ロシア政治経済ジャーナル No.559(今までのまとめのような記事)
ロシア政治経済ジャーナル No.559
2009/1/7号
★世界経済危機の裏事情
全世界のRPE読者の皆さまこんにちは!
いつもありがとうございます。
北野です。
前回は、新年一発目ということで、わざと明るい話をしました。
今回から通常どおり(キレイごとなし)に戻します。
09年、世界はどうなっていくのか?
それを知るためには、08年までに何が起こったか、正確に知る
必要があるでしょう。
08年の一大事件といえば、アメリカ発の金融危機が起こった
こと。なんでアメリカで危機が起こったの?
「サブプライム問題が原因だ」といわれています。
皆さまもご存じのように、サブプライムローンとは「低所得者
層への住宅ローン」のこと。
もともとリスクが高い。
しかし、「証券化することで、リスクを下げることができる」として、
世界中で販売されていた。
整理すると
1、アメリカ住宅バブルの終焉
2、サブプライム問題顕在化(07年7月)
3、リーマンショック(08年9月)。5大投資銀行実質破綻
4、アメリカ自動車ビック3破綻の危機(08年末~)
これら一連の流れを一言でいうと、「アメリカのトップがバカだっ
た」となります。
特に神様グリーンスパンさんは現在、アメリカ経済を危機に追い
込んだ悪党になってしまいました。
かわいそうに。
もう一つ、「いやいやアメリカのトップがそんなバカなはずはない」
「この一連の危機には裏があるのだ」と主張する人たちもいます。
いわゆる陰謀論者といわれる人々。
彼らの主張は、
「アメリカ(あるいは米英)はわざと世界恐慌を演出した」
なんでそんなことをするかというと、
「世界恐慌を起こし、第3次世界大戦を起こし、その後世界統一
政府を作り、人類を支配するため」
つまり、
第1次大戦後「国際連盟」ができた。
第2次大戦後「国際連合」ができた。
第3次大戦後は「世界統一政府」ができるだろう。
確かに、イギリスは最近、IMFを進化させて世界中央銀行化
し世界共通通貨をつくろうなどと主張しています。
さて、RPEの歴史観は、少しというかかなり異なっています。
RPEの主張は
1、ライフサイクル
アメリカのピークは、第2次世界大戦終結直後の1945年
である。
その後は、下落相場の株価チャートのように、上がったり
下がったりしながら、徐々に衰退している。
ライフサイクルは、どんな覇権国も逃れることはできない。
ここ数百年だけ見ても、覇権国家
スペイン → オランダ → イギリス が没落している。
覇権国家に対抗する国々も
ポルトガル → フランス → ドイツ → ソ連が没落している。
現代の覇権国アメリカも、この運命を逃れることはできない
だろう。
2、列強の覇権争い
独仏を中心とする欧州、冷戦に敗れてボロボロになったロシア、
かつて欧米日に植民地化されリベンジを誓う中国。
これらの国々は、アメリカを覇権国家の地位からひきづりおろ
したい。
そして、ここ10年の間にさまざまな争いが繰り広げられた。
アメリカが衰退したのは、グリーンスパンがバカだったからでも、
「世界恐慌と第3次世界大戦を起こして世界統一政府をつくるた
めの陰謀」でもない。
衰退期に入ったアメリカは、没落を防ぐためにITバブルを起こし、
住宅バブルを起こしがんばっている。
そこに、欧州・ロシア・中国が攻撃をしかけ没落に拍車をかけたと
いうのが真相。
これが私のファンタジーでないこと、熟読していただければ皆さん
にもご理解いただけるでしょう。
その前に、読者のLさんから、「なぜアメリカは戦争をつづけるの
か?」という動画を教えてもらいました。↓
http://jp.youtube.com/watch?v=73wKoJnbI48&feature=related
非常に誠実で良質のドキュメンタリーです。
是非ごらんになってみてください。
▼欧州の反逆
1945年~1991年まで、世界は米ソの二極体制でした。
1991年12月、ソ連は崩壊し、アメリカ一極支配の時代が到来しま
す。
最大のライバル・ソ連は崩壊。
経済のライバル日本ではバブルが崩壊し、「暗黒の10年」に突入。
欧州は豊かな西欧が貧しい東欧を吸収して苦しい。
中国は、まだひ弱で無視できる存在。
90年代アメリカは、勝利の美酒に酔いしれていました。
ITバブルが起こり、世界中から資金が集中し、空前の好況にわい
ていたのです。
しかし、一極時代が訪れたからといって、世界中の人々がその状
態を歓迎していたわけではありません。
反逆の狼煙は欧州であがりました。
1999年、ユーロ誕生。
アメリカはご存じのように、世界最大の財政赤字・貿易赤字・
対外債務国家。
しかし、ドルが基軸通貨であるという一点で、存在してきました。
「ドルが基軸通貨であれば、いくらでも借金できる」ことについて
大前研一先生は、
<この種の「債務」がアメリカの害になることはない。
アメリカはブラジルとは違う。
ブラジルの場合には、国際的に通用する通貨で、対外決済を
行なう必要がある。
それができないと、どこからかドルを借りてこなければならない。
それに対してアメリカは、自国通貨のドルで決済することが
できる。
ブラジルにとって問題なのは、現在同国で起こっているように、
自国通貨の価値が下がれば、借りようとするドルが相対的
に高くなることである。
このような「債務の悪循環」は、国際決済通貨であるドルを
国内経済でも使っているアメリカの場合には起こらない>
(「ボーダレスワールド」248p)
では、ドルが基軸通貨でなくなればどうなるの?
これについてレスター・サロー先生は、
↓
<もしドルが基軸通貨でなくなればアメリカはこんなに
巨額の貿易赤字を抱えてはおれない。
基軸通貨は貿易決済に使われる。
他の国なら赤字分はドルを借りて支払わなければならない
がアメリカは必要なだけドル紙幣を印刷すればよかった。
しかし基軸通貨でなくなればそうはいかない。>
つまり、アメリカを没落させる方法は簡単なのです。
要するに、ドルの使用量を減らせばいい。
それで、ドルは基軸通貨でなくなる。
するとアメリカは普通の借金大国になり、国家破産するであろう。
ユーロ導入には、「アメリカに対抗する」という意志があったことに
ついて、フランス大統領顧問のジャック・アタリは、
<通貨統合・政治の統一・東欧やトルコへの(EC)拡大。
これらが実現できれば、欧州は21世紀アメリカをしのぐ大国に
なれるだろう。>
では、なぜ欧州はアメリカを没落させたいのか?
考えてみてください。
100年前まで、欧州は世界の中心だったのです。
それが第2次世界大戦後、ヤンキー・アメリカが西半分を、
酔っ払いソ連が東半分を分割支配した。
これは、誇り高き欧州人にとって大変な屈辱だった。
そして、「願わくはもう一度欧州に覇権を」と願っているリーダー
たちがいる。
欧州は、ソ連崩壊で東の白熊(ロシア)からの脅威がなくなった
ので、遠慮なくアメリカを攻撃することができるようになったの
です。
▼フセインの反逆
ユーロが導入された。
しかし当時、「ユーロがドルにとってかわる」なんて考える人は全
然いなかったでしょう。
なんといっても、アメリカはITバブルの絶頂期で、この世の春を謳
歌していた。
ところが、アメリカも予期せぬ出来事が起こってしまいました。
サダム・フセインは、2000年の9月24日、
「石油代金として今後一切ドルを受け取らない」
と宣言。
では何で受け取るのか?
ユーロ。
フセインをそそのかしたのは、ユーロを基軸通貨にしたいフラ
ンスのシラク大統領(当時)。
湾岸戦争後経済制裁下にあったイラク。
石油は国連経由でしか売れませんでした。
評判の悪い独裁者フセインは、一人で国連を動かせません。
しかしフランスが国連を動かし、フセインの要求は、2000年10月
30日に受け入れられることになります。
ドルでしか買えなかった石油が、ユーロでも買えるようになる!
アメリカは、フセインを放置しておくことができませんでした。
それで、なんやかんやと理由をこじつけ、03年にイラクを攻撃。
その後、原油の決済通貨をユーロからドルに戻しました。
↓
<イラクの旧フセイン政権は00年11月に石油取引をドルからユ
ーロに転換した。
国連の人道支援「石油と食料の交換」計画もユーロで実施
された。米国は03年のイラク戦争後、石油取引をドルに戻した
経過がある>
(毎日新聞06年4月17日)
ブッシュがウソをついたことについて。
↓
<ブッシュ大統領:イラク戦争誤情報が「最大の痛恨事」
【ワシントン草野和彦】「最大の痛恨事は、イラクに関する情報
の誤りだった」。
ブッシュ米大統領は1日放映の米ABCテレビの番組で、大統領
としての8年間を振り返った。
03年3月のイラク開戦に踏み切る理由となった
大量破壊兵器が存在しなかったことを悔やんだ。>
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(毎日新聞 2008年12月3日)
「誤り」ね~。
それで、殺されたイラク人100万人は・・・。
▼ロシアの反逆
さて、イラク開戦の理由について、神様グリーンスパンさんは、
こんなことをいっています。↓
<「イラク開戦の動機は石油」=前FRB議長、回顧録で暴露
07年9月17日15時0分配信 時事通信
【ワシントン17日時事】18年間にわたって世界経済のかじ取り
を担ったグリーンスパン前米連邦準備制度理事会(FRB)
議長(81)が17日刊行の回顧録で、2003年春の米軍による
イラク開戦の動機は石油利権だったと暴露し、ブッシュ政権を
慌てさせている。>
世界最大の石油消費国アメリカは、産油大国でもある。
しかし、その埋蔵量は10数年ほどで枯渇するという予測がでてい
ます。
それで最近は、「アラスカ開発」「海底油田開発」「北極開発」プロ
ジェクト等が浮上してきている。
しかし、2002~03年当時は、「イラクを支配すればいいじゃん」と
思っていた。
(イラクの原油埋蔵量は世界2位といわれている。)
もう一国、アメリカが目をつけていたのがロシア。
02~03年、エクソンモービルとシェブロンテキサコは、ロシアの
石油最大手(当時)ユコスの買収交渉をしていました。
日経新聞の栢俊彦さんが書かれた信頼度超A級の名著
「株式会社ロシア」
(→ http://tinyurl.com/6uxvb2
)(←必読です)
の中に、当時の様子がこう記されています。
<ユーコスと米メジャーのシェブロンテキサコ、エクソンモービル
との間で、ユーコス単独ないし合併会社「ユーコスシブネフチ」
への出資交渉が進んでいることも明らかになった。
出資比率は25%+1株とも40%とも報じられた。
米メジャーが法的に拒否権を持つ形でユーコスに入ってくると、
事実上、
米国務省と国防総省がユーコスの後ろ盾につくことを意味
する。>(株式会社ロシア41p )
さらに、ユコスのホドルコフスキー社長(ユダヤ系)は、ロス
チャイルド家とも親密な関係を築いていました。
↓
<身の安全を守るために米英に庇護者を求めたホドルコフス
キーは、首尾よくヤコブ・ロスチャイルド卿の知己を得、世界の
有力者が集う社交界への扉を開けた。
ホドルコフスキーは01年12月、ロスチャイルド卿と共同で慈善
団体「オープン・ロシア財団」をロンドンに設立、
翌年には米国にも事務所を開いた。
理事にはロスチャイルドほか、
~~~~~~~~~~~~~~
元米国務長官のヘンリー・キッシンジャーや
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
元駐ソ大使のアーサーハートマンが名を連ねた。>
(同上39p)
どうです?
ユコス社長のホドルコフスキーのバックには、
・ロックフェラー(エクソンモービルはロックフェラー系)
・ロスチャイルド
・アメリカ政府
・イギリス政府
がいたことになります。
彼らの目標は
・ユコスを買収し、ロシアの石油利権をゲットする
だったことでしょう。
もっと欲をいえば、
・プーチンを排除し、ホドルコフスキーの傀儡政権を樹立
することだったでしょう。
(ホドルコフスキーは、「次期大統領になる」と公言していた)
KGB軍団の長プーチン。
米英の支配層とガチンコ対決するのか、それとも屈伏する
のか?
世界のリーダーたち、裏事情を知る人々は、手に汗握り
ながら事の成り行きを見守っていたのです。
しかし日本には、「どっちが勝つか最初から知っていた」
一群もいました。
それが、RPE読者の皆さま。
<▼プーチンさんと新興財閥、勝つのはどっち?
最近はよく、こういう(↑)質問を受けます。
正しい回答=「プーチンさんの勝ち」となります。>
(【RPE】No.181 プーチンさん、ロシア1の大富豪を攻撃!
32003/07/11 号より)
で、結果はどうなったか?
プーチンさんの命令を受けた最高検は03年10月25日、ホドル
コフスキーをさん脱税・横領などの罪で逮捕してしまいました。
もちろん、「ユコス買収」の話は流れた。
これまで世界を牛耳ってきた米英は、「ロシア封じ込め」をかたく
決意しました。
▼アメリカの逆襲
「ロシア封じ込め」を決意したアメリカは、旧ソ連諸国でカラー革
命を次々と成功させ、「親米反ロ傀儡政権」を樹立していきました。
03年末、グルジア「バラ革命」。(08年8月に、ロシアと戦争になる)
04年末、ウクライナ「オレンジ革命」。(現在ガス問題でもめてい
る)
05年3月、キルギス「チューリップ革命」。
新しい読者さんも多いので、これらが「アメリカの革命」だった
証拠もあげておきましょう。
↓
<証拠1>
↓
<グルジア政変の陰にソロス氏?=シェワルナゼ前大統領が
主張
【モスクワ1日時事】グルジアのシェワルナゼ前大統領は、
11月30日放映のロシア公共テレビの討論番組に参加し、
グルジアの政変が米国の著名な投資家、ジョージ・ソロス
氏によって仕組まれたと名指しで非難した。
ソロス氏は、旧ソ連諸国各地に民主化支援の財団を設置、
シェワルナゼ前政権に対しても批判を繰り返していた。>
(時事通信-03年12月1日)
<証拠2>
↓
<混乱の背景に外国情報機関 シェワルナゼ前大統領と会見
野党勢力の大規模デモで辞任に追い込まれたグルジアの
シェワルナゼ前大統領は28日、首都トビリシ市内の私邸で
朝日新聞記者らと会見した。
大統領は混乱の背景に外国の情報機関がからんでいたとの
見方を示し、グルジア情勢が不安定化を増すことに懸念を
表明した。
前大統領は、議会選挙で政府側による不正があったとする野党
の抗議行動や混乱がここまで拡大するとは「全く予測しなかった」
と語った。
抗議行動が3週間で全国規模に広がった理由として、
「外国の情報機関が私の退陣を周到に画策し、野党勢力を支援
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
したからだ」と述べた>
(朝日新聞03年11月29日)
<証拠3>
↓
<アカエフ氏は政変を企てた組織として、民主化を求める米国の
NGO、国際問題民主研究所や「フリーダムハウス」のほか、駐
キルギス米国大使の名前などを挙げた。>
(共同通信05年4月7日)
アメリカは、ロシアの実質旧植民地である旧ソ連諸国に「傀儡政権」
をつくることに成功しました。
▼(悪の?)薩長同盟
アメリカの革命に激怒したプーチンさん。
重大な決断をします。
そう、仮想敵NO2の中国と結託すること。
これを私は(悪の?)薩長同盟とよびます。
(薩摩は外交上手の中国。ロシアは第1次長州征伐(冷戦)で負け
ているので長州)
中ロには、41年にわたる領土問題がありました。
ロシアと中国は05年6月2日、東部国境画定に関する批准文書を
交換。
これにより国境問題は最終的に決着しました。
05年8月18日、中国とロシアは初の合同軍事演習を実施。
これが対アメリカであることについて。
↓
<「中露軍事演習、台湾外交部長が非難「地域平和に影響」
【台北=石井利尚】台湾の陳唐山・外交部長(外相に相当)は23
日、読売新聞と会見し、中国とロシアの軍事演習について、「台湾
を威嚇しており、(東アジア)地域の将来の平和に影響を及ぼすも
のだ」と強く非難した。>
(読売新聞05年8月24日)
<また、合同演習が、日米の安保協議共同声明に「台湾海峡
問題の平和的解決」が盛り込まれたことに関係があると指摘、
「台湾問題に手を出すなという、米国や日本への中国の警告
だ」と述べた。」
(同上)
さらに、ロシアと中国は、上海協力機構(SCO)を強化し反米の
砦化することに成功します。
05年7月5日、カザフスタンの首都アスタナでSCOの首脳会議が
開かれました。
ここで、「アスタナ宣言」が採択されています。
そして、アスタナ宣言は、中央アジア駐留米軍の撤退を要求。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
05年7月の首脳会談では、もう一つ歴史的な決定がなされて
います。
イラン・インド・パキスタンが準加盟国として承認されたのです。
▼ロシア、「ルーブルを世界通貨に」
米英支配層に宣戦布告したロシアは、アメリカのアキレス腱で
ある「ドル体制」に攻撃を加えます。
例1
↓
<ルーブル建て原油取引開始 ロシア、影響力強化狙う
【モスクワ9日共同】モスクワの取引所、ロシア取引システム
(RTS)で8日、初のルーブル建てロシア原油の先物取引が
始まった。
サウジアラビアに次ぐ世界第2位の産油国であるロシアは、
自国通貨建ての自国産原油市場を創設することで、国際
原油市場での影響力強化を図る狙いだ。>
(共同通信06年6月9日)
要するに、プーチンはフセインと同じことをしたのです。
さらに
例2
↓
<米露“破顔一笑” 「ルーブルを世界通貨に」プーチン大統領
ますます強気
07年6月12日8時0分配信 産経新聞
【サンクトペテルブルク=内藤泰朗】ロシアのプーチン大統領は
10日、出身地サンクトペテルブルクで開かれた国際経済フォー
ラムで、同国の通貨ルーブルを世界的な基軸通貨とすること
などを提唱した。
同国など急成長する新興国の利益を反映した経済の世界新
秩序が必要であるとの考えを示した形だ。
世界的な原油価格高騰を追い風に強気のロシアは、米国主導
の世界経済に対抗し、欧米諸国に挑戦する姿勢を強めるものと
みられる。>
去年ロシアは、「二国間貿易でドルをはずそう」という動きを活発
化させました。
<中露首脳、世界の金融取引で使われる通貨の拡大提唱
08年10月28日23時34分配信 ロイター
[モスクワ 28日 ロイター] 中国・ロシアの両首脳は28日、
世界の金融取引で使用される通貨の拡大を提唱した。
ロシアのプーチン首相はモスクワで開催中の中露フォーラム
で、ドルよりもルーブルと人民元による2国間取引を提案。>
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ロシアは、ベトナムやベネズエラとも同様の合意に達して
います。
▼崩壊するドル体制
さて、ここまで米ロ関係を中心に話をすすめてきました。
しかし、アメリカの真の苦しみは、「米一極支配を終わらせたい
勢力が世界中にいる」ということなのです。
味方は日本・イギリス・イスラエルくらいしかいない。
その証拠に、世界中でドル離れが進んでいます。
たとえばイラン。
↓
<イラン、原油のドル建て決済を中止=通信社
07年12月10日9時31分配信 ロイター
[テヘラン 8日 ロイター] イラン学生通信(ISNA)は8日、
ノザリ石油相の話として、同国が原油のドル建て決済を完全
に中止した、と伝えた。
ISNAはノザリ石油相からの直接の引用を掲載していない。
ある石油関連の当局者は先月、イランの原油の代金決済の
「ほぼすべて」はドル以外の通貨で行われていると語って
いた。>
「イランがアメリカから逃げ切ることができれば、自分たちも
決済通貨をかえちゃおう」と考えているのが、サウジアラビ
ア・クウェート・アラブ首長国連邦など中東産油大国が
つくる、湾岸協力会議(GCC)。
↓
<GCC首脳会議声明、2010年の通貨統合目標維持へ=
事務局長
07年12月4日18時29分配信 ロイター
[ドーハ 4日 ロイター] 湾岸協力会議(GCC)首脳会議の
声明では、2010年までに通貨統合を達成することへの
コミットメントが維持される見通し。
アブドルラハマン・ビン・ハマド・アティーヤ事務局長が4日
明らかにした。同事務局長は、声明の最終案には2010年
の目標時期が盛り込まれているか、とのロイターの質問に
対し「そうだ」と答えた。>
また、ユーロは既に、ドルに並ぶ基軸通貨になったといえる
でしょう。
現在、ユーロの流通量はドルを超えています。
↓
<<ユーロ>現金流通から5年 米ドルを超えた模様
06年12月30日19時46分配信 毎日新聞
【ロンドン藤好陽太郎】欧州単一通貨ユーロの市中での紙幣
流通量が今月初めて米ドルを超えた模様だ。
ロシアや中東地域などユーロ圏外でも保有する動きが広がっ
ているほか、ユーロ高でドル換算した額が膨らんだ。
旧ユーゴスラビア連邦のスロベニアも来月1日から新たに
ユーロに加盟し、ユーロ圏は今後も拡大が予想される。
通貨として誕生してから丸8年、現金流通開始から5年。
ユーロは国際通貨としての存在感を強めつつある。>
この他、南米共同体や東アフリカ共同体が共通通貨導入を目
指しています。
世界的ドル離れの動きは、もはや止めることができない段階に
きているのです。
それで、国際的投資家ジョージ・ソロスは08年1月23日、ダボ
ス会議で歴史的発言をしました。
「現在の危機は、ドルを国際通貨とする時代の終えんを意味
する」
これらの事実を見ると、「アメリカの没落はもはや不可避であ
る」という結論にならざるをえません。
▼ドル離れと経済危機の相関性
ここまで、少し変わった観点からここ10年の歴史を見てきました。
ドル離れと今の経済危機は関係あるのでしょうか?
これは大ありでしょう。
ロシアがルーブルで原油を売る、イランが円・ユーロで原油を
売る等々の動きは、「ドル需要が減る」ことを意味しています。
つまり、ドル下げの強力な圧力になる。
そして、米国債や株を買っても、ドルが下がってしまえば損を
することになる。
ドル離れのピークはここ10年で二回ありました。
一回目は、ユーロが導入された1999年、そしてフセインが
「原油をドルで売らない」と宣言した00年秋。
アメリカのITバブルは00年から01年に崩壊しましたが、これは
偶然でしょうか?
今回の経済危機直前から動きを見てみましょう。
・06年6月、ルーブル建て原油取引開始
・06年12月、ユーロ、現金流通量でドルを超える
・07年6月、プーチン「ルーブルを世界通貨に」宣言
・07年12月、湾岸協力会議2010年通貨統合目標維持宣言
・07年12月、イラン原油のドル建て決済中止
・08年1月、ソロス「ドル国際通貨時代の終焉」宣言。
これらすべては「ドルの下げ圧力」になります。
すると、世界の投資家は、「アメリカに投資するのはやめよう」と
考える。
そして、アメリカへの資金流入がとまればどうなるでしょうか?
そう、ITバブルも住宅バブルもはじけることでしょう。
07年7月、サブプライム問題顕在化。
08年7月、フレディマック、ファニーメイ危機。
08年9月、リーマンショック。
08年末、アメリカ自動車ビック3の危機。
▼肉を切らして骨を断つ
ここまで、アメリカと欧州・ロシアの争いを中心に、経済危機が
起こるまでの流れを見てきました。
おそらく皆さまの中には、「アメリカが没落すれば、世界恐慌に
なる。それでロシアも苦しいのに、なんでそんなことをするの
か?」と思われる方も多いでしょう。
その気持ちわかります。
ロシアでは、アメリカ発の金融危機で株が7割も下がった。
実体経済にも相当深刻な影響が出ています。
プーチンさんには03年当時、二つの選択肢がありました。
一つ目は、米英に屈服し、ユコスをアメリカに売ってしまうこと。
そして、ロシアの石油利権を、米英に献上してしまうこと。
おそらく日本の政治家であれば、迷わずそう決断したでしょう。
(例、長銀をアメリカに10億円で売る)
しかし、ロシアには石油・ガスしかありません。
なんといってもGDPの40%、輸出の60%を石油ガスが占めている。
これを米英に渡すということは、「ロシアは米英の植民地になる」
のと実質同じです。
それに、もしホドルコフスキーさんが大統領になったら、プーチン
さんと側近たちはどうなります?
全員つかまってシベリア送りにされたことでしょう。
(ホドルコフスキーはシベリア送りにされている。)
もう一つの選択肢は、死力を尽くして戦うこと。
プーチンは、これまで世界を牛耳ってきた米英と真剣に戦う
ことにした。
GDPがアメリカの10分の1しかないロシアに勝つ見込みは
あるだろうか?
そうだ、ドルを基軸通貨でなくしちゃえばいい!
そういうことです。
同じことは、イランにもいえる。
フセインのイラクは「アルカイダと関係なく」「大量破壊兵器も
なかった」。
でも、アメリカに攻撃され、フセインは死刑になった。
イランの上層部は、当然「次は俺たちだ」と思っている。
このように、反米諸国のトップは、「命か世界恐慌か?」と選択
を迫られた。
そして、「命をとられるより、世界恐慌の方がいいや」と選択した
ということなのです。
米英が正しいのか、中ロ多極陣営が正しいのか?
この相対世界でそんなことを考えるのは時間の無駄です。
マフィアAとマフィアBの抗争でどっちが正しいと決めることがで
きるでしょうか?
こんな中、極めてたくみに国際社会を泳いでいるのが、中国とイ
ンド。
日本も両国を見習い、覇権争いに巻き込まれないよう、細心の
注意が必要です。
もっともよい方法は、「自立」すること。
どうやって?(おわり)
↓
●PS1
今回の話、テンポが速すぎてよく理解できなかった人は、
「中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日-一極主義vs多極主義」
(草思社)
(詳細→ http://tinyurl.com/yro8r7
)
をご一読ください。
米ロ新冷戦までの過程が●山盛りの資料付きで全部わかります。
●PS2
日本が自立する方法はこちら。↓
↓
================================================================
【この本は日本が危機を克服するためのバイブルです。】(京都 山根様)
★「僕が生まれたのは、中華人民共和国
小日本省です・・・」
~~~~~~~~~~
アメリカの衰退により、放り出される
天領日本。
~~~~
戦後60年以上「自分で決定したことがない」
依存政治家は、
次の依存先を探し始めた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
日本には二つの道があります。
1、中国幕府の天領(小日本省)になるのか?
2、真の自立国家になるのか?
05年1月発売「ボロボロになった覇権国家」でアメリカの
現在の危機を予測。
07年9月発売「中国ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日」で
「米ロ新冷戦」勃発を予測した
RPE北野幸伯 待望の新刊
『隷属国家日本の岐路~今度は中国の天領になるのか?』
(ダイヤモンド社)
↓
詳細はいますぐ↓
( http://tinyurl.com/6zcszc
)
PS
本の一番最後に「北野の夢」が書いてあります。
しかし、前から順番にお読みください。