▼発想を転換すると「世界恐慌は千載一遇の好機」ともなる。 (じじ放談)
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▼信用収縮から消費委縮へのデフレスパイラルが始まった。発想を転換すると「世界恐慌は千載一遇の好機」ともなる。 (じじ放談)
住宅バブル崩壊によるサブプライムローンの焦げ付きで始まった金融機関の不良債権と評価損は天文学的数字に積み上がった。米国議会が決議し準備した金融機関への7000億ドルの公的資金注入金は、早くも「枯渇が不安視される」事態に至った。18日付け日本経済新聞は「米シティ、5万人削減」と題する以下1,2,3,4の記事を掲載した。(抜粋)
1.米大手銀シティグループは17日、全従業員の約15%に相当する5万人を削減すると発表した。シティは今年5月に今後2-3年かけて不採算事業を4000億ドル規模で圧縮する再建策を発表しているが、金融危機や世界的な景気後退を受けた追加的なコスト削減が狙い。株価下落が続いており、今後もM&A(合併・買収)など抜本的な経営改革を迫られる可能性がある。
2.今回の追加リストラで全従業員は30万人弱とピークだった2007年末から2割減少し、09年の経費は年500億ー530億ドルと07年実績比2割程度削減する。
3.シティが大幅な人員削減を決めたのは、赤字体質が続いているうえ、米金融安定化法の制定で公的資金を受け入れたにもかかわらず、株価下落など市場から厳しい評価を受けていることが背景にある。先週のシティ株は一時9ドルを割り込む場面があり、07年末からほぼ3分の1の水準まで下げている。
4.シティの7-9月期決算は28億ドルの最終赤字で、赤字は4・4半期連続だった。これまで証券化など法人向け事業が不振だったが、景気後退の広がりにより、米国内では個人金融、海外ではシティの強みだった欧州、アジア地域にも収益悪化の波が拡大する可能性が出てきた。
住宅価格の下落が続き、サブプライムローンやプライムローンの焦げ付きはさらに拡大すると想定される。さらに、住宅関連証券等の評価損も膨らむのではないか。加えて、自動車ローンや消費者ローン等の個人金融の焦げ付きが増加しているというから、シティの不良債権額は当面、増えることはあっても減ることはあるまい。現在、年間1兆円を超える赤字決算を余儀なくされているシティに対し、数兆円の公的資金を注入しても「焼け石に水」ではなかろうか。シティは自己資本比率を維持するために、国内外の資産の売却を加速すると共に、貸しはがしと貸し渋りを強めている。さらに、M&Aを通じて事業再編を進めたいとしているが、米大手銀ワコピアの買収に失敗する等「資本増強策」も進展していない模様である。結果、大規模な人員削減に追い込まれた。一桁台の株価といえば、フォードやGMなどビッグ3の株価も一桁台に低迷している。株式市場から「事実上の破産企業」と見なされている。金融機関の貸し渋りに起因する「住宅ローンや自動車ローンの圧縮」は、住宅価格の下落を加速し、自動車販売の大幅な落ち込みを惹起した。能力以上の借金をして過大な消費を行ってきた米国民は「倹約生活」を余儀なくされている。米国民が健全なる消費者に回帰した結果、消費の大幅な減退が発生した。「モノが売れない時代」になった。実体経済はデフレスパイラルに陥った。モノとカネの流れが止まったから、モノは売れない。カネは流れない。米国3億人の貧困化が始まった。ビッグ3は事実上の破産状態にある。ビッグ3も生き残りを図るべく、公的資金を注入してもらう環境を整えるべく資産売却を断行している。フォードがマツダの保有株の大半を日本企業各社に売却する話し合いが進んでいる。GMもスズキの保有株を売却する。我が国のバブル崩壊で青息吐息に陥ったマツダ、スズキ、スバル等の自動車各社の株式を安値で拾ったビッグ3は保有株のほとんどを手放すことになった。慶賀にたえない。これを称して「禍福はあざなう縄の如し」という。
第1:デフレスパイラルが米国資産を縮小させる。
金融機関は莫大な不良債権や証券類の評価損を穴埋めすべく世界中の資産を投げ売りしている。英国やスペインを初め世界中の住宅バブルが崩壊した。世界の株式市場も崩落している。米国の資産は急激に縮小している。我が国の企業は米国企業が投げ売りする資産の一部を買い取っている。おそらく、資力に余裕がある中東湾岸諸国や中国・ロシア・シンガポールなどの政府系ファンドも買っている。経済力に見合った資産の移動と調整が始まっている。米国の金融資本と企業が世界中に保有する資産は「米国の一極支配」を支える経済的基盤であった。カール・マルクスがいう「下部構造は上部構造を規定する」という見解が正しいとすれば、世界中に投資し保有していた米国企業の資産は、覇権国家米国を支える土台であった。現在、米国系金融機関や大企業は「資産の投げ売り」で忙しい。自らが拠って立つ基盤を掘り崩している。
今後、米国のデフレスパイラルがさらに深化するから、米国の金融機関と大企業は外国資産を売り尽くした上、さらに米国内資産を売らざるを得ない。米国内の資産も「外国資本や国営ファンドに投げ売りされる」と見るべきである。
第2:デフレスパイラルで没落する企業と繁栄のバネとする企業が続出する。
インフレもデフレも経済の一局面である。富の移動が加速される一場面である。没落する企業・国家が出る反面、のし上がる企業・国家が生まれる。平和な時代は年功序列で階段を一段づつ上るが、インフレやデフレという有事は「下剋上の時代」である。小が大を呑むこともある。ある日突然「地位が逆転する」ことも珍しくない。千載一遇のチャンスが到来しつつある。我が国の企業は豊富な内部資金を貯えている。個人資金も千数百兆円ある。折からの円高で買収余力も高い。米国や欧州の金融機関や大企業が投げ売りする企業や資源を買い取るチャンスが到来した。1980年代のバブル時代、我が国企業は米国の不動産や企業を買い占め莫大な損失を計上した。今回は、その教訓を生かし「賢い買い方」に徹すべきだ。見栄や「他社が買うからウチも」という横並びの発想で買い物をすべきではない。企業100年の戦略に基づいたM&Aを仕掛けるべきである。すでに「早耳筋」の企業が、ブラジル鉱山の買収や、豪州の飲料メーカーの買収に動いている。米英の地方銀行を買収した金融機関もある。「今が買い時か否か?」は不明である。世界経済はますますデフレスパイラルに陥ると見るべきであるから、着手がやや早いのではないかという気もする。しかし、各国政府はデフレ防止の景気対策を次々と打ち出すから、いつ反転してインフレに転換するか分からない。ということは、資金に余裕のある企業は「買収すべき企業の価格が暴落するのを買い下がる方針」で臨んでいるのだろう。世界恐慌(超デフレ)が収束したとき、世界の経済情勢は一変しているはずだ。米国と米国企業は富の多くを失っている。デフレというアゲンストの風に立ち向かい、読みの入ったスイングをした国家や企業は繁栄の礎を築きあげている。
第3:我が国にもデフレが押し寄せる。財閥系企業は「買い」か?
世界大恐慌においてはいかなる国家・企業も影響を受ける。貿易立国である中国、韓国、東南アジア諸国並びに我が国も「輸出の大幅な落ち込み」で景気が失速する。現在は、臨時職員の解雇・削減だけであるが、徐々に正規社員の削減に踏み込むことになろう。「モノが売れない」「カネが動かない」デフレ経済において無傷ということはありえない。無駄な出費を抑え、厳寒に備えて「春の到来を待つ」ことになる。我が国企業が一斉に「設備投資の見送り、延期」に走りだしたのは、デフレがさらに深化するのを想定した動きである。体力のない企業は「穴熊という冬眠戦術」で厳寒時代を乗り切るほかはない。軍資金に余裕があれば、又は財閥系金融機関がバックについておれば低金利の融資を受けて「戦略的なM&A」を仕掛けることができる。「大恐慌は財閥系企業をさらに強くする」といわれる所以である。企業が金繰りに窮するデフレ経済において、資金力のある財閥系企業は「ハンディをもらって競技している」如く、絶対有利な立場にある。軍資金をたっぷり貯えているトヨタ、武田薬品等の超優良企業や三菱UFJ、三井住友、みずほの3大メガバンク系列の企業は、世界大恐慌(デフレ)において、さらに力をつける。パナソニックや京セラなどの独立系企業もメガバンクとの関係を強化せざるをえない。
(まとめ)
米国経済並びに米国企業は「資産を売却して生き残りを図る」縮小再生産過程に入った。タコが自らの足を食べて生きのびる姿である。一方、これを千載一遇の好機として「虎視眈眈」狙っている中国、ドバイ、シンガポール、ロシアなどの政府系ファンドがいる。企業は従業員で成り立っている。買収後に従業員が一斉退社すれば、企業が企業でなくなる。これを「もぬけのから」という。「赤字を続けるだけ」の企業を買収しても負担が増すだけだ。企業買収では成功する確率よりも失敗する確率が高いのではないか。クライスラーを買収したベンツも失敗して撤退した。企業買収も危険がいっぱいの「投機」である。何事も「濡れ手に粟」のぼろい儲け話はない。我が国は「人類の豊かな生活を実現する高度技術産業国家でありたい」と考える。政府も財政支援を惜しむべきではない。ただ、世界大恐慌という超デフレが襲来している千載一遇の好機を指をくわえて眺めているだけでは能がない。軍資金を有効活用しても罰は当たらない。「金融資本国家日本」を築くための投資ではない。金融資本はあくまでも「実体経済を支える裏方」でなければなるまい。金融資本が実体経済から遊離し、実体経済を支配する米国型資本主義は破綻した。「夢よもう一度」を狙うべきではない。我が国超優良企業にとっては面白い時代となる。だが、その他大勢の中小零細企業や我々一般大衆にとっては厳しい冬の時代となる。「体力を消耗しない穴熊戦術」で春の到来を待つほかない。軍資金を持っている個人にとっては、超有望企業の株価を安値で拾える時代となる。現在、外国人の売りを個人投資家が買っているようである。「高値覚えの割安感」があるから拾っているのだろう。外資から我が国企業を買い戻すことに異論はない。筆者は軍資金がないから「買い下がり」という手は使えない。株式市場が屍累々の墓場になったら「ささやかな買いをいれようか?」とチャンスが到来するのを密かに狙っている。「大底狙い」の一本釣りである。