軍事情報 第368号(最新軍事情報) | 日本のお姉さん

軍事情報 第368号(最新軍事情報)

軍事情報 第368号(最新軍事情報) 
■米のオバマ新大統領の方向
1.イラク
オバマ氏はイラクでの戦闘に反対している。2007年の増派にも反対し、2010年半ばまでに段階的にイラクから戦闘部隊の撤収を進めると表明している。就任したら毎月1~2個大隊を撤退させ、16カ月で戦闘部隊の撤収完了を目指すとしている。対テロ戦争の主戦場はイラクではなくアフガニスタンとパキスタンと主張している。マケイン氏は、2003年の展開開始以来、ブッシュ政権による「イラク戦争の遂行ぶりはひどいものだった」と批判する一方で、今撤収することは対テロ戦争においてもっとひどい結果を生み、撤収時期の明示はテロリストを利するだけだと主張。2007年の増派を推進した。

2.イラン
オバマ氏は、国際社会と共同歩調をとりながら、経済制裁強化を検討するとしている。就任一年目に、ならず者国家とされているイラン、シリア、ベネズエラ、キューバ、北朝鮮の指導者と直接会談すると述べている。議会承認が前提になるが、軍事行動を除外しないと述べている。マケイン氏は、軍事行動は選択肢のひとつだが、決定前に議会幹部と協議したうえのはなしであり、欧州諸国との連携による経済制裁強化を主張していた。

3.国防
オバマ氏は、2006年に愛国者法の延長を支持したが、改正は必要と主張している。化学薬品工場の警備強化や核廃棄物の安全な処理法を追求し、情報収集能力向上を推進するとしている。グアンタナモ収容所は閉鎖し、アフガニスタンとパキスタンで対テロ戦争を強化するとしている。

⇒感じることです。
1.オバマ氏の対イラクの方向性は、現在ブッシュ政権下でゲイツ国防長官が進めている方向とほぼ一致している。現状維持ということになろう。

2.イラン攻撃は絶対反対、というのが軍事専門家の一致した意向のようだが、オバマ氏がイラン攻撃に踏み切る可能性はマケイン氏より高いと見積もられる。話し合いをするとされるが、話し合いは時間稼ぎ、決裂を前提にしたものという見方も出来る。国際社会という言葉も実に曖昧だ。イラクが一段落した頃にイラン攻撃が具体化する可能性は高いと見るべきだろう。ホルムズ海峡を通過するわがタンカーの警護を、海自がいつでも出来るよう備えをしておく必要がある。

3.主戦場はアフガンとパキスタンであると言い切っていることが目立つ。アフガンへの軍部隊増派は決定的といえよう。イランへの圧力・攻撃策源地としての意味合いもあるのかもしれない。後方支援任務にあたる、わが自衛隊のアフガン派遣を求める圧力が高まるのは確実。わが国内では、メディア等を利用したアフガン派遣世論醸成が一層図られるであろう。(すでにはじまっているが)アフガン派遣はわが国益を図るうえで必要だが、現行の法大系のもと、公務員としての権限しか与えられていない自衛隊部隊を現状のままアフガンに派遣することは、わが自衛官に犬死を強制することを意味し、特に幹部に対して、軍人としてのものだけではない多大な心労を強要することになる。少なくとも国民世論はそのような残酷な行為を二度と許すことはないであろう。前向きに検討するのであれば、最低でも、海外でわが自衛隊が軍事合理性に基く作戦行動をとることを認める「恒久法」制定が必要である。「特措法」では不可である。改憲は間に合わない。「イラクの奇跡」を再度期待・妄想し、その二の舞を繰り返すようなことがあってはならない。その他

4.わが周辺に対する具体的言及はほとんどない。民主党政権はいつもそうだが、オバマ氏も「中国が興隆し、日本と韓国が主張を強める中、私は2国間協定や不定期な首脳会議、6カ国協議のような、特定の問題に限定した取り決めを超える、より効果的な枠組みの構築に取り組む」「日米同盟は重要だ」という抽象的言葉を述べるに留まっている。ひとことでいえば、東アジア地域に余り関心と事情理解の蓄積はなく、この地域に積極的に関与する事を避け、地域のバランサーに留まったほうがよいとの方向であろう。消費大国シナとの関係を悪化させる方向には行かないだろう。

5.日米同盟
自国の再建が最優先で、国際社会の現実の中でわが国を保護する姿勢は弱まり、我が国は今までよりもっと「金づる機能」としての役割を求められることになると思われる。日米同盟は、わが自衛隊と米軍の友好関係のみで支えられる時代に入るのではないか。逆に考えれば、わが国は独立国家として扱われる傾向に向かうわけで、東アジア地域安定のため、軍事的役割を積極的に果たしうる責任ある国家として再生する絶好の時代に入ったといえよう。

■核軍縮へ新提案
七日の時事によれば、ロシア外交当局者は七日、米のミサイル防衛東欧配備計画と核軍縮交渉に関し、米政府から新たな提案を受けたことを明らかにしたそうです。この提案には、
・ポーランド、チェコへのミサイル防衛施設へのロシア要員による監視などの信頼醸成措置の拡充
・二〇〇九年十二月に失効する第1次戦略兵器削減条約(START1)に代わる協定の策定が含まれているとのことです。十一月中に米ロは実務者協議を行なうようです。

⇒オバマ氏が大統領に選出された五日、ロシアのメドベージェフ大統領は、ミサイル防衛配備計画に対抗するため、ポーランドに隣接する飛び地カリーニ
ングラード州(リトアニアとポーランドの間にある)に、短射程弾道ミサイル「イスカンダル」(*)を配備すると明らかにしています。(イスカンダルといえば、イスカンダル-Eはシリアに輸出される(た?)ようですね)オバマ政権の誕生とケネディ政権の誕生はよく似ている感を受けます。ケネディ大統領が当選したとき、ソ連(当時)のフルシチョフ書記長は「若造に何が出来る」と、キューバにミサイルを配備しようとし、そのことがばれました。、第三次大戦(核戦争)の寸前までいったとされるキューバ危機がおきたわけです。このときケネディは作戦にあれこれ介入し、感情のエスカレートに左右されるシビリアンコントロールの悪しき前例を作ったとされます。オバマさんについては、すでにイタリア首相がそれもロシアで失言をしていますね。なんだか奇妙な一致で気になります。START1は一九九一年に調印された「戦略核弾頭保有数の上限を六千発とする」という内容の戦略核兵器削減条約です。二〇〇六年にプーチン大統領が新たな戦略核削減条約の交渉開始を呼びかけましたが、米の反応はこれまでありませんでした。

(*)イスカンダル関係
・SS-23“オカ”; ロシア、短射程弾道ミサイル(SRBM)、ロシアはINF条約で廃棄、代替派生型のイスカンダル(Iskander)を開発中、 発射基数=スロバキア50基以下、ブルガリア50基以下; <性能諸元>固体推薬、射程>300km、路上機動
・SS-26“イスカンダル”; ロシア、短射程弾道ミサイル(SRBM)、Iskanderはロシア名、NATO名は不詳、KBM設計局製、スカッド(Scud)の後継、'95/10/25初試射、'99実戦配備;<性能諸元>全長-ft(m)、翼幅-ft(m)、胴体直径-ft(m)、重量3,800kg、GPS/GLONASS/INS/IRH誘導、1段・固体推薬、弾頭:単弾頭又は子弾×10、射程>300km、路上機動
・SS-X-26“イスカンダル-E”; ロシア陸軍開発中、戦術弾道ミサイル(SSM)、双連発射機、射程50~280km、慣性・GPS・レーダ・電子光学センサ併用誘導方式
【出典 コモ辞書 
http://homepage3.nifty.com/OKOMO/  】

■北ワジリスタン地区で無人機が攻撃
パキスタン北西辺境州にある北ワジリスタン地区で七日、米軍無人機によるミサイル攻撃があり、アルカーイダ関係者ら十三名が死亡しました。北西辺境州では八月中旬の掃討作戦開始以降、無人機によるミサイル攻撃が少なくとも十七回行なわれており、アルカーイダの主要幹部等を死亡させています。
⇒六日には、同州バジョール地区で地元住民を狙った自爆テロが発生し、少なくとも十名が死亡しています。バジョール地区ではパキスタン国軍が掃討作戦を展開中で、現時点で、武装勢力千五百名以上を死亡させたといわれます。二日には、南ワジリスタン地区でパキスタン国境警備隊宿営地に自爆車が突っ込み、隊員八名が死亡しています。

■コンゴで戦闘拡大
前号でもお伝えしましたが、アフリカ中部、スーダンの南にあるコンゴ(旧ザイール)では、東部で反乱軍と国軍の戦闘が拡大しています。七日のロイターによれば、東部の拠点都市ゴマ北方のキワンジャという村で、反乱軍と国軍を支援する民兵が交戦し、五日時点で反乱軍が同地を制圧したとのことです。
⇒現時点で国連活動等が困難な状況になっているそうで、コンゴを巡って国連安保理は戦闘停止を求める議長声明を採択しています。国際社会の懸念も急速に高まっています。ゴマは、ルワンダ難民救援隊としてわが陸自部隊が初めて海外派遣されたところです。現行法の元での活動にあたり、現地指揮官は現実と向き合う中で種々の困難な状況に置かれました。(参考:『ルワンダ難民救援隊 ザイール・ゴマの80日』 神本光伸著 内外出版)今後「経験あるじゃないの」と派遣を求められるときがくるかもしれませんね。

■ダライ・ラマが来日
来日していたチベットのダライ・ラマ十四世は六日、超党派の「チベット問題を考える議員連盟」会長の民主党 枝野代議士らと会談しました。ダライ・ラマ十四世は今後の対話を含めた中共との関係を話し合うため、亡命チベット人代表らを集めて十七日からインドのダラムサラで行なわれる「緊急会議」へのわが国からの参加を求めました。

⇒六日までに終わったダライ・ラマ十四世の特使と中共との対話で、現在のチベット自治区統治制度の変更を求めるダライ・ラマ側の要求に対し、中共側の杜・統一戦線工作部長が「絶対に変えない」と表明し、対話は決裂しています。杜部長はその際
・いかなる形でもチベットの独立、半独立、形を変えた独立は認めない
・わが国は連邦制国家ではない
・民族自治制度は香港やマカオの「一国二制度」とは違う
・真の民族自治を旗印に民族分断を図ることは絶対に許さない
と述べたそうです。対岸の火事ではないですね。

■米軍基地の労組が基地撤去を求める団体から脱退
在沖縄米軍基地の日本人従業員約六千五百名からなる全駐留軍労働組合沖縄地区本部が、基地撤去を訴えて活動している沖縄平和運動センターからの脱退を六日に決定しました。脱退理由は
・世代交代が進み、自らの職場である基地を撤去するとの訴えに違和感を持つ世代が増えた
・公務員並みに安定した職場であり、高い競争率を突破して得た仕事を失うことへの不安
だそうです。

シナ軍の最新鋭戦闘機が初お目見え
中共は、二〇〇六年に実戦配備したシナ軍の最新鋭戦闘機「殲10(J-10)」(*)の飛行姿をはじめて一般に公開しました。四日から広東省球海ではじまった国際航空宇宙博覧会の開幕式での出来事です。一部報道には「中共様が自主開発なさった、F-16に匹敵する性能の素晴らしい戦闘機だから、頭を下げてお出迎えせよ」といわんばかりに伝えているのもあるようですが、実際は、イスラエルの戦闘機の影響が極めて強く、エンジンも外部調達しているようです。以下紹介するコモ辞書にもありますとおり、南海艦隊に配備予定の空母艦載機として大量生産される、多用途戦闘機としての意味合いを重視すべきと思います。要員教育も、おそらく順調に進んでいるのでしょう。

(*)J-10 (又はF-10)
中国空軍、多用途戦闘機「殲10」、Chengdu公司製、'98/03初飛行、'02/11・Zhuhai航空ショーに登場、イスラエルのLavi戦闘機の影響大、デルタ型カナード付デルタ翼、四重冗長度(quadruplex-redundancy)デジタル飛行制御装置搭載、'05量産初バッチ引渡し開始、'06~'15に232機を生産・配備見込;<性能諸元>乗員1(J-10A)/2(J-10B)、翼幅8.78m、全長14.57m、全高4.78m、翼面積33.0m2、カナード面積5.45m2、空虚重量6,940kg、最大離陸重量18,400kg、最大ペイロード8,400kg、パワープラント:Saturn Lyulka AL-31ターボファン・エンジン/推力(dry)79.43kN(17,857-lb)/(A/B)122.58kN(27,557-lb)×1基(国産は困難と推定)、最高速度M1.85、実用上昇限度18,000m、航続距離1,852km(1,000NM)、兵装:23mm/30mm機関砲×1、ハードポイント×11箇所、翼端レール各1、PL-8/PL-10 AAM<空>

中国海軍、空母建造計画
'98にマカオの中国系企業がウクライナ(旧ソ連)の未完成空母「ワリャク」を購入して大連に係留し'02から研究した成果を基礎に新型空母を設計、'07/03/28韓国紙「ハンギョレ」は中国が93,000t級原子力空母建造計画「085工程」及び48,000t級通常動力空母建造計画「089工程」を推進中と報道、原子力空母は'20完成予定で旧ソ連の未完成原子力空母「ウリヤノフスク」設計図を秘密裏に購入して開発、通常動力空母は'10完成予定で基準排水量48,000t/満載排水量64,000tの中型空母で、'06実戦配備した「殲10(J-10)」戦闘機を30~40機搭載可能と言う、また中国系香港紙「鏡報」によれば新型空母3隻の建造費は約1,700億元(\2兆5,000億)、搭載機はロシアから輸入する艦載機スホイ33(速度M2、航続距離3,000km)、搭載武器はKS172ASM(射程300km)、Kh59M9ASM、Kh31ARM、R77AAM(射程 48NM)、3M54E・ALCM(射程110NM)等<海><核>
【出典 コモ辞書 
http://homepage3.nifty.com/OKOMO/  】

■中共、火星探査衛星を打ち上げへ
三日の広州日報によれば、シナ軍の機関とされる「中国航天科技集団」関係者が二日、来年九月に火星探査衛星を打ち上げる計画を明らかにしたそうです。ロシアのロケットを使用しての打ち上げになるとのことです。
⇒ロシアのロケットに関する詳細は不明です。
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■田母神前空幕長の論文問題について(1)
田母神氏の文章が、いまだかうした大騒ぎを巻き起こすとは、なんとも言論の自由の無い国である事の証明と言ふ他ありません。文章の内容は、いささかなりとも近現代史に興味を持つ人間にとつては、いまや常識であると考へてをりました内容なので、これに過剩な反應を示すマス・メディアや政治家たちの取り亂しやうを目の当りにして、いささか暗澹たる気持ちとならざるを得ません。しかし、希望はあります。といふのも、今回、マス・メディアにしても、蜂の子を突ついたやうな大騒ぎにはなつてをりません。これは大変有難い。やはり 日本人としての、最低ではあるものの、bon sens はあると言つて良いでせう。さて、田母神氏の文章で、真新しい事といへば、米陸軍省の Venona Projectに触れた部分です。これを日本のマス・メディアでは、産經新聞を除き、ほとんど取上げてゐないのではないでせうか。これをあらためて紹介した功績は、大きいと言へませう。こいつを出せば、スターリンによる『共産主義』を表看板とした陰謀は、あらゆる點で明らかになる。米陸軍省をペテン師であると証明をしようとするほどの無謀で御莫迦な輩はをりますまい。あれば、たちまち、反論されませう。アメリカに反論するには、アメリカの資料を用ゐるに如かず。ソクラテスに学ぶべきでせう。歴史といふものは、小林秀雄が述べたやうに、容易く身を處しさへすれば、悲劇を回避する事が出来ると言ふほど、甘くは無いと言ふべきでせう。われわれの父や母や祖父祖母は、さうした中で生きて来たのです。その切実さに思ひ致さず、愚直をせせら嗤ひさへすれば、事は済むと考へるなど、到底正氣の沙汰ではありません。正直のところ、田母神氏の論文は、述べられた内容はともかくも、氏みづから率直に述べてをられる通り、多忙な任務のなか、自身で總てを検証されたものではないと思はれますが、それでも確信をもつて書き上げられたには、日頃國防の最先端にをられる経験からの、bon sens 良識によるものと考へて良いでせう。そしてそれは、決して、間違ひではありません。自身の内奧に潜む、確信をもつて行動した事に関しては、誤りであつたか否かは別の事として、その必然性を信ずるべきでありませう。人間にとつて、他にどんな生き方があり得ませうか。(neverneverland)

■田母神前空幕長の論文問題について(2)
自衛隊の幹部といえど、文民統制下にある自衛隊員であり、公職の身を途中で捨てて転職したというのならば、自衛隊のあり方を公然と批判することは許されるが、航空幕僚長にまで上り詰めたところで、自責の念に駆られて、辞表を提出し、退職金を目の前にしてそれを棒に振ってまで、自己の信念を貫くということであったら、今回の田母神論文事件は、自衛隊員の鑑ともいうべき熾烈な大和魂を持つ猛将の逸話になったでしょう。でも、そんな気持ちなど全くなかったということは、日々の職務で溜まった自衛隊という職場に対する知的欲求不満を吐き出すことで、自己の存在感を安定させたかったというだけのことでしょう。しかし、それが、防衛大臣の椅子を揺り動かしてしまって、厄介なことになったというわけです。この程度の話で騒いでいられるのは、本当に日本が平和な証拠だと、あらためて日本に生まれたことを感謝したいと思います。でも、これは決して皮肉ではないのです。田母神氏や田母神氏を選考された方々がいなければ、このような自衛隊の内輪の事情を知ることができなかったでしょうし、常に戦争準備で明け暮れる北朝鮮の哀れさを知るにつけ、おっしゃられるように、まさに、多種多様な言論が花開く平和な環境は素晴らしいでしょう。日本国憲法が、十分その下地を作ってきたと言えるかもしれません。あらためて、関係者の皆様に感謝したいと思います。(W)

■田母神前空幕長の論文問題について(3)
田母神前空幕長の論文問題で、如何に戦後教育が日本国民から国家意識を奪ったか、日本の文民統制が如何に日和見的で本質を離れたものであるかを痛感しました。今回の件は、あるべき姿を日本人に問いかける絶好の機会であるとも思います。一人の日本人として私的な立場でコメントしたいと思います。論文の内容について、何が問題になるのかさっぱりわからないというのが、率直な感想です。田母神さんには、国会招致の場で、堂々と意見を開示して問題提起し、普通の国家へ近付く切っ掛けを作って欲しいと思います。

1 東京裁判史観について
東京裁判の最も問題と思われるところは、「平和に対する罪」、「人道に対する罪」という戦後作られた概念で、戦前のことを裁いている点です。少なくとも自由主義社会における司法は、いずれの国も罪刑法定主義(いかなる行為が犯罪となるか、それにいかなる刑罰が科せられるかは既定の法律によってのみ定められるとする主義。刑罰権の恣意的な行使を防ぐ人権保障の表れ。)が採られています。現在の価値観で過去を裁くことにどんな意味があるのでしょうか。我々の祖先は、それそれの時代の価値観で、結果は別として、最適な動を採ろうとしてきた。帝国主義の時代、当時の世界には侵略国家という概念すらなかったのではないでしょうか。

2 文民統制について
文民統制は、クラウゼビッツの言うように「軍事は政治の延長」という思想が前提となります。軍人はどうしても軍事的専門性や戦闘組織としての独自の価値観を優先しがちであり、かつ武力を持っているために、狭い視野から行動してしまうことを防止するための考え方でしょう。しかしながら、今の日本の政治・外交において、生命を賭けて、国家百年の計・ビジョンを持って対応する政治家がいるでしょうか。根本的なことは先送りにし、目先の国会対策等を優先した判断しかできない。

今回の件も、中国等との関係や野党の審議拒否を配慮したものでしょうが、「凛とした一本の筋」が通っていない国家が国際社会で信用されるわけがありません。野党からの追及を気にして、濱田大臣の田母神前空幕長に退職金返納を求める態度等は、情けなくなります。

政治目的が明確で、百年先はこうあるべきだから、今はこうするんだというようなビジョンがあれば、軍人も進んでその統制下に入るでしょう。今のような日本の状況では、とても生命を賭してまで職に励もうという気は起きないのではないでしょうか。また、マスコミや政治家が根拠としている「世論」。民主主義国においては大切でしょうが、アメリカのように高校生の頃から、ディベート等を通じて政治を真剣に考える風潮にありません。

東京裁判が何たるものかも知らず、雰囲気でマスコミに左右されている人が如何に多いか。明治期、大津事件でロシアの皇太子ニコライ2世を斬りつけた津田巡査を、大国ロシアとの戦争を恐れた時の政府は大審院(最高裁判所)に対し、死刑にするよう圧力をかけました。しかし、院長の児島惟謙は、将来の日本の司法の汚点になるとして断固としてこれを拒否しました。

ロシアともし戦になった場合、自ら裁判官を率いて戦う覚悟で、当時の刑法に則り、無期懲役にするという筋を貫き通しました。現在の政治家、シビリアンにこれだけの気概と展望を持った者がいるでしょうか?結果、日本は国際社会でも信頼され、不平等条約解消交渉にもプラスに働きました。

3 論文の届け出について。保全上の観点からも、広報上の観点からも、内規を含む現段階の法令で、論文等の発表を部外に発表する場合の届け出は、「職務に関し」という前提が付いています(陸上自衛隊のみ、達では「自衛隊に関することに関し」)。今回問題となった論文のテーマは、職務や自衛隊に関することに全く関係なく、憲法でも保障されている「思想の自由」の範疇です。この観点からも、懲戒処分等の責任を問うのはおかしいと考えます。
ただ、空幕長という立場上、政治に少しでも関連することは職務に該当するか否かが論点になると思いますが、防衛省設置法第21条:幕僚長の職務等、同23条:各幕僚監部の所掌事務を見ても、職務に該当する記述がないと考えます。多数の空自隊員が投稿したことが新聞等で問題視されていますが、上記の理由から何等問題ないと思われます。むしろ、使命感教育で、必要なこととも思えます。自国に対して、自虐的で誇りも持てないような自衛官が、自分が生命を賭けて国を守ろうとすると思うでしょうか。日本は侵略国家であったと言える自由な国、その自由という価値観を守ろうとしているのです。論拠に基づき、侵略国家でなかったという自由も保障されるべきでしょう。今回の件で、迎合主義の政治家が、軍人の個人的な思想そのものを抑圧しようとする方向に行かないことを願うばかりです。もし、そうなれば、事なかれ主義が自衛官の中でも蔓延し、給料分を越える仕事は一切しなくなるでしょう。なお、関連法令は、ネットでも検索できますので、抜粋します。

○ 保全関連
自衛隊法第五十九条:隊員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を離れた後も、同様とする。
2 隊員が法令による証人、鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表する場合には、防衛大臣の許可を受けなければならない。その職を離れた後も、同様とする。

○ 広報関連 (官広第814号 56. 2.23)
1 出版物、テレビ、ラジオ等を通じ、あるいは講演会等において、職務に関し意見を発表する場合は自らの立場と責任を自覚し節度をもって行うことは当然のことである。このことは従来よりしばしばいわれてきたところであるが、今後は更に、一層留意するとともに、発表に際してはあらかじめその旨を上司に届け出るよう改めて周知徹底されたい。
2 事務次官、防衛参事官、衛生監、技術監、施設等機関の長、各幕僚長、情報本部長、技術研究本部長、装備施設本部長、防衛監察監及び各地方防衛局長にあってはあらかじめ大臣官房長(大臣官房広報課長気付)に通報するものとする。(一国民)

⇒みなさんありがとうございます。田母神さんの件についてはその他にも多数のご意見を頂いておりますが、全てを掲載することはできません。悪しからご了解ください。お詫び方々、数値化した概要のみご紹介します。全受付確認数124件(11/9時点)(エンリケ)

田母神さんの意見に賛成だ:87%
反対だ:13%

田母神さんの処分に賛成だ:25%
反対だ:75%
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