「税金の無駄遣い」「靖国神社の存在をおとしめるもの」などの批判が相次ぎ、棚上げになった。それをあえて蒸し返そうという考えは極めて疑問だ。』
『日本の戦没者慰霊の中心施設は靖国神社であり、鳩山氏らが構想する国立追悼施設はそれを形骸(けいがい)化するものだからだ。』
『民主党首脳の靖国問題をめぐる発言については、今後も直視していきたい。』
毎日。
『毎日新聞は一貫して首相の靖国参拝には反対してきた。麻生首相の対応は当然のものと考える。』
『これで(中略)3人の首相が在任中の参拝を見送り、その流れは定着してきたように見える。ただし、内外の人々がわだかまりなく戦死者をどう追悼するのかという長年の課題が解決したわけではない。』
『こうした中、注目されるのは民主党の鳩山由紀夫代表が(中略)、靖国神社に代わる国立の追悼施設建設を検討する考えを示したことだ。』
『これは決して新しい考え方ではない。01年8月13日、靖国に参拝した当時の小泉首相は直後の談話で自ら問題提起し、官房長官の私的懇談会を作って追悼施設建設を検討したことがある。』
『結論として「日本が平和を積極的に求め行動する主体であることを世界に示すため、国を挙げて追悼・平和祈念を行う国立の無宗教の恒久的施設が必要」と提言するものだった。』
『ところが当の小泉氏が、たとえ新施設を建設しても靖国神社に代わるものではないと言い出して靖国参拝を継続した結果、構想は急速にしぼみ、一時検討された予算への調査費計上も見送られた。』
『小泉時代、中国や韓国との関係が険悪になったことは指摘するまでもない。』
『私たちが首相の靖国参拝に反対してきたのはアジア諸国への配慮だけでない。
靖国問題の本質は極東軍事裁判でA級戦犯となった人々が合祀(ごうし)されている点だ。』
『昭和天皇がA級戦犯合祀に強い不快感を示していたことも近年判明した。
国民の間にも先の大戦の正当化につながりかねない靖国神社のあり方に疑問を持っている人は多いだろう。』
『靖国神社側はいったん合祀されたA級戦犯の分祀は神道の教義上、困難だという。』
『麻生首相はかつて靖国神社を今の宗教法人から特殊法人に変える案を示したが、政界で支持が広がっているわけではない。』
『国民や外国の人々がわだかまりなく訪れ、追悼できる場をどう作るかは、いずれ結論を出さなくてはならない問題だ。』
『衆院選の結果がどうあろうと、今の千鳥ケ淵戦没者墓苑の拡充案も含め、やはり新たな追悼施設の検討を政界全体で再び始める時期ではないか。今度は議論を途切らせないことだ。』
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まず、首相や閣僚の、靖国参拝見送りについて。
産経紙では、
『中国や韓国との外交問題化を恐れたためとみられる』
と書かれ、毎日紙では、
『私たちが首相の靖国参拝に反対してきたのはアジア諸国への配慮だけでない。
靖国問題の本質は極東軍事裁判でA級戦犯となった人々が合祀(ごうし)されている点だ』
と、書かれている。
産経社説では、「A級戦犯合祀」については触れられていないようだが、このあたり、どのように考えているのだろう。
また、毎日紙に、
『01年8月13日、靖国に参拝した当時の小泉首相は直後の談話で自ら問題提起し、官房長官の私的懇談会を作って追悼施設建設を検討したことがある』との、一節がある。
この時、建設が見送られた経緯について。
産経紙は、
『「税金の無駄遣い」「靖国神社の存在をおとしめるもの」などの批判が相次ぎ、棚上げになった』。
毎日紙は、
『当の小泉氏が、たとえ新施設を建設しても靖国神社に代わるものではないと言い出して靖国参拝を継続した結果、構想は急速にしぼみ、一時検討された予算への調査費計上も見送られた』
と、している。
この点についても、食い違いが見られる。
更には、産経紙の、
『親子連れや若いカップルが年々増え、この日の靖国詣でが広く国民の間に浸透しつつあることをうかがわせた』
の一節。
そして、毎日紙の、
『国民の間にも先の大戦の正当化につながりかねない靖国神社のあり方に疑問を持っている人は多いだろう』
の一節に見られるとおり、「国民の価値観」についても、その見解が異なっている。
以上、前提となる部分が違っていては、いつまでも平行線のままだろう。
自身の主張をする前に、まずは双方、このあたりの認識からつめてゆく必要があるのではなかろうか。
ちなみに、「国民も…」「専門家も…」など、自説に有利な部分だけとってくるような方法は、個人的に好きではない。
(桐鳳)
いよいよ、本格的な選挙戦が始まりました。
果たして、どのような結果となるのでしょうか。
また、投票日までに、何かもう一波乱あるのでしょうか。
4年前の「郵政選挙」のときも国民の関心を集めましたが、今回はそれ以上かもしれません。
特に、派遣切りや格差社会で苦しい日々を送っている方々。
4年前の繰り返しにならないよう、流されず、無関心にならず、選挙に参加したいものです。
(桐鳳)
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