今冬(昨年10月1日~2月5日)に発生した、ハロゲンヒーターが原因とみられる発火などの事故が57件(うち死亡1件、重軽傷4件)にも上ったことが13日、独立行政法人「製品評価技術基盤機構」(NITE)のまとめで分かった。
NITEによると、ヒーターのハロゲン管が破裂し、飛び散ったガラスの破片でカーペットを焦がしたり、突然台座付近から炎があがる事故などがあった。部品の接触不良などが主原因とみられている。
また、ハロゲンヒーターが原因と断定された事故は平成13~20年に477件発生。20社が40機種(中国、韓国、台湾製)をリコール(無償交換や製品回収)しているが、事故に歯止めがかかっていない。
NITEは「リコール対象製品を使い続けると危険。焦げた臭いなど異常があれば、すぐに使用を中止してほしい」と注意を呼びかけている。
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経済産業省は14日、電気製品輸入販売のフカダック(大阪)が輸入した中国製ハロゲンヒーター(FH-911)で、ヒーター管と内部配線の接続部に生じた亀裂によってスパークし、発煙・発火する事故が3件起きたとして、同社がリコール(代替品との無償交換)を始めたと発表した。対象は約4600台。問い合わせは、フリーダイアル0120・04・1212(同社)。
気製品製造卸「ユニ・ロット」(大阪市)が輸入・販売した韓国製ハロゲンヒーターで、発火による焼損事故が4件あったことが分かり、同社は21日、対象となる約3万台のリコールを始めた。製品は平成14年8月から販売された2機種「YH-6000(B)」「YH-6001(W)」。問い合わせは、フリーダイヤル0120・598・003
国民生活センターなどに寄せられたハロゲンヒーターの事故は、平成10年度から今年9月までで計417件に上り、電気暖房機器での事故情報の3割を占めている。事故の内容は「煙や火花が出た」「発火した」がそれぞれ2割を超え、ヒーター管などの破裂を加えると6割にのぼった。
製品事故の報告を受けて回収や無償点検修理などの対象となったのは、センターが把握しただけで19団体44機種の計117万3768台。12~15年ころに中国、韓国、台湾から輸入・販売されたものが、1~3年後にリコール対象になる場合が多い。輸入元だけで対応する場合や、販売元業者も加わってリコール対応の窓口を設置するなど、実施方法はさまざまだ。
ハロゲンヒーターのオレンジ色に光るガラスのヒーター管には、フィラメントとハロゲンガスなどが封入されている。特定時期の製品にリコールが相次いだことについて、あるメーカーの担当者は「ガラス管の質が悪くて亀裂が入り、封入ガスが抜けて空気が混ざり、発火したり破裂したりした」と話す。
扇風機型で、ヒーター管を保護するクッションやスプリングがなく、運搬の衝撃でガラス管にひびが入りやすい製品も見受けられたという。
温度調節は強弱2段階が主流だが、強から弱へ切り替える際は、電流を半導体のダイオードに通して調整する。こうした温度調節の電子部品は、ハロゲンヒーター本体底部にあるため、故障したまま弱運転にして発火し、床に敷いたカーペットなどが焦げる事故も多かった。
≪進まぬ回収≫
ところが、製品の回収は進んでいない。18年12月には千葉県の60代女性から「3年前に購入したハロゲンヒーターから発火して消し止めたが、業者に連絡したら、リコール社告を3年前に出したという。社告に気付かなかった」とセンターに連絡があった。
センターがリコールを出した19団体に回収状況などをたずねたところ、「2~3割」という回答が圧倒的に多く、最高でも4割程度にとどまっていた。
ヒーター管が破裂し、カーペットが焦げる事例が起きたとして昨年1月に自主回収を決めた輸入業者は、販売元の家電量販店と組んで対応窓口を開き、社告を出した。14年秋から1年余りで約10万5000台を販売したが、昨年秋に2度目の社告を出しても、回収率は2割程度だったという。「季節商品なので、使い始めるころに気付かれる場合が多くなる」と、先月には3度目の社告を実施した。
センターは「ハロゲンヒーターを使うなら、リコール対象品になっていないかどうか確認してほしい」と呼びかける。輸入元や販売元に直接問い合わせるほか、国民生活センターや製品評価技術基盤機構のホームページで社告やリコールを調べることもできる。
≪3~5年で寿命≫
ハロゲンヒーターには耐用年数がある。高熱になるガラス管は、メーカーによっても異なるが3000~5000時間が目安。冬場(6カ月)を通して1日6時間使えば、3~5年で寿命となる。経年劣化による重大事故を避けるため、使用停止を呼びかけたメーカーもあるが、担当者は「利用者の方に事故になってからでは遅いからと説明をしても、もったいないとして、理解していただけない」と打ち明ける。
耐用年数に達していなくても、安全に使うには(1)転倒安全装置に負荷がかかるので、じゅうたんなど柔らかい面には置かない(2)ヒーターのそばを離れるときは電源を切る(3)外出時はコンセントを抜く…を心がけたい。