「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 米国のオバマ次期政権をもっとも不安視しているのはイスラエルで | 日本のお姉さん

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 米国のオバマ次期政権をもっとも不安視しているのはイスラエルで

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
   平成20年(2008年)11月21日(金曜日)
         通巻第2396号 (11月20日発行)

 イスラエル政界、オバマへの不安感からリクードが復活の様相
  モシャヤ・ヤアロン将軍も、リクードから出馬。中間各派は支持率下げる
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 米国のオバマ次期政権をもっとも不安視しているのはイスラエルである。
 先月、連立工作に失敗したイスラエルは09年二月に総選挙。オバマ当選までイスラエルの世論調査では、圧倒的に連立与党「カディマ」の勝利を予測し、リビニ(現在の国防相)が次期首相有力だった。

 カディマはシャロン元首相が、与党リクードと労働党の有志議員をつのってにわかに連立政権をつくった新党。オルマルト首相は、しかしながらスキャンダルで辞任を決意し、次期後継首相にリビニが党内で決まっていたのだ。

 ハーレツ紙(イスラエルの有力紙)11月20日付けは、独自の世論調査の結果、いま、リクードのベンジャミン・ネタニヤフ(元首相)が圧倒的にリードしており、どの政党もリクードの人気復活にかなわないと、意外な数字を出した。
 64vs56の大差でリクード主導の連立が、「カディマ+労働党」を破るという予測だ。(イスラエル国会クネセトは定員120)。

 リクードは、国民的人気が高いモシャ・ヤアロン将軍が政界に転じて立候補を予定。かれが出馬すると、労働党のバラク(元国防相、首相)、カディマのモファッツ(元国防相)の人気を凌駕するだろう。

 他方、労働党のアセロン議員と少数宗教政党「メイマド」のメルコール党首は新党設立の話し合いを始めたとハーレツ紙が伝えている。

 どれもこれも予測を覆る世論調査結果だが、オバマ政権誕生をイスラエルが脅威視している、動かぬ証拠だ。
一方、アメリカの世論調査ではパレスチナ支援6に対してイスラエル支援が66%と十倍の開きがある。それがアメリカの世論である。
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(読者の声1)貴誌11月20日付けでのコメントに「中国は日本を抜き去って、世界一の米国債保有を誇ることとなった。対照的に日本は一千億ドル近く、米国債保有を減らしていることが判明した。」とあります。

一千億ドルは、ほぼ「10兆円」に相当します。今年になって米国債保有を1千億ドル減らした日本は、この世界金融危機にあたり、米国から、「減らした1千億ドル相当をIMFに拠出せよ」と強制されたのではないでしょうか? 今年になり米国債保有を増やした中国の方が米国からの戦略的パートナーとしての評価は高いのではないでしょうか?  フト、このようなことを連想しました。
(KI生、尼崎市)


(宮崎正弘のコメント)同様なご質問が意外と多くの方から頂きました。日本の米国債投資は、しかしながら野村證券など大手金融機関が「自主的」判断で、有利だから買い、総合比較で、もっと有利な金融商品がでてくれば、乗り換えるというのが市場の現実です。IMF増資に関しても、英国は日本の英断を絶賛しましたが、ワシントンの反応はいまいち、パトスも情熱もない。
米国としては世界銀行=IMFというブレトンウッズ体制の綻びを修繕しても、決して主導権を日本に渡したくないからでしょう。
 また日本の保有減は六月のことで、十月末からいわれたIMF増資のための拠金予定額とは偶然に数字が一致しますが、時系列で考えると因果関係はなさそうです。

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(読者の声2)貴誌コメントに「産経はフルネーム「産業経済新聞」。しかし、経済の書き手が殆どいない。産経経済コラムを猛烈な勢いで書きまくる田村さんは、日経新聞からスカウトしてきた論客です」。
 とありました。岩崎慶市さんも日経出身でしょうか。小泉竹中シンパのように見えましたが。
 もう一つ。
宮崎さんのコメントに「善意に満ちたご提案でした。しかし世界は悪魔だらけ、高山正之さん風に言えば「世界は腹黒い」んです。悪意に満ちた米国や、それより悪魔的なロシアと中国を相手に、善意の日本の振る舞いが理解されるとは思われません」とありました。
 今後はアメリカに円建てで金を貸すとか、担保を取れとかの意見もありますが現実性があるでしょうか。
サイパンとテニアンを担保にしていずれマーシャル諸島の還付も?

(宮崎正弘のコメント)円建てによる米国債発行も、つぎのオバマ政権はのむ条件のひとつと考えられます。
 今月の「WILL」拙論に、冗談半分に提案しました。米国債権デフォルトの時、日本は空母を差し押さえよ、と。

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(読者の声3)私はかねがね、アメリカの金融工学の発展の土壌は、信用と実績を重んじる日本の商の道に、その淵源を尋ねることができると思っています。
すなわち日本の金融商学こそ、アメリカの金融工学の成立の前提となる近代的基礎だと思っているのです。そして、その金融商学の牙城、砦こそ、日本銀行、BOJなのです。
金融工学の悪魔たちも、その真実の前には、脱帽するばかりでしょう。
知らぬが仏と言いますが、知ってしまえば、悪魔稼業などを続けてはいられない。ただし泥沼の中の白蓮とも申します。
泥のような連中がいて苦しめられても、その苦しみに耐え、泥沼の現実に、美しい蓮の花を咲かせるところにBOJ以下、日本企業の面目躍如があるのではありますまいか。

日本企業の商道の中心、BOJの陰徳こそ、金融商学として、金融工学を支えるのです。
愚かな戦争で、前途有為の青年のかけがえのない生命を絶ち、自らを掘り下げることもせず、戦う相手を悪と決めつけるのは傲岸不遜。そのような米国に、日本は、軍事、ビジネスの両方に亘って、道義と信義を教えていかなければならないのではないでしょうか。
   (W生、武蔵野)

(宮崎正弘のコメント)日本の寛大な心は、活仏のごとし。

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(読者の声4) 貴著『トンデモ中国 真実は路地裏にあり』(阪急コミュニケーションズ)のp74の丹東の記述に「つい最近訪れた商社マンによると07年にはホリデイ・イン・ホテルも開業したそうな」とありますね。
このホリデイ・インでは、大連賓館や瀋陽の遼寧賓館(両方とも旧大和ホテル)で求められなかったデポジットを要求されました。
丹東では日本人は嫌われている。
大連賓館で一番安い部屋にしたら窓がありませんでした。遼寧賓館の安い部屋には窓がありましたが、広場の毛沢東像に覗かれてしまいゾッとしました。これも意地悪?
(元商社マン)


(宮崎正弘のコメント)詳しくお読みいただきましたね。あの情報(丹東にもホリディイン開業)は、貴兄からのを使わせて貰いました。旧大和ホテルと言っても、いまや経営者は中国企業ですから、サービス最悪。デポジットは、予約した人が企業ならまだしも、だいたいどこでも要求されます。アメリカでも最初にクレジットカード提示を要求されますが、あれと同じで、要するに人間不信なんですね。
ホテルの備品も一覧表と価格が付いているでしょ?(ホリディ・インはさすがになかったでしょうが。。)
 ホテルから土産替わりに備品を黙って持って行く人が後を絶たないので、中国の三つ星以下のホテルに泊まると、チェック・アウトに時間が最低十分は要する。部屋を調べているんです。
 瀋陽の旧日本人街に残る遼寧賓館の真ん前に聳える毛沢東像は、ちょうどタクシーを止める格好をしているでしょ。あれをさして地元の若者は「毛沢東がタクシーを止めている広場で待ち合わせましょう」と言っています。
 それより同ホテルの食堂をご覧になりました。あそこが東洋のマタハリや李香蘭や石原莞爾らが大活躍の舞台でした。当時のままです。
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(サイト情報) 11月18日、上院銀行住宅都市委員会で自動車大手三社への金融支援に関する公聴会が開かれ、ゼネラル・モーターズのワゴナー会長、フォード, クライスラーの社長などビッグスリーの首脳がそろって証言。この中でワゴナー会長らは総額250億ドル(約2兆4000億円)の公的資金で自動車大手3社を救済する法案の早期成立を訴えた。
Examining the State of the Domestic Automobile Industry
U.S. Senate Committee on Banking, Housing and Urban Affairs, November 18, 2008
http://banking.senate.gov/public/index.cfm?Fuseaction=Hearings.Detail&HearingID=0b8c3c92-b599-46f4-90b3-7f4e37583268
パネル証言者 
Mr. Ron Gettelfinger, President, International Union, United Automobile, Aerospace and Agricultural Implement Workers of America
Mr. Alan Mulally, President and Chief Executive Officer, Ford Motor Company
Mr. Robert Nardelli, Chairman and Chief Executive Officer, Chrysler LLC
Mr. G. Richard Wagoner, Jr., Chairman and Chief Executive Officer, General Motors
Dr. Peter Morici, Professor, Robert H. Smith School of Business, University of Maryland

11月19日には下院金融サービス委員会でビッグスリーの首脳が同様の主題で証言。House Financial Services Committee, November 19, 2008
http://www.house.gov/apps/list/hearing/financialsvcs_dem/hr111908.shtml
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http://miyazaki.xii.jp/saisinkan/index.html
『トンデモ中国、真実は路地裏にあり』(阪急コミュニケーションズ)
               (全332ページ、写真多数、定価1680円)
『北京五輪後、中国はどうなる』(並木書房、1680円) 
『世界が仰天する中国人の野蛮』(黄文雄氏との共著。徳間書店、1575円)
『崩壊する中国 逃げ遅れる日本』(KKベストセラーズ、1680円)
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