おおらかで明るくてグダグダな人々 | 日本のお姉さん

おおらかで明るくてグダグダな人々

インドネシアのチャリティーコンサートに

インドネシアのスマップ的存在のロックバンド、

GIGI(ギギ)が参加するという情報が入ったので、

GIGIのファンとしては逃すわけにはいかない。

GIGIは、インドネシアに住んでいても

なかなかコンサートチケットが手に入らない超有名な

人気ロックグループなのだ。以前、ジャカルタでコンサートが

あった時は、チケットが買えなかったファンが暴れたらしい。

わたしは、バリに行くという友人がいたら、

GIGIの最新のアルバムを買ってきてもらっている。

車の運転中は、GIGIの曲をよく聞いている。

自分ではかなりのファンだと思っている。

今回は、日本に住んでいるインドネシア人を慰めるための

チャリティーコンサートなので、参加費はたったの

1000円だし、GIGIの新しいCDも1000円だから

かなり良心的。始まる時間はお昼の12時だったが、

ちっとも始まらない。でも、会場のインドネシア人は

全然、気にしていない。1時過ぎに会場に入れたが

なかなか始まらない。でも、インドネシア人は気に

していないで、会場に座った後で、昼ご飯を食べに

出たりしている。

最初に10組ぐらいのいろんなインドネシア人のバンドや

舞踏グループが出演し、GIGIは最後の方でしか演奏を

しないので、GIGIめあてのインドネシア人は、

大幅に遅れて会場に入ってくる。4時ぐらいには、会場は

ほぼいっぱいになっていた。

インドネシア人の出演者のボーカルの持つマイクに

すごい雑音が入ったり、ドラマーがスティックを演奏中に

飛ばしたり、バリ舞踊を踊った人が後ろ向きで退場する際に

舞台の壁に掛けてあるスピーカーに頭をぶつけたり、

いろんなハプニングが起きても、みんなは気にしない。l

コンサートは、終わりに近ずき、いよいよGIGIの登場だ!

インドネシア語でGIGIのボーカリストのアルマンドが

ジョークを飛ばすので、みんな笑っている。

すごく、観客を乗せるのがうまい。インドネシア語が

分からないので何を言っているのか

さっぱりだが、インドネシア人は、すごく喜んでいる。

GIGIの曲は、どの曲も日本人でも安心して聞ける

いい感じの曲ばかり。2年前に大阪にGIGIが来た時は、

ライブが終わった時は、9時ごろだったが、今回は

GIGIは、少ししか演奏してくれず、

予定よりほんの30分遅れの6時過ぎに終わった。

2年前は、たくさん歌ってくれて、アンコールにも

どんどん答えてくれたのだが、大阪のインドネシア人は

ノリがよかったからサービスしてくれたのだろうか。

でも、コンサート会場を出ると、会場の出口でGIGIと、

お食事を一緒にして写真も一緒に撮らせてもらえる

お食事券が3000円で売っていた。食事会があるから

GIGIは、たくさん歌えなかったのだと思った。

食事会は7時から開始になっていた。

本当に、GIGIとお食事ができるのか、一抹の不安はあったが

会場でレストランの場所を聞いて、即、地下鉄に乗って

その場所に向かった。30分で着けたので7時ジャストに

ついたのだが、

なんと、GIGIは、すでに食事を開始していた!7時から

開始なのに、もっと早くから食べ始めていたのだ!

しかも、会場は、繁華街の地下のスナックのような場所で

GIGIを囲んでいるテーブルは1台だけ。

そして、奥のテーブルには、一般客たちが座っていて、

インドネシア美人ホステスの接待を受けている最中だ。

GIGIといっしょの食事会を開催するなら、一般客は

遠慮してもらって貸切にするべきだろう。しかし、

なぜ、GIGIを囲んでの食事会なのにテーブルが

一台しかないの?せめてコの字型にテーブルを

三台並べて、最後の晩餐の絵のように、GIGIを

中央に座らせて、みんなでいっしょに食べるよう

レイアウトを考えたらいいのに。それになぜ、7時前から

少人数で先に食べてんのさ。

GIGIを囲んでテーブルについている人は、ほんの

7人か8人ぐらい。どうしてこんなに早くコンサート会場から

ここのスナックに来れたのか!?車でGIGIと一緒に

来たのか?スナックのインドネシア人のママは、

「7時半からね。最初の人、終わってからね。ごめんね。」と

言っている。その時点で不吉な予感がしていたのだが、

とにかく、言われるまま、出口付近のイスに座って

待つことにした。客たちは、GIGIとしゃべりながら、

ビールなどを飲み、前菜やら春巻きやらを食べている。

そのうち、ミーゴレンやらナシゴレンやらチマキのような

物を食べだし、デザートまで出ていた。すでに1時間が

過ぎようとしている。こちらは、お腹が減ってフラフラだ。

みんな、楽しそうに談笑して飲んで食べてゆっくり

しすぎだよ。GIGIは、食事が終わったら、第二陣と

一緒に時間をどうつぶすのだろうか。だんだん不安に

なってきた。テーブルに座った連中は、GIGIと写真を

撮らせてもらったりしている。奥の席の一般人まで

やってきて、GIGIとしゃべっている。しかも、その中の

一人は、誕生日だったらしく、いきなりアルマンドが

インドネシアのお誕生日の歌を歌いだした。

こんな店でアルマンドの歌が聴けるとは!でもヤバイよ!

第二陣と一緒にご飯を食べてくれないような予感が

してきた。デザートを食べだすGIGI。

GIGI.は、本当に一緒に過ごしてくれるのか!?

待ち切れなくなったわたしは、隣のイスに座ったインドネシア人

のボクに、「そのカメラで撮るんですか?撮ってあげ

ましょうか?」と提案。その代わり、わたしとGIGIを、わたしの

カメラで撮ってくれと頼み、交渉成立。二人でアルマンドの

後ろに行き、「ボレ ムンフォトカン?」とめちゃくちゃな

インドネシア語で、とにかく、写真を撮りたいと要求すると、

「ボレ!」と言ってくれたので、まず、インドネシアのボクに先に

アルマンドの後ろに立ってもらって、写真を撮った。

ボクに撮った写真を見せると、不機嫌になって、

「もっとアップにしてくれないと、ダメ。」と言うので

再度、GIGIに頼んでアップで撮る。今度は満足してくれた。

次はわたしの番だよ~!アルモンドとギタリストの

後に立つと、他のメンバーもわたしの隣に立ってくれた。

前に座っている日本人が、「あ!GIGI(全員)と撮れたね!」と

一緒に喜んでくれた。

うれしくてニンマリしちゃった。

後で、写真をみると、わたしは本気で笑っていた。

さあ、第一陣は、食べ終わった。次は第二陣だ!

すばやくアルマンドの前の席に座ったら、

スナックのインドネシア人のオーナーが、

「GIGIは、体調が悪いのでこれで帰ります。写真を

撮る人は、3分で撮って~。」と言う。

第二陣のみんなは、必死でGIGIと一緒に

写真を撮らせてもらっていた。さっき写真を撮ってあげた

インドネシアのボクもすかさず、GIGIの前で写真を

連続で撮りだした。

ボクに「あなたは撮らないのか?」とインドネシア語で

聞かれたので、「さっきので、いいねん。」と日本語で答えた。

ボクは、アルマンドや他のメンバーに、自分の着ている

Tシャツの上にマジックでサインを書いてもらっていた。

よく見ると、Tシャツのガラは、CDジャケトと一緒のガラだ。

マルマンドが、「あれ、GIGIのTシャツ。どこで

手に入れたの?」とボクに言うと、ボクは、

「自分で作ったんです。」と誇らしげに答えていた。

東京から一人で、参加したそうだ。

GIGIのCDの表紙を使ってTシャツを自作して、

そのTシャツでインドネシア人には高額な3000円の

お食事券を購入して、GIGIに会いに来て、

Tシャツにサインをしてもらったのだから、ボクは

本物のGIGIのファンだ。食事会に参加しようとして

集まった第二陣の日本人のファンたちは、いろんな

物にサインをしてもらっていた。

わたしは、その様子を眺めているだけで、GIGIとは、

何もしゃべることがないままでいた。

GIGIは、写真を撮らせて、サインをして

帰っていった。後に残された第二陣は、御飲物券を

渡されて、「ごめんね。最初の人は、お皿ベツベツ

だったけど、たくさんだから一緒に食べてね。」と

スナックのインドネシア人のママは言って、

いきなり、どかんどかんとミーゴレンとナシゴレンを

大もりにして持ってきた。

最初の人のお皿には、蘭の花までついていたのに。

これで3000円とは、ぼったくりではないか。

でも、GIGIが、食べ終わっても、そのまま残って

第二陣の客の相手をするのも、大スターなのに

ありえないし、これが、インドネシア人の方法なのだと

納得した。ミーゴレンとナシゴレンを食べ終わった頃、

春巻きが出てきたが、明らかに数が少ない。

奥の席の方から主婦っぽい人が出てきて

すばやく、春巻きを皿にどかどかと盛っていってしまい

わたしとボクとわたしの前に座った日本人のボクの

春巻きが無い。

スマックのママに「春巻きが足りません。」と言うと

「今、つくってる。ごめんね。」と言う。

チマキが出たので今度はすばやく、自分とボクたちの

分を確保した。GIGIがいないから、3000円分、

しっかり食べるしかないではないか。

インドネシア人のボクは、チマキを半分残して、今晩は

友達のところに泊るからと言って帰っていった。

春巻きが出てこないのでスナックのママに聞くと、

「あの。無いです。ごめんね。」と、言われた。

デザートも出てこないので、前に座っている日本人の

ボクにさようならを言ってスナックを後にした。

スナックのインドネシア人のママは、

日本人のおじさまのお客を送りだすように外に出てきて

くれて、「ごめんね。ごはん。ごめんなさいね。」と言って

深く日本式におじぎしてくれたが、GIGIが疲れて早く

帰りたいのも分かるし、段取りが悪くてこうなったのも

分かるし、赦すけど、でも、

デザートも待っても待っても出てこないし

春巻きも結局、二度と出てこなかったのは、ちょっと

納得がいかない。売ったチケット分は、春巻きやデザートは

用意しておくべきだろう。

でも、これがインドネシアなのだ。

わたしが、もし、日本人の駐在員の妻だったら、たぶん、

ノイローゼになって、家族よりも早めに日本に帰国して

いる口だろう。わたしは、インドネシア人の段取りの悪さには

我慢できないタイプだろう。ホテルに帰ると10時を過ぎて

いたから、第一陣は、相当ゆっくり食べていたようだ。

彼らだけは、GIGIと談笑しながらビールを飲んで、

お花が添えられたしゃれたお皿で食事をして、

大きなカップに入ったみつ豆のようなデザートを

食べることができたのだ。いったい、どういうこと?

次の日、友人の家で、お食事会の話をすると、

「それって詐欺みたいなもんや。最初の客はたぶん

関係者や。」と言っていた。

「どうせ、GIGIと写真を撮らせる分が2000円で

食事代は1000円ぐらいやったんや。」と、友人はわたしを

慰めるためか、ちょっとだけ怒ってみせてくれた。

「でも、これがインドネシア式なんやと思った。」と、

わたしは答えた。計画性が無くて、約束通りにいかなくても、

「ごめんね。」で、すべてが終わるのだった。

第二陣のファンの日本人もさして怒っているようには見えず、

なんだか、インドネシア風なやり方に慣れているようにも

見えた。インドネシアと関わるなら、それぐらい

我慢しないといけないのであった。

暑い国で、きっちり仕事をしようと頑張ったら死ぬよと

インドネシアに詳しい人も言っていたっけ。でも、何日か

たっても、まだ納得がいかないわたしは、たぶん、

外国に住んだら早く死ぬ人なんだろうと思う。