「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成21年(2009年)2月5日(木曜日)貳
通巻第2480号
キルギス、マナス米軍基地の閉鎖を通告、在ビシュケク米国大使館は「知らない」。
バキーエフ大統領がモスクワで記者会見、オバマ政権に強烈なブロー
**********************
キルギス大統領はロシアの圧力(?というより取引条件)に負けて、首都ビシュケクのマナス空港に駐屯している米軍基地の撤去を決定したとモスクワで発表した(2月4日)。
『モスクワの記者会見』での発表がミソで、クレムリン向けのパフォーマンスの可能性もあり、まずキルギスの国会承認が必要だが。。。。
この基地には大型輸送機などが駐機、米軍は2000人規模。
米軍はこの基地の「家賃」として毎年1億5000万ドルをキルギス政府に支払い、さらに過去五年間でおよそ8億5000万ドルを教育振興、インフラ整備、雇用機会増大などを目的に援助してきた。
むろん「独立国」としての矜恃を示すためにもキルギス国内には反米ナショナリズムがあり、基地の継続使用に反対する勢力があった。それらは微々たる政治勢力で、そもそもキルギスの民は遊牧民が多く政治的無関心、エリートは海外へ出稼ぎに行く。
バキーエフ大統領は、ロシアから20億ドルの援助と引き替えたのだ、という情報が飛び交かい、AFPがただちに在キルギス米国大使館に確かめたところ「何も聞いていない」と回答があった。
『ユーラシア・ディリー・モニター』(2月5日号)によれば、モスクワがバキーエフのクレムリン訪問で提示したのは水力発電建設プロジェクト(ただしロシアとの合弁)に17億ドルの拠出という魅力ある条件だった。
これは2005年にプーチン大統領(当時)がビシュケクを訪問した際に約束した総合20億ドル援助のなかに含まれる。
ついでバキーエフを魅惑したのは次のキルギス大統領選挙へのロシアの支援(キルギス野マスコミはロシア統制、+選挙資金)である。
さらにキルギスからロシアへの出稼ぎ労働者は60万人。おそらく後者も死活的条件。なぜならロシアはグルジアやアゼルバイジャンと対立すると、出稼ぎ労働者を追い出すからだ。
キルギスは国内的に失業者だらけであり、追い出されると政情不安にも繋がる。
▲米軍基地を喪えばアフガン作戦に戦略的障害となる
もしキルギスが正式に米軍の撤退を要求する挙にでたとすれば、オバマ政権にとっては強烈なブローとなる(キルギス国会の承認が必要なので米国の再交渉はありうる)。
なぜなら米国はアフガニスタンへの増派を決めたばかり、すでに二年前にウズベキスタンの空軍基地から撤去をさせられ、中央アジア最後の拠点だったビシュケクの飛行場を喪えば、米軍のアフガニスタン攻略計画に大きな支障がでるからだ。
筆者はおととしキルギスの、この拠点のマナス飛行場を取材している。
http://miyazaki.xii.jp/tyosya-kinkyou/index.html
(このHP、2頁目の中段に写真があります ↑)
米軍が借用しているマナス基地から僅か30キロの地点にはロシア駐留軍が陣取り、キルギスの宗主国然として、米軍を監視している、不思議な構図が、ビシュケクでは展開されてきた。
今回、唐突なキルギスの米国離れの印象があるが、じつは舞台裏で進んでいたのはロシア資本によるキルギスのメディア支配で、過去三年ほどに、このロシア統制下にあるキルギスのメディアが何を報じたか。
まず米軍基地では麻薬取引が行われ、さらに核兵器を隠匿しており、アフガンの次にイラン攻撃の拠点となる云々という作り話、うわさ話を広めてきたのだ。
07年12月には米軍軍属が、キルギス人のトラック運転手をひき殺す事件が発生し、どこかの国の反米闘争が往々にして、こうした事件を政治利用するように、背後に反米運動の組織化がなされていた。
つい一週間前、メドべージェフはタシュケントを訪問し、ウズベキスタンのガス全量をロシアが購入するという独占契約に調印した。
ウクライナ、ベラルーシへのパイプラインを締めあげて瓦斯代金を値上げし、いずれウクライナ東半分とベラルーシとの合邦を考えているロシアは、中央アジアの嘗ての属国群を巧妙に老獪な手段を繰り出して、いままた隷属化させようとしている。
プーチンはすでにトルクメニスタンの瓦斯利権を抑え、今度はウズベキスタンの瓦斯の全量を抑え、アフガンに隣接するタジキスタンには軍事援助、そのうえで、勇躍、キルギスを囲んだのだ。
これでクレムリンに全面降伏せずに独自資源外交を展開するのはカザフスタンのみとなったのである。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
富の寡占というアメリカ型資本主義は崩壊する
これからは日本、インド型の東洋的資本主義が世界を導くだろうと予言
(書評 宮崎正弘)
ラビ・バトラ著、ペマ・ギャルポ他監訳『2009年断末魔の資本主義』(あうん)
@@@@@@@@@@@@@@@@
ラビ・バトラ教授はと言えば、ヒンズー教徒の経済哲学者。日本でも熱狂的ファンがいる。
経済学の合理主義ではなく、哲学的思考から未来の世界を読み解くという、一種予言者的な警告をもっとも得意とするため日本の大手マスコミは正面からバトラを取り上げようとはしない。
だが、この予言者的哲学者が嘗て予測したことは殆どが当たった。
不思議な魔力をまとった人物で、だからこそペマ・ギャルポ氏が翻訳を引き受けたのであろう。
チベット仏教との輪廻転生的運命論をヒンズー教徒の世界観とが、なにか魂の絆で結ばれているのではないか。
さてラビ・バトラ教授の表題に掲げた最新作を紐解く前に、ここではどうしても前作の予測と、その的中ぶりを振り返っておく必要がある。
バトラは前作『2010資本主義大爆発』(あうん)のなかで、サブプライム危機の勃発とウォール街の株価大暴落、原油価格の大幅な高騰を言い、米国には民主党政権が誕生し、中国が百年に一度の危機に襲われるだろうと予言した。
それらはほぼ的中である。
ほかにも細かな予測をしているが、おおざっぱにまとめると米国の資本主義は本来の資本主義ではなく、富の独占とワーキングプア増大という矛盾にみちたもので、進歩的でも知的でもないから没落の運命は避けられないとする。
かれのいう『資本主義の終焉』とはあくまでアメリカ型欲望追求資本主義モデルの崩壊であり、これからは東洋の智恵が世界を導くだろう、と言う。
また中国の危機は多くの自然災害に加え、チベット、ウィグル、内モンゴルの独立運動の問題がある。
さらに「中国経済自体が抱える、不動産バブルと株バブルの崩壊という二重のバブル崩壊が、格差の拡大=民衆の不満拡大、北京政府と中国人民解放軍との軋轢拡大へとつながる」と予測した。
バトラ教授が主唱する「プラウト」なる理論は、PROGRESSIVE UNITILIZATION TEHORYの略で、要するに「進歩的活用理論」
その三つの基軸とは、
(1)世界中の資源とその活用の可能性は、人類すべての共有財産と認識する
(2)資源を最大限に効率よく活用し、それを合理的に配分し、真の意味での個人と社会の進歩を目ざす
(3)諸悪の根源である富の集中を排除した、倫理的で合理的な利益分配システムを作り上げる
究極の目標は世界から貧困をなくすのである、と説く。
なにやら末法思想的な、宗教的ドグマの匂いがしないでもないが、市場原理自由競争原理の嘘と欺瞞を激しく攻撃し、グリーンスパン批判の急先鋒でもあったバトラの新作、無視したり見落としたりするわけにはいかないだろう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
♪
(読者の声1)貴誌2479号の読者の声3のMC氏のご指摘、いろいろ有難うございました。宮崎先生にも示唆されたように、私が取り上げた悲憤慷慨調の小室氏の分析は、普通の観点ではないようです。
おそらく高度な政治社会学的知見から、戦前の社会矛盾を現代の民主主義観点から斬ったということでしょうか。
だから非常に意識の高いレベルで、雁字搦めの封建的人間関係と言っているので、普通の意識レベルで、実際の当時の社会の様相を指摘しているのではないのだろうということです。学者の意識は普通の生活者のレベルと違う所があると、考えておいた方が良さそうです。
鼎談形式で、ざっくばらんな感じで話が展開されているので、うっかり嵌ってしまったという感じです。考えてみればお三方ともアカデミックな学者でした。
ただ昭和維新としてやるべき構造上の改革は、その辺にあったというのは、一つの鋭い指摘のように思いました。だから、土地所有の制限を謳った北一輝の社会主義の改造法案は、当時の社会政治状況から意味深いものになるという議論が展開され、2.26まで行くのかと思えば、そうではなく政治家を作らず官僚だけ作った教育制度の問題と、話題は移ってしまったのです。
お蔭で普通のレベルでの戦前の様子が少し見えてきました。
ただ物事には裏表があるから、バランスシートではないですが、プラスの見方はマイナスの見方と背中合わせで、たとえば健全であったという言い方は、相対的なものかもしれません。
つまり価値基準の取り方如何ということです。要するに長所と見るか、短所と見るかということでもあると思います。それでも客観的には今日ほど恵まれていなくても、精神が今日より健全であったという表現は、深い意味があります。
もちろん、相対論の範囲ではあると思いますが。
ただ、戦前のイメージに関して御蔭さまで風通しが良くなりました。有難うございました。
(W生、武蔵野)
(宮崎正弘のコメント)まずは三島由紀夫の『英霊の声』を読まれることをお勧めします。
<< 今月の拙論 >>
(1)「中国経済の数字は本当か?」(『ボイス』三月号、2月10日発売)
(2)「インドをめぐる武器商人の魑魅魍魎」(『月刊日本』3月号、22日発売)
(3)「旧正月が意外に元気だったチャイナ」(『共同ウィークリー』、2月26日号予定)
(4)「朝日新聞が廃れる日」(『WILL』四月号、2月26日発売。予定)
(5)「ロシアの資源戦略、思惑はずれ頓挫」(『経営速報』、3月上旬号)
宮崎正弘の新刊
『やはり、ドルは暴落する! 日本と世界はこうなる』(ワック文庫)
定価980円<税込み>。
http://miyazaki.xii.jp:80/saisinkan/index.html
宮崎正弘のロングセラー
『出身地でわかる中国人』(PHP新書、861円)
『中国がたくらむ台湾・沖縄侵攻と日本支配』(KKベストセラーズ 1680円)
『トンデモ中国、真実は路地裏にあり』(阪急コミュニケーションズ、1680円)
『北京五輪後、中国はどうなる』(並木書房、1680円)
『世界が仰天する中国人の野蛮』(黄文雄氏との共著。徳間書店、1575円)
『崩壊する中国 逃げ遅れる日本』(KKベストセラーズ、1680円)
宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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(C)有限会社・宮崎正弘事務所 2009 ◎転送自由。ただし転載は出典明示。
平成21年(2009年)2月5日(木曜日)貳
通巻第2480号
キルギス、マナス米軍基地の閉鎖を通告、在ビシュケク米国大使館は「知らない」。
バキーエフ大統領がモスクワで記者会見、オバマ政権に強烈なブロー
**********************
キルギス大統領はロシアの圧力(?というより取引条件)に負けて、首都ビシュケクのマナス空港に駐屯している米軍基地の撤去を決定したとモスクワで発表した(2月4日)。
『モスクワの記者会見』での発表がミソで、クレムリン向けのパフォーマンスの可能性もあり、まずキルギスの国会承認が必要だが。。。。
この基地には大型輸送機などが駐機、米軍は2000人規模。
米軍はこの基地の「家賃」として毎年1億5000万ドルをキルギス政府に支払い、さらに過去五年間でおよそ8億5000万ドルを教育振興、インフラ整備、雇用機会増大などを目的に援助してきた。
むろん「独立国」としての矜恃を示すためにもキルギス国内には反米ナショナリズムがあり、基地の継続使用に反対する勢力があった。それらは微々たる政治勢力で、そもそもキルギスの民は遊牧民が多く政治的無関心、エリートは海外へ出稼ぎに行く。
バキーエフ大統領は、ロシアから20億ドルの援助と引き替えたのだ、という情報が飛び交かい、AFPがただちに在キルギス米国大使館に確かめたところ「何も聞いていない」と回答があった。
『ユーラシア・ディリー・モニター』(2月5日号)によれば、モスクワがバキーエフのクレムリン訪問で提示したのは水力発電建設プロジェクト(ただしロシアとの合弁)に17億ドルの拠出という魅力ある条件だった。
これは2005年にプーチン大統領(当時)がビシュケクを訪問した際に約束した総合20億ドル援助のなかに含まれる。
ついでバキーエフを魅惑したのは次のキルギス大統領選挙へのロシアの支援(キルギス野マスコミはロシア統制、+選挙資金)である。
さらにキルギスからロシアへの出稼ぎ労働者は60万人。おそらく後者も死活的条件。なぜならロシアはグルジアやアゼルバイジャンと対立すると、出稼ぎ労働者を追い出すからだ。
キルギスは国内的に失業者だらけであり、追い出されると政情不安にも繋がる。
▲米軍基地を喪えばアフガン作戦に戦略的障害となる
もしキルギスが正式に米軍の撤退を要求する挙にでたとすれば、オバマ政権にとっては強烈なブローとなる(キルギス国会の承認が必要なので米国の再交渉はありうる)。
なぜなら米国はアフガニスタンへの増派を決めたばかり、すでに二年前にウズベキスタンの空軍基地から撤去をさせられ、中央アジア最後の拠点だったビシュケクの飛行場を喪えば、米軍のアフガニスタン攻略計画に大きな支障がでるからだ。
筆者はおととしキルギスの、この拠点のマナス飛行場を取材している。
http://miyazaki.xii.jp/tyosya-kinkyou/index.html
(このHP、2頁目の中段に写真があります ↑)
米軍が借用しているマナス基地から僅か30キロの地点にはロシア駐留軍が陣取り、キルギスの宗主国然として、米軍を監視している、不思議な構図が、ビシュケクでは展開されてきた。
今回、唐突なキルギスの米国離れの印象があるが、じつは舞台裏で進んでいたのはロシア資本によるキルギスのメディア支配で、過去三年ほどに、このロシア統制下にあるキルギスのメディアが何を報じたか。
まず米軍基地では麻薬取引が行われ、さらに核兵器を隠匿しており、アフガンの次にイラン攻撃の拠点となる云々という作り話、うわさ話を広めてきたのだ。
07年12月には米軍軍属が、キルギス人のトラック運転手をひき殺す事件が発生し、どこかの国の反米闘争が往々にして、こうした事件を政治利用するように、背後に反米運動の組織化がなされていた。
つい一週間前、メドべージェフはタシュケントを訪問し、ウズベキスタンのガス全量をロシアが購入するという独占契約に調印した。
ウクライナ、ベラルーシへのパイプラインを締めあげて瓦斯代金を値上げし、いずれウクライナ東半分とベラルーシとの合邦を考えているロシアは、中央アジアの嘗ての属国群を巧妙に老獪な手段を繰り出して、いままた隷属化させようとしている。
プーチンはすでにトルクメニスタンの瓦斯利権を抑え、今度はウズベキスタンの瓦斯の全量を抑え、アフガンに隣接するタジキスタンには軍事援助、そのうえで、勇躍、キルギスを囲んだのだ。
これでクレムリンに全面降伏せずに独自資源外交を展開するのはカザフスタンのみとなったのである。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
富の寡占というアメリカ型資本主義は崩壊する
これからは日本、インド型の東洋的資本主義が世界を導くだろうと予言
(書評 宮崎正弘)
ラビ・バトラ著、ペマ・ギャルポ他監訳『2009年断末魔の資本主義』(あうん)
@@@@@@@@@@@@@@@@
ラビ・バトラ教授はと言えば、ヒンズー教徒の経済哲学者。日本でも熱狂的ファンがいる。
経済学の合理主義ではなく、哲学的思考から未来の世界を読み解くという、一種予言者的な警告をもっとも得意とするため日本の大手マスコミは正面からバトラを取り上げようとはしない。
だが、この予言者的哲学者が嘗て予測したことは殆どが当たった。
不思議な魔力をまとった人物で、だからこそペマ・ギャルポ氏が翻訳を引き受けたのであろう。
チベット仏教との輪廻転生的運命論をヒンズー教徒の世界観とが、なにか魂の絆で結ばれているのではないか。
さてラビ・バトラ教授の表題に掲げた最新作を紐解く前に、ここではどうしても前作の予測と、その的中ぶりを振り返っておく必要がある。
バトラは前作『2010資本主義大爆発』(あうん)のなかで、サブプライム危機の勃発とウォール街の株価大暴落、原油価格の大幅な高騰を言い、米国には民主党政権が誕生し、中国が百年に一度の危機に襲われるだろうと予言した。
それらはほぼ的中である。
ほかにも細かな予測をしているが、おおざっぱにまとめると米国の資本主義は本来の資本主義ではなく、富の独占とワーキングプア増大という矛盾にみちたもので、進歩的でも知的でもないから没落の運命は避けられないとする。
かれのいう『資本主義の終焉』とはあくまでアメリカ型欲望追求資本主義モデルの崩壊であり、これからは東洋の智恵が世界を導くだろう、と言う。
また中国の危機は多くの自然災害に加え、チベット、ウィグル、内モンゴルの独立運動の問題がある。
さらに「中国経済自体が抱える、不動産バブルと株バブルの崩壊という二重のバブル崩壊が、格差の拡大=民衆の不満拡大、北京政府と中国人民解放軍との軋轢拡大へとつながる」と予測した。
バトラ教授が主唱する「プラウト」なる理論は、PROGRESSIVE UNITILIZATION TEHORYの略で、要するに「進歩的活用理論」
その三つの基軸とは、
(1)世界中の資源とその活用の可能性は、人類すべての共有財産と認識する
(2)資源を最大限に効率よく活用し、それを合理的に配分し、真の意味での個人と社会の進歩を目ざす
(3)諸悪の根源である富の集中を排除した、倫理的で合理的な利益分配システムを作り上げる
究極の目標は世界から貧困をなくすのである、と説く。
なにやら末法思想的な、宗教的ドグマの匂いがしないでもないが、市場原理自由競争原理の嘘と欺瞞を激しく攻撃し、グリーンスパン批判の急先鋒でもあったバトラの新作、無視したり見落としたりするわけにはいかないだろう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
♪
(読者の声1)貴誌2479号の読者の声3のMC氏のご指摘、いろいろ有難うございました。宮崎先生にも示唆されたように、私が取り上げた悲憤慷慨調の小室氏の分析は、普通の観点ではないようです。
おそらく高度な政治社会学的知見から、戦前の社会矛盾を現代の民主主義観点から斬ったということでしょうか。
だから非常に意識の高いレベルで、雁字搦めの封建的人間関係と言っているので、普通の意識レベルで、実際の当時の社会の様相を指摘しているのではないのだろうということです。学者の意識は普通の生活者のレベルと違う所があると、考えておいた方が良さそうです。
鼎談形式で、ざっくばらんな感じで話が展開されているので、うっかり嵌ってしまったという感じです。考えてみればお三方ともアカデミックな学者でした。
ただ昭和維新としてやるべき構造上の改革は、その辺にあったというのは、一つの鋭い指摘のように思いました。だから、土地所有の制限を謳った北一輝の社会主義の改造法案は、当時の社会政治状況から意味深いものになるという議論が展開され、2.26まで行くのかと思えば、そうではなく政治家を作らず官僚だけ作った教育制度の問題と、話題は移ってしまったのです。
お蔭で普通のレベルでの戦前の様子が少し見えてきました。
ただ物事には裏表があるから、バランスシートではないですが、プラスの見方はマイナスの見方と背中合わせで、たとえば健全であったという言い方は、相対的なものかもしれません。
つまり価値基準の取り方如何ということです。要するに長所と見るか、短所と見るかということでもあると思います。それでも客観的には今日ほど恵まれていなくても、精神が今日より健全であったという表現は、深い意味があります。
もちろん、相対論の範囲ではあると思いますが。
ただ、戦前のイメージに関して御蔭さまで風通しが良くなりました。有難うございました。
(W生、武蔵野)
(宮崎正弘のコメント)まずは三島由紀夫の『英霊の声』を読まれることをお勧めします。
<< 今月の拙論 >>
(1)「中国経済の数字は本当か?」(『ボイス』三月号、2月10日発売)
(2)「インドをめぐる武器商人の魑魅魍魎」(『月刊日本』3月号、22日発売)
(3)「旧正月が意外に元気だったチャイナ」(『共同ウィークリー』、2月26日号予定)
(4)「朝日新聞が廃れる日」(『WILL』四月号、2月26日発売。予定)
(5)「ロシアの資源戦略、思惑はずれ頓挫」(『経営速報』、3月上旬号)
宮崎正弘の新刊
『やはり、ドルは暴落する! 日本と世界はこうなる』(ワック文庫)
定価980円<税込み>。
http://miyazaki.xii.jp:80/saisinkan/index.html
宮崎正弘のロングセラー
『出身地でわかる中国人』(PHP新書、861円)
『中国がたくらむ台湾・沖縄侵攻と日本支配』(KKベストセラーズ 1680円)
『トンデモ中国、真実は路地裏にあり』(阪急コミュニケーションズ、1680円)
『北京五輪後、中国はどうなる』(並木書房、1680円)
『世界が仰天する中国人の野蛮』(黄文雄氏との共著。徳間書店、1575円)
『崩壊する中国 逃げ遅れる日本』(KKベストセラーズ、1680円)
宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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(C)有限会社・宮崎正弘事務所 2009 ◎転送自由。ただし転載は出典明示。