日本国の研究   (11月21日の記事) | 日本のお姉さん

日本国の研究   (11月21日の記事)

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◆◇◆◇ 11月21日刊 猪瀬直樹最新刊『霞が関「解体」戦争』 (草思社) ◆◇◆
日本の権力構造のド真ん中に猪瀬直樹が切り込んだ! 地方分権改革推進委員会を舞台に繰り広げられた。官僚とのバトルを大公開。何を、どう変えれば日本は再生するのか?  この国を覆う閉塞感に風穴をあける痛快な書!
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 地方分権改革は最大の正念場を迎えます。麻生首相は11月6日、地方分権委員会に対して「地方整備局、農政局は原則廃止」と指示をし、分権委員会でも12月上旬の第二次勧告に向けた議論が加速しています。07年4月2日の発足以来、分権委員会は延べ200時間を超える膨大な討議を重ねてきました。第二次勧告では、国の出先機関の見直しを提案します。省庁の抵抗はつよい。分権委員会で展開してきた中央省庁とのガチンコ対決が単行本になります。『霞が関「解体」戦争』(草思社刊、1600円+税)は明日11月21日刊行です。今回のメルマガは、本書から、珠玉の議論をダイジェスト。猪瀬VS官僚バトル満載の一冊、ご一読を。
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「ダイジェスト 霞が関『解体』戦争」
■ケース1:こんなルールはもういらない
地方自治体は、少子高齢化の現場で創意工夫して行政を展開しなければ、税金がいくらあっても足りない。たとえば高齢者が長期入院する療養病床の病院を、利用者のニーズに対応できるように、特別養護老人ホームに転換しなければいけない。山間地では施設の新設は難しく廃校などを造り替えようとしても、厚生労働省の「基準」が壁となって転換できないケースがある。地方の自由度を拡大させ、地域に見合った行政体制に変えていくことが地方分権改革である。(07年10月23日分権委員会 VS厚生労働省)

○猪瀬委員● 建物というものは、古い家を改築したりつなげたり、住宅だけではなくて、たとえばお店でも、もう駄目になってしまってるお店を改造したりとか、いろいろなかたちで工夫していくことがある。そうしたときに、寸法が少し足りなくなるということは、充分にあり得るのですよ。ご存じのように、(日本には)4700万の世帯があって、家の数のほうが多くて5400万あるという状態です。お店でも、病院でも、いろいろな施設でも、そういうあまった状態になっているのです。それを何か工夫してつくれないか。学校もそうです。そのときに杓子定規にあてはめてしまうと、工夫しなくなってしまうのです。
 
基本的にどこも財政難ですから、杓子定規に決めてしまうと、どうやって工夫していこうかという、工夫するインセンティブを縛るのです。1センチ足りない、だから駄目ということになってしまう。それは、基準より上回るほうが良いに決まっているのですが、多少下回ったり上回ったり、あるいは部屋の大きさも全部同じではなくて、それぞれ条件に応じて違ったり、そういうもの入ってこなければいけません。つまり、最終的にどれだけお金を大切に使うかという場合には、工夫が必要なのです。杓子定規に決めると、絶対無駄なお金を使います。だから、国としては、これが望ましいと(「基準」ではなく)標準を示すことは正しいと思います。ですが、あとは各地方自治体で工夫してくださいよということではないですか。そこのところを少しはっきりさせてもらわないと、これでは何も変わらないですよ。

○木内審議官[厚生労働省]● おっしゃるとおり、私どもとしては、杓子定規 にやっていくということで基準を設けているということにならないように心しなければならないと思っています。そこで人が生活する場というものについては、やはり一定の水準というものを設けさせていただかなければいけないのではないかと思っているところです。

○猪瀬委員● 厚生労働省が、一定の水準というか、標準を決めれば、だいたいはみんな従うのです。ただ、もう少しこういうふうにやってみようかなと工夫をするところが出てくるのです。そこなのです。「基準」をきちっと決めてしまうと、その工夫の芽を摘んでしまう。だから、余地がないと、このまま話が絶望的なままなのです。いろいろな現場の智恵を集めて物事が動いてくるのであって、気持ちとしてはわかっているのでしょう。それを繰り返して何の意味があるのでしょうか。

■ケース2:こんな組織(出先機関)はもういらない
国家公務員は霞が関にだけいるのではない。33万人のうち21万人の国家公務員は地方にある出先機関にいる。たとえば国土交通省では2万人強が全国8つのブロックにある地方整備局の人員である。さらにブロック局とは別に下部機関が県や地域ごとに置かれている例が少なくない。たとえば、農林水産省の地方農政局では全国に7つのブロック機関がある。その下部に県単位組織として農政事務所があり、さらにその下部機関として、地域課(旧食糧事務所の支所)や統計・情報センターと言われる組織が置かれ、庁舎もブロック機関とは別に多数存在する。分権委員会でこれらを情報公開請求して明らかにさせ整理させたところ、地域課は全国に132、情報・統計センターは176もあることがわかった。重複を除いて農林水産省の出先機関の庁舎数を合計すると、なんと339カ所にも上った。
(08年7月17日分権委員会 VS農林水産省)

○猪瀬委員● 統計・情報センターも同じように別の独立庁舎が(独自調査の結果339箇所)ある。あえて地方農政局関係の出先機関の庁舎数があまりにも多いということに驚きを持って、この統計をいま、整理して見つめているところです。これを廃止、分権移管あるいは独立行政法人化など、具体的な方向性をお考えなのかどうかお尋ねします。

○本川審議官[農林水産省]● 冒頭申し上げたように、平成15年(2003年)からこの5年間に旧食糧事務所を地方農政事務所に再編・統合し、さらに統計事務所を統合するという意味で、非常にドラスティックな取り組みを進行させているところです。私どもとして、同じ組織が同じ庁舎に入るということは、これ以上ない願いです。ただ、そうは言いながらも、実際に庁舎に移転するときには、合同庁舎に入ったほうがよいのですが、合同庁舎に空きがない場合には、そこに移転したくても移転できないということです。

そうは言っても、あまり狭いところに放り込むわけにはいきません。新営の一般庁舎面積算定基準であれば、係員1人当たり3.3平方メートルを確保するという基準もあります。そういうことも勘案すれば、一つの合同庁舎に組織として入りたいという思いはありますが、空きがなければ入れない。まさにこの5年間に起こっているドラスティックな組織再編のなかで、私どもとしては、「空きができれば入る」ということを原則にしています。

○猪瀬委員● 建前のおっしゃり方はわかりますが、備品などを見ていると、建物自体もそうですが、ほんとうの意味で監査がおこなわれているのかどうか、そういうチェックはどういうふうにおこなわれているのか。つまり、国の出先機関というある種の盲点のなかに存在している。千葉県の人、埼玉県の人、あるいは東京都の人がそれをチェックすることもできないし、する権限を持っていない。つまり、関東農政局はどのようにチェックされているのか。関東農政局というのは大きな建物にあって、非常に目立つ存在ですが、いったん「地域課」というところにまで下りていくと、誰からもどこからも監視されることがなく、無駄な備品の取得があり、無駄な建物が統合すべき状況にあっても、自動的に膨らんでいって取り残されていくという感じがするのです。それに対するチェック機能はどうなっているのでしょうか。
             
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あとがきに猪瀬直樹はこう記しました。「改革はつねに前途多難。だから結果だけでなくプロセスのなかに萌芽が宿っている。これから先、振り出しに戻ってしまわぬようにとの歯止め、つっかえ棒のつもりで討議の経過を残しておきたかった。前線の塹壕からの便り、ぜひ読んでほしい」
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