「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 アフリカでは、人民元か武器が通貨か。決済方法は闇の中。
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成21年(2009年)4月2日(木曜日)
通巻第2545号
中国はドル支配が不公平、SDRを代替通貨になどと主唱しながら
アフリカなどの石油代金を人民元か武器を通貨としているのではないのか?
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或る討論番組で世界経済予測を展開しながら、筆者が提議したのは「ドルに挑戦する中国が具体的にいかなるスタイルでドルからの脱却をはかっているのか。具体例を調べたい」ということだった。
スーダンではアラブ系バシル政権が、大量の武器を中国から輸入して軍事独裁を敷き、非アラブ系部族をダルフールで三十万人前後も虐殺し国際批判を浴びた。
そしてバシル大統領を国際法廷に喚問して裁くことになったが、バシルが出廷する筈がないから、これは欧米の人権活動家の強い運動に、欧米の政治指導者があたかもジェスチャーのようにこたえたのみ。
とはいえボスニア&セルビア紛争の折の民族主義指導者カラジッチを数年してから変装した勤務先で逮捕したように、あるいはパナマの独裁ノリエガを主権を侵犯してヘリコプターで隠れ家を襲って逮捕したように、将来の法的淵源の確保ともとれる。
それより、このスーダンから日量五十万バーレル、アンゴラの石油は日量三十万バーレル、中国へ輸出されている。
これをドルで決済しているのか、或いは人民元決済なのか、バーター取引なのか、具体的決済方法が闇の中ではないか。
推定される事態は武器との交換、中国からの日常物資や機械とのバーター、ならびにパイプラインの安全を守る兵士は中国からの出稼ぎであり、かれらへの給与は、おそらく中国国内において人民元決済が行われている筈である。
ドル離脱の番外編がこれらの行為であろう、と推測できる。
現地通貨相互決済という手段もポピュラーである。
すでにラオス、カンボジア、ベトナム、バングラデシュ、ミャンマーなどは荷物運び業者による直接取引が主体で、人民元が強く、東南から南アジア一帯では、事実上の「人民元経済圏」が形成されている。
▲「通貨スワップ」はドル基軸体制の終焉を早める
インドネシアと中国の「通貨スワップ」の例をひこう。両国は146億ドルの枠を設けて通貨スワップ協定を結んだ。
すなわち、インドネシアからのガス油宗代金を外貨準備のドルで決済せず、人民元とインドネシアルピーの決済の枠組みを設定した。
現在世界中の外貨準備は69兆ドル。このうちの半分以上がアジア諸国に貯まっている。
マレーシアとインドネシアは中国の提案(周小川「IMFのSDRをドルに代替できる通貨に」)に賛意を表明した(ロイター、3月31日)。
マレーシアの外貨準備の運用に関して、ゼジ・アカタル・アジズ中央銀行総裁は「外貨準備を多彩な通貨で、また人民元との通貨スワップのも興味がある」と会見している。実際にマレーシアは外貨準備高のうち、145億ドルをドルから他の通貨へ切り替えた。
日本とインドと韓国の外貨準備高を合計すると1兆5千億ドルだが、この三つをあわせても中国の2兆ドルに届かない。
日本と印度は中国の提案に懐疑的だった。しかし2010億ドルの外貨準備高を誇る韓国も中国の提言に前向きとなる。
ドル基軸通貨体制の維持か、代替か、議論は続く。
アジアがどちらを向くか、ワシントンはきわめて神経質になって、これを「神経戦」と比喩しているそうな。
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(読者の声1)貴誌コメントに「財務省出身で偉そうなことを言っていたT教授、万引きで捕まりました。この人の政府紙幣発行論は、いつか指摘しましたが丹羽春喜教授のものを「剽窃・改竄」した類いではないのでしょうか?」云々。
当該T教授の丹羽先生に対する態度には、確かに私も誠実さを疑いますが、それと別に
(1)都内の温泉《鄙びた温泉ならともかく》でロッカーに鍵をかけ忘れる人は、めったにいない。(2)その人がブルガリの腕時計を持っていることはめったに無い。《高橋氏が腕時計マニアだとして》(3)そこに偶々高橋氏が居合わせた。・・・めったにおこらない。
めったに無い事象が三回重なったということですが、ありえないともいえない。
(TY生
(宮崎正弘のコメント)天網恢々疎にして漏らさず。
逆に権力の陰謀論を信じている人も多いようですね。痴漢の疑いでは女性の申告だけ、証拠なしで逮捕され、認めたと言えば釈放になるが、それから裁判を覆すのは大変。調書をかいてしまったわけですから。
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(読者の声2)貴誌通巻第2544号 「ロンドンサミット直前、王岐山副首相が英紙『タイムズ』に論文 IMF改革を急ぎ、途上国融資を急げと中国のご都合主義丸出し」の記事を拝読し、最近の中国のアフリカ・中南米における八面六臂の資源外交での大躍動、またこの王副首相の中国の国益を堂々と世界の財務関係者に論文にて発信する威勢に小生は敬服せざるを得ません。
ひるがえって我が祖国日本は、前財務相の朦朧記者会見事件はさておき、大臣、次官、政府高官がこのように、堂々と国益を踏まえて世界に論を発信したようなことは皆無ではないでしょうか。
現代日本を主導する政治家、政府高官の見識の欠如、不勉強、あるいは持論を世界に発信しようとしない矜持の欠如、これは大いに国益を損壊しているのではないでしょうか。
リタイヤ世代として中堅世代の奮起を望むことしきりです。
(KI生、尼崎市)
(宮崎正弘のコメント)なせばなる、なせねばならぬ何事も、ならぬは己のなさぬなりけり。
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(読者の声3)貴誌第2540号で危機管理についての書評が御座いました。ふと、そこで何故誰も危機管理の観点からの首都移転に触れないのだろうかと考えました。
国際都市東京は日本の首都であるばかりでなく最大の消費地である上に出版社など文化的な人材、施設が集中し過ぎている。
東京はほって置いてもニューヨークのように経済首都としてやっていけるのだから、是非とも国家的な景気対策が必要な今日こそ首都を移転するチャンスじゃないでしょうか?
現状だと東京への核テポドン一発で日本は終わりです。
そこで独断的接見では裁判所と官僚機構、国会、政府など政治機能を核シェルター完備の新首都に移すのに相応しい場所は名古屋です。
名古屋って田舎ですか?
でも、じきに名古屋へはリニアが引かれますので「経済首都」へ40分で行けるようになる。また名古屋からは新幹線で東海方面へ、信州や北陸、琵琶湖、南紀、伊勢、奈良方面へはJRで繋がり、関西方面へは近鉄、新幹線と複数のルートが存在し、日本の交通中枢は全て名古屋に集中!
さらに既に名古屋新空港があるので国際都市としても充分やっていける。感じるに東京の通勤などの非人間的な混雑を見る時、如何にも日本人は命をすり減らしている。
政府は国民が広い家に住めるような中身の伴った高い生活水準を実現すべきだし、その為には人口拡散政策で東京一極集中の弊害を改めるべきではないか。
国民が広い家に住めば少子化問題も緩和するだろうし、家具や電化製品でも買おうかという気になる。
日本には過疎地が腐るほどあり、そういった「故郷」には人間回復の為の自然がたっぷりある。四季を感じない都会に住んでいて日本民族の復活も何もないのではと思う今日この頃です。
(doraQ)
(宮崎正弘のコメント)名古屋ですか。大学時代の友人が何人か住んでいて、ひとりは東海テレビの営業でしたが、数年前に突然みまかりました。何回か、名古屋へあつまって彼を弔う会をやりました。伊勢方面にも何人か知り合いがいて、必然的に名古屋乗り換えですから、結局駅前で泊まったり、名古屋に出かける機会は多いですね。
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(((( 今週の本棚 ))))
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日本李登輝友の会編『誇りあれ、日本よ』(まどか出版)
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昨年沖縄を訪問して大歓迎をうけた李元総統の発言と行動の奇跡を記録したもの。
カラーグラビア多数のほか、講演録もあり、完全な資料版となる。
ことし五月、五回目の来日を準備中の李総統、つぎは芭蕉のつづき、新潟、富山、石川から京都へ。
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福田恒存『福田恒存評論集(6)私の国語教室』(麗澤大学出版会)
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学生時代、何回か読んだ『国語教室』。これをとりわけ若い人たちに読んで貰う方法はないだろうか、と考えながら再読中です。生前の福田さんも、一冊だけ自分が読んで欲しいと思う本があるとすれば、この国語教室だ、と言っていました。
いずれ、本格的書評を書きます。
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拓殖大学日本文化研究所『新日本学 平成21年春』(発売 展転社)
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季刊で、きわめて硬質な、同時に高質な文化歴史、日本政治論が満載。 今月はシンポジウム『昭和維新』の記録を兼ねている。 シンポジウム参加者は井尻千男、岩田温、桶谷秀昭、佐藤優、藤井厳喜、ロマノヴィルピッタ、宮崎正弘。 ほかに田中英道、呉善花、黄文雄、遠藤浩一、関岡英之の各氏が健筆を奮っている。
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西部遇『だからキミの悩みは黄金に輝く』(ジョルダンブックス)
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自信をなくして自殺を考えている読者に、「キミ、それは自意識過剰の結果だ」とズバリ助言する、現代的悩みへ対応する型破り、西部さんの人生相談が一冊に新しいかたちの単行本にまとまった。
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(サイト情報)米通商代表部(USTR)は3月31日、2009年外国貿易障壁報告を発表した。
(1)2009年外国貿易障壁報告
http://www.ustr.gov/Document_Library/Reports_Publications/2009/2009_National_Trade_Estimate_Report_on_Foreign_Trade_Barriers/Section_Index.html
(2)日本についての報告
Japan 、2009 National Trade Estimate Report on Foreign Trade Barriers Office of the United States Trade Representative、March 31, 2009
http://www.ustr.gov/assets/Document_Library/Reports_Publications/2009/2009_National_Trade_Estimate_Report_on_Foreign_Trade_Barriers/asset_upload_file188_15481.pdf
(3)プレスリリース
http://www.ustr.gov/Document_Library/Press_Releases/2009/March/USTR_Identifies_International_Trade_Barriers,_Outlines_Efforts_to_Open_Markets_for_UShtml.html
(4)過去の報告書(2001年以降)
USTR Reports and Publications Home Office of the United States Trade Representative
http://www.ustr.gov/Document_Library/Reports_Publications/Section_Index.html
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宮崎正弘の新刊 http://miyazaki.xii.jp:80/saisinkan/index.html
4月16日配本。四月20日には全国主要書店に並びます。
宮崎正弘・石平『中国人論』(仮題。予価980円。新書版)
宮崎正弘の近刊 絶賛発売中!
『やはり、ドルは暴落する! 日本と世界はこうなる』(ワック文庫、980円)
『中国がたくらむ台湾・沖縄侵攻と日本支配』(KKベストセラーズ 1680円)
『トンデモ中国、真実は路地裏にあり』(阪急コミュニケーションズ、1680円)
『北京五輪後、中国はどうなる』 (並木書房、1680円)
『世界が仰天する中国人の野蛮』(黄文雄氏との共著。徳間書店、1575円)
『崩壊する中国 逃げ遅れる日本』(KKベストセラーズ、1680円)
宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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