【社会】生活保護を受けるには
世界同時不況で企業の苦しい経営状況を反映し、派遣社員は「雇い止め」にあい、折から「年越し派遣村」が世間の耳目を集めたのは記憶に新しい。しかし、職と住居を同時に失った失業者が新たな職を探そうとしても、住居がないと面接すら受けさせてもらえない。ネットカフェ難民にも共通するが、「一度落ちると這い上がるのが難しい」理由がここにある。そこで、現状を打開するための選択肢の1つとして、「生活保護」の受給が挙げられる。
生活保護制度の仕組みとは?
「生活保護は、生活に困窮している国民に最低限度の生活を保障するとともに、その自立の助長を目的とし、各市町村の役所等で誰でも申請できます。例えば東京都区部で標準3人世帯(33歳、29歳、4歳)の場合、16万7170円が最低生活費とされ、この金額に届かない分が、生活保護費として給付されます」(厚生労働省)
つまり、10万円の収入があった場合、6万7170円が給付される。まったく収入がない場合は16万7170円がもらえる仕組みだ。ただし、生活保護の適用には非常に厳しい条件がある。
「最低生活費以上の収入がある場合は適用されません。また、預貯金、車、持ち家、土地などを持っている場合、預貯金を取り崩し、車や不動産を売却し資産を使い尽くして初めて、保護適用となります」
金融機関で資産の調査をするなど、チェックは徹底している。
最後のセーフティネットが抱える問題点
生活保護者は年々増加傾向にあり、自治体の窓口で申請を受け付けなかったり、辞退を強要し生活保護費給付を絞る「水際作戦」は、相変わらず問題視されている。また、不正受給も後を絶たない。
さらに、国民年金は満額で月々約6万6000円(第一号被保険者の場合)だが、生活保護は8万820円もらえる(東京都区部・68歳単身者世帯の例)。そのため、年金なんて払わず、将来は生活保護を受けたほうがトクと安易に考え、年金の未納に拍車をかけているという指摘もある。
生活保護に年金に、セーフティネットを巡る議論には、まだ課題が山積のようだ。
1月21日 19時32分●影山 薫