「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成21年(2009年)7月12日(日曜日)貳
通巻第2660号
河南省、福建省、江蘇省から14000名のパラシュート部隊が新彊へ
武警は蘭州、南京から交代要員がウルムチ入り、軍の配備も異常事態か
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1989年天安門事件では首都を護衛する肝腎の部隊が動かず、地方からきた部隊が学生集会に突っ込み、鉄砲を水平に撃った。
多くの死体は軍が隠した。
7・5ウルムチ事件では、デモ隊に加わったウィグル人らに軍が水平に発砲し、多くの死傷者がでた。軍は死体を隠した(あの「朝日新聞」でも、この事実を報じた)。
http://www.asahi.com/international/update/0712/TKY200907110280.html
当局の発表では死者184,うち74%が漢族なそうな。
BOXUNG NEWS(博訊新聞網の英文版)は、12日付けで「パラシュート部隊が新彊に集結している」と伝えている。
河南省、福建省、江蘇省からの部隊、およそ14000名で、これらの地方空港で搭乗が確認されている。軍の移動に民間機を使うことがあるからだ。
また多維新聞網(7月12日)によれば、蘭州からきた武装警察が四日間の夜勤を終え、10日夜、南京からきた武装警察の部隊と交替したという。蘭州部隊はウルムチ市人民広場の第一中学に駐屯していたことを多維新聞記者が目撃した。彼らは街の辻々にたって警戒に当たっていた。
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腐敗、不正蓄財で名前が挙げられた共産党高官
いずれも団派と繋がり、汚職が文化の中国で高官の摘発は稀、政局がらみか
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賀国強(政治局ナンバー9,規律・公安の元締め)が準備した腐敗高官リストを『月刊多維』が報じている。
一説に、胡錦涛イタリアG8出席の不在を狙って、団派の失脚を狙っていたとされる。李克強と結びつく人脈が目立つため、李克強への狙い撃ちではないか、とされた。
『月刊多維』に拠れば、取り調べを受けて身柄が拘束されていると推定されるのは、
甘粛省書記 陸浩
遼寧省省長 陳政高
河南省副省長 李克
杭州市書記 王国平
福建省副省長 陳昌平
中国民航総局長 揚元元
らである。
とくに陳政高は、07年に遼寧省書記から政治局へ大出世した李克強の後釜。82年に共産主義青年団。王兆国、胡錦涛の跡をついで大連市の共青団書記を歴任した。93年に大連市副市長から代理市長。05年に瀋陽市書記。
この瀋陽時代に公安局長だった劉和と組んで、市内の開発利権をあさって不正蓄財に励んだという。本渓の銀行口座が応酬されたという報道もある。
汚職は文化という中国で下っ端役人ならともかく、高官が取り調べを受けるのは稀なケースであり、政敵追放のためスケープゴーツをなることが多い。
90年代初頭に陳希同(当時の北京書記)が失脚したときも、こんな大物が逮捕されるのはよほどのこととされ、香港財閥に北京の銀座(王府井)の土地使用を認めた賄賂事件がクローズアップされた。
当時の北京副市長が自殺。そのボスであるという理由で腐敗不正が暴かれ、懲役16年。いまも内蒙古自治区の刑務所で暮らしている。陳希同は古参幹部で、当時は現役政治局員だった。江沢民の政敵。先輩風ふかして江沢民に徹底的に対抗し、邪魔ばかりされた江沢民、よほどの決断だった。
このあと07年の上海書記の陳良宇の失脚事件まで現役の政治局員の失脚はなかった。
陳良宇の場合は悪徳デベロパート組んで上海開発の利権にからみ、とくに土地の収用と住民立ち退きに『辣腕』を振るい、デベロッパーから賄賂を取ったばかりか、上海市職員組合の保険基金のカネも流用し、不動産投資に当てていた。
陳は江沢民の保護を受けており、失脚はあり得ないとされたが、江沢民もあまりの腐敗にかばいきれず、陳は遠く天津へ移送され懲役。
しかし上海市書記の後釜は、江沢民に近い習近平が就任し、その習はいきなり政治局常務委員へ三段跳びの出世、国家副主席、つぎの主席に有力とされるから、ま、中国の政治が浄化されることはないでしょう。
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(読者の声1)このところニュースを見ていると、頭が痛くなります。
ここはオランダ、ベルギー、ルクセンブルグ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリー、スペイン、トルコ、スイス、カナダ、USA, 北アフリカ…世界中のテレビが入るほか、ニュース だけのチャンネルもいくつかあり、イラン、イラク、ウルムチ、アフガニスタン、北朝鮮、中国…もう、毎日何がなんだか分からないくらい。
それで宮崎様のメルマガを拝読して納得している毎日です。
いちばん驚くというか、その厚顔無恥振りに開いた口がふさがらないのが、中国の捏造に次ぐ捏造。一つ一つ取り上げるのもバカらしい。ウルムチの件も。
先日、オランダTV2が、昔の毛沢東の記録映画を3回に分けて放映。一回目に「南京大虐殺」が出てきました。「ふ~ん、日本軍、こんなに人数少なかったんだ…。この、怯えた顔で、赤ん坊を抱いて哀願している女性の映像、日本軍が彼女をこのような目に合わせているにしては、肝心の日本軍兵士、どこにも映ってないわね。カメラに向けている眼よね。繋ぎ合わせ画像じゃないの?」そんなでしたよ。
ところで今日は、楽しい報告があります。
今、ロッテルダムでは、「第12回ワールド・ポート・トーナメント」という若い野球チームの試合が一週間催されています。日本、台湾、オランダ、キューバが今年の最終参加国で、毎年日本からは、大学選抜チームが来てくれるのですが、毎回とても評判がよいのです。
「強いから」ということより、その礼儀正しさ、清々しい自由な雰囲気、結束力、そうした精神性の高さに、オランダの観客は惹かれるようです。
今日(土)は最強敵キューバを相手に奮闘、見事2対1で勝ちました。既にキューバは最終戦出場が決まっていて、これは日本の最終試合でしたが。球場の大きさは、50年前の後楽園球場より小さいと思ってくださいませ。
ドームもなく人工芝ではない、本物の芝生。犬も入場OK。 なんと自然で健康的であることか!
先日、BBCの「日本のプロ野球」レポートを見ていましたら、日本では応援も取り仕切る人がいて、自由にしてはいけないとか。耳を疑いました。
試合に行って先ず驚いたのが、殆どの観客はキューバを応援しているのだろうと思っていた私の予想を大きく裏切り、8割以上が日本を応援しているのです。
観客の殆どは、オランダ人。日本人はたぶん30人くらい。
日本人選手がヒットを打った時、大きな拍手が湧いたので、「あら、ここは日本人応援席ね」と思った私。ところが、それからよくよく観察してみたら、会場のすべてから、日本選手への大きな拍手が幾度も湧きあがるのです。
キューバ選手との間に通う友情、お互いへの尊重、明るく屈託のない、精いっぱい戦う姿勢、そういったものが試合から感じ取れる、すばらしいものでした。
プレス席に座っていたので、あとでプレス関係者からインタヴューを受けました。ところが実は私、「すごいわね!キューバに勝ったのよ!」「今日のキューバ選手を見た?いつもはあんなにお行儀よくないのに、日本選手を見習って、すばらしいじゃない!」と言われても、ピンとこないほどの野球音痴。
「ええ、日本では、野球が一番ポピュラーなスポーツで、夏には高校野球、大学野球もあって、仕事をさぼってもテレビで観るほどなの。
だから、日本の野球、強いのよ」「それにね、日本では、試合技術や勝ち負けにも増して、選手たちの人間性、精神性の高さが重視されるの」などと適当にアッピールをして、そのあと、通訳をしているお友達のところへ。
彼女に「今日の試合で感じたまま、こんなことインタヴューで言っちゃった」と話したら、「そうなんです!毎年、本当に気持ちよくお仕事をさせてもらっているんですけど、今年の選手や監督は、とりわけ素晴らしいんです。監督は、何より選手の人間性、精神の高さを重視していると、幾度もおっしゃいます!」と聞いて、改めて感動、納得。
やはりそうしたものは、遠くから見ていても、人種を超えて伝わるんですね。
日本選手へ尊敬の眼差しを注ぐオランダの子供たち、記念の写真撮影を一緒にお願いしたり、ボールにサインをおねだりしたり。
それにお兄ちゃんのような感じで、優しくにこにこ応えている選手たち、それは良い雰囲気の舞台裏でした。日本人であることを、私たち、大いに誇りましょう!そして、誇れるだけの日本を次世代に渡せるように、日本人として誇れるものの大切さを、忘れないようにしたいと思います。
(Hana、在オランダ)
(宮崎正弘のコメント)日本チームへの応援、お疲れ様です。小生も野球にはなんの興味もありませんが、長島と王と松井とイチロウの名前くらいは知っています。
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宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 平成21年(2009年)7月13日(月曜日) 通巻第2661号 (臨時増刊号)
ウイグル自由人権アジア委員会(Asian Committee forFreedom & Human rights in Uyghur)が本日、外国人特派員に記者会見出席者は、
イリハム・マハムティ(世界ウイグル会議日本全権代表・日本ウイグル協会会長)ペマ・ギャルポ(桐蔭横浜大学教授)オルホノド・ダイチン(モンゴル自由連盟党幹事長)林建良(「台湾の声」編集長)石平(評論家)西村幸祐(ジャーナリスト・評論家) (記者会見の模様は続報します)
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(読者の声1)「もし日本に大乗仏教の利他の精神が残っているなら、日本はすぐに核武装すべきです」
昨年の春、在日ウイグル人(新疆ウイグル自治区出身者)の行事に参加した時に出会った数人のウイグル人が、こう語った言葉が今も耳にこびりついています。
当時は、中共政府によるチベット人への弾圧が話題になっていましたが、それはウイグル人にとっても他人事ではなかったのです。 行事会場外の喫煙スペースで小一時間ほど語り合ったのですが、彼らは私が信用できる人間だと判断するや堰を切ったように「日本核武装論」を語り出しました。
彼らは日本人が考える以上に、日本に期待しているのです。
以下は彼らの話の要点をまとめたものです(昨年ある小規模なMLで公表したものに若干手を加えました)。ウイグル人の全てがそう考えているかどうかは分かりませんが、彼らと接する機会のない人には、少しは参考になるかもしれません。
「日本は政治・経済の大国として、アジアの民衆のために役立とうとする気がありますか? 大乗仏教の自利・利他の精神がありますか?
もし利他の精神が残っているなら、日本は一日も早く核武装すべきです」
在日歴の長い1人がまず、そう切り出しました。
ムスリムらしく宗教から発想する点は、日本人と違って新鮮な印象を受けましたが、利他の精神と核武装がどう結びつくのか……。
私は「なぜ?」と問い返しました。彼らは口々に答えます。
「中国が最も恐れているのは日本だからです。
この2千年以上、中国は周辺諸国を見下し、次々と武力で侵略してきました(逆に制圧支配されたこともあるけど)。唯一、中国が制圧できなかったのは日本だけです。元寇では台風で自滅し、日清戦争では完敗した。
最近の日中戦争では首都まで制圧された。
日本はアメリカには負けたけれど中国には負けていない。
だから、中国は日本が怖いのです」
「でも戦後日本は、アメリカ・ソ連・中国によって骨抜きにされた。戦争をしないという大義名分の下、経済力だけを伸ばしてきた。
でも、それは利己主義です。利他の精神を忘れたのですか?
少なくとも昔(戦前)の日本は、わが身を殺して、アジア諸国の独立を助けた。
それを軍国主義と非難するのは中国・韓国と日本の左翼だけです。
しかも日本の左翼は『軍備は無意味だ』などと主張する。
それは中国が密かに注入した日本非武装論以外の何ものでもありません」
「もし日本に利他の精神が残っているなら、我々アジアの弱小民族のために、もう一度戦争してくれとは言いません、せめて中国の東から核兵器で中国を牽制してください。
そうすれば、我々のように侵略を受け、弾圧・虐待されている民族が立ち上がった時、中国は現在のような身勝手なことをやりにくくなります。
米国はあてにならない。
いつでもアジアを見放して引き上げることができます。
でも、日本はアジアから引っ越すことはできません。
だからこそ、東側から強国日本が、中国の人権弾圧を睨みつけ介入して欲しいのです」
「核兵器が役に立たない、などという議論は、核所有国が広めたもので、本音は自国の武力の優位性を保持するためのもの。
そんな議論をまともに受けて広める日本の左翼は、中国の工作員と何も変わらないと思います。
中国が最も恐れるのは、日本の核武装です。
米軍が日本から引き上げたら、中国は日本が弱いうちに直ちに攻撃をしかけるでしょう。
中国とはそんな国です。
日本人は、我々と違って、あの国のいやらしさを知らない。
だから、日本は一日も早く核武装すべきです。
自利・利他のために」
現に中共で、弾圧され、虐殺され、投獄されている少数民族の人々は、中国人の残虐さを肌身で知っています。
それだけに、日本人に対する期待は、日本人の想像以上なのです。
しかし、一方で、こんな現実も知っています。
「日本人は自分の民族の誇るべき歴史や英雄を、子供にきちんと教えません。
過去の日本は悪かったとばかり教えます。
なぜでしょう?
我々の国では、学校の教師は漢族ばかり。
漢族が私たちの子供を人質に取り、子供たちにわが民族の歴史を『悪』だったと教え込むので、我々の父母や我々自身が家庭で、子供に民族の誇りを教えています。
こうして細々とながら民族の誇りを語り継いできたのです。
なのに、日本はなぜ、恵まれた環境があるのに、子供たちの精神を損なうようなことばかりするのでしょうか?
いまだに米国と中国の洗脳・呪縛に囚われている大人が多いのでしょうか?
それとも工作員ばかりなのでしょうか?
漢族の教師が漢族の生徒にそんなことを教えたら、一生牢獄から出られないでしょう」
彼らは、少数民族の過酷な現状を知らない日本人が多すぎると嘆きますが、その不満をめったな人には話せないのも事実です。
彼らの中にもスパイがおり、日本人の中にも工作員がいるからです
(少なくとも彼らはそう信じています)。
日本人の多くが戦後いだき続けた観念的な平和思想は、彼らの目から見れば、単なる利己主義でしかないのでしょう。
それはアジアの少数民族を損ない、日本の子供たちの精神を損なっているのではないでしょうか。
ウイグル人との会話を通じて忸怩たる思いを禁じえませんでした。
この会話から1年後の今日、ウイグル人への弾圧が本格化しています。
チベットの独立運動家を粛清したら、次はウイグル。
計画通りの「事件発生」だったのではないかと、私は疑っています。
(池田一貴)
(宮崎正弘のコメント)
貴兄にウィグル人が言った、下記の言葉が一番印象的です。 「我々の国では、学校の教師は漢族ばかり。漢族が私たちの子供を人質に取り、子供たちにわが民族の歴史を『悪』だったと教え込むので、我々の父母や我々自身が家庭で、子供に民族の誇りを教えています。こうして細々とながら民族の誇りを語り継いできたのです。なのに、日本はなぜ、恵まれた環境があるのに、子供たちの精神を損なうようなことばかりするのでしょうか?」
♪(読者の声2)ウィグル人への中国の弾圧。
これに対しての抗議行動が、7月12日(日)日本ウイグル協会の主催で行われ、700名を超える同志が参加した。
日本ウイグル協会のイリハム・マハムティ会長は、涙ながらに
「黙っていても殺される。
民族が抹殺されるのをただ見ていることはできない。
中国共産党政府の虐殺を世界に訴えたいので応援して欲しい」と訴えた。
チベット人を代表してスピーチを行ったペマ・ギャルポ氏は、「ウイグル、モンゴル、チベットなど中国共産党・人民解放軍の俊略を受けた国々は、団結して抗議の声を挙げよう」と、国際的な連帯を訴えた。
「台湾の声」編集長の林建良氏は、「これは、ウイグルの問題ではない。いま起こっていることは、明日の台湾の姿であり、明後日の日本の姿だ。」と、台湾や日本の同志へも共に闘うことの意味を強調した。
日本文化チャンネル桜の水島総社長は、「父祖は、欧米の植民地支配と戦った。いま、世界侵略の最悪の権化は、中国共産党政府である。
この悪の権化を打倒することなしに、世界の平和は実現できない」と、中国共産党政府への戦闘宣言を高らかに告げた。
会場には、地方議員の方々も来られていたが、代表して挨拶をされた全国草莽地方議員の会会長の松浦芳子杉並区議は「私達のできることは、皆様の声を国会へと届けること」と、全国の地方議員に働きかけて支援をしていくことを表明された。
抗議デモには、ウイグル人の参加者も数十名以上に及び、「ウイグルラルガ エルキンリキ!」(ウイグル語で「ウイグルに自由を」の意)と連呼、ウイグル人の虐殺の様子を話すイリハム会長のスピーチには、嗚咽の声が広がり、集会・デモ参加者全員が、「民族消滅の危機」に瀕するウイグルの窮状を日本国民に、また世界の人々に訴えねばとの決意を強くした。
(藤田裕行)
(宮崎正弘のコメント)
ワシントンで、イスタンブールでそれぞれ数千人のデモが行われました。香港、台北、ミュンヘンでも呼応しています。
♪(読者の声3)
「自由主義史観研究会」による歴史教育・道徳教育の講演・研究発表のお知らせを致します。 今年のテーマは【世界が讃えた日本の武士道】です。
《講演》「世界中を驚嘆させた帝国陸海軍人の武士道」 惠隆之介氏に、新たに発掘された感動秘話を講演していただきます。
《研究発表1》「海の武士道」安達弘氏横浜市の教育長が絶賛した、惠氏著『海の武士道』を元にした授業記録・ フォール卿との交歓の模様も添えてお届けします。
《研究発表2》「空の武士道」飯島利一氏今年10回忌を前に、殉職された二人の航空自衛官に捧げる感動の道徳教育。[國民新聞6月25日発行より]10年前、私たちが尊ぶべきサムライが逝った。
平成11年11月22日、航空自衛隊のパイロット2名が、埼玉県狭山市の河川敷に墜落、殉職した。
エンジントラブルを察知し、あらゆる手を尽くしたが、もはや脱出しかない、と判断を迫られた瞬間、彼らの眼下には民家が広がっていた。
見知った飛行コースである。自分の生命が助かったとしても、それとひきかえに市街地はどのような惨事となるか。 「ベールアウト(緊急脱出)!」
管制塔に脱出を宣言してからも、彼らは脱出することなく、コントロールのきかない機体を人のいない河川敷までどうにか運んだ。だが、エンジンの止まった飛行機はどんどん地上に近づいていき、彼らは草むらに叩きつけられ、亡くなった。
その直前、高圧送電線を切断し、近隣都市が停電した。
世間は自衛隊を責め、防衛庁長官(当時)を詰り、空自関係者は謝罪に奔走した。
なぜ、彼らを讃えない? 彼らには助かる選択肢もあったのだ。
しかし彼らは自分だけ助かろうとはしなかった。地上の生命・安全を守りきって、彼らは逝った。もしこんな時代でなければ彼らは〈神〉であった。
事実、台湾の「飛虎将軍廟」に神として祀られた帝国海軍のパイロットがいる。
彼は昭和19年10月、台南上空で米軍機と戦闘中に猛攻を受け墜落しかけるが、 地上の集落への被害を避けるため脱出せず、必死で機体を上昇させるや無人の場所まで飛び続け、ために敵弾に散った。
その一部始終を見ていた台湾住民たちは、身を捨てて村を守ったパイロットを「飛虎将軍」として崇め、現在も朝は「君が代」、夕には「海ゆかば」を歌ってお祀りしている。
また昭和5年には、英国留学中の帝国海軍パイロットは、ロンドン上空を操縦中、空中火災事故にあって全身火だるまの重傷を負いながらも脱出しなかった。
ロンドン市街に被害を出さないよう機体を捨てず郊外まで飛行を続けたのである。このニュースは英国中を感動させ、英国人子弟の道徳教育にも資された。
これが日本人の武士道であり、尊ぶべき歴史なのだ。
歴史を奪われなかった台湾の人々はいまも彼を敬い、一方の日本では、自衛隊機の墜落がいかに民間に迷惑をかけたか、こぞって報道した。
何かおかしくはないか?
「何かが絶たれてゐる。豊かな音色が溢れないのは、どこかで断弦の時があつたからだ」
三島由紀夫の『文化防衛論』の冒頭の一節に、強く共感する。我々が讃えるべき英雄、そして彼らが守り伝えてきた我々の歴史が断絶している。
これを我らの手で取り戻し、彼らの列に連なりたいと思う。
《自由主義史観研究会広報 「歴史と教育」編集長
飯嶋七生》http://www.jiyuu-shikan.org/event.html
●日時:平成21年7月25日(土)14時00分
●会場:機山館(文京区本郷4丁目37-2 電話 03-3812-1211)
●交通機関:地下鉄丸ノ内線・都営大江戸線「本郷三丁目」駅から徒歩2分
● お問い合わせ 自由主義史観研究会電話:03-5800-8515/FAX:03-6682-3260/メール:staff@juyuu-shikan.org
(自由主義史観研究会)
(宮崎正弘のコメント)いま読んでも名文ですね。
「何かが絶たれてゐる。豊かな音色が溢れないのは、どこかで断弦の時があつたからだ」
(三島『文化防衛論』)。 △ ◎ △
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 平成21年(2009年)7月13日(月曜日)貳 通巻第2662号
新彊ウィグル自治区の南方(南彊)に警備重点を移行
カシュガル、ホータン、イリを周永康(公安系ボス)が緊急視察
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カシュガル、ホータン、イリはイスラム教の聖地をかかえ、多くの敬虔なウィグル人が住まう。北部ウィグルと異なり、工業化、近代化が進んでいない。
北部(北彊)はガス、原油などの生産基地があって石油化学、金属冶金などの産業が発達したが、南彊は核実験場とされたり、砂漠地帯が北彊とを地形的に分けているためだ。
イリでは1997年「イリ暴動」が起こった。ホータンでも昨年は数百のデモがおこり、またカシュガルは中世からのイスラム城が取り壊され、世界遺産の指定を自らはずし、住民を近郊のアパートに強制移住させた。
カシュガル城旧市内の破壊は文化と歴史の破壊であり、「あれはまさにバーミャンの石仏をミサイルで破壊したタリバンの暴挙に匹敵する」と批判が強い。
さてウルムチでは騒擾から一週間を閲し、モスクの一部が再開され、街は平穏を回復した、かに見える。モスクの再開を当局が許可したのは犠牲者の葬送をウィグル人が行うためであり、しかしモスクや周辺の壁には「密告奨励」のビラが貼られている。
ウルムチには6月に広東の玩具工場でおきた漢族との武力衝突以後、同工場で働いていた600名のウィグル人労働者が帰っている。
在米華字紙の論調は「上は国家安全部から下は武装警察まで総力をあげて『テロ』に挑んだと言いながら、大規模な騒乱を防げず、これは政府無策による虐殺であり、政府に責任がある」とするものが目立つ
(たとえば博訊新聞網、7月12日)。
同紙はつづけてこういう。
「工業化で恩恵を受けたのは入植した漢族が殆どであり、石油企業、金融、輸出企業などにウィグル人が雇用されておらず、教員も北京語が強要されて以来、30万人のウィグル人教職員が追放され、貧富の差はますます拡大した。
とくに王楽泉・書記とその家族は比べる者がないほどの富を得た。
中央政府は実態をみずして、胡錦涛は「『宗教指導者』『民族分裂主義』『テロリスト』の“三股勢力”が騒擾の原因である」などと言いつのり、団結を叫んだものの、『中華民族』の標語は虚ろであり、このあまりの少数民族への虐待に、かれらウィグル人が民族の記憶を呼び覚まし、国際社会における汎トルコ主義に目覚め、独立を目ざすのは自然の流れと言える」。
7月11日には中央政治局常務委員の周永康(政法委書記)は国務院ならびに軍の高官を引き連れて、急遽、ホータン、カシュガル、イリを視察し、「ウルムチはおさまったものの、これら三地域では暴動再発の危機は高まっている」とした。
「カシュガルは嘗て短命に終わったとはいえ分離政権が存在した地域でもあり、『三股勢力』が猖獗している。ホータンもイスラム原理主義過激派が強いカシミールの国境と近く、テロリストの密輸ルートである」などとして、特別警戒に入った
(多維新聞、7月13日)
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