「国策捜査」ってなんだ(頂門の一針)
「国策捜査」ってなんだ
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渡部亮次郎
<小沢氏、続投表明 民主党緊急役員会
民主党は4日午前、小沢一郎代表の公設第一秘書が政治資金規正法違反容疑で逮捕されたことを受け、緊急役員会を開き、小沢代表が経緯を説明した。出席者によると、小沢氏は「この時期になってこんなことになって申し訳ない。しかし、政治資金規正法にのっとって適切に処理している」と述べ、代表職を辞任しない意向を示した。
この後、小沢氏は緊急役員会終了後、記者会見し、事実関係や役員会の結論について説明。小沢氏は、秘書の逮捕容疑となった西松建設OBが代表を務めていた政治団体からの献金に関し「適切に処理している」と違法性を一貫して否定。同氏や鳩山由紀夫幹事長らによる3日の幹部会では、党として献金の正当性を訴えていくことを確認した。
事件が野党第一党党首の秘書逮捕という異例の展開となったことに対し、民主党内では「国策捜査」と政府・与党に反発する声が上がっている。
執行部には、小沢氏の進退問題に発展する事態は避けたいとする空気が強い>。 3月4日9時53分配信 産経新聞
「国策捜査」と言う言葉は「鈴木宗男事件」の際、東京地検に逮捕された外務省元主任分析官・佐藤優の著書『国家の罠』で主張されたもの。
ここから、政府の政治的意図によって行われたものだと関係当事者等が主張する刑事事件の捜査のことを指す。
佐藤優 『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』 新潮社(原著2005-03-26)。ISBN 9784104752010。この書の文庫版P365-367によれば、佐藤氏の取調べに当った西村検事は、逮捕後3日目の時点で「本件は国策捜査だ」と明言、「我々と闘っても無駄だ」と言う事を理解させようと
した。
西村検事の弁。「これは国策捜査なんだから、あなたが捕まった理由は簡単。あなたと鈴木宗男をつなげる事件を作るため。国策捜査は『時代のけじめ』をつけるために必要なんです。時代を転換するために、なにか象徴的な事件を作り出してそれを断罪するのです」
「見事僕はそれに当ってしまったわけだ」
「そういうこと。運が悪かったとしかいえない」
「しかし、僕が悪運を引き寄せた面もある。今まで、普通に行なわれてきた,否、それよりも評価されてきた価値が、ある時点から逆転するわけか」
「そういうこと。評価の基準が変わるんだ。何かハードルが下ってくるんだ」
「僕からすると、事後法で裁かれている感じがする」
「しかし、法律は元々ある。その適用基準が変わって来るんだ。特に政治家に対する国策捜査は、近年驚くほど下ってきているんだ。
一昔前ならば、鈴木さんが貰った数百万円程度なんか誰も問題にしなかった。しかし、特捜の僕たちも驚くほどのスピードで、ハードルが下っていくんだ。今や政治家に対しての適用基準の方が一般国民に対してよりも厳しくなっている。時代の変化としか言えない」
「一般国民の目線で判断するならば、それは結局、ワイドショウと週刊誌の論調で事件が出来ていくことになるよ」
「そういうことなのだと思う。それが今の日本の現実なんだよ」
以上のような方針が東京地検の時代認識ならば小沢氏の判断は甘かったと言うべきだろう。
東京地方検察庁特別捜査部は特定のマスコミにリークしながら、大きく注目を集める人物を小さい犯罪でも逮捕することにより世論、ひいては国家全体を「彼等自身が考える、あるべき姿に直す」という目的で捜査しているとされる。
最近では特捜部の捜査手法が社会秩序の安定を目的に、一罰百戒を狙った逮捕に重きを置くものになっているという指摘もごく一部でなされる。
私が参考人として東京地検特捜部で事情聴取を受けた昨年の防衛省不正事件も目論見は国策捜査に見えたが、結局は見込み違い。単なる個人の脱税事件で終わった。
今回の小沢事件は完全な国策捜査だが、検察は確実な証拠を握って居るはずで、小沢氏の見込みは甘い。
関係当事者により国策捜査だと主張される例としては他に以下のようなものがある。
造船疑獄の指揮権発動
三井環逮捕事件
ライブドア事件における堀江貴文逮捕
日歯連闇献金事件における村岡兼造起訴
構造計算書偽造問題
いわゆるムネオハウス事件における鈴木宗男逮捕
佐藤優起訴
石橋産業手形詐欺事件における田中森一起訴
植草一秀逮捕(りそな銀行国有化の裏側を研究していた)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
09・03・04
【小沢氏秘書逮捕】秘書、ダム工事で口利きの疑い 西松など受注2009.3.5 01:30産経ニュース
小沢一郎民主党代表の資金管理団体「陸山会」が、準大手ゼネコン「西松建設」(東京)から事実上の企業献金を受けていた政治資金規正法違反事件で、逮捕された会計責任者で公設第1秘書の大久保隆規容疑者(47)が、西松のダム工事の受注で口利きした疑いのあることが4日、捜査関係者の話で分かった。西松前社長の国沢幹雄容疑者(70)らが「大久保秘書にダム工事が受注できるようお願いした」と東京地検特捜部に供述したという。特捜部では小沢氏から参考人聴取する方針。
捜査関係者によると、問題の工事は、国土交通省東北地方整備局が平成18年3月に発注した岩手県の胆沢(いさわ)ダムの関連施設工事。西松などの共同企業体(JV)が約95億円で受注した。入札で予定価格を下回る金額で応札したのは、西松などのJVだけだった。国沢容疑者らは特捜部の調べに、「西松は東北で仕事が取れず、小沢事務所に頼って献金した」とも供述、多額の献金を続けたことで「工事が取れた」と説明しているという。
ゼネコン関係者によると、大久保容疑者は小沢氏の地元・岩手に居を構え、東北での公共工事に影響力がある小沢事務所で、小沢氏の代理として工事を調整していたとされる。
政治資金収支報告書によると、西松側は、ダム工事が公告された17年9月の直後、6回にわけて計1300万円を陸山会など小沢氏側の3つの政治団体に献金。工事が始まった18年10~11月には5回に分け、計500万円を献金した。
敵失vs敵失の争いだ
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花岡 信昭
「やましいところは何もない」「すべて適正に処理している」「権力がほしいままにやるというのは民主主義ではありえない」・・・
小沢氏は記者会見で疑惑を全面否定、代表辞任などの考えもないことを強調した。ときおり、横を向いてセキをしながらの会見だ。
小沢氏の政治家としての最盛期を見てきたものにとって、なにやら痛々しい思いで中継を見た。
小沢氏は「法的処理は適正」と強調したが、それはその通りだろう。政治資金規正法に違反しないような仕組みをつくって対応してきたのだから、当たり前だ。
政治資金規正法では、企業献金は、政党、政党支部、政党が指定する資金管理団体だけしか受領できないことになっている。
小沢氏は「企業献金と認識していたら自分の政党支部で受け取っていたらなんということはなかった」という趣旨の発言もした。
ここが記者会見のポイントだ。西松建設としては、自分のところからの献金だと相手に認識させないでカネを出すわけがない。かといって、企業献金扱いにすれば、突出ぶりばかりが目立ってしまう。
だから2つの政治団体をダミーとしてつくり、ここに西松の社員が会員となって、1口6万円を出した。その分を西松側は賞与に上乗せして支給していた。
いわば、ある種のマネーロンダリングだ。政治団体からの献金という体裁をつくれば、小沢氏の資金管理団体「陸山会」が受け取っても違法でもなんでもないということになる。
小沢氏は「献金をいただくのに、その出所を詮索するようなことはしない」とも述べている。
このからくりを、逮捕された秘書や小沢氏がどこまで認識していたか、その立証ができるかどうかが、今後の捜査の焦点だ。
かくして、これまでは麻生首相の失点・・・民主党からみれば「敵失」が内閣支持率の激減を招き、総選挙では民主圧勝といわれる状況にいたっていた。
こんどは小沢氏の失点・・・自民党からみての「敵失」がどこまで大きくなるかが政治展開の行方を左右する。なんのことはない。敵失vs敵失の戦いだ。野球でいえばエラー続出の試合で、どっちのエラーが得失点差を決めるのか、ということになる。
小沢氏は逮捕された秘書について、「起訴されるはずがない」とも言明した。この種の話では、秘書の責任として押し付ける政治家がとかく多い中で、いさぎよい態度ともいえる。
だが、起訴されたら、この発言が重くのしかかることになる。代表辞任、後任代表選出という事態も十分予想できる。
起訴までは最大日間の勾留が認められている。となると、起訴されるかどうかは、今月25日ごろに判明することになる。ここが微妙だ。
22日の来年度予算の年度内成立の時期と重なるからだ。民主党は早々と年度内成立に協力する態度を決めている。こういう事態になったからといって、これを変えられるか。
起訴が先か、予算成立が先か。その次第で政局攻防が微妙に変わってくる。
★★花岡信昭メールマガジン★★692号[2009・3・5]転載。
ポスト小沢は誰か
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平井 修一
「岩手県の公共事業を小沢が仕切ってきた、贈収賄事件だ」というのが検察庁の絵図だろう。起訴にもちこめるだけの材料を入手したから小沢一郎の大番頭=大久保某(47)を逮捕した。不起訴なんて絶対ありえない。
結論ありきの「国策捜査」だと小沢民主党は吠えてみせたが、政治献金が事実上の西松建設からのものであることを知らなかったら、小沢はただのバカである。「西松からいくら入りました」と大番頭は小沢に報告しないはずがないわなあ。
大番頭は「自分がすべてを引き受ければオヤジ(小沢)に累は及ばない」としばらくは頑張るが、さて、堅気はひねくれ者でもない限り、2ヶ月で落ちるだろうというのが、獄中3ヶ月、10年裁判で無罪を勝ち損ねた小生の予感だ。
小沢と民主党は弁護士を総動員して大番頭を守るだろうが、岩手県の公共工事に際して「天の声、フィクサー」を大番頭は演じてきた、その証拠と証言はある、というのが検察だろうから、有罪は免れない。それを大弁護団もひっくり返せないのである。
普通のオッサンを捕まえて「忘年会でセクハラしたろ、おまえの部下(57)から被害届けが出ている」と言われたら、もうどうしようもない。酔った勢いで冗談をかましただけなのだ、「一発やらしてよ、生理もな
いだろうから」。
これで逮捕、留置、拘留、執行猶予付きながら懲役1年。「女性の尊厳を傷つけた罪は重い」。そういう時代だから、へたをすれば小沢も逮捕されかねない。「政治への信頼をいちじるしく毀損した」。
大番頭はこのままでは300日は拘留されたままである。47歳での拘置所暮らしは辛いのだ。保釈されたいから黙秘は通せない。小沢は混乱を招いた道義的責任で民主党代表を辞任するしかないだろう。それも早くしないと選挙にすこぶる影響する。
小沢は昔の自民党のイメージ「田中角栄的な利権誘導の政治家」として記憶される最期の人になるか。体調もあまりすぐれないようだから、これを機に引退するかもしれない。
政治家は美しく引退するのが難しい職業だなあとつくづく思うが、ポスト小沢で選挙に勝てるのは誰だろう。鳩も菅も岡田も前原も、なんとなくパワー不足である。まだ、渡辺恒三のほうがキャラが立っている。自民だって分からない。誰が両党の顔になるのだろうか。
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1)平井修一様へ
『頂門の一針』、何時も配信されるのを首を長くして待っています。
『頂門・・・』に記載の各氏のブログは夫々丹念に読ませて頂いていますが、特に平井さんの文章は良く言えば軽妙、言葉を変えれば人を食ったようなところが面白く、その人柄の履歴は何をして来た人なのか知りませんが、差支えなくば序での折教えて下さい。
さて、この度は禁煙努力中とのこと、小生の禁煙経験から一言。
小生は長らく商社勤務の営業マンだった経緯から、公私とも『飲む、打つ、買う』のような生活をしてきましたが、特にタバコは所謂Chain-smoker、途切れること無くピースを毎日40~50本、略40年間吸いま
した。
処が、今から10年程前の会社退職を機に、何となく禁煙を思い立ち以来タバコを止めました。
確かに禁煙を始めて2~3週間も辛いとは思いますが、ほんとに苦しいのは最初の3日です。
平井さんは既にその苦しい時期も通過されているので大丈夫、以後の禁煙間違いなし。 頑張って下さい。
と申しますのは、小生は禁煙して2年ほど経った頃(65歳頃/小生現在73歳、1936年1月生まれですから渡部亮次郎さんと全くの同年です)、階段を上がる時に2階くらいまでなら何も感じないのに、3階くらい迄登ると息苦しくなる。
最初、『オレも年を取ったな』と老化の所為だと思って自虐的に考えておりましたが、その内階段ばかりでなく何かと息苦しさを覚えるようになって、病院で心臓のカテーテル検査と肺のスキャナー検査をして貰ったところ肺気腫と診断され、長年の大量のタバコのタールによって破壊された肺胞は絶対回復することはなく、一方肺機能は老化と共に自然劣化するので症状は肺気腫と相伴って年々悪くなるだろうと言われました。
それに肺気腫ではアルコール類も量を受け付けなくなります。
小生の主治医は、その理由はアルコールを分解するための酸素の供給が不足するからだろうと言っております。
喫煙は肺癌に直結するとか、狭心症になるとか、動脈硬化の誘引とか言われますが、それらは直接の自覚症状としての苦痛は無いと思いますが、肺気腫による『息苦しさ』は何とも辛く、今更ながら長らく何の不安も抱かずに、高い税金を払いながらパカパカ毒煙を吸い続けたことを心底から後悔しています。
そんなこともありますので、平井さんもこの機にきっぱりタバコを止めて下さい。以上長々おせっかいで申訳ありません。
TK生
2)かつて、「ムネオ・ハウス」というのが話題になりました。あの北海道選出の鈴木宗男議員があまりにも突出した外交手腕を発揮させ、それに随伴した外務省の佐藤優氏共々が逮捕された事件です。国民には、その事件性を明確に把握する人はあまりいなかったのではないでしょうか。
この件に関して、逮捕された佐藤優氏は「これは国策捜査だ」として、その後に日本の組織上の種々の問題点を本に著わしています。
今度のこの民主党代表・小沢一郎氏の秘書逮捕の問題も何となくこれに類した事件に思えます。
このゼネコンにまつわる献金を受け取った議員は、与野党を含めてまだまだいるそうですが、一罰百戒の意味を込めてか、政局の流れを考えてかは分かりませんが小沢氏の今後の展開と突出した政治手法に警鐘の意味を込めてではないかと推測されのは誰しも容易に想像されるものです。
さらに、うがった見方をすれば日本の中以上に現在の体制が変わることに危機感を持っている筋からの動きがあったのではとも推測されることです。
ご承知の様に小沢代表は、将来の政権運営の中で中国寄りの外交姿勢を鮮明にしています。現在、日米同盟の機軸を外交の柱とする両国にとっては障害になるのは目に見えています。ここにも国策が展開する素地があるようにも思えます。 なみお