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頂門の一針

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オバマが勝ったから
━━━━━━━━━渡部 亮次郎

米大統領選挙は民主党の黒人候補オバマが4日(日本時間5日)、大勝利した。2008年3月初めには私のところにも、もともとヒラリーを降せないから「オバマは大統領にはなれない」とのアメリカ情報が届いていた。だからオバマの勝利は全く以って突如として起きた経済危機の所為である。「それでもオバマが勝てない理由」と言いふらしていたのは、アメリカの黒人保守論客シェルビー・スティールであった。「A Bound Man: WhyWe Are Excited About Obama andWhy He Can’t Win」の著者。スタンフォード大学のシンクタンク・フーバー研究所の研究員で、オバマの支持者なのだが、メデイアがオバマ優勢を言う中で冷静な分析をしていた。ヒラリーの反撃を早くから予見して、最終的には民主党大会でオバマは劇的な僅差敗北を喫すると断言していた。しかし、オバマはヒラリーを降して民主党候補に躍り出た。対抗馬は共和党の古参上院議員マケイン。ベトナム戦争で捕虜となりながら虐待に耐えた「英雄」。国家安全保障問題のベテラン、とされ、オバマは「未 経験者」扱いされた。スティールが指摘しているのは、アメリカで成功する黒人は「挑戦型」か「取り引き型」の2つのパターンだという。オバマは「取り引き型」、芸能人やスポーツ選手として白人社会に受け入れられている黒人の大半がこれに当てはまる。政治家としてはコリン・パウエル元国務長官を挙げている。パウエルは暗殺を恐れて大統領選挙への出馬を拒否した。

これに対して「挑戦型」はジェシー・ジャクソンやアル・シャープトンといった市民権運動指導者であり、政治家としてはシンシア・マッキニー、キャロル・モーズリー・ブラウンら。オバマの弱点は「取り引き型」なるが故に、白人社会に受け入れられ人気を得るための代償として政治的な意見を言うことがタブーになり、あたりさわりのない発言しかできなくなることにある。”変革”をいうが、内容がないにはそのためだという。選挙期間が長い米大統領選では、オバマの雄弁だけで支持者を引っ張り続けるには限界がある、とも言われた。具体的な政策・理念が欠けるというわけだった。スティールの論評とは別だが、オバマ旋風を見ているとジミー・カーターの再来という批評もあった。ジョージア州知事だったカーターは草の根運動で支持を集め、現職のフォードを破って大統領となった。ワシントン政治の経験がない全く無名の候補が熱狂的な支持を集めた背景には、ウォーターゲート事件による深刻な政治不信があった。対するカーターは素人故に「在韓米軍の撤退」など、出来もしないから約束を平気で言えた。就任後あっさり撤回した。今回、米国民はイラク介入で失敗したブッシュを見て、その失望の深さが裏返しとしての熱狂となり「最も経験のない」オバマ期待を高めているという。秋口ごろにオバマの弁舌は冴えを欠きそうになっていた。スティールの論評が当たりそうだった。

ところが、そこへ突然明らかになったのが経済危機。「経済」が主題となればマケインとオバマに差はなくなる。経済に無為無策だったブッシュ=マケインの図式はわかりやすかった。選挙戦の終盤になって、金融危機に対するオバマ氏のリーダーシップや提案が有権者から評価され、支持率が上昇した。ロイター電によれば、出口調査では、有権者の6割が最優先課題として経済問題を挙げた。とすれば、マケインは「お呼びでなかった?」だった。しかし、オバマへの支持は政策ではない。ただ未知であることへの期待である。だからカーターに似ている。そのカーターは大統領として有能ではなかった。イラン革命に対応できず、政治経験のなさをさらけ出して1期で共和党に政権を明け渡した。政治記者の先輩・古澤襄さん(元共同通信社常務理事)に教えられたことだが「国民の熱狂というのはその程度である。だから国民が全てを決める直接民主主義は危険だと昔から考えられている」。オバマとカーターの比較論は面白い。北米担当のわが外務官僚は「対日姿勢に大変化なし」とのコメントを首相の揚げているだろう。本当のことを言うと、中国にいびられるから言わないのだが、オバマのアジア外交は中国に重点があり、日本にはお座なりな付き合いしかしない筈である。
だから「大変化」が来る。
それでも国民を安心(油断)させるべく「大変化なし」と発表するのが「外交」。
それを信ずるのが馬鹿、信じないのが国民。2008・11・05
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ワシントポスト紙社説
━━━━━━━━━━翻訳:平井 修一
【2008年11月5日】
オバマ大統領多難なときの新しい指針、人種和解への新しい夜明け
バラク・オバマ氏がアメリカ合衆国の第44代大統領になる。数百万のアメリカ人とともに、我々はフレーズを味わい、勝者を祝福し、そしてこの結果の重要性に注目する。それが告げる世代の変化、それが反映する地政学的再編、それが認め、かつ約束する人種和解の進歩。この選挙には重大な意味がある。とりわけオバマ氏の勝利は、国を新しい、より良い方向へ導くために重大な意味がある。彼が昨晩言ったように、愛国心、奉仕、責任の新しい精神が染み込んだ方向だ。オバマ氏が取り組む難問を過小評価すべきではない。彼の対抗馬に投票した何百万ものアメリカ人との和解も含めて。彼の勝利は、ヴァージニアなど赤い(共和党支持だった)州を含めてほとんど全国的な支持に負っており、一つにはジョージ W. ブッシュへの不満と経済についての不安も追い風になった。しかし、国のあらゆる地域での彼の勝利は、新任の大統領に、ブッシュ氏が実践し、あるいはジョン・マケイン氏が説いたより信頼できる経済プログラムを提唱する機会を与えたいという有権者の意欲を示している。オバマ氏が支持者の間で生み出した興奮は、悩み分かれていた国を鼓舞し安心させる能力を示唆している。彼の効果的で、規律を守った、時に非情な選挙キャンペーンは、想像も及ばない複雑な問題に悩まされる政府を運営する能力を示唆している。そして、知性と雄弁のコンビネーション、コンセンサスに対する明白な素質とともに、彼が今非常に必要とされるリーダーシップを提供できるという望みを与えてくれる。オバマ氏はブッシュ氏の遺産を消すことはできない。しかし、彼には世界でアメリカの地位を改善する機会がある。同盟国の目から見ればこの国を貶めたような、捕虜の拷問と不明確な拘束といった有害な行為を終えることができる。

彼には、地球温暖化を減らす方向へ国をセットアップする機会がある。彼には、エネルギー、健康管理、教育に関する広範囲にわたる計画がある。しかしまた、経済の状態が彼の挑戦を遮るかもしれないという現実的な理解もある。我々(ワシントンポスト)が大統領としてオバマ氏を支持したとき、我々は人種に言及しなかった。人種が我々の決定な役割を演じなかったという単純な理由のためだ。オバマ氏は、2人の良い候補者の中でより良かったからだ。しかし、人種はこの瞬間に非常に意味を持つ。奴隷制度と差別の傷は決して消されることがない。神話的な「ポスト人種」時代へ国の進歩を記録することはできないできた。それでも、アメリカ人はアフリカ系アメリカ人の大統領の実現によって動かされないことがあろうか? 公民権法と投票権法が最悪のジムクロウ法(人種隔離策)を非合法化する前に、就学差別をやめさせる最高裁判所命令が至る所で戦われていたとき、多数の州がカンザス州の白人の母と黒人のケニヤの父の結婚を禁止していたとき、オバマ氏は生まれたのだ。ほとんどその時誰も、実際2、3年前ですら、この日を誰も予測しなかったのだ。負けた候補は、我々にとっては最も深い尊敬を抱く政治指導者の1人である。そして、マケイン氏の丁寧で雄弁な敗北宣言は「なぜ彼ほどの候補者が負けたのだろうか」と思わせるものだった。彼の人生体験は、彼の力のもとになっている。彼が遊説でしばしば言ったように、彼は大統領戦で負けることよりはるかに大きな試練に耐えてきたのだ。マケイン氏が戻る上院は、オバマ政権のスタイルと成功にとって重要な役割を演じる。

マケイン氏の昨晩の呼びかけ、「団結した善意と熱意」とオバマ氏への彼の誓約「我々が取り組む多くの難問を通してオバマ氏が我々をリードするのを全力で支持する」という言葉は、米国への奉仕においては超党派的に提携するという彼の歴史に沿ったものだった。オバマ氏はそれに答えて国民にこう語った。「私は今夜あなたに勝たなかったかもしれません、しかし、私はあなたの声を聞き、私はあなたの支援を必要とし、そして、私はあなたの大統領になります」それは厳しい選挙キャンペーンへの喜ばしい最終楽章であり、新しい政治時代にふさわしい前奏曲だった。
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ポッポ幹事長の与太噺
━━━━━━━━━━古澤 襄

<民主党の小沢代表は4日午後、衆院解散・総選挙の先送りにより政権交代への期待感がしぼむとの見方があることに対し「自公政権に対する不信感、不満は今後も変わることがない」と反論し、引き続き政権交代を追求すると強調した。同日午前の役員会では「年末、年明けまでには必ず衆院選はある。必ず勝利するとの気概を持って頑張ってほしい」と述べ、選挙態勢を緩めないよう幹部に指示した。(共同)>さもあろう。「年内に総選挙がある」と断言して民主党を引っ張ってきた小沢代表だから今更「見立が間違っていた」とは言えない。「年末、年明けまでには必ず衆院選はある」と言い換えるしかない。だが解散・総選挙を来年の四月以降にまで先送りされたら、選挙に強いという”小沢神話”も地に墜ちる。落選議員や新人が多い民主党は、いつあるか分からない選挙のために長期間も選挙態勢をとる資金的な裕がない。短期決戦で一気に雌雄を決するしかない。それを解散権を持つ麻生首相に読まれている。

小沢代表の選挙区である岩手四区でのんびりと温泉旅行を楽しんできた。地元では小沢氏の東京選挙区への国替え説を本気にする者は誰もいない。県道一号線沿いの両側には麻生首相と小沢代表のポスターがベタベタと貼られている。その間にまじって自民党から出る高橋嘉信氏のポスターが出ていた。「小沢の影に高橋あり」・「選挙の達人」・「自由党の軍師」と言われた小沢側近の高橋氏だったが、岩手四区から小沢氏の対抗馬として出馬する。小沢氏以外の民主党候補なら高橋氏にも勝機がある。小沢代表の東京選挙区への国替え説は、ポッポ鳩山幹事長が話題作りで勝手に作ったヨタ話というのが地元のもっぱらの見方である。新聞やテレビが飛びついて話題が先行してしまったが、当の小沢氏は何も言っていない。それよりも岩手2区で激しい前哨戦が始まっていた。小沢氏の金城湯池である岩手といわれるが、鈴木善幸元首相以来の自民党の堅い地盤がある2区だけは攻め落とせないできた。息子の鈴木俊一元環境庁長官が孤塁を守ってきている。

麻生首相の夫人は鈴木善幸元首相の娘さんだから鈴木氏とは義理の兄弟関係にある。麻生政権になって鈴木氏の岩手2区は安全圏かと思うと逆である。小沢氏はその面目にかけて岩手二区の攻略戦を始めた。その狙いは2つ。麻生首相の義理の兄弟選挙区を攻略することによって、麻生人気もたいしたことはない、という風評を広める政治的な効果が生まれる。身内の選挙区に麻生首相があまりかかわれば、自民党内から批判が巻き起こる。

もうひとつは岩手2区を制覇することによって、岩手県は全選挙区を小沢が握り、名実ともに小沢王国ができる。小沢氏の東京国替え説よりも岩手2区の攻防戦の方が大きい話題なのである。激しい小沢民主党の攻勢に対して危機感を持つ岩手自民党では「麻生首相がついているから、比例順位で優遇して貰える」というムードが早くも出ているという。これは逆ではないか。もし岩手の選挙区で自民党が比例順位で優遇措置をとるのなら、岩手4区に果敢に斬り込んだ高橋嘉信氏を優先させるべきであろう。岩手2区の鈴木俊一氏に比例順位で優先したら、戦わずして岩手民主党に城門を開くことになる。身内を優先した麻生首相に対する批判も党内。
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