◎世界の新聞「101紙」の視点 最近の社説から、臓器移植法案について書かれたものを見てみる。 | 日本のお姉さん

◎世界の新聞「101紙」の視点 最近の社説から、臓器移植法案について書かれたものを見てみる。

◎世界の新聞「101紙」の視点

独断と偏見はご容赦!
【最近の社説の、ここに注目】

最近の社説から、臓器移植法案について書かれたものを見てみる。


朝日。
『心臓などの移植を受けるには海外に渡るしかなかった子どもたちにとっては朗報といえる。』

『3年後とされていた現行法の見直し時期が過ぎて10年近い。これ以上の放置は許されなかった。』


『とはいえ衆議院の委員会での審議はわずか8時間。勉強会などへの出席者も少なく、態度を決めかねた議員が多い中で結論を急いだ面も否めない。』

『なによりこの改正案は、本人の書面による意思の表明を前提とする現行法の枠組みを一変させるものだ。』

『同時に提出されていた三つの改正案は、いずれもこの現行法の根幹を守っている。採決には至らなかったが、その事実は重く残る。』

『ほかの案の意図するところは、臓器の提供は本人の意思に基づくのが本来のあり方で、子どもの場合でも可能な限り、そうあるべきだということだ。現状では無理のない考え方だろう。』

『舞台は良識の府とされる参議院に移る。議論を重ね見識を示してほしい。』

『「脳死」は医学の進歩で生まれた、いわば新しい死だ。法律で死と定めることの影響は、医療現場をはじめ広い範囲に及ぶ。日本弁護士連合会や学会などから、拙速な法改正は慎むべきだという意見が出ていた。』

『こうした強い反発に加え、提案者自身の戸惑いゆえに軌道修正を図ろうとしたのだろう。参議院ではまず、この点を明確にしなければなるまい。』

『また、この法案は、親族への優先提供を認める。これは臓器移植システムの公平性の点から問題がある。』

『臓器移植は、臓器を提供した人の死と、その臓器を移植された人の新しい生という両面を必然的に持つきわめて特殊な医療だ。どちらもゆるがせにはできない。社会としてどう進めていくのか、死生観も絡む重い問題だ。』

『現行法の下での経験や実績をもとに、社会の変化も踏まえ、納得のいく結論を出さねばならない。』


産経。
『ドナー(臓器提供者)不足が深刻化する一方で、移植を受ければ助かる患者は少なくない。他の3案に比べドナーを確実に増やせるA案の可決を評価したい。』

『送付された参院でも早期に審議を進め、今国会で成立させるべきだろう。』

『ドナー不足は深刻である。』

『日本は国際社会から「自分の国に期待できないからと、海外のドナーに頼るのはおかしい」と批判を受けてきた。この国際的流れに目をそむけてはならない。』

『ところが、日本の脳死ドナーは年間10人前後で、数千人規模の欧米の移植先進国と比べてあまりにも少ない。』

『ドナー本人が生前、書面で臓器提供の意思を明確に示すよう求めている現行の臓器移植法が足かせとなっているからだという。』

『普段から自らの死後について考えている人も少ないだろうから、この「本人の生前同意」は臓器提供に結び付きにくい。』

『臓器移植法は、(中略)臓器を自らの死後に提供しようとする善意のドナーと、その臓器を必要とする患者とを結び付けて支える法律でなければならない。A案はこの趣旨に沿っている。』

『ただ、現行法は臓器提供の場合に限って「脳死を人の死」とし、脳死を人の死とは認めない死生観の人々との妥協点を見いだそうとした。それに対しA案は「脳死は人の死」を基本にしている。』

『さらに、親の同意によって15歳未満の子供からの臓器移植にも道が開かれることになったが、子供の脳死判定の難しさや親の感情にこだわる声もある。こうした問題をどう解決していくか、参院での審議に期待したい。』


東京。
『本人意思を尊重した現行法を根幹から変えることになり、不安を覚える国民は少なくない。参院で審議を尽くしたい。』

『A案が成立すれば、移植推進派の期待通り提供者がある程度増えるのは間違いないだろう。だが、衆院で四割近い議員がA案に反対したことは軽視できない。』

『現行法に厳しい制約がつけられたのは、六〇年代後半に行われた不適切な心臓移植が批判され、透明性を高めることが狙いだった。』

『その後の日本移植学会の移植例をみると、現行法を順守し、大きな問題になった手術例は今のところ見られない。』

『かつてのような不透明な移植が今後行われるとは思われないが、それでも参院でA案が成立すれば、脳死になった患者の家族へ提供に向けた無言の圧力や誘導が働くのではないかとの懸念はまだ払拭(ふっしょく)されていない。』

『B−D案が主張こそ違え、現行法の根幹である本人意思の尊重を重視していたのは、こうした危惧(きぐ)の表れだろう。A案支持派はこの疑問にこたえる必要がある。』

『現行法には確かに改正を要する点がある。最大の問題は、提供者の年齢制限のため幼い子供が国内で移植を受けられないことだ。

『これまで多額の寄付金を募って海外で手術を受けてきたが、その道も閉ざされつつある。』

『衆院の採決で多くの政党が党議拘束をはずしたように、臓器移植法をどう改正するかは各議員の倫理観や死生観と深くかかわるだけに「数の論理」だけで割り切るのはどうか。』

『本人意思の尊重と子供の国内移植をどう両立させるか、国民全体でこの重い課題を考えることが迫られている。』


日経。
『海外に頼らない移植医療を実現するための第一歩として評価したい。』

『移植臓器は海外でも不足しており、外国頼みの日本の移植医療に対し国際的な批判も強い。世界保健機関(WHO)が渡航移植の自粛を求める新指針を決めようとしている。』

『現行法は、臓器提供について本人と家族双方の意思が明確な場合にだけ脳死を死と判断することを認め、脳死者からの臓器提供を可能にした。』

『これは個人の死生観を尊重し、脳死を死と考えない人や臓器提供したくない人の意思が確実に生かされるよう配慮した結果だ。海外と比べて厳しい条件を課している。』

『内閣府の世論調査では、提供意思を示していた家族のだれかが仮に脳死判定を受けた場合、その意思を尊重するとした意見が8割を超えた。しかし脳死移植への懐疑的な意見は根強く、その背景には医師への不信がある。』

『医師主導とみられがちな移植医療への不信をぬぐい臓器提供を確実に増やすには、中立的な立場で臓器提供を橋渡しする移植コーディネーターの機能を高めるなど制度づくりが欠かせない。』

『参議院でも議論を重ね、自国内で完結する移植医療の実現と、個人の死生観の尊重が両立する制度を目指してほしい。』


毎日。
『脳死を人の死とする法案「A案」があっさり可決された。臓器移植法改正4法案をめぐる衆院本会議の採決に、とまどいを感じる人は多いのではないか。』

『長年たなざらしにされてきた法案である。各案が十分に検討されたとはいえず、議員や国民の間に理解が行き渡っているとは思えない。参院は課題を改めて整理し、議論を尽くしてほしい。』

『長い議論を経て成立した法律だが、脳死移植を推進する人々は、現行法の厳しさが臓器提供を妨げていると指摘してきた。』

ただ、本人同意を条件からはずしたからといって、提供が確実に増えるとは限らない。家族が判断する際には本人の意思を推し量ろうとするはずで、それには前もって脳死や移植について話し合っておく必要があるだろう。』

『これは、現行法の下でも、移植を進めようと思えば欠かせなかったことだ。しかし、現実には、国民の関心を高める努力は不十分なままだ。』

『子供の場合には、脳死判定の難しさや、親の虐待による脳死を見逃さないようにするという課題もある。子供に限らず、提供者の死因をきちんと確かめる体制を確保しておくことは、脳死移植への信頼性を確保するために不可欠だ。』

『親族に優先的に臓器提供できる規定についても、現行法が原則とする「公平性」の変更による弊害はないか。親族の範囲をどう限定するか。さらに慎重に検討すべきだ。』

『現行法にせよ、A案にせよ、生体移植の規定がないことも問題だ。』

『日本で多数実施されている生体移植では、臓器提供者に後遺症が残るなど、不利益が及ぶ場合がある。今は学会レベルの規定があるだけだが、提供者保護は法律で規定すべきではないか。』

『移植を待つ患者側はA案を歓迎すると思われるが、脳死移植でも生体移植でも、提供者側への配慮を忘れてはならない。WHOの指針案の全体像を、きちんと把握した上での議論も欠かせない。』


読売。
日本国内では臓器移植を厳しく制限しながら、海外で臓器をもらう。こんな状況を、続けるわけにはいかない。』

『多くの衆院議員がそう認識し、国内での臓器提供の拡大を図る意思を明確に示したと言えるだろう。』

『棄権を決めた共産党以外は党議拘束をはずし、議員一人ひとりが自らの信念で記名投票した。』

『A案は、(中略)世界保健機関(WHO)の指針や主要各国の臓器移植法とほぼ同じものだ。』

『日本の現行の臓器移植法は、臓器提供の条件が世界の中で突出して厳しい。』

『こうした日本の現状に対して、海外の視線は厳しい。』

『採決されなかった3案には、(中略)提供条件を部分的に緩和する案もあったが、現状を根本的に改めることは難しい。』

『臓器移植法改正案の審議は、舞台を参院に移す。さらに新たな提案を模索する動きもある。』

『死生観を問われる難しい問題だが、これ以上、結論を先送りすることはできない。』


---------------------------------------------

新たな「人の死の定義」が、衆議院で決められた。

個人的には賛成であるが、とても難しい問題だと思う。

国内主要紙では、一番推進しているのが読売紙、一番慎重なのが毎日紙というところだろうか。


こうした問題。

私自身のことでいえば、脳死でなくとも、いわゆる植物状態となり回復する可能性が低いとしたならば、安楽死させてもらって臓器でも何でも持っていって構わないと思う。

しかし、他者に対しては違ってくる。

仮に、自分の愛する人が脳死と判定されたとしたら。

体が温かく、心臓も動き、呼吸もしている状態で、「この人もう死んでますから」などと言われても、納得しかねるように思う。

死生観は、人それぞれだろう。

そして、そのそれぞれの人がまた、誰を対象にするかということで意見が違ってくることもある。

本当に難しい問題だ。


東京紙の、
『脳死になった患者の家族へ提供に向けた無言の圧力や誘導が働くのではないかとの懸念』は、私も危惧するところだ。


また、毎日紙の、

『本人同意を条件からはずしたからといって、提供が確実に増えるとは限らない。家族が判断する際には本人の意思を推し量ろうとするはずで、それには前もって脳死や移植について話し合っておく必要があるだろう』

『これは、現行法の下でも、移植を進めようと思えば欠かせなかったことだ。しかし、現実には、国民の関心を高める努力は不十分なままだ』

『提供者側への配慮を忘れてはならない』

などの一節は、賛成派といえども考えるべきところだろう。
(桐鳳)

◎世界の新聞「101紙」の視点 のバックナンバーはこちら

~~~~~~~

親と非常に仲が悪い友人の場合、万が一友人が

脳死になったら、親が即、遺体を勝手に医学部の解剖用や

臓器移植に回しそう。

実際、そういうことも平気でやりかねない親なのです。

by日本のお姉さん




http://archive.mag2.com/0000174275/index.html