安倍元首相の秘書らと週刊朝日の和解について(国を憂い我とわが身を甘やかすの記) | 日本のお姉さん

安倍元首相の秘書らと週刊朝日の和解について(国を憂い我とわが身を甘やかすの記)

安倍元首相の秘書らと週刊朝日の和解について(国を憂い我とわが身を甘やかすの記)
http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/820878/

前々回のエントリで麻生首相の支持率低下について取り上げたところ、たくさんの方から「マスコミの報道がひどすぎる」という指摘をいただきました。その点については、私も日頃から思うところがあり、特に異論はありません。マスコミといっても、社ごとに論調は違うものだし、同じ社内でも媒体によってまた切り口が異なるのが普通ですが、ときとしてメディアスクラムが生じ、一定方向に誘導するような記事が洪水のようにあふれ出すことはこれまで私も何度も見てきました。その異様さと不気味さ、危険性は嫌になるぐらい身にしみて感じてきたつもりです。

それで、その問題と少し関連があるのですが、今朝の産経社会面(東京版)にごく小さく「安倍氏元秘書らと週刊朝日が和解 市長銃撃報道」という記事が載っていました。私は昨年4月25日のエントリ「安倍首相の怒りのコメントと懲りない朝日新聞」(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/158732/)や5月9日のエントリ「安倍事務所の朝日新聞社に対する提訴について」(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/168129/)で、この件について書いているので、ここに今朝の記事を再掲してフォローしておきたいと思います。経緯については上の2つのエントリを見ていただきたいのですが、これも無責任な報道による被害と、それが結局のところどういう風に決着するのか一例と言えると考えます。

《長崎市長銃撃事件に関係があるかのような記事や広告を掲載され名誉を傷つけられたとして、安倍晋三元首相の元秘書ら3人が「週刊朝日」編集長や発行元の朝日新聞社などを相手取り、謝罪広告掲載と総額約5100万円の損害賠償などを求めた訴訟は1日、朝日新聞側の謝罪という形で、東京地裁(石井忠雄裁判長)で和解が成立した。
 和解条項は、元秘書が(1)事件やその容疑者と関係がない(2)同容疑者が所属する暴力団と特別な関係があったものではない-と朝日新聞と同誌編集長が表明し、「新聞広告やお詫び記事などが誤解を与える」との原告側の指摘も真摯に受け止めて謝罪するとの内容。
 朝日新聞や同誌は、問題となった5月4・11日の合併号の記事・広告に対する元首相側の抗議を受けて、「元秘書が暴力団幹部から脅されていたという証言を取材によって検証した」とする謝罪記事を掲載した。

安倍事務所の話 「謝罪したことから、裁判所の勧めもあり和解した」

週刊朝日の話 「原告の指摘を真摯に受け止め、今後の教訓にしたい」》

 …記事を少し補足し、東京地裁から出された「和解条項」の全文を掲載します。

《和解条項
1 被告株式会社朝日新聞社及び被告山口一臣は、本日、原告らに対し、以下のとおり表明する。
(1)被告株式会社朝日新聞社及び山口一臣は、週刊朝日2007年5月4日・11日合併増大号の新聞広告に、「長崎市長射殺事件と安倍首相秘書との『接点』」と記載したが、これは安倍首相の秘書が同事件や同事件の容疑者と関係があるとしたものではない。
(2)被告株式会社朝日新聞社及び被告山口一臣は、上記新聞広告に対するお詫び新聞広告及び週刊朝日2007年5月18日号のおわび記事に、「記事は、首相の元秘書が長崎市長銃撃事件の容疑者の所属する暴力団組織の幹部などから被害を受けていたとの証言などを伝えたものでした」と記載したが、これは元秘書が同容疑者の所属する暴力団と特別の関係があったとしたものではない。
(3)被告株式会社朝日新聞社及び被告山口一臣は、(1)の新聞広告、(2)のお詫び新聞広告及びおわび記事の記載が誤解を与えるとの原告らの指摘を真摯に受け止め、原告らにおわびするとともに、今後の教訓とする。
2 原告らは、被告らに対するその余の本訴請求を放棄する。
3 原告らと被告らとの間において、本件につき、本和解条項に定める何らかの債権債務がないことを相互に確認する。
4 訴訟費用は各自の負担とする。》

 …内容的には、安倍氏の秘書ら原告の言い分がほぼ通り、被告側も記事や見出しの行き過ぎを認めた形です。じゃあ、元の記事の意味と目的は一体何だったんだという話ですが、裁判結果をみると、1年半以上も争ってきて、原告が得たものといえば新たな「お詫び」だけであり、裁判費用は自分もちというわけです。「教訓にする」ったってどういう教訓にするかは知れたものではありませんからね。私も詳しい事情は知りませんが、聞くところによると、一般論として被告側が個人の名誉毀損の問題で「情報源の秘匿」を盾にとってきた場合、なかなかその壁を突き破って追及するのは難しいのだそうです。被告側は「確かにそう聞いたが、だれから聞いたかは言えない」と言い続ければいいということになり…。あることないこと書かれた側が裁判に訴えても、望むような成果はそうは手に入らないというわけですね。

 今回の和解について、安倍事務所は昨日付で次のコメントを出しています。こういう長文は決して新聞には載らないので、ここで記録しておきます。

 《安倍晋三の総理当時、長崎市長が選挙期間中に暴力団幹部の凶弾に倒れるという痛ましい事件がありました。世間がこの凶行を非難している最中の平成19年4月24日付朝日新聞をはじめとする複数の朝刊やJRの中吊り広告に、あたかも安倍晋三や弊事務所の秘書が長崎市長射殺犯と関係があるとする週刊朝日の新聞広告が大きく掲載されました。当然のことながらそのような事実が全くないことは明らかであり、朝日新聞は週刊朝日の広告を掲載した朝日新聞をはじめとした各紙朝刊に謝罪広告を掲載しました。
 しかし、秘書に関する謝罪内容が不十分であり、謝罪内容自体が秘書の名誉を傷つけるもので、さらに朝日側の姿勢にまったく誠意がみられなかったことから、弊事務所秘書らが朝日新聞社とその記事を掲載した週刊朝日編集長山口一臣氏らを名誉毀損で提訴し、裁判してきました。
 そして、今般、朝日新聞社及び山口編集長が
(1)弊事務所の秘書が同事件や同事件の容疑者と関係があるとしたものではない
(2)弊事務所の元秘書かせ同容疑者の所属する暴力団と特別の関係にあったとしたものではない
ことを認め、謝罪しました。
 JRの中吊り広告や全国紙の大きな新聞広告で、あたかも秘書が暴力団と関係しているとの見出しを喧伝され、秘書らはもちろんのこと、その家族までもが多大な迷惑を被る被害を受けました。今回、朝日新聞社と山口編集長が弊事務所の秘書が暴力団とは関係のないことを認め謝罪したことから裁判所の勧めもあり和解することにしました。
 週刊朝日は編集長の交代以来、外部の契約記者を多用しているようで過激な見出しでスキャンダラスな記事が目立ち、新聞社の発行する雑誌とは思えない侮辱的な表紙など、娯楽大衆誌のような編集方針になりました。聞いたところによれば、週刊朝日は本年3月に朝日新聞社から分社され、いまでは朝日新聞社の週刊誌ではなくなったとのことです。週刊誌も販売部数が減少し廃刊になっているものが多いようですが、新聞社の発行する週刊誌は娯楽大衆誌とは一線を画した品格が感じられたものでしたが、この分社が過剰な販売競争の中で、本来のマスメディアの矜持を失わせないことを祈るばかりです。》

 …仕方なく和解に応じたけれど、本当はもっとはっきり白黒つけたかったという思いがにじむようなコメントですね。私もマスコミの片隅で細々と身過ぎ世過ぎしている者なので、自分一人だけいい子になろうというつもりはありませんし、そんなことができようはずもありません。私もこれまで意識するしないにかかわらず、記事を書くことで人を傷つけてきたのだろうと思います。ただ、安倍事務所のコメントが指摘する「矜持」と言えるようなものが自分の中にあるかどうかは分かりませんが、いい加減ででたらめなことを書いておいて開き直るような真似だけはしたくないと考えています。

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