「医療事故対策は30年遅れ」(キャリアブレイン) | 日本のお姉さん

「医療事故対策は30年遅れ」(キャリアブレイン)

「医療事故対策は30年遅れ」
 有志団体の「医療フォーラム」(東京都中央区)は12月3日、「どうする、日本の医療『医療安全対策について』―医の倫理と法の論理」をテーマに公開フォーラムを開いた。あいさつした同フォーラム主宰の岩田明達氏は、「医療安全の問題、医療対策の問題が、航空機事故や原発事故の安全対策委員会のようなものに対して20-30年の遅れを取っているのではないか」と危機感をあらわにした。

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 冒頭、岩田氏は「医療事故」について、「同じ事故でも、医療事故は比較的病院の内部管理の中でひそかに解決される向きがある」と指摘。事故の情報が役に立っていないといういきさつが過去にあったとした上で、「事故の情報は社会的な、あるいは医療界における共同の財産。その後の医療事故防止のための財産にしなければ、同じようなことが何度も繰り返される」と強調した。また、「ヒトを対象とする医学研究の倫理的原則」である1964年のヘルシンキ宣言以来、繰り返し行われてきた患者の人権に対する提言について、日本の医師の個人個人の関心が低いとした上で、「こうした原因があったため、医療安全の問題、医療対策の問題が、航空機事故や原発事故の安全対策委員会のようなものに対して20-30年の遅れを取っているのではないか」と述べた。

 続いて、議論が続く死因究明制度のモデル事業で中央事務局長を務める山口徹・虎の門病院院長が、「モデル事業から新しい死因究明制度へ」をテーマに講演した。
 山口氏は、制度化に向けモデル事業で確認できたこととして、
▽常時受け付けが可能な中立的専門組織、解剖システムをつくるには、相当なマンパワー、費用などが必要
▽中立的専門機関のみですべての診療関連死の調査・分析を行うことは、現実的ではない
▽専門家による評価が難しく、判断基準の作成、研修、継続性などが必要
―などを挙げた。
 新制度が備えるべき条件としては、「医師法21条の問題を改正して、診療関連死は警察への届け出の対象外とすること」「医療行為の適正評価はあくまでも医療の専門家によって行われ、その判断が医療界だけではなく、司法当局、社会においても尊重されること」「医療事故に対しては、標準的な医療を大きく逸脱した悪質なものを除いては、原則として個人の再教育、あるいは病院のシステムエラーの改善などの教育的な行政処分で対処して、刑事訴追は極めて例外的なものとなること」などを求めた。

 また、厚生労働省の岡本浩二・大臣官房参事官が「厚生労働省における医療安全の取り組みについて」と題して講演。医療安全調査委員会(仮称)について、「これはいわばピアレビュー(同僚審査)だ。医療事故の調査、評価を担当するのは医療者自らであり、ここが非常に重要。評価に当たるのは医療者自らのため、医療者が新しい仕組みについて納得、理解をして、それに参画していただくということがなければ、いくら枠組みをつくっても機能しない」と強調し、制度の実現に向けた医療関係者らの協力を求めた。
更新:2008/12/03 21:49   キャリアブレイン
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