15年なり。
【裁判員3日目】検察側が16年求刑、結審後に評議
全国初の裁判員裁判となった東京都足立区の隣人女性殺害事件で殺人罪に問われた無職、藤井勝吉被告(72)の3日目の公判が5日、東京地裁(秋葉康弘裁判長)で開かれた。検察側は「強い殺意に基づく執拗(しつよう)かつ残忍な犯行だ」として、藤井被告に懲役16年を求刑した。また、2日目まで参加していた法廷正面に向かって左から3番目の女性裁判員が、体調不良のため欠席。秋葉裁判長がこの女性裁判員を解任し、新たに男性の補充裁判が裁判員として参加することになった。このため、公判は10分遅れで始まった。
論告に先立って行われた被告人質問で、6人の裁判員全員が質問。「凶器はほかの刃物ではなく、なぜナイフだったのか」「(被告の)娘の遺品のナイフをなぜ犯行に使ったのか」などそれぞれ被告に直接疑問点をぶつけた。
検察側は論告で、「刺し傷が8カ所に及び、負傷した被害者を追いかけ回すなど、悪質な犯行だ」と指摘。藤井被告が、被害者の文春子さん=当時(66)=との日頃のトラブルから犯行に及んだと供述し、法廷でも文さんの行動や言動を批判していることから、「犯行を被害者の責任にしており、反省の態度は希薄だ」と述べた。
審理はこの後、弁護側の最終弁論などを経て結審。非公開で裁判官と裁判員が判決内容を検討する評議に移る。5日の評議で結論に至らなかった場合は、6日の午前に引き続き評議が行われる予定。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/trial/286304/
【裁判員 判決】初の判決は懲役15年
8月6日14時41分配信 産経新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090806-00000555-san-soci
8月6日15時45分配信 産経新聞
《6人の裁判員は、前日の午後に引き続き、6日も午前中から3人の裁判官とともに評議を行い、判決の内容を決めた。裁判員は当初、女性5人、男性1人だったが、3日目の5日、女性1人が体調不良で補充裁判員の男性と交代したため、評議は女性4人と男性2人で行われた》
《藤井被告は、今年5月1日、東京都足立区の自宅前で、被害者の文春子さん=当時(66)=を、ナイフで刺して殺害したとされる起訴内容は認めている。そのため、有罪と認定されることはほぼ確定的で、主な争点は量刑となっていた。これまでの審理経過を踏まえると、「殺意」の強弱が量刑判断の基準の1つとなりそうだ。検察側は「ほぼ確実に死ぬ危険行為と分かって刺した」と述べ、強い殺意があったと主張して懲役16年を求刑している。これに対して、弁護側は「被害者を死に至らせるかもしれないという認識はあったが、確実に殺害しようとは思っていなかった」と述べ、比較的弱い殺意しかなかったと主張して軽い刑を求めている》
《犯行の動機も争われている。検察側は「以前から被害者とトラブルになっていた上、事件前日、競馬で負けムシャクシャし、酒を飲んでいた」「ナイフを出しても被害者がひるまず、引っ込みがつかなかった」ことなどを動機として主張。対する弁護側は「被害者の性格や言動が犯行を誘発した」「被害者家族が社会のルールを守らず犯行の背景となった」と主張している。また、今回の公判では被害者参加制度に基づき、遺族側も出廷し、「事件の契機になるようなトラブルはなく、藤井被告が勝手に恨みを膨らませた」として、懲役20年以上の刑を求めている。こうした点を、裁判員と裁判官がどう判断するか注目される》
裁判長「では開廷します」
《裁判員6人が着席した直後の午後2時38分、開廷した。裁判員全員が緊張しているように見える。裁判長は藤井被告に、法廷中央に立つよう促し、被告がそこに移るのを待って判決を読み上げ始める》
「主文、被告を懲役15年に処する。押収している(凶器の)サバイバルナイフは没収する」
《やや伏し目がちに判決を聞く藤井被告。じっと手元に目を落とす裁判員。まばたきをする裁判員。被告を見る裁判員…。6人の裁判員の表情はさまざまだった。裁判長は、藤井被告に座るように促して、詳しい判決理由を読み上げる》
「被告は平成21年5月1日午前11時50分ごろ、東京都足立区の小島千枝さん(文さんが日本で使っていた名前)こと文春子方玄関前で、小島さんを死亡させると分かりながら、強い攻撃意思を持って左胸を2回、背中を1回サバイバルナイフで突き刺した」
《争点となっていた「殺意」について、「強い攻撃意思」と表現した。検察側の主張を認めたようにも聞こえるが、まだはっきりは分からない》
「(出廷した)証人の供述はいずれも信用性の高いものである。このことをふまえ、以下の事実を認定する」
《出廷した近所の住民3人の証言を信頼できるとした上で、細かい事実認定を説明していく》
「被告は平成6年ごろに離婚した前妻が、家を出て行ったのは、小島さんが余計な知恵をつけたからだと思っていた」
「小島さんの自宅前には以前から多数の植木やバイク3台などが道路にはみ出していた。かつて軽自動車を使用していた際に、通行の支障になったことがあり、何度も文句を言ったことがあった」
《藤井被告が小島さんとトラブルを抱えていたことを認めた上で、「なるべく被害者に顔をあわせたくない」と考えたと認定し、犯行当日の状況を説明する》
「被告は犯行前日に競馬で負けてムシャクシャし、深夜までやけ酒を飲み、当日の朝も二日酔いなのに、迎え酒をした。競馬に行こうと考え、午前11時に出かけようとしたが、小島さんが植木の手入れをしていて、出られず、いらだちを募らせた」
《検察側がこれまで主張してきたように、被告が犯行前に、競馬や酒などで、イライラしていたことも判決は認めた》
「小島さんと目が合い、自宅を出て行き、2、3日前からペットボトルが倒れていたことについて文句を言った。これに対して、小島さんが何かを言い返した」
「被告は自宅からサバイバルナイフを持ち出し、小島さんに走り寄った。被告はその前後に『ぶっ殺す』と2回言った。被告はサバイバルナイフを突き出した」
「小島さんは『助けて』と叫んでおり、被告は『くそばばあ』と言った」
《「ぶっ殺す」という言葉を言ったかどうか、弁護側は疑問を呈していたが、判決はここでも検察側の主張を認めた。裁判員は、真剣な表情で自分たちが導き出した判決の内容を聞き続けた》
=(下)に続く
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090806-00000563-san-soci
2009/08/06 16:02更新
《秋葉康弘裁判長による判決の読み上げが続いている。犯行動機のくだりに入った》
裁判長「(藤井勝吉)被告は以前から小島(千枝)さん(被害者の文春子さんが日本で使っていた名前)に一方的に憤まんの念を抱きつつも、刑務所に行く事態になることを恐れて、我慢を重ねていた」
記事本文の続き 「前日に競馬に負けていらだっていた上、犯行当日に競馬に出かけようとしたのに、小島さんがいるために出かけられなかったことなどからいらだちを募らせ、飲酒による抑制力の低下の影響とも相まって、小島さんと目が合うと文句を言いたくなり、そのとき思いついた文句を言ったものの、言い返されたために怒りを爆発させた」
《藤井被告がサバイバルナイフを持ち出した動機について、これまでの検察側の主張をほぼ認めた》
「サバイバルナイフを上半身に3回深く突き刺しており、そのうちの1回は無防備な背中を突き刺していること、逃げる小島さんの後を追い、悪態をついていることに照らすと、検察官の主張するとおり、被告は被害者を死亡させると分かりながら、強い攻撃意思を持って殺害行為を行ったと認められる」
《殺意の強さは公判での争点となっていた。検察側は論告で、心臓をひと突きにしている状況などから、「強い殺意は明らか」としていた。これに対し、弁護人は「ナイフで人を刺す行為によって、人が死ぬかもしれないということを認識していたに過ぎない」「被害者が死ぬことまでは意欲していなかった」としていた》
《判決は量刑の理由へと移る。裁判員の6人は手元の紙に目を落としている時間が長かったが、時折、顔を上げている女性裁判員もいる。藤井被告の様子を見ているのだろうか》
《息子2人が小中学生だったときに夫を亡くした被害者の文さんが、苦労して2人を育ててきたことなどに触れた上で、遺族の被害者感情の強さを強調。こう断罪した》
「小島さんが殺人という犯行を誘発するような言動を取ったとは認められず、動機は身勝手で極めて短絡的なものである。犯行により、近隣住民に与えた不安感、恐怖感も軽視できない。被告は簡単に刃物を持ち出すなど、暴力的な行動をしてはいけないという意識が低い。これらのことからすれば、被告の刑事責任は極めて重い」
《弁護側は「被害者の行動が犯行を誘発した」と主張していたが、判決はこれを全面的に否定した。この厳しい判決に、藤井被告は時折、「はい」と声を出して大きくうなずいている。公判も最終盤だが、裁判員6人はいずれも口を結び、厳しい表情だ》
「犯行後に自ら救急車を呼ぶなどせず、預金を下ろしに行ったり、酒を買って飲んだりしている」
《こう指摘した上で、こうも述べた》
「犯行を深刻に受け止めていたのか疑問に思われるような自己中心的な行動を取っているものの、他方では警察に出頭しようともし、逮捕後は犯行を認める供述をしていること、本当に反省をしているのかと疑いを持たれるような様子もあるが、反省の弁を述べていることなど、酌むべき事情も認められる。そこで、すべて考慮した上で、先ほど言った刑ということにしました」
《裁判長の説諭を、藤井被告は両手をひざについて、うつむき加減で聞き入っている》
「これからあなたに責任を取ってもらうわけですが、自分のやったことの重みを日々考えて、亡くなった小島さんの冥福(めいふく)を祈る気持ちを持ち続けて、毎日を過ごしてもらいたいと思います」
《藤井被告は頭を下げて「はい」と答えた。裁判員全員の視線が藤井被告に集まっている。説諭の内容は、藤井被告に裁きを下した裁判員の総意ということなのだろうか。裁判長が横に並んで座る裁判員らに、視線を送り、言葉を続ける》
「そして、今後一切、人に迷惑や危害を加えることをしないで生きていくという気持ちを、日々強めていってもらいたいと思います」
《藤井被告がまた頭を垂れ、「はい」と答えた。裁判長は控訴の手続きなどを説明した》
「それでは閉廷します」
《3人の裁判官が退廷し、続いて6人の裁判員も席を立った。藤井被告に視線を送ることはなく、静かに法廷の扉をくぐっていった》
《藤井被告に再び手錠がかけられる。藤井被告はその瞬間、刑務官になにかをつぶやき、なぜかにやりと笑った。そしてまた席に座り、無表情になった》
被害者参加制度に基づき、被害者参加人として公判に出席した被害者の遺族は、検察側の求刑を上回る懲役20年を求めていた。