▼次期アメリカ大統領は民主党のオバマ氏(外交と安全保障をクロフネが考えた)
ようちゃん、おすすめ記事。↓
▼次期アメリカ大統領は民主党のオバマ氏(外交と安全保障をクロフネが考えた)
4日に行われたアメリカ大統領選挙は民主党のバラク・オバマ氏が勝利し、第44代大統領に就任することが決まった。任期は2013年1月までの4年間である。オバマ氏について初めからレッテルを貼って決めつけるのではなく、これから彼が何をするかによって評価しようと思うが、まずは大統領選勝利に祝意を述べておきたい。さてオバマ氏が選挙戦で多用したワンフレーズは”チェンジ”だ。多くの人がつい忘れがちになるが、物事が変化する場合、良い方向へチェンジすることもあれば、現在よりもっと悪い方向へチェンジすることだってある。オバマ氏の場合”チェンジ!”とは言うものの、具体的に政策をどう変えていくのかはっきりせず、世界的なオバマ人気は、イメージ先行であったことは否めない。それではオバマ氏の所属するアメリカ民主党がこれまでどういう政策をやってきたのか分析すると、どうも信頼感に欠けると言わざるを得ない。確かにかかげる理想は良いのだが、あまり中身のない理想論にうわついて地に足がしっかりとついておらず、気がつくと世界がしっちゃかめっちゃかになっていて大迷惑か、逆に目的のためなら手段を選ばない行きすぎたマキャベリズムで世界がしっちゃかめっちゃかになって大迷惑という両極端に振れるケースが少なくない。現在進行中のサブプライムローン問題がきっかけで起こった金融不安を1929年10月の世界恐慌に見たて、オバマ氏を同じ民主党出身のフランクリン・ルーズベルト大統領に重ね合わせる人がいる。
ニューディール政策で有名なルーズベルト大統領だが、ニューディール政策は人々の経済に対するセンチメントをいささか好転させたかもしれないが、教科書に載っているほど華々しい効果があったわけではないと言われる。むしろ、世界恐慌後にとられたアメリカによるドルの事実上の切り下げとスムート・ホーレイ法に代表される極度の保護貿易からはじまった近隣窮乏化政策から完全に脱却できなかったことは、世界平和をリードしていくべき超大国の一つとしてふさわしいものではなかった。「1934年の互恵通商協定法でルーズベルト政権は自由貿易に転換したのでは?」と思われる方もいるかもしれないが、互恵通商とはいってもその目的は大不況脱出のためアメリカ製品の輸出を増やすことであり、当時アメリカの工業力・経済力は世界で圧倒的に強かったから、アメリカと同協定を結んで完全な自由貿易に転換すれば、ようやく工業が育ってきた新興国などはコテンパンにやっつけられるのは目に見えていた。
しかも、同協定が結ばれたのはアメリカの経済的従属地であり工業が未発達な南北アメリカ諸国が過半で、当時代表的な新興工業国だった日本は除外されていたのであって、アメリカによる近隣窮乏化政策が完全に終わったわけではなかった。1932年のイギリスによる保護貿易転換(オタワ協定)で世界の自由貿易は息の根を断たれており、日本・ドイツのような新興国は自らが生きるために自由に貿易できる相手を求めて、領土拡張主義的な政策を取るよう、ある意味追いこまれていった。そして保護貿易による近隣窮乏化政策が第二次世界大戦を誘発する大きな原因の一つとなったことを反省し、ルーズベルトとチャーチルは独ソ戦開始後の1941年8月、自由貿易・海洋の自由などをうたった大西洋憲章を発表したのである。
結果的に、米英仏と日独が大戦争をすることによって、英仏の大植民地帝国と保護貿易ブロック経済体制が崩壊し、世界は現在の自由貿易体制へと転換した。
保護貿易や通貨の切り下げ競争で近隣窮乏化政策をとると大戦争になってしまうよというのが歴史的教訓であるが、産業労組がバックにつく民主党がこの失敗の教訓からちゃんと学んだのかというと怪しい。(ついでに中国共産党も)直近の民主党政権であるクリントン政権は、1ドル80円を切るまでドルを切り下げ、スーパー301条を復活させて強硬な保護貿易政策に出たことは記憶に新しい。極度の円高によって日本の製造業がアジアへ生産拠点を移転しバブル崩壊以後の経済的停滞に拍車がかかる一方、アメリカ経済が強さを取り戻すと、クリントン政権は強いドル政策に転換した。日本の貿易政策にも問題はあったかもしれないが、日本人にとってアメリカから買いたいものがあまりなかったというのも事実であり、共和党政権も日本の対米貿易黒字にいらだっていたが、クリントン民主党政権による対日バッシングは常識を超えたひどいものであった。
有名な”年次改革要望書”(日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく要望書)を発明したのもクリントン民主党政権である。
97年のアジア通貨危機時には、アメリカのマスコミが「アジア通貨危機の原因は日本」「日本式経済モデル・東アジア経済モデルの終焉」と的外れな対日批判記事を書きたてるなど、クリントン政権下のアメリカ世論はほんとうに異様なムードであった。(その後の中国の高度経済成長を見て「東アジア経済モデルの終焉」を叫んだアメリカの連中は一斉にどこかへ消えてしまったが)歴史問題でもクリントン政権は中国の偏狭な民族主義者・江沢民とタッグを組み、日中間で既に平和条約が結ばれ請求権の問題も解決したにもかかわらず、ふさがりつつあった傷口をえぐりだすように、対日バッシングを繰り返した。
さて、オバマ氏をベトナム戦争敗北後に”人権外交”をひっさげて登場した民主党のカーター大統領になぞらえる人もいる。実際、オバマ氏の外交ブレーンにはカーター政権の人権外交を支えたズビグニュー・ブレジンスキー氏も入っている。だが、在韓米軍の撤退をかかげ、アメリカの一方的とも言える核戦力削減・CIAの規模縮小を実施したカーター政権は、モスクワや北京の独裁者達から平和主義者として尊敬されるどころか逆に「腰抜け」と侮られることになった。現在世界の安全保障を脅かしている災いの多くは、カーター政権の”人権外交”が元になっている。
イラン帝国は中東におけるアメリカ最大の同盟国であったが1979年にイスラム原理主義革命が起こり、カーター政権はなすすべがなくイランは中東最大の反米国に転換、イラクのフセイン大統領は革命直後の混乱をチャンスと見てイランを侵略、8年にも及ぶイラン・イラク戦争が始まった。この地域の不安定化は、91年の湾岸戦争や2003年のイラク戦争へとつながっていく。アフガニスタンでも同じ1979年に親ソ派のカルマルによる革命が起こり、「腰抜けのカーターは指をくわえて見ているだけだろう」と判断したソ連がカルマルを支えるため堂々とアフガニスタンを侵略し、それが現在まで続くアフガニスタンの破綻国家化のきっかけとなった。目を東に転ずると、中国が支援するカンボジアのポルポト政権が虐殺事件を起こしたため、隣国ベトナムが軍事介入しポルポト政権を打倒、ヘン・サムリン政権が成立した。
これを逆恨みした中国が1979年2月とつぜんベトナムを侵略して中越戦争が勃発した。
青臭い書生論のようなカーター民主党政権の人権外交は、ソ連や中国のような「軍事力こそ正義」と考える独裁国家からしてみれば「腰抜けアメリカの象徴」と映り、独裁国家が次々と戦争を起こし、革命騒ぎでアメリカの同盟国がひっくり返されてもカーター政権は無力なまま、ただ困惑するばかりだった。カーター氏と言えばクリントン政権の時に特使として北朝鮮を訪問、核を放棄するそぶりをみせた北朝鮮にまんまとだまされて経済援助と核開発継続の時間を与え、そのことが北朝鮮による核実験と核保有宣言を許すこととなって現在に至っている。
サブプライム問題による金融不安で衰退が指摘されてはいるが、依然としてアメリカは民主主義国家群の中で最大の国力を持っていることは否定できない事実である。バラク・オバマ次期大統領の行動がアメリカと世界の将来に大きな影響を与えるという意味で、彼の双肩に重い責任がかかっている。民主党の先輩がおかした失敗から多くを学び、アメリカ合衆国と民主党、そして世界を良い方向へチェンジしていってくれることを願ってやまない。どうもクリントン政権の時のスタッフがオバマ政権に多く採用されそうだとの報道があり、どうしても不安を感じてしまうのだが。
これは余談だが、NHK9時のニュースを見ていたら現地からオバマ勝利を伝えていた男性キャスターが完全に浮かれポンチ(今は誰も言わない<笑>)になっていた。オバマ氏に心酔しきったような恍惚の表情を浮かべる男性キャスターが、「金融不安のこの時期に大統領選挙なんかやっていて良いのか?」と質問して「こんなときだからこそ選挙をやらなくてはいけない」とあるアメリカ人が答えたという話を紹介していた。
NHKのキャスターのこの発言から、彼は日本でも今すぐ解散総選挙をすることを個人的に望んでおり、「金融不安のこの時期に解散総選挙をしている場合ではない」という世論の半分以上と、彼の願望に反してなかなか解散総選挙をしない麻生政権への公共の電波を私的利用したあてつけのように聞こえた。だがNHKキャスター氏の愚問すぎる愚問である「金融不安のこの時期に大統領選挙なんかやっていて良いのか?」も何も、第2期ブッシュ政権の任期満了が迫っていて、2009年1月から発足する新しい政権を決めるために、金融不安があろうとなかろうと大統領選挙をやるしか選択肢が無かったことは4年前から確定していたのである。
この点、来年秋まで任期を残し、解散総選挙をするか任期満了まで勤め上げるか選択肢が残されている日本の麻生政権とはまったく状況が違う。
だいたいNHK9時のニュースでキャスターの個人的願望なんぞ聞きたくは無いし、不偏不党の公共放送であるはずのNHKは事実をそのまま伝えればよいのであって、ある特定の方向へバイアスのかかった歪んだ報道をやることも許されない。それが嫌なら国民から受信料を徴収するのをやめてTVコマーシャルを解禁し、今すぐ解散しろと叫んでいる民主党のCMでも流せば良いだろう。かつては良質番組の代名詞であったNHKニュースも、近年の劣化は目を覆うばかりだ。それから、オバマ新大統領に対し「アメリカは核兵器を放棄して、覇権主義をやめてほしい」と呼びかける期待過剰の書き込みをネットで見かけたが、オバマ政権になってもアメリカが核を完全に放棄するということは99.99%無いと思う。