加速する自社株買い 金庫に入れる間もなく消却 | 日本のお姉さん

加速する自社株買い 金庫に入れる間もなく消却

加速する自社株買い 金庫に入れる間もなく消却

「金庫株」と呼ばれる企業が保有する自己株式の活用のすそ野が広がっている。特に、金庫株を自社で処分する「消却」は、自社株買いの増加に加えて、株式価値の希薄化を避ける効果が既存株主に歓迎されることもあり、2008年度の件数は07年度を上回る見通しだ。そのほかM&A(企業の合併・買収)など、企業価値の拡大に向けた積極的な金庫株の利用を企業に促す声も強い。

 野村証券金融経済研究所の集計によると、上場市場の08年4月から11月までの消却実施件数は103件。07年度は112件だったことから、このまま順調にいけば今年度の件数は前期を上回る見通しだ。消却金額(試算)は1兆2000億円と07年度の2兆6000億円より減少したが、これは大型案件が少なかった影響による。

 金庫株消却の広がりの背景には、企業への株主の要求が近年強まる中、既存株主の利益を企業も重視せざるを得ないことがある。

 自社株買いは01年の商法改正で原則自由化されたが、既存株主にとっては株価の下支えが期待できる一方で、「金庫株が市場にいつ再放出されるかわからないという懸念も根強い」(大和総研の堀内勇世制度調査部次長)。
既存株主や市場の不安を取り除くためにも、企業は自社株買いと合わせて金庫株の消却を加速している。

 消却の時期も、自社株買いの実施後、比較的早期に行う事例が増えてきている。たとえば、今年4月から6月まで自社株買いを実施したセブン&アイ・ホールディングスは、7月に取得した株式の消却を実施している。

 売り出しなどの金庫株の市場への再放出は、東京証券取引所の集計で、今年4~10月までで20件、509億円と前年同期を下回っている。

 野村証券金融経済研の西山賢吾シニアストラテジストも「再放出に伴う株式価値の希薄化の事例は、投資家が懸念を抱くほど目立つわけではない」と分析するが、金融危機で市場が低迷する中、既存株主の不満や不安を和らげるためにも、金庫株の消却を進める企業は今後増えるとみられる。

 市場では、資本政策としてだけではなく、本格的なM&Aへの活用など金庫株の積極的な活用を求める声も強い。東証上場企業の今年4~10月までのM&A利用実績は、35件で4695億円。もっとも、三菱UFJフィナンシャル・グループが三菱UFJニコスを子会社化したように、もっぱら子会社化のための株式交換の道具として利用されているのが実情だ。

 西山氏は「たとえば三洋電機を買収するパナソニックが、株式交換の手段として金庫株を利用すれば、市場へのインパクトも大きい」と指摘するが、金庫株の活用次第で今後のM&Aの潮流も左右
されそうだ。http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/economy/201467/