日本のみなさん。ヤシガニを食べるのはすぐにやめてください。婿不足なので。
ヤシガニ、食用捕獲で“婿”不足
【八重山】環境省のレッドデータブックで絶滅危惧(きぐ)II種に指定されているヤシガニの個体数が激減する中、ヤシガニの雌は自分より小さい雄とは交接しないことが独立行政法人水産総合研究センター西海区水産研究所石垣支所(與世田兼三支所長)の調査で分かった。
21日に市内で開かれた文化講演会(石垣市教育委員会主催)で調査結果を報告した佐藤琢研究員は「市内の居酒屋で提供されている大部分は500グラム以上の雄。大きな雄ばかり捕獲され“婿不足”状態で、公的機関や販売する居酒屋、地域で保護の方法を考えることが大切だ」と強調した。
ヤシガニは生息地の北限が沖縄といわれ、陸上で生活する甲殻類では世界最大で体重は3キログラム以上にもなる。稚ガニ以降は陸上で生活するため魚介類のような漁獲制限や規制がなく、乱獲などで激減。環境省のレッドデータブックで絶滅危惧II種に指定したが、法的に捕獲を制限するものでないため、現在は保護に関して何の対策もない。
これらの現状に危機感を抱き、同支所は2005年から鳩間島でヤシガニの生態調査に着手。繁殖行動について、佐藤氏が野外の交接ペアの雄と雌のサイズを調べたところ、33ペア中、雌の方が大きかったのはわずか1ペアだった。
さらに雌が本当に自分より大きな雄としか交接しないかを確かめるため、雄が大きいペアと雌が大きいペア約50組でそれぞれ交接させたところ、胸長が1―3ミリ雌が大きい場合を除き、雄が大きいペアしか交接に成功しなかった。その理由は不明だが、調査結果を受け、佐藤氏は繁殖における大きな雄の重要性を訴え、捕獲サイズの設定や、繁殖期の6―8月を捕獲禁止にすることなどを提案した。
講演会の来場者からは、捕獲や居酒屋への提供を免許制にすることを求める声も上がった。與世田支所長は「島の宝のヤシガニを八重山の食文化として残すためにも、いま対策を始めなければこのまま絶滅してしまう」と警鐘を鳴らした。
2月22日10時35分配信 琉球新報