「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 中国17省に百日も雨が降らない。
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成21年(2009年)2月9日(月曜日)
通巻第2485号
中国17省に百日も雨が降らない。小麦地帯75%に大被害
金融危機、経済不振の次に中国が直面する「百年の一度の大干魃」
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軍隊が出動している。豪州を襲っている山火事の騒ぎどころではない。
「中国空軍は当該空域に特殊な航空機を出動させ、化学弾2392,人口雨弾409発を発射、一部地域に降雨が観測された」(多維新聞網、2月9日)
干魃は08年10月から始まっていた。
穀倉地帯の河南省、河北省、安徽省、山東省などで雨がまったく降らず、この干魃は江西省、福建省にいたった。
華北の小麦地帯だけですでに5000万ムーが被災した。
被害は昨年華南を襲った大雪被害より甚大。
2月7日から干魃が緩和されてきたのは河南省、甘粛省、陝西省、山西省、湖北省、安徽省など。河南省の穀倉地帯の大部分には110日連続して降雨がない。
内蒙古省から流れてくる黄河は干上がっている。
当局は当面の干魃対策手当に四億元を投じたが、これから被災地域の食料援助などに867億元、農業支援に100億元。合計で971億元(邦貨換算1兆3000億円に相当)の被害と見積もられている。
沿岸部の都会では既報のように田舎から舞い戻った2000万人の民工潮に職がなく、不穏な空気が溢れていて、暴動が予測されており、軍の移動が始まっている様子だ。
宮崎正弘のHP更新 ↓
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<< 今月の拙論 >>
(1)「中国経済の数字は本当か?」(『ボイス』三月号、明日。2月10日発売)
(2)「インドをめぐる武器商人の魑魅魍魎」(『月刊日本』3月号、2月22日発売)
(3)「旧正月が意外に元気だったチャイナ」(『共同ウィークリー』、2月26日号予定)
(4)「朝日新聞が廃れる日」(『WILL』四月号、2月26日発売。予定)
(5)「ロシアの資源戦略、思惑はずれ頓挫」(『経営速報』、3月上旬号)
(6)「悲観論の誤謬について」(『正論』四月号、3月1日発売。予定)
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(読者の声1)戦前の中国関係の本ですが2冊ほど読んでみました。
支那満洲朝鮮案内 亜東指要 1925年(大正14年) 山根倬三 東洋協会
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2000ページを超える大著で各国・各地の政治・経済・社会・文化を網羅。あまりに重いので図書館内で閲覧しただけですが非常に興味深い本でした。
朝鮮では人口1700万人、日本人はわずか36万7千人。大正9年の首都の京城(ソウル)といえども大なる造り酒屋・醤油醸造家・菓子店もなく、旅籠もない。日本で言えば足利時代に相当する、と書かれています。
鉄道ができ日本資本の工場や学校などかなりの数が建てられていた大正時代でも社会生活はイザベラ・バードの頃と大差なかったのでしょうか。
キーセン(日本のお姉さんの注※売春婦がたくさんいる街のことだと思います。)の項では平壤出身が多いとされるとあり、現代の韓国人が北朝鮮の美女軍団に籠絡されるのは歴史的なもののようです。
支那の項では日本の領事館が40以上もあり、ずいぶん日本人の進出が多かったのだなと感心します。中国全土を紹介しているのですが、雲南などは仏領インドシナとの関連での説明、当時の大国の勢力圏ごとの記述でしょうか。
最新朝鮮・満洲・支那案内 小西榮三郎編 昭和5年
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こちらは旅行ガイドブックで700ページほどの辞書サイズ。日鮮・日満・日中各往復券や周遊券の紹介、15日・21日・30日での旅程、各地の通貨、時差(南満洲・支那は1時間遅れ、哈爾濱時刻は南満時刻+26分)、旅館への祝儀、食事や水の注意など今のガイドブックとほとんど変わりません。
朝鮮編:「商業」の項では、朝鮮人は従来常設店舗を設けず、多く市場の取引を主としたが、近時店舗を設くるもの、漸次其数を増すに至った。とありますから大正時代あたりまではテレビの韓国歴史ドラマの世界とさほど変わらなかったことがうかがえます。
沿線案内では各地の沿革・人口・銀行会社・旅館・名所旧跡など細かく説明。
人口では昭和3年の数字として
釜山 朝鮮人 71,343 内地人 41,144 外人 605 計113,092
京城 朝鮮人 230,734 内地人 86,548 其他 908 計321,848
開城 朝鮮人 43,302 内地人 1,338 外人 189 計 44,879
平壤 朝鮮人 85,898 内地人 22,527 外人 860 計109,285
ずいぶん人口が少ないことと釜山・京城の日本人の多いことに驚きます。
満洲でも同様 大連 日本人 80,879 支那人 135,801 外国人 400 計217,080
など詳細な人口がでてきますが、これが中国になると天津約80万。日本人3千、北京 90万弱 日本人約3千、青島 支那人 14万 日本人1万2千、など大雑把。満洲では日清・日露の戦跡の紹介に詳しいのは当時の時代を物語ります。
青島の項では大日本麦酒工場が大正9年に青島麦酒を買収し札幌ビール、朝日ビール、青島ビールを醸造、其生産高は独逸時代に数倍するに至る。とあり他にも紡績会社が大量に進出するなど日本企業の進出ぶりは現在とほとんど変わりません。肉牛も年間6万7千頭を処理し6万頭が日本向けに輸出とあります。アサヒビールが中国進出にあたり青島ビールと合弁会社を設立したのも歴史的な経緯で納得。
上海はさすがに大都会、人口150万、在留外人約4万、其半数は邦人とあります。マカオについては人口19万余、貿易不振の為に政庁は歳入を得るの道なく?窮余の一策として公然賭博を免許し、其の税金を以て政庁の経費を維持して居る。
而して歳入の他の一部分は阿片専売の収益税で、其処には有名なるサンパウロ寺院があるのも面白い。とあり現在のマカオと同じですね。
(PB生)
(宮崎正弘のコメント)当時の長野朗や小竹文夫ら、今日の水準でも世界的なチャイナ・ウォッチャーが多くを書き残しました。西尾幹二先生『GHQ焚書図書開封』にあるように、その多くがGHQ占領時代に発行禁止処分。しかし最近、何冊かは復刻されています。
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(読者の声2)貴誌2484号に関して、「外国から見た敗戦支那」の中にエドガー・スノーが「蒋介石と支那」と題して『フォリン・アフェアーズ』(1938年)に書いた論文がありました。
「公金消費を衷心より悪む彼は、不正の廉で多くの官吏を処罰し、少数のものは死刑にさえ処したが、彼が結婚と政策で結合している宋家と孔家は、過去十年間に支那最大の財産を蓄積した。また彼は独裁者たらん野心をもっていることを繰返し否定し、実際においてほとんど凡ての決定を関係政治機関に提出してその承認を求めたが、これらの機関は彼自身の機関であり、実際においてきわめて少数のものが数百万民衆の上に、かくも大なる直接的、個人的権力を振るっているのである。」
「蒋、孔家、及び宋家の人々を除けば、支那がどれほどの財宝を英米に積出したか、或いは支那の通貨に対してどれほどの金、銀準備があるかは、唯一人として正確に知っていない。」
と記しています。
共産党政権になり、支那から中国になっても、まったく変わりませんね。
(PB生)
(宮崎正弘のコメント)そうです。あれほど毛沢東を礼賛したエドガー・スノーも後年、国賓待遇で北京に迎えられ、毛沢東に会ったあと、痛烈な悔恨を書き残しています。
日本の左翼歴史家は、このエドガー・スノーの“転向声明”を、意図的に公開していない。
彼は本当に毛沢東革命に失望し、後悔したと思いますよ。
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(読者の声3)貴誌2480号に掲載された、ラビ・バトラ著、ペマ・ギャルポ他監訳『2009年断末魔の資本主義』(あうん)」の書評にて、「かれのいう『資本主義の終焉』とはあくまでアメリカ型欲望追求資本主義モデルの崩壊であり、これからは東洋の智恵が世界を導くだろう、と言う」云々。
「伝統を極めて合理的な人類の淘汰作業の結果と考えるならば、この時空に従うことこそ合理的なのではないでしょうか」(万葉至乃輔)とありました。
21世紀の日本人はこうした理想社会論から現実主義にハッキリ立ち戻るべきと思います。
米国人はその宗教的由来から理想社会実現論が好きです。しかし世界から貧困をなくすには無限の富が必要であり、長大な人間の歴史はこのような理想社会論の実現をハッキリ否定しています。
というのはもともと地上には超支配者としてのゴッド神がいないし、無限の富のある理想社会は天国の話なのです。結局地上の人間は限られた条件、資源の下で生き抜かなければなりません。沢山の災害が襲ってきます。
完全な解決はなく、そのつど全力でしのぐということです。失敗すれば全滅です。
したがって必要なのは我慢を含めた現実性のある短期的で具体的な方針であるということです。人間は遠大な展望に騙されがちですが、日本人は占領憲法はじめ、平和を守るために千羽鶴を折るという、妄想からすっぱり「足をあらう」ことが求められています。
(MC生)
(宮崎正弘のコメント)経済の基礎的条件は世界一優良な日本がふらふらともたつく主因。乱暴ながら単純明快な結論をいえば、日本人にメンタル・タフネスが欠落しているからです。
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(読者の声4)貴誌2484号の「神奈川のST」殿が尾張徳川家への評価を述べられた文を読み名古屋出身の私として嬉しく思いました。
尾張藩は元来尊皇思想を伝統とし、水戸藩の尊皇思想にも大きな影響を与えました。
ST生殿が言われる通り、従来の幕末史の中では過小評価されてきたといわざるをえません。
尾張藩のもう一つの功績は織田、豊臣の経済振興策を継承して、農商工業の保護育成に尽力したことで、現在にいたる名古屋地区の強固な経済力の基礎をつくったことでした。
わたしの学んだ旭丘高校(旧制愛知一中)は尾張藩が作った洋学校を起源としていますが、その愛知一中の校歌も「元亀の昔この地より織豊二氏が決起して挙げし功を受け継がん~」といった歌詞で織田豊臣を称える内容でした。
また名古屋は元来、東京と京都の中間にあって、反中央権力的な気風の強い地です。戦前からも左右両翼の人材を輩出しています。
一方、水戸藩は革命のイデオロギ-たる尊皇攘夷思想を天下に鼓吹し、桜田門の変に代表される革命的テロルの先頭に立ちました。
維新革命における起爆剤としての役割は極めて大でありましたが、最後は天狗党と諸生派の血で血を洗う内乱の末、有為の人材が死に絶えてしまったことは悲劇の極みです。
それにしても維新史を読み返してあらためて思うのは、あの時代日本の北から南まで尊皇憂国の思想を持ち、それを実行に移していった人物が如何に多く生まれていったのか、ということです。
維新の歴史は決して過去のことでなく、南北朝の歴史とともに現在にも脈々と生きる我々日本人の宝だと思います。 (武蔵国杉並住人)
(宮崎正弘のコメント)明治維新の研究は、じつはこれまで左翼歴史家が岩波講座で主流。学問的にはこれを粉砕する作業から。家永とか井上(清)とか、服部とか、ろくな維新史家しかいない。ついでに言いますと丸山真男は「正真正銘の馬鹿」。柄谷行人は「読むに値しない馬鹿」。その隙間を狙って半藤一利が『維新史』などと噴飯物を出しています。半藤は「相手にするにはレベルが低すぎる馬鹿」でしょうか。
保守派歴史家の一層の奮起を!
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(編集部から訂正)ラビ・バトラが唱える「プラウト」のスペルは、「Progressive Utilization Theory」の略です。「Progressive Unilization Theory」は誤植でした。☆
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ご案内 INFORMATION
『日中戦争 -戦争を望んだ中国 望まなかった日本』出版記念講演会
~『日中戦争』出版記念 -新事実で読み解く"事変"拡大原因 ~
日 時: 2月22日(日)午後6時半~8時半(その後、講師交えての懇親会)
会 場: ひと・まち交流館京都 3F第5会議室
(京都市下京区河原町五条下る東側、075-354-8711
http://www.hitomachi-kyoto.jp/access.html
京阪「清水五条」駅下車徒歩8分/京都地下鉄「五条」駅下車徒歩10分)
講 師: 北村稔(立命館大学文学部教授、『日中戦争』(PHP研究所)著者)
定 員: 90名(定員になり次第申し込み締切)
主 催: 戦略・情報研究会
参加費: 1000円(学生500円)
お申込/お問合せ先: 久野 潤(代表、大阪国際大学講師)
kunojun@amethyst.broba.cc
[当日] 090-2933-8598
<御名前・御通勤御通学先を明記のうえ事前お申込頂きますと当日の御記帳無しで入場頂けますので御協力頂ければ幸いです>
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3月1日(日)、黄文雄、宮崎正弘、城仲模氏を講師に台湾2・28時局講演会
●日 時:2009年3月1日(日)18:00~20:30(17:30開場)
●会 場: アルカディア市ヶ谷 5階 穂高
[交通]JR/地下鉄「市ヶ谷」駅より徒歩3分
http://www.jps.gr.jp/news/20020411map.htm
●参加費:1,000円
●講演1 18:00~18:40
テーマ 「台湾が直面する三大危機」
講 師 黄 文雄(拓殖大学日本文化研究所客員教授)
http://kobunyu.jp/
●講演2 18:45~19:25
テーマ 「台湾と中国の一中市場は可能なのか」
講 師 宮崎正弘(評論家・作家)
http://miyazaki.xii.jp/
●講演3 19:30~20:10
テーマ 「台湾の現在と未来、日本との関係」
講 師 城 仲模(台湾李登輝之友会全国総会総会長)
1938年(昭和13年)、台湾・台南市生まれ。東呉大学卒業後、早稲田大学大 学院、東京大学大学院などに留学。法学博士。李登輝総統時代に法務部長(法務大臣)や司法院副院長(最高裁副長官)を歴任。昨年6月、李登輝之友会全国総会の総会長に就任。台湾行政法学会理事長、(財)台湾法治曁政策研究基金会会長。
■主 催:台湾独立建国聯盟日本本部
どなたでも予約なしで参加できます
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宮崎正弘の新刊
『やはり、ドルは暴落する! 日本と世界はこうなる』(ワック文庫)
定価980円<税込み>。
http://miyazaki.xii.jp:80/saisinkan/index.html
宮崎正弘のロングセラー
『出身地でわかる中国人』(PHP新書、861円)
『中国がたくらむ台湾・沖縄侵攻と日本支配』(KKベストセラーズ 1680円)
『トンデモ中国、真実は路地裏にあり』(阪急コミュニケーションズ、1680円)
『北京五輪後、中国はどうなる』(並木書房、1680円)
『世界が仰天する中国人の野蛮』(黄文雄氏との共著。徳間書店、1575円)
『崩壊する中国 逃げ遅れる日本』(KKベストセラーズ、1680円)
宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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