「オバマの軍事外交姿勢」冷泉彰彦   :作家(米国ニュージャージー州在住) | 日本のお姉さん

 「オバマの軍事外交姿勢」冷泉彰彦   :作家(米国ニュージャージー州在住)

最近、オバマ大統領の印象が薄い。

(犬を飼いはじめたということが、なぜ、アメリカで

ニュースになるのか謎だ。犬のニュースを日本に

紹介する日本のマスコミにも腹が立つ。)

アメリカは、北朝鮮に関して何にもしてくれない。

アメリカは、日本にとっては、役に立たないが

金は取るという嫌な国になっている。そんな薄い印象の

オバマ政権のアメリカだが、冷泉氏は、オバマ大統領は

よくやっているという風に受け止めている。

北朝鮮の存在は、ちょうど、チュウゴクと韓国との

緩衝材の役割を果たしていて、

難民や兵士が韓国やチュウゴクや日本に流れてこない

だけでもありがたいことなのかもしれないとも思う。

北朝鮮の人民が、餓えて死のうが、拉致された日本人が

戻らなかろうが、アメリカには、関係ないようだ。

そのうち、北朝鮮は、チュウゴクからもらった技術と

日本から持っていった機材でミサイルをアメリカに

飛ばせるようになるが、それがはっきりするまでは、

アメリカは北朝鮮に何もしないらしい。

日本は、それまで、指をくわえて北朝鮮がまたミサイル

実験をするのを見ているだけでいいのか?

なんでもアメリカ様のするとおりに任せていて日本は

自国を守れるのか。北朝鮮の恫喝に怒りもせず、

勝手に日本に向けてミサイル実験を行う北朝鮮に対して

警告しかしないアメリカに、日本の防衛を100%任せて

それでも、一国の独立国と言えるのだろうか?

軍隊も無い国では、独立国というより、アメリカの衛星国で

いるしかないよね。弱くて貧乏で、何もしないアメリカの

衛星国でいて、何か得なことは、今後あるのだろうか?

強いアメリカ、しっかりした金持ちのアメリカは、頼りがいが

あったけれど、過去は過去。今まではそれでよかったの

かもしれないが、世界はどんどん変化していっている。

今後も、日本人は牙や爪をもがれたライオンのように、

自前の軍隊無しでおとなしく伏せているつもりか。

猫でも、イジワルをしたら「フ~ッ!!」と吹いて、

爪を出して引っ掻きますが。


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『from 911/USAレポート』第404回
 「オバマの軍事外交姿勢」 冷泉彰彦   :作家(米国ニュージャージー州在住)

 北朝鮮の「衛星打ち上げ・長距離ミサイル」兼用ロケットの打ち上げ実験という事件は、アメリカのオバマ政権をめぐる政治事情から見ると、どんな政治的な流れの中で受け止められているのでしょうか? アメリカのオバマ政権にとっての意味合いですが、この打ち上げという事件は「迷惑」以外のなにものでもありません。ですが、明らかに「迷惑」なのに、アメリカは平静であるように見えます。そこには、何があるのでしょうか?

「迷惑」というのは、政治的圧力をかけておきながら、堂々とそれを無視して「打ち上げ」が行われ、メンツを潰されただけではありません。打ち上げの強行というのはオバマ大統領が選挙期間中に公約として掲げてきた三つの軍事外交方針に対して「堂々と足を引っ張る」行為に他ならないからです。それは(1)世界的な核軍縮、(2)ブッシュ時代の敵国との緊張緩和、(3)大規模な軍事費の削減の三つです。


 例えばこの中の(1)と(2)については、今はオバマ政権の国務長官に就任しているヒラリー・クリントンとの熾烈な大統領候補指名争いの中での重要なエピソードになっています。まず、核軍縮についてですが、ヒラリーが大きくリードしていた2007年8月の時点で、オバマは「アフガニスタンや対ビンラディンの戦いでアメリカが核兵器を使用するということは考えられない」と発言、これに対してヒラリーは「合衆国大統領になろうとする者は、核の使用・不使用ということについて軽々しく発言すべきではない」と猛攻撃を加えています。ですが、この後もオバマは「最終ゴールは全世界として、そしてアメリカとしての核廃絶」という主張を変えてはいません。

 また「直接対話」という部分もヒラリーとの、そして本選挙におけるジョン・マケイン陣営との選挙戦において大きな争点になりました。基本的にはイランと北朝鮮を想定しての舌戦でしたが、オバマは「ブッシュ政権の直接交渉せずという方針が危機を深めた」として、自分が大統領になったら「思い切ったトップ交渉で事態を打開する」と再三繰り返しており、これに対してはヒラリーやマケインは「大統領自らが敵
の宣伝に利用されるようなことがあってはならない」として非難を浴びせています。

 最後の軍事費削減は、選挙を通じての論戦や公約という形では目立ってはいませんでしたが、就任前後からの金融危機対策、特に財政赤字を覚悟しての財政出動に際して「自分の一期目が終わるまでに赤字は半減させる」という発言が何度も行われ、その赤字削減策の一部として軍事費カットという問題が具体化しています。その際には、(4)冷戦型の軍備には予算を投入しない、という方針も明らかになっていますが、こうした発言の全体として「軍事軽視」であるとか「反戦大統領」というイメージを与えてしまうと、共和党支持者などから猛反発が起きる可能性があります。

 そこでオバマ大統領としては米国にとっての脅威は「アルカイダ」であり、その拠点となっているアフガニスタン情勢を好転させるために兵力の増派と、軍事費の追加をするということをハッキリ打ち出しています。どうして「アフガン(とパキスタン)」なのかというと、911の記憶の新しいアメリカの世論にはこれがアピールするからであり、同時にブッシュの始めたイラク戦争には自分は積極的ではない、むしろブッシュはアフガンを軽視してイラクにのめり込んでいったのが間違い、という主張が選挙戦術として有効だった、そんな政治的判断があると思われます。

 ちなみに、思い切った「核軍縮」宣言を行った2007年の8月には、これと前後して「アルカイダを叩くためならパキスタン領内への米軍侵攻も辞さず」と発言して、これもまたヒラリーから「パキスタン政府の主権を無視した危険な発言」として非難されましたが、今から考えるとこの両者はセットになっていたのです。つまり、アフガン=パキスタンに関しては強硬論者であることを貫いて大統領(候補)としての求心力は維持し、同時にその他の地域では思い切った緊張緩和を通じて軍事費をカット、最終的には核廃絶も視野に入れるというスタンスです。

 このようなバランス感覚、つまり一見すると理想主義的な平和志向に見えながら、そのウラには現実的な政治感覚があるということ、軍事外交に関してもかなりのレベルで政策にブレがないことがオバマの身上だと言えます。例えば、北朝鮮のミサイル兼用ロケットの発射で太平洋が揺れた直後に、オバマ大統領はNATO軍の基地のあるアメリカの同盟国トルコを訪問していました。一説によればこの地では、シリアと関係のある人物による暗殺計画が発覚するといった物騒な話もあったのですが、無事に「米国とトルコの友好関係」をアピール、G20に続いての一連の外遊を締めくくったかに見えました。

 ちなみに、このトルコ訪問というのは、なかなか戦略的に練られた行動です。まず、トルコというイスラム教国との堅い同盟をアピールすることで、自分こそアメリカが「文明の衝突」を止める役なのだという誇示ができます。トルコは昔からアメリカの同盟国であり、ブッシュ政権時代も決して関係は悪くなかったのですが、オバマという「イスラム教徒を父に持ち、そのことへの攻撃を乗り越えた」存在が、改めてトルコとの友好を正面に押し出すと、世界的なアメリカのイメージアップにつながるから不思議です。

 ただ、この「友好関係」ですが決してきれい事だけではありません。これは、暗黙の内に「クルド人」に対する強いプレッシャーになるのです。クルドの人々は、現在のトルコ、イラク、イランを中心とした山岳部に住む民族で、彼等が本当に独立をしようとするとトルコは自国領が削り取られれてしまいます。仮にクルド人がイラク北部、キルクークの石油収入を得て独立し、その経済力をもってトルコ領内の自民族居住地の「切り取り」を行うというシナリオはトルコにとっては恐怖以外の何物でもありません。クルド労働党という対トルコ強硬派は、このために厳しい弾圧を加えられているのですが、今回の「文明間同盟」アメリカ=トルコ蜜月の演出は、こうしたクルド人に対する締め付けという効果、そしてクルド人が更に一層穏健化することでのイラク北部情勢の安定化を狙っていると言えるでしょう。

 オバマ大統領の外遊はトルコでは終わりませんでした。トルコ訪問の直後、大統領への就任後初めてイラクの駐留米軍を「電撃訪問」しています。表面的には、CNNなどにより「まるで芸能人が来たように大騒ぎをした米兵の様子」が映像として世界にバラまかれる中で、「そもそもイラク戦争に反対だった」にも関わらずオバマ大統領は前線兵士に強烈に支持されており、オバマ政権のゲイツ国防長官による撤退計画もスムーズに行きそうだという印象を与えています。それだけでも政治的な効果が抜群なのですが、トルコ訪問とこのイラク電撃訪問を重ねて考えれば、更にクルド人の過激な行動は許さない、イラク軍による自力でも治安回復をせよ、というメッセージもそこには透けて見えます。

 さて、今回のトルコ訪問では、オバマ=ヒラリー外交は「アルメニアとトルコの和解」を取り持つという大胆な策にも出ています。アルメニアはクルド人と同じように、オスマントルコの瓦解のプロセスにあって独立を志向する中、トルコによる大量虐殺の被害にあったという主張を持っている国です。そのアルメニアとトルコとの和解が現実のものになれば、更に一層強い形でクルド人の反抗を抑え込む形になりますし、
仮にアルメニアとアゼルバイジャン、グルジア(ジョージア)のカフカス三国が親米色でまとまれば、ロシアにもイランにも大きな圧力を加えることができるわけで、相当な深謀遠慮がある策と言えます。


 もっと言えば、今回のトルコ、イラク訪問、アルメニアとトルコの和解演出という行動は、この地域において、イランとシリアに対する強烈なメッセージになっているとも言えます。それぞれに、水面下の外交では対米和解の方向も見え隠れする両国ですが、こうしたトルコ=イラクのラインをアメリカが強烈に押さえることは、このシリアとイランに「勝手をさせない」ための政治的圧力に他なりません。噂の域を出ませんが、仮に今回のミサイル兼ロケットの打ち上げ実験に、この両国の代表という「見込み客」が招待されていたのだとしたら、これに対するオバマ流の返答だということもできるでしょう。

 ちなみにイランに関して言えば、アフマデネジャド大統領が核開発プロジェクトの推進を止めない中、オバマ政権とは水面下の交渉が続いています。今回のトルコ、イラク訪問はこの虚々実々の駆け引きにおける、アメリカ側の攻勢という意味合いもあると思います。いずれにしても、今回のトルコ、イラク訪問というのは、X(エックス)から始まって答の見えない変数がたくさんある「中東という多元連立方程式」に
おいて、とりあえず一つの変数に答を出したものと言えるでしょう。勿論、まだまだ解かねばならない変数はたくさん残っているのですが、とりあえず一歩前進というところでしょう。

 さて、こうしたオバマの「理念と現実主義のバランス感覚、戦略的な施策のパッチワーク、なりふり構わぬコスト削減へ」といった外交姿勢は、今回の「発射事件」への対応でも明らかです。第一報を受けたオバマは一見すると強硬な姿勢を見せ、日英との協調で国連安保理の非難決議を推進しようとしているように見えました。ですが、6日には一転して「次世代MD開発予算の削減、最新鋭超音速戦闘機F22の導入中止」を発表しています。

 またCNNの戦争報道のベテラン、クリスチャン・アマンポーラ記者によればアメリカは北朝鮮に対して新たな制裁には動かないだろうと述べていますし、基本的に外交交渉のテーブルに戻ることが肝要という報道が目につきます。強硬なコメントと言えば、「アラスカの噛ませ犬」ことサラ・ペイリン知事ぐらいですが、彼女も「脅威への備え」というよりも、「景気刺激策の一貫としてアラスカのMD関連施設の環境整備費を」という「要はカネ」といった種類の発言に終始しています。

 では、どうしてアメリカは一見すると緊張感の見えない姿勢を取っているのでしょうか。それは、オバマ大統領が「反戦平和」志向の若者の票を固めて当選したとか、大統領自身が平和主義だからという理念的なものではありません。そこには何と言っても、ゲイツ国防長官以下、ペンタゴンによる軍事費の削減への強い執念があります。それは、単に財政危機だからというだけではなく、ラムズフェルド路線というべき、衛星情報とピンポイント攻撃など、ハイテク兵力に重きを置きすぎて、結果的に現場の戦闘員を危険にさらす戦略戦術への批判があるのです。

 そこでは、ハイテクで戦闘局面を制しても、制圧後の地域における生身の人間を統治することへの思いが至らない中で、戦勝後に統治能力を持てずに泥沼に引き込まれたイラクの事例はここでも「負の記憶」になっているのです。MDへの否定的な姿勢も、現場に踏み込んで交渉したり統治したりするのではなく、大きく引いたところから「遠隔操作」のハイテクで相手を圧倒するという戦略姿勢そのものをゲイツ路線は否定しつつあるからだと思います。

 非常に単純化すると、オバマの軍事外交姿勢というのは(1)一国主義的にひきこもりながらハイテク兵器で「遠隔操作」的に相手を圧倒する路線は取らない、という姿勢が基本としてあり、その具体化として(2)基本は国際協調、対話路線という行動パターンになってくる、それが(3)強烈なコスト削減指向と重なって、緊張緩和という原則を曲げない姿勢ということになってきています。

 ですから、今回の北朝鮮の発射事件に関しても、衛星としては失敗、従って兵器販売のためのアピールにも失敗しており直接の脅威も、脅威の拡散する脅威としても深刻には受け止めないという「冷静な」対応になるのですが、問題はこの先です。北朝鮮問題という「永遠に先送りはできない」問題に対して、オバマ大統領はどんな手を打ってくるのでしょうか?

 イラクとイラン、シリアに対して今回のトルコ・イラク訪問で複雑なメッセージを発信したように、オバマ大統領の外交政策は現実に根ざした精緻なものです。その精緻な現実主義に照らして考えると、オバマ政権は北朝鮮の早期の政権崩壊は望んでいないと見るべきでしょう。何故ならば、北朝鮮の崩壊とはイコール、東アジアの新秩序を意味するからです。仮に北朝鮮が崩壊して、その面倒を中国が見る中で中国軍と駐韓アメリカ軍が対峙する、あるいは統一後の韓国と日本との間がギクシャクするといったことになるぐらいであれば、アメリカは北朝鮮の現政権を温存し、崩壊を先送りにするということは十分にあると思います。

 まして、北を「解放」することで、中国に「自由と民主」のメッセージを送るというような危ない橋は渡らないのではと思います。オバマの外交はかつてアメリカの民主党が世界各地で行ったような一方的な「人権外交」とは違います。勿論、事態は流動的です。北朝鮮で大きな暴動が起きたり、国家規模での自然災害(飢饉をふくむ)が起きた時は、流れが加速することはあり得ます。ですが、そのようなことでもない
限りは、時期を見ながらトルコとイラク、シリアとイランのように、慎重に手順を踏むと見るべきでしょう。方程式が複雑になればなるほど、頭脳と粘りを使って「もつれた糸を解きほぐす」、それがバラク・オバマという才能の持ち味なのだと思います。

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冷泉彰彦(れいぜい・あきひこ)
作家。ニュージャージー州在住。1959年東京生まれ。東京大学文学部、コロンビア大
学大学院(修士)卒。著書に『9・11 あの日からアメリカ人の心はどう変わった
か』『「関係の空気」「場の空気」』『民主党のアメリカ 共和党のアメリカ』など
がある。最新刊『アメリカモデルの終焉』(東洋経済新報社)
(

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492532536/jmm05-22 )
●編集部より 引用する場合は出典の明記をお願いします。
JMM [Japan Mail Media] No.526 Saturday Edition【発行】  有限会社 村上龍事務所
【編集】  村上龍【発行部数】128,653部【WEB】   (
http://ryumurakami.jmm.co.jp/ )