派遣村騒動で「心の病」を持つ会社員の復職が続出。不況うつとED 5月に大量発生。 | 日本のお姉さん

派遣村騒動で「心の病」を持つ会社員の復職が続出。不況うつとED 5月に大量発生。

派遣村騒動で「心の病」を持つ会社員の復職が続出

ダイヤモンド・オンライン1月29日(木) 8時32分配信 / 経済 - 経済総合 

 今年初め、どのニュースを見ても連日報道されていた「年越し派遣村」。寒空の日比谷公園で年を越す派遣労働者の姿は、国民に今の厳しい雇用情勢を強く印象づけた。じつは、その余波が意外なところに及んでいる。

 精神障害に係る労災の支給決定件数が2007年に過去最高の268件を記録するなど、うつ病をはじめとする「心の病」を抱える会社員は増える一方だ。近年はあまりの患者の急増に、医師に加えて、産業界や国も相次いで対策を打ち出した。

 新人研修に「メンタルヘルス研修」を組み込む企業は珍しくない。もし、心の病にかかっても、医師や企業が連携しつつ慎重に職場に復帰するための「復職支援プログラム」を設けている企業も増えた。

 その結果、早い段階で従業員のメンタル面での異常を発見して治療できるなど、プラスの効果を生んでいる。

 一方で、心の病で休職することへの心理的ハードルが下がり、「復職しても大丈夫に見える軽度の人まで、『まだ無理です』と休職を続ける人が少なからずいた」(ある精神科医)のもまた事実である。正社員だから、簡単には解雇されないという意識も当然あっただろう。

 ところが、年始の年越し派遣村の報道を目の当たりにし、こうした軽度の患者の態度が一変した。「次は正社員である自分の雇用も危ない」と危機感を感じて、続々と職場に戻ろうと医師や企業に相談を始めているというのだ。皮肉なことに、どんなクスリより、派遣村が劇的な効果をあげたかたちとなった。

 もっとも、困った“副作用”もある。「本来治療が必要なのに、無理して復職しようとする人も増えている」(荻原国啓・ピースマインド社長)というのだ。

 景気の後退で、職場環境は以前にも増して厳しさを増す可能性が高い。そこに本来治療が必要な患者が無理して復帰することになれば、病状を悪化させる事態を招くリスクをはらんでいる。復職可能かどうかを判定する医師や企業には、慎重な対応が求められそうだ。

(『週刊ダイヤモンド編集部』 佐藤寛久)

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20090129-00000002-diamond-bus_all


不況うつとED 5月に大量発生

AERA2月23日(月) 13時13分配信 / 国内 - 社会

――大リストラの波は、非正規社員のみにとどまらず、正社員にも押し寄せた。
不安に揺れる30代、40代が、心を閉ざし始めている。
編集部 大重史朗、古川雅子――

 眠れない。新聞の文字が頭に入らない……。
 不動産会社で営業を担当する男性(28)が自身の異変に気づいたのは、昨年秋のことだ。
 サブプライム問題の影響をもろに受けた会社は、新たなリストラを宣言したところだった。かつてのリストラで職場を離れていった同僚の顔が浮かぶ。
「自分もいつか……」
 そう思うと仕事が手につかなかった。その上、リーマンショック以降、営業成績は一向にあがらない。プレッシャーで押しつぶされそうな毎日だった。
 心療内科でうつ病と診断された。現在は休職して治療中だ。
 大企業が次々と人員削減を発表し、雇用不安は派遣など非正規社員から正社員へと広がる。大不況のあおりで働き盛り世代に心の閉塞感が強まっている。

■3タイプの「不況うつ」

 そんな中で、うつ病など心の病を抱える患者が訴える内容に変化が出始めている。いま特に多いのは「不況うつ」とも呼べそうな次の3つのタイプだ。
(1)ネガティブ思考
「やってもやっても成果が上がらない」「うまくいかないかもしれない」などと考える。
(2)引きこもり
「自分は必要とされていない」「誰も助けてくれないだろう」などと自己否定して、自分の殻に閉じこもる。
(3)燃え尽き
1人当たりの仕事量が増えてオーバーワークになり、体も心もくたびれる。
 相談内容に(1)のタイプが増えていると話すのは、精神科医の大野裕慶応義塾大学保健管理センター教授。
「景気が悪くなれば達成感が得にくいですから、時代性を反映している訴えだと思います」
 企業のメンタルヘルス事業大手の「ピースマインド」(東京都中央区)では、相談を受ける人などにチェック式のストレス度調査を行ったところ、(2)にあてはまる項目にマルをつけた人が昨秋から増えている傾向がみられたという。年間の相談数は1万数千件に上り、その6~7割を30~40代が占める。
 同社臨床心理士の渋谷英雄さんは、こう分析する。
「常に緊張した状態が続き、職場で理不尽なことを言われたりすると、理解してもらえない寂しさが募る。従来(2)は学生に多く、社会人には少なかったのですが、働く人も外部の環境から自分を閉ざして引きこもる時代なのでしょう」

■「燃え尽き」は重度化

 (3)の「燃え尽き」については、コンサルティングや就職支援事業を行う「ベクトル」(東京都港区)の卜部憲社長が、こう説明する。
「部署の統廃合や人員削減が進めば、リストラされずに残った人にこのタイプが蔓延する。重度化して長引くケースが多い。『不況うつ』で最も警戒が必要なタイプです」
 人が減って1人あたりの仕事の負荷が高まり、夜中まで残業する日々が続くと、極度に疲労がたまっていく。職場の雰囲気も暗くなり、人間関係もぎくしゃくする。身も心もボロボロの状態で走り続ければダメージは大きい。

■「辞めるも残るも地獄」

 卜部社長は大手企業で23年間人事部に所属し、人事部長として数千人規模のリストラを担当した。「辞めるも地獄、残るも地獄」という現場を見てきた経験を踏まえ、こう読む。
「リストラが終わって3カ月から半年後あたりが一番危ない。『不況うつ』は5月ごろに大量発生するのではないか」
 職場のうつの推移を示す数値がある。『社内うつ』(講談社)の著書がある小杉正太郎早稲田大学文学部教授は毎年、メーカー従業員らを対象にストレスカウンセリングを行っている。関東地方にある自動車メーカーの工場で働く従業員約8000人を対象とした調査では、2005年度は全体の7・5%がうつ状態だったが、07年度は15・6%に倍増。リーマンショックをまたぐ08年度の調査(調査期間は08年6月~09年1月)では、集計中ながら20%に迫る勢いだという。
 小杉教授の調査やカウンセリングを受けるのは、製品開発部門の人が多い。大学院卒のいわば「頭脳集団」という意識が高い人も含まれるが、こうしたエリート層にも不況の波はのしかかっている。
 例えば、海外のライン撤退に伴って国内部署に配置換えになった人の中には、同じ社内でも海外の職場と勝手が違うため、うまく仕事が進められない人もいる。部署の統廃合や人員削減の結果、1・5人分の仕事量を押しつけられたり、専門分野外の研究に振り向けられたりした人なども、ストレスが高まっているという。
 高学歴ならではのうつも、この不況で増えているのだ。
 一方、以前からうつ病を治療している人にも、いっそうの悪影響が及んでいる。
「リーマンショック以降、うつ病で休職中だった人が、職場復帰を焦るケースが明らかに急増しています」
 と指摘するのは、ピースマインドの荻原国啓社長だ。

■ストレスで性欲が萎縮

 もし長期休暇をとってクビになったら……。うつ病を抱えながら働き続けている40代前半の女性は、治療に専念するために会社を休む決心ができないでいる。製造業の中規模会社の管理職。どんどん仕事を回され、切り盛りに追われるうちに、頭がうまく働かない自分に気づいた。背中に強い痛みも走った。鍼灸マッサージに通ったが、一時しのぎにしかならなかった。
 1年ほど前から、精神科で薬とカウンセリングによる治療を続けている。治療と仕事の両立は、正直しんどい。でも、独身で一人暮らしの身。仕事は手放せない。転職して環境を変えるとしても、このご時世では自分が望む条件の職場はなかなか見つからないだろう。
「先の人生を考えると、ここでだましだまし頑張るしかないのかな……」
 異変は心にとどまらない。
「うつ病とともに、ED(勃起障害)患者も増えるでしょう」
 と予想するのは、ヒガノクリニック(東京都足立区)の院長で精神科医の日向野春総医師。
「日本人は組織の中でのポジションがなくなると大きなショックを受ける。不況で組織との絆が切れると、うつ患者は増えます。それに、理不尽なリストラだと、妻からも相手にされなくなることもある。金の切れ目が縁の切れ目というやつです」
 EDとうつには関連性があると見られている。ED患者のうち、9割がストレスなど心因性のものだからだ。残り1割は器質性で、高血圧や糖尿病を患っている人に多い。
 EDと不況との相関について、『脳疲労に克つ』(角川SSC新書)の著書がある横倉恒雄医師は、こう解説する。
「仕事や職場のストレスが増えると、『なんとしても仕事を終わらせなければ』とか、『次は自分がリストラされかねない』などと考える理性が強くなり、性欲などの本能が萎縮してしまう。その結果、EDになってしまうことは十分考えられます」
 ソフトウエア会社でSEを担当する30代の男性は、最近EDになった。
 SEとして長年勤務し、午前零時ごろまでの残業は当たり前だった。コンピューターの仕事に打ち込むことにプライドを持っていて、激務を楽しんでさえいた。自宅には寝に帰るだけ。妻とも疎遠になり、セックスレスの状況が続いていた。ところがこの景気の悪化で、会社が残業を認めなくなり、早く帰宅するように促された。

■若年化するED患者

 その結果、残業に打ち込むこともできない男性は心のよりどころを失った。自宅に早い時間に戻るようになったが、妻とはぎこちない雰囲気の時間を過ごさなければならなかった。
「妻とセックスする自信がないんです」
 男性は、ED薬でしばらく治療を続けた。
 この男性のような患者にED治療薬を自費で処方している赤塚医院(東京都港区)の赤塚祝子医師によると、かつてEDは男性の更年期障害などの影響で50~60代が中心だったが、最近はこうした悩みを抱えた30~40代の患者も増えているという。
 こんな不況時代に効く、こころの処方箋はあるのだろうか?
 前出の大野教授は、こうアドバイスする。
「心が疲れた時には感情的になりやすいのですが、そうした兆候に周りの人はなかなか気づかないもの。例えば、家庭で『そんな言い方はないだろう』『どうせ自分は』などという発言が増えてきたら、まずは耳を傾けてあげるとよいでしょう」
(3月2日号)

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20090223-00000002-aera-soci