中国は、公的統計でさえ、すでに米国に迫る世界第二位の軍事大国
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成21年(2009年)3月13日(金曜日)
通巻第2523号 (3月12日発行)
それでも軍事費二桁成長は、いずれ中国経済の崩壊を早めないか?
公的統計でさえ、すでに米国に迫る世界第二位の軍事大国
**************
公式の中国軍事費は次の通り(「公式」とは中国が発表した数字、ロケット打ち上げなど別項目で勘定しているため、世界基準の算定方法ではなく、欧米はこの三倍とみているが)。。。。
1999 1076億4000万人民元
2000 1207億5400
01 1442億0400
02 1707億7800
03 1907億8700
04 2200億0100
05 2474億9600
06 2979億3800
07 3554億9100
08 4184億0400
2009年予測 4806億8600万人民元
(1人民元は14円)。
中国は空母二隻建造を堂々と公言するようになり、また中東、南アジア、アフリカ諸国では中国製武器が市場に溢れるようになっている。
いずれ手に負えない化け物として北京へ跳ね返るだろうが。。。
▲不安になるアメリカの杜撰な武器管理
いや中国のことを批判してやまないアメリカは、膝元でおきた以下の数字をみて愕然としている。
予算局が集計した「行方不明」になった武器の夥しさである。
ISNニュース(3月10日付け)によれば、アフガニスタンとイラクという両戦域をかかえるアメリカは、武器をせっせと当該戦闘地域の部隊に運んでいるが、多くが行方不明というのだ。
2005年から2008年までにアフガニスタンへ運び込まれたアメリカの武器は、むろん、米兵、米軍下請け傭兵ならびにイラク正規軍と警察に配給された。このうちの36%が「返却」されておらず行方不明だという。
アフガニスタンへの武器は242000点におよび、これらには自動小銃、機関銃、ピストル、ショットガンが含まれている。そのうちの36%が追跡不能状態。
また2004年から05年にかけてイラクへ同様にはこびこまれたアメリカ製武器のうち、AK47ライフル11万丁。ピストル8万丁が「行方不明」。
杜撰な管理をかいくぐり、武器は密輸され、転売されたか、あるいはテロリストの手に渡ったか。
▲そして米中艦隊が南シナ海でにらみあった
つい先般、米国の観測船(?)が南シナ海で中国艦隊五隻に取り囲まれる“事件”が起きた。米中外相会談が開催されている最中のこと、両国間に緊張が走った。
この地点に注目である。海南島沖合。
中国は海南島南部「三亜」に潜水艦の秘密基地を建造した。しかもICBM搭載の潜水艦の集積地といわれ、米軍は観測を続けてきた。
「海洋を抑える西側帝国主義と揚子江のファナティックは国家主義者との対決」(英紙ガーディアン、3月10日)は政治の表舞台での「戦略的パートナー」「ステ-ク・ホルダー」「G2」という米中関係の緊密ぶりとは別の思惑で進んでいる。
「14・9%もの軍拡に突き進んだ中国は米国への顕著な挑戦をしめしている」(同紙、サイモン・ティスダル記者)。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
♪
(読者の声1)貴誌2522号の「読者の声1」=尼崎市のKI様。
実に明快な分析と思います。日本軍の参謀には冷静な人がおられたと思う。精神論だけでは、国と国が武器を取って、戦うことには充分ではないですね。
現在の日本人は少し賢くなったと思いますよ。パワー・プロジェクション(数学)を考えれば戦争の結果はほぼ判ります。この宮崎先生の論壇には無関係ですが、麻生自民党が負けてはいけません。
(伊勢・ルイジアナ)
(宮崎正弘のコメント)軍とインテリジェンスを戦後、もっとも深く研究されたのは杉田一次将軍でした。戦後、陸幕長。戦争中は山下―パーシバル会談の通訳を務めました。
終戦時、陸軍大佐。戦後は第六代陸幕長をつとめ、退官後は郷友連理事長など。
杉田さんには次の著作があります。 『忘れられている安全保障』(時事通信社) 、『スイスの国防と日本』(藤原岩市共著、時事通信社、1971年) 、『近代日本の政戦略-幕末から第一次大戦まで』(原書房) 、『日本の政戦略と教訓-ワシントン会議から終戦まで』(原書房) 、『情報なき戦争指導-大本営情報参謀の回想』(原書房)ほか。
♪
(読者の声2) 媚中派小沢某や二階某にようやく捜査が入ってなにより。あとは売国奴=河野某に鉄槌が下らんことを願います。
北京の、日本滞在11年で帰国した友人宅に1週間泊まって来ました。
彼は自宅と家作2軒を持ち、郊外の一軒家に妻と大型犬4匹とで暮らしている、中の上という恵まれた部類と思います。毛沢東と共産党が大嫌いで、こちらがはらはらするくらい大声でそのことを日本語で主張していたが、今は失うものが多いので現体制が壊れることは望んでいない。その彼の希望的観測や願望の入った意見です。
(1)軍を含め実権は実質的に胡錦濤が握っている(彼と別の大連の中国人の友人も同意見)。胡錦濤は感情をいっさい外にださない能面のような顔で意志が強く、思ったことを必ずやりとげる。毛沢東も表情を読ませなかった。
(2)江沢民は上海でも嫌われており、現在は裸の王様で実際は力を持っていないし人脈も分断されてしまった。
今年の春節に上海へようやく2週間の旅行が認められた。北京市から外へ出るのは3年ぶりで、現在は静養という名目で病院で半軟禁状態である。親戚(娘婿?)の上海警察局長が突然逮捕され、即、上海派の影響の及ばない南京に移送された。現在生死不明という事態をいかんともしがたく傍観せざるをえない状態である。
(3)上海派と太子党は仲が悪い。連携はない。
(4)習近平は親の七光りで長老受けが良く一歩リードしており外国ではポスト胡と思われているが、世間知らずのボンボンの優しさが邪魔をしてとことん非情になりきれないところがある。
(5)李克強はまだ巻き返しのチャンスはある。誰が後を襲うかはまだ不透明。
(6)軍は山東省系が力を持ち、戦争をしたがっている。相手は南沙諸島関連のベトナムかフィリピン(勝てるであろうから)。
(7)台湾はすでに手の平の上なので戦争で破壊しなくともよい。台湾の余剰農産物をどんどん輸入してやっているので台湾の農民達はすでに中共の台湾省でよいと思っている。
(8)日本については、釣魚島(尖閣列島)は中国のもの(こんなところは共産党嫌いにもかかわらずその嘘八百を信じている)。断固守る。
(9)報奨金つきの密告制度は健在で、国内の反体制派が徒党を組める状況にないし、海外でもカリスマがいない。少なくとも毛沢東時代と違い餓死はないし、昨日より良い生活を味わった人間は若干の不満があっても現状を維持したい。したがってしばらく現体制は続く。
(練馬 のの)
(宮崎正弘のコメント)党に私怨を抱きながらも、いまの生活の安寧維持のためには党に面従腹背。典型のエリート型のご意見と見ました。
♪
(読者の声3)小沢・二階の超媚中派の凋落は楽しいですね。
岡田党首に予定?されていますが、これも一族が中国で商売して居ますから危ない様な気もします。どちらにしても良き人材・保守的な人が埋もれて居るのが残念です。
(X生)
(宮崎正弘のコメント)オカダはオザワと距離をおく演出のため、このタイミングを意図的に選んでシンガポールへ外遊です。換言すれば政治の修羅場を逃げた。
心臓が弱いのかなぁ。
○○○○○
~~~~~~~~~~
(((((((( 編集後記 ))))))))●静岡県の島田市と焼津市でべつべつに講演した。島田はあいにくの雨で、タクシーで移動したにもかかわらずずぶ濡れになった。地元の由緒ある神社に隣接された結婚式場が会場で、世界経済の行方などを話した。地元商工会の幹部は、地方であるが故に尚のこと、国際情報を欲しがっている所為か、熱心に聞いて頂いた。五日おいての焼津では、うって変わって日本晴れ、富士山がくっきりと綺麗に見える。会場は静岡で新幹線を降りてタクシーで30分。岸壁の温泉ホテル。昼時だが、ロビィがご婦人で満杯。それこそ男性が二人しかいない。訊くと、温泉ホテルでもレディスデーの割引日には、ワンサカと近郊から「おばたりあん」がやって来るそうな。鮪より近年は鰹で焼津漁港は有名だ。●某日夜。台湾から旅行作家の片倉佳史さんが来日したので、数人で一卓を囲むことになった。チャイナ・ウォッチャーの日暮さん、某大手新聞元北京支局長、政治評論の山村明義、コラムニストの高山正之、軍事評論家の佐々木俊夫、北朝鮮ウォッチャーの植田剛彦の各氏が揃う。なぜか専門がバラバラなのに、共通項は台湾の紹興酒をのむこと。ところが、この席のために“幻の三M”のうちのふたつ「森伊蔵」と「魔王」を入手できたので、紹興酒をそっちのけで飲んだ(もう一つは「村尾」だが、入手困難)。台湾の話は中途半端のまま、銘酒談義など。この話、石平氏が訊いたら残念がるだろうな。●『諸君!』の休刊というニュースは保守陣営にはかなり衝撃的だったらしく、あちこちで話題になる。それも東京近郊のみならず、かえって地方都市で訊かれることが多い。文春のイメージが付帯する所為か、同誌休刊を保守の影響低下と捉える向きが多い。翻って小生は、過去四十年間、節目節目で所論を書いたが、『諸君』への執筆はあまり多くはない。三島事件直後に二本。香港返還前には『諸君!』の特派で香港現地取材。イランイラク戦争、憂国忌四半世紀の舞台裏。李登輝さんの「中国と台湾は別個の国家」発言、台湾のホーリー族(愛日派)ルポ、新資源戦争など四十年間に九本しか書いていないことが分かった。むしろ『正論』や『サピオ』、『WILL』のほうが多い。考えてみれば中国論を本格化させたのは2002年以後で、それまでは筆者は主として世界経済を論議してきた。連載16年間の『経営速報』、十数年の『自由』と『月刊日本』とか。●英誌フィナンシャルタイムズが世界の金融キーマン50人を選んだが、そのなかに中国人が四人はいっている(日本から選ばれたのは白川日銀総裁ただ一人)。温家宝首相、王岐山副首相、周小川(中国人民銀行総裁)、楼継偉(CIC会長)だ。温は「ミスター成長率8%」、王は太子党に珍しい理論的行動家だが、五輪準備責任者ポストを途中から習金平にさらわれた。周は経済政策の落ち込み責任をいかに逃れられるだろうか。楼は単に「ファンド・マネジャー」でしかなく、なぜ彼をフィナンシャルタイムズが選んだのか、謎。とくにこの中で、小生の見たてによる実力者は王岐山だが、有能なだけに誰もが放り出した難題ばかりを引き受けされられ、かわいそうな側面もある。四人の中では一番の知日派だろう。あ、そうか、知日派ゆえに出世が遅いのか。
◇
平成21年(2009年)3月13日(金曜日)
通巻第2523号 (3月12日発行)
それでも軍事費二桁成長は、いずれ中国経済の崩壊を早めないか?
公的統計でさえ、すでに米国に迫る世界第二位の軍事大国
**************
公式の中国軍事費は次の通り(「公式」とは中国が発表した数字、ロケット打ち上げなど別項目で勘定しているため、世界基準の算定方法ではなく、欧米はこの三倍とみているが)。。。。
1999 1076億4000万人民元
2000 1207億5400
01 1442億0400
02 1707億7800
03 1907億8700
04 2200億0100
05 2474億9600
06 2979億3800
07 3554億9100
08 4184億0400
2009年予測 4806億8600万人民元
(1人民元は14円)。
中国は空母二隻建造を堂々と公言するようになり、また中東、南アジア、アフリカ諸国では中国製武器が市場に溢れるようになっている。
いずれ手に負えない化け物として北京へ跳ね返るだろうが。。。
▲不安になるアメリカの杜撰な武器管理
いや中国のことを批判してやまないアメリカは、膝元でおきた以下の数字をみて愕然としている。
予算局が集計した「行方不明」になった武器の夥しさである。
ISNニュース(3月10日付け)によれば、アフガニスタンとイラクという両戦域をかかえるアメリカは、武器をせっせと当該戦闘地域の部隊に運んでいるが、多くが行方不明というのだ。
2005年から2008年までにアフガニスタンへ運び込まれたアメリカの武器は、むろん、米兵、米軍下請け傭兵ならびにイラク正規軍と警察に配給された。このうちの36%が「返却」されておらず行方不明だという。
アフガニスタンへの武器は242000点におよび、これらには自動小銃、機関銃、ピストル、ショットガンが含まれている。そのうちの36%が追跡不能状態。
また2004年から05年にかけてイラクへ同様にはこびこまれたアメリカ製武器のうち、AK47ライフル11万丁。ピストル8万丁が「行方不明」。
杜撰な管理をかいくぐり、武器は密輸され、転売されたか、あるいはテロリストの手に渡ったか。
▲そして米中艦隊が南シナ海でにらみあった
つい先般、米国の観測船(?)が南シナ海で中国艦隊五隻に取り囲まれる“事件”が起きた。米中外相会談が開催されている最中のこと、両国間に緊張が走った。
この地点に注目である。海南島沖合。
中国は海南島南部「三亜」に潜水艦の秘密基地を建造した。しかもICBM搭載の潜水艦の集積地といわれ、米軍は観測を続けてきた。
「海洋を抑える西側帝国主義と揚子江のファナティックは国家主義者との対決」(英紙ガーディアン、3月10日)は政治の表舞台での「戦略的パートナー」「ステ-ク・ホルダー」「G2」という米中関係の緊密ぶりとは別の思惑で進んでいる。
「14・9%もの軍拡に突き進んだ中国は米国への顕著な挑戦をしめしている」(同紙、サイモン・ティスダル記者)。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
♪
(読者の声1)貴誌2522号の「読者の声1」=尼崎市のKI様。
実に明快な分析と思います。日本軍の参謀には冷静な人がおられたと思う。精神論だけでは、国と国が武器を取って、戦うことには充分ではないですね。
現在の日本人は少し賢くなったと思いますよ。パワー・プロジェクション(数学)を考えれば戦争の結果はほぼ判ります。この宮崎先生の論壇には無関係ですが、麻生自民党が負けてはいけません。
(伊勢・ルイジアナ)
(宮崎正弘のコメント)軍とインテリジェンスを戦後、もっとも深く研究されたのは杉田一次将軍でした。戦後、陸幕長。戦争中は山下―パーシバル会談の通訳を務めました。
終戦時、陸軍大佐。戦後は第六代陸幕長をつとめ、退官後は郷友連理事長など。
杉田さんには次の著作があります。 『忘れられている安全保障』(時事通信社) 、『スイスの国防と日本』(藤原岩市共著、時事通信社、1971年) 、『近代日本の政戦略-幕末から第一次大戦まで』(原書房) 、『日本の政戦略と教訓-ワシントン会議から終戦まで』(原書房) 、『情報なき戦争指導-大本営情報参謀の回想』(原書房)ほか。
♪
(読者の声2) 媚中派小沢某や二階某にようやく捜査が入ってなにより。あとは売国奴=河野某に鉄槌が下らんことを願います。
北京の、日本滞在11年で帰国した友人宅に1週間泊まって来ました。
彼は自宅と家作2軒を持ち、郊外の一軒家に妻と大型犬4匹とで暮らしている、中の上という恵まれた部類と思います。毛沢東と共産党が大嫌いで、こちらがはらはらするくらい大声でそのことを日本語で主張していたが、今は失うものが多いので現体制が壊れることは望んでいない。その彼の希望的観測や願望の入った意見です。
(1)軍を含め実権は実質的に胡錦濤が握っている(彼と別の大連の中国人の友人も同意見)。胡錦濤は感情をいっさい外にださない能面のような顔で意志が強く、思ったことを必ずやりとげる。毛沢東も表情を読ませなかった。
(2)江沢民は上海でも嫌われており、現在は裸の王様で実際は力を持っていないし人脈も分断されてしまった。
今年の春節に上海へようやく2週間の旅行が認められた。北京市から外へ出るのは3年ぶりで、現在は静養という名目で病院で半軟禁状態である。親戚(娘婿?)の上海警察局長が突然逮捕され、即、上海派の影響の及ばない南京に移送された。現在生死不明という事態をいかんともしがたく傍観せざるをえない状態である。
(3)上海派と太子党は仲が悪い。連携はない。
(4)習近平は親の七光りで長老受けが良く一歩リードしており外国ではポスト胡と思われているが、世間知らずのボンボンの優しさが邪魔をしてとことん非情になりきれないところがある。
(5)李克強はまだ巻き返しのチャンスはある。誰が後を襲うかはまだ不透明。
(6)軍は山東省系が力を持ち、戦争をしたがっている。相手は南沙諸島関連のベトナムかフィリピン(勝てるであろうから)。
(7)台湾はすでに手の平の上なので戦争で破壊しなくともよい。台湾の余剰農産物をどんどん輸入してやっているので台湾の農民達はすでに中共の台湾省でよいと思っている。
(8)日本については、釣魚島(尖閣列島)は中国のもの(こんなところは共産党嫌いにもかかわらずその嘘八百を信じている)。断固守る。
(9)報奨金つきの密告制度は健在で、国内の反体制派が徒党を組める状況にないし、海外でもカリスマがいない。少なくとも毛沢東時代と違い餓死はないし、昨日より良い生活を味わった人間は若干の不満があっても現状を維持したい。したがってしばらく現体制は続く。
(練馬 のの)
(宮崎正弘のコメント)党に私怨を抱きながらも、いまの生活の安寧維持のためには党に面従腹背。典型のエリート型のご意見と見ました。
♪
(読者の声3)小沢・二階の超媚中派の凋落は楽しいですね。
岡田党首に予定?されていますが、これも一族が中国で商売して居ますから危ない様な気もします。どちらにしても良き人材・保守的な人が埋もれて居るのが残念です。
(X生)
(宮崎正弘のコメント)オカダはオザワと距離をおく演出のため、このタイミングを意図的に選んでシンガポールへ外遊です。換言すれば政治の修羅場を逃げた。
心臓が弱いのかなぁ。
○○○○○
~~~~~~~~~~
(((((((( 編集後記 ))))))))●静岡県の島田市と焼津市でべつべつに講演した。島田はあいにくの雨で、タクシーで移動したにもかかわらずずぶ濡れになった。地元の由緒ある神社に隣接された結婚式場が会場で、世界経済の行方などを話した。地元商工会の幹部は、地方であるが故に尚のこと、国際情報を欲しがっている所為か、熱心に聞いて頂いた。五日おいての焼津では、うって変わって日本晴れ、富士山がくっきりと綺麗に見える。会場は静岡で新幹線を降りてタクシーで30分。岸壁の温泉ホテル。昼時だが、ロビィがご婦人で満杯。それこそ男性が二人しかいない。訊くと、温泉ホテルでもレディスデーの割引日には、ワンサカと近郊から「おばたりあん」がやって来るそうな。鮪より近年は鰹で焼津漁港は有名だ。●某日夜。台湾から旅行作家の片倉佳史さんが来日したので、数人で一卓を囲むことになった。チャイナ・ウォッチャーの日暮さん、某大手新聞元北京支局長、政治評論の山村明義、コラムニストの高山正之、軍事評論家の佐々木俊夫、北朝鮮ウォッチャーの植田剛彦の各氏が揃う。なぜか専門がバラバラなのに、共通項は台湾の紹興酒をのむこと。ところが、この席のために“幻の三M”のうちのふたつ「森伊蔵」と「魔王」を入手できたので、紹興酒をそっちのけで飲んだ(もう一つは「村尾」だが、入手困難)。台湾の話は中途半端のまま、銘酒談義など。この話、石平氏が訊いたら残念がるだろうな。●『諸君!』の休刊というニュースは保守陣営にはかなり衝撃的だったらしく、あちこちで話題になる。それも東京近郊のみならず、かえって地方都市で訊かれることが多い。文春のイメージが付帯する所為か、同誌休刊を保守の影響低下と捉える向きが多い。翻って小生は、過去四十年間、節目節目で所論を書いたが、『諸君』への執筆はあまり多くはない。三島事件直後に二本。香港返還前には『諸君!』の特派で香港現地取材。イランイラク戦争、憂国忌四半世紀の舞台裏。李登輝さんの「中国と台湾は別個の国家」発言、台湾のホーリー族(愛日派)ルポ、新資源戦争など四十年間に九本しか書いていないことが分かった。むしろ『正論』や『サピオ』、『WILL』のほうが多い。考えてみれば中国論を本格化させたのは2002年以後で、それまでは筆者は主として世界経済を論議してきた。連載16年間の『経営速報』、十数年の『自由』と『月刊日本』とか。●英誌フィナンシャルタイムズが世界の金融キーマン50人を選んだが、そのなかに中国人が四人はいっている(日本から選ばれたのは白川日銀総裁ただ一人)。温家宝首相、王岐山副首相、周小川(中国人民銀行総裁)、楼継偉(CIC会長)だ。温は「ミスター成長率8%」、王は太子党に珍しい理論的行動家だが、五輪準備責任者ポストを途中から習金平にさらわれた。周は経済政策の落ち込み責任をいかに逃れられるだろうか。楼は単に「ファンド・マネジャー」でしかなく、なぜ彼をフィナンシャルタイムズが選んだのか、謎。とくにこの中で、小生の見たてによる実力者は王岐山だが、有能なだけに誰もが放り出した難題ばかりを引き受けされられ、かわいそうな側面もある。四人の中では一番の知日派だろう。あ、そうか、知日派ゆえに出世が遅いのか。
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