北朝鮮のミサイル発射について、韓国の新聞はどのように見ているのだろうか。
【世界の新聞「101紙」の視点】
~2009年4月6日(月)の紙面より~
独断と偏見はご容赦!【最近の社説の、ここに注目】
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6日付
「ハンギョレ新聞」(韓国紙)『遺憾なロケット発射』「朝鮮日報」(韓国紙)『核と長距離ミサイルを握った北をどうするのか』
の社説。北朝鮮のミサイル発射について、韓国の新聞はどのように見ているのだろうか。
ハンギョレ新聞。
『国際社会の発射中止要請にもかかわらず、発射を強行したことは遺憾だ。』
『発射と関連して迎撃ミサイル発射など軍事的な衝突がなかったことは幸いだった。否定的な動きが起きないよう努めるべきだ。』
『衛星発射だといっても、国際社会の憂慮がなくなるわけではない。衛星を打ち上げるうえで、必要なロケット技術は簡単に長距離ミサイル技術に転用できる。』
『北朝鮮は今回、大陸間弾道ミサイル(ICBM)技術を持っていることみせつけた。(以上、原文のまま:編者注)核実験をした国がこのような技術を保有したこと自体が、世界にとって潜在的な危険要因となる。』
『今回の発射は北朝鮮に対する不信感をさらに高めるだろう。』
『米日の強硬派は、(中略)対北制裁を強化するか、新たな(安保理:編者注)決議案を採択することを主張している。だがロシアと中国は、衛星発射は制裁の対象とはならないとみており、決議案採択は容易ではない。』
『今回の発射を北朝鮮の積極的な挑発と受け止めるよりも、核・ミサイル協議のきっかけとすべきだという考えも強い。』
『無理な対北制裁を課そうとすることは事態をさらに悪化させ、むしろ朝鮮半島の非核化と平和構築の意志を妨げることになるだろう。』
『北朝鮮の今回の発射は、第12回最高人民会議第1回会議を控え、内部の結束を狙う性格が強い。強い力があることを住民に誇示しなければならないほど北朝鮮の体制が弱体化しているということだろう。』
『関連国の過剰対応は北朝鮮の政権を握る勢力のこうした危機意識をあおり立て、事態を予想外の方向に追いやる恐れがある。』
『日本が今回の発射を前に興奮したことも軍事大国化のために、北朝鮮に劣らず、政治的ショーを繰り広げているという疑惑を招きかねない。』
『北朝鮮が長距離ロケットを打ち上げたことは見過ごすことはできないが、その影響は最小化すべきだ。今回の局面が長引けば、すべてが被害者になりやすい。』
朝鮮日報。
『衛星が軌道進入に失敗したとしても、北朝鮮は今回の打ち上げで大陸間弾道ミサイル(ICBM)の能力が一定レベルまで向上している点を示すことに成功した。』
『今回のロケット発射費用があれば、昨年夏の価格で食糧の不足分を外国からすべて購入できる。』
『北朝鮮の権力層は、9日に発足する金正日(キム・ジョンイル)3期体制が「強盛大国」を宣言するために、住民たちを飢えさせてまで、ロケットの打ち上げにとてつもない資金をつぎ込んだ。』
『韓国の目の前では北朝鮮が核に続いて長距離ミサイルの能力まで保有するに至る悪夢のシナリオが展開している。』
『一方、韓国は核拡散防止条約(NPT)に従い、核武装能力を放棄し、ミサイル関連技術輸出規制(MTCR)に参加しているため、射程距離300キロ、弾頭重量500キロを超えるミサイルは開発できないことになっている。』
『核とミサイルにおける南北間の戦略的なアンバランスはますます深刻化している。』
『中国とロシアは実際に北朝鮮の核保有と長距離ミサイル開発に対する国際的制裁に反対する状況だが、韓国と日本が北朝鮮のミサイルによる脅威にさらされ、自国の安全保障のために核やミサイルの能力を持とうとすれば、中国とロシアはどうするつもりなのか。それでもこんな甘い対応で済ますつもりか。』
『韓国政府は、短期的にはミサイル発射による対北朝鮮制裁につながる交渉局面に備え、長期的には、核と長距離ミサイルの能力を持った北朝鮮の脅威に対し、どのように国家安全保障を確保していくか、北朝鮮をどのように管理していくかという根本的な戦略を立てなければならない。』
『昨年、金正日総書記の健康異常をきっかけに改めて注目された「ポスト金正日体制」をめぐる内部対立から分かるように、北朝鮮の体制はいつ何が起きても不思議ではない不安定な状態だ。』
『北朝鮮が核とミサイルを両手に握って行動するとすれば危険この上ないことだ。』
『現在の韓米同盟は、北朝鮮が核とミサイルを保有するとは想像すらできなかった1953年の韓米相互防衛条約を基にしている。その上、韓米同盟は過去10年にわたり後退してきた。』
『韓米は、北朝鮮が核に続き、長距離ミサイルの能力まで備えたと主張する状況に対抗し、韓米同盟の対北朝鮮対応能力を画期的に強化する根本的対策を急がなければならない。』
昨日は、国内主要紙の見解を紹介した。
今日は、韓国紙からの視点だ。
韓国では、「ハンギョレ新聞」は左寄り、「朝鮮日報」は右寄りとされているようだ。
ハンギョレ新聞の、
『日本が今回の発射を前に興奮したことも軍事大国化のために、北朝鮮に劣らず、政治的ショーを繰り広げているという疑惑を招きかねない』の一節には、反感を持つ人も多いだろう。
それに対し、朝鮮日報の、
『韓国と日本が北朝鮮のミサイルによる脅威にさらされ、自国の安全保障のために核やミサイルの能力を持とうとすれば、中国とロシアはどうするつもりなのか』
の一節は、日本国内では決して口にすることのできない主張だろう。
単純に、「韓国」=「嫌い」「敵」と考える人もいるかもしれないが、韓国内にも様々な価値観・考え方がある。ステレオタイプで物事を見るのは、少し慎むべきではないかと、個人的には考える。
どんなに公平を謳うメディアでも、自社の価値観が多少なりとも記事や社説に反映されているものだろう。
そういう意味でも、なるべく様々な角度から物事を見るようにしたい。(桐鳳)
◎世界の新聞「101紙」の視点 のバックナンバーはこちら⇒ http://archive.mag2.com/0000174275/index.html
~2009年4月6日(月)の紙面より~
独断と偏見はご容赦!【最近の社説の、ここに注目】
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6日付
「ハンギョレ新聞」(韓国紙)『遺憾なロケット発射』「朝鮮日報」(韓国紙)『核と長距離ミサイルを握った北をどうするのか』
の社説。北朝鮮のミサイル発射について、韓国の新聞はどのように見ているのだろうか。
ハンギョレ新聞。
『国際社会の発射中止要請にもかかわらず、発射を強行したことは遺憾だ。』
『発射と関連して迎撃ミサイル発射など軍事的な衝突がなかったことは幸いだった。否定的な動きが起きないよう努めるべきだ。』
『衛星発射だといっても、国際社会の憂慮がなくなるわけではない。衛星を打ち上げるうえで、必要なロケット技術は簡単に長距離ミサイル技術に転用できる。』
『北朝鮮は今回、大陸間弾道ミサイル(ICBM)技術を持っていることみせつけた。(以上、原文のまま:編者注)核実験をした国がこのような技術を保有したこと自体が、世界にとって潜在的な危険要因となる。』
『今回の発射は北朝鮮に対する不信感をさらに高めるだろう。』
『米日の強硬派は、(中略)対北制裁を強化するか、新たな(安保理:編者注)決議案を採択することを主張している。だがロシアと中国は、衛星発射は制裁の対象とはならないとみており、決議案採択は容易ではない。』
『今回の発射を北朝鮮の積極的な挑発と受け止めるよりも、核・ミサイル協議のきっかけとすべきだという考えも強い。』
『無理な対北制裁を課そうとすることは事態をさらに悪化させ、むしろ朝鮮半島の非核化と平和構築の意志を妨げることになるだろう。』
『北朝鮮の今回の発射は、第12回最高人民会議第1回会議を控え、内部の結束を狙う性格が強い。強い力があることを住民に誇示しなければならないほど北朝鮮の体制が弱体化しているということだろう。』
『関連国の過剰対応は北朝鮮の政権を握る勢力のこうした危機意識をあおり立て、事態を予想外の方向に追いやる恐れがある。』
『日本が今回の発射を前に興奮したことも軍事大国化のために、北朝鮮に劣らず、政治的ショーを繰り広げているという疑惑を招きかねない。』
『北朝鮮が長距離ロケットを打ち上げたことは見過ごすことはできないが、その影響は最小化すべきだ。今回の局面が長引けば、すべてが被害者になりやすい。』
朝鮮日報。
『衛星が軌道進入に失敗したとしても、北朝鮮は今回の打ち上げで大陸間弾道ミサイル(ICBM)の能力が一定レベルまで向上している点を示すことに成功した。』
『今回のロケット発射費用があれば、昨年夏の価格で食糧の不足分を外国からすべて購入できる。』
『北朝鮮の権力層は、9日に発足する金正日(キム・ジョンイル)3期体制が「強盛大国」を宣言するために、住民たちを飢えさせてまで、ロケットの打ち上げにとてつもない資金をつぎ込んだ。』
『韓国の目の前では北朝鮮が核に続いて長距離ミサイルの能力まで保有するに至る悪夢のシナリオが展開している。』
『一方、韓国は核拡散防止条約(NPT)に従い、核武装能力を放棄し、ミサイル関連技術輸出規制(MTCR)に参加しているため、射程距離300キロ、弾頭重量500キロを超えるミサイルは開発できないことになっている。』
『核とミサイルにおける南北間の戦略的なアンバランスはますます深刻化している。』
『中国とロシアは実際に北朝鮮の核保有と長距離ミサイル開発に対する国際的制裁に反対する状況だが、韓国と日本が北朝鮮のミサイルによる脅威にさらされ、自国の安全保障のために核やミサイルの能力を持とうとすれば、中国とロシアはどうするつもりなのか。それでもこんな甘い対応で済ますつもりか。』
『韓国政府は、短期的にはミサイル発射による対北朝鮮制裁につながる交渉局面に備え、長期的には、核と長距離ミサイルの能力を持った北朝鮮の脅威に対し、どのように国家安全保障を確保していくか、北朝鮮をどのように管理していくかという根本的な戦略を立てなければならない。』
『昨年、金正日総書記の健康異常をきっかけに改めて注目された「ポスト金正日体制」をめぐる内部対立から分かるように、北朝鮮の体制はいつ何が起きても不思議ではない不安定な状態だ。』
『北朝鮮が核とミサイルを両手に握って行動するとすれば危険この上ないことだ。』
『現在の韓米同盟は、北朝鮮が核とミサイルを保有するとは想像すらできなかった1953年の韓米相互防衛条約を基にしている。その上、韓米同盟は過去10年にわたり後退してきた。』
『韓米は、北朝鮮が核に続き、長距離ミサイルの能力まで備えたと主張する状況に対抗し、韓米同盟の対北朝鮮対応能力を画期的に強化する根本的対策を急がなければならない。』
昨日は、国内主要紙の見解を紹介した。
今日は、韓国紙からの視点だ。
韓国では、「ハンギョレ新聞」は左寄り、「朝鮮日報」は右寄りとされているようだ。
ハンギョレ新聞の、
『日本が今回の発射を前に興奮したことも軍事大国化のために、北朝鮮に劣らず、政治的ショーを繰り広げているという疑惑を招きかねない』の一節には、反感を持つ人も多いだろう。
それに対し、朝鮮日報の、
『韓国と日本が北朝鮮のミサイルによる脅威にさらされ、自国の安全保障のために核やミサイルの能力を持とうとすれば、中国とロシアはどうするつもりなのか』
の一節は、日本国内では決して口にすることのできない主張だろう。
単純に、「韓国」=「嫌い」「敵」と考える人もいるかもしれないが、韓国内にも様々な価値観・考え方がある。ステレオタイプで物事を見るのは、少し慎むべきではないかと、個人的には考える。
どんなに公平を謳うメディアでも、自社の価値観が多少なりとも記事や社説に反映されているものだろう。
そういう意味でも、なるべく様々な角度から物事を見るようにしたい。(桐鳳)
◎世界の新聞「101紙」の視点 のバックナンバーはこちら⇒ http://archive.mag2.com/0000174275/index.html