「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」11月6日(木曜日) | 日本のお姉さん

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」11月6日(木曜日)

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」平成20年(2008年11月6日(木曜日)
         通巻第2375号 

 リベラル派のオバマ当選を市場は暴落で“歓迎”し、
  ロシアは露骨な反米軍事行為で“歓迎”し
、米国の衰退予兆から現実の問題へ
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予測通りバラク・フセイン・オバマ上院議員が次期米国大統領に選ばれた。予測を外したのはランドスライド的(地滑り)圧勝とはならず、マケインが意外な善戦をしたことである。 得票差わずか6%。共和党の草の根の底力が各地で、リベラルな人物を歓迎していないことがわかる。もっとも典型的に荒っぽくオバマを“歓迎”したのは市場だった。ウォール街はオバマ当選による米国の力の衰退を見据えて、500ドルの株価暴落で反応した。(きょうの東京市場も相当の反落を示すだろう)。

さてロシアがどう出たか。
なんとドイツの目と鼻の先に、ミサイルを配備するという発表を行い、オバマ次期大統領の当選を荒々しく{歓迎}した。ロシアの飛び地カリニングラードはポーランドとリトアニアの間に挟まった飛び地、軍事基地でもある。米国はポーランドへMD配備を決めているが、ロシアはこれに対抗するためのミサイルをカリニングラードへ配備し、露骨に米国に対抗する。それもオバマ当選その日に!

バラク・フセイン・オバマ新大統領に期待する向きが日本でもあるが、1977-81年のカーター大統領のときのように米国の世界戦略は四年間の弱体、もしくは衰退に見舞われ、同盟国が周章狼狽する場面が今後多くなるだろう。「外交空白」となる次の四年間に、日本は対米外交の基本的な見直しを迫られることになる。


  ♪(読者の声1)今回の航空自衛隊の空将の論文の問題は、手続き上の問題ではありません。内容の問題です。ただし、マスコミ、防衛省、内閣は内容では争えないので、手続き面を問題にしているのです。今回の田母神論文が、いわゆる「村山談話」を踏襲した内容のものであったならば、話題にもならなかったでしょうし、処分もあったかどうか疑わしいと思います。(T33) 

(宮崎正弘のコメント)更迭するべきは防衛大臣と、ついでにかの無能な日銀総裁です、よ。

♪(読者の声2)貴誌で話題となった軍票のことですが。終戦時軍票を軍の資産を売って回収しようと日本軍がしていたことは、どの本か雑誌か記憶にありませんが、経理担当の将校が書いたもので読みました。軍票を使ってくれた現地の人に報いようと準備していたところ、実行できなくなり、残念であったことがかかれてありました。これこそまさに大和魂ですね。 (ST生、神奈川)

(宮崎正弘のコメント)馬鹿正直なほどの愚直さもまた大和魂です。

♪(読者の声3)先般(31日)の三島研は佐藤優さんの絶好調、楽しく拝聴できました。話題の田母神俊雄氏の論文は、利用の仕方を工夫すれば日本人を所謂東京裁判史観の呪縛から解放し正鵠な近現代史を広く知らしめる強力なツールになりえるかと思われます。とくに米国の教育的指導に従順で近隣諸国に謝ることがお好きな政治家やメディアに漠然とした不可解な思いを抱いている多くの一般国民に田母神論文を読んでもらうのは、目から鱗となるコンパクトで優れた近現代史入門になるかと思われます。筆者が国家防衛の中枢を担う責任者時の論文ゆえ、歴史家や評論家などのインテリや学者の論文より国民に対するインパクトは強烈です。田母神氏も官から晴れて民になったことですし、一般国民の間、および関係諸外国との自由闊達な議論の材料として、氏と協同で保守系陣営から下記の情報を提供するのは如何でしょうか。

!) 小・中・高校生向けの田母神論文の解説絵本の上梓。
!) 真正保守の歴史認識による近現代史辞典の上梓。
!) 田母神論文の解説ホームページの開設。
!) 田母神論文冊子の無料配布。(趣旨賛同寺社・企業・団体との協同)
!) 田母神論文と村山談話・河野談話との比較考察書の上梓。
!) 田母神論文に対する内外主要メディアの反応の冷徹なる分析・考察。
!) 小学生にも分かり易い、自虐史観で内閣を攻撃する野党・メディアと自虐史観に閉じこもって攻撃をかわそうとする政府の閣僚の構図に陥った滑稽で悲惨な戦後政治外交史を物語風に解説。近所の中学2年生の女の子で、「日本は太平洋戦争で外国に悪いことをしたので、日本は軍隊をもってはいけないと憲法で決められていて、自衛隊は軍隊ではありませんと先生は教えてくれた。でも、もし外国が攻めてきたら軍隊ではないのに自衛隊員のお父さん達は、突然死ぬかもしれない戦争のお仕事をするようにと命令されるのは嫌(心外)だろうなあ。」と誇りなき軍人による国防への疑問を素朴に推量できるまともな女の子も育っています。論壇誌や国会での熱い議論の期間はせいぜいウワサ同様75日乃至90日程度でしょうか。この際肝心なのは、典型例で言えば、自宅で朝日新聞、学校で自虐日本史、会社通勤で日経新聞、テレビのニュース、ワイドショー漬けの江藤淳氏のいう「閉ざされた言語空間」、あるいは安倍元首相のいう「戦後レジーム」空間にて日々暮らすリベラル乃至中間層の老若男女向けに正鵠な歴史認識情報を分かり易く、受入れ易い形で継続的に繰り返し提供することだと思います。田母神論文は、保守系メディア人にとってビジネス拡大の良い機会とも捉えていますが、ともあれ、国家・国民のための正鵠な歴史認識を回復できる絶好の機会到来を感謝しつつ、つくる会の躓きを糧にこの機会を生かし”定本国民の歴史”に育て上げることができれば、昨年来忘れつつある戦後レジームからの脱却も自ずと成し遂げられるかと思われます25日の憂国忌は参加の予定ですのでよろしくお願い致します。朝夕冷えが深まる季節、ご自愛しつつご活躍の程を。(KU生、世田谷)

(宮崎正弘のコメント)ちょっと講演旅行が続き、世間の動きから遠く、田母神論文の反響を詳しく知りませんでした。貴重なご提案ありがとう御座います。

♪(読者の声4)貴コメントに「まるっきり反対のコースを同時に用意している。孫子いらい、それが中国的生き方の基本でもあるが。。。。」
とあります。こういう解釈のできる貴台の見識に敬意を表します。これと、NY紙11月3日付の分析を合わせて考えると、興味深いものあり。結局、貴台が以前に想定した米国の対中態度によっては、中国の正反対のコース選択という悪夢もあり得る、と考えてよろしいか?
可能性の程度は別にして、です。
(SJ生)

宮崎正弘のコメント)米中蜜月は、オバマで確定的になりますが、逆に北京コネクションは共和党のほうが強くなった。面妖な事態が、これから輻輳しそうですね。

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♪(樋泉克夫のコラム)【知道中国 194回】                   
――胃袋はウソをつかない
『中国料理の迷宮』(勝見洋一 講談社現代新書 2000年)
この本を読み進むと、いつしか行間からミジンに刻んだネギ・ニンニク・生姜を炒めた香ばしい油の匂いや醤油の香ばしい薫りを感じてしまう。
厨房の喧騒、鍋の下の紅蓮の炎があげる轟音、高級料亭の華やぎから屋台を包む街角の雑踏、はては料理を待ちわびる人々が堪らずにゴックンと鳴らす喉の音が聞こえてくるだけでなく、時に名人上手が丹精込め手作り上げた旨い賄い料理からアツアツの豪華料理までが眼の前に浮かんでくる。

1949年に東京の新橋で代々続く美術商の長男として生まれた著者は、文革初期より北京中央文物研究所に招かれて美術品鑑定の作業に当たる。当時の北京に招かれたというからには、さぞや過激な文革礼賛者で熱烈なマオイストと思いきや、さにあらず。文革が「文化の攪拌と規制の価値観の崩壊」を招き、「全中国人を無知な農民にし、経済基盤を三国志の時代に帰してしまった」と断罪する一方、「ともかくも食生活と食文化で言えば、コンプレックスを植え付けられかねない状況に生まれ住んだ毛沢東は終生、食生活を革命することなく、因習にとらわれながら故郷の田舎の味だけを食べ続けた」と、食生活に限ってはいるが毛沢東を「洗練されてない」と切り捨て、返す刀で現代中国において“聖人”と崇め奉られている周恩来を「毛沢東専任の総務部長のような役職を果たす宰相」と一刀両断。

著者は「要するに、漢族の味は他民族によって解体され、さらにまた統合して現代に至る中国料理の味覚を獲得した。またその漢族の味はモンゴル族、回族と同化して広大な国土を統治しようとする多民族の歴史であり、世界的にも例のない進歩過程」を経て現在に至ったもの。
「その料理はひとつの流れとしてまとまるのではなく、ほかの隣接した地方とまじり合い、共鳴しあって、境界線を滲ませていく」とする。ならば周辺を侵食し膨張を続ける漢族の歴史こそが「漢族の味」を生んだと考えられる。

北京の古い街並みを散策しながら、政治と浪費の皇都で生まれた北京料理の歴史と変遷を語り、文人墨客や京劇の名優たちが遊んだ名物料亭の来歴を尋ね味の秘密を解き明かす。老便宜坊の北京烤鴨、正陽楼の清蒸蟹に姜味蟹、東来順の羊肉、酔瓊林の五柳魚、恩成居小吃館の炒牛肉絲――こう並べただけでも涎がでてきそうだが、この本の面白さは共産党が「漢族の代表として、そして全中国のほとんどを占める農民の代表として君臨する」ことになって以後の中国料理をめぐっての奇想天外なドタバタ劇にこそある。

たとえば文革期。清朝の乾隆帝がたった一人お忍びで来店したという伝説で知られる焼売の老舗・都一処は料理の「り」の字も知らない小僧っ子たちの紅衛兵に占拠され、なんとも無粋な燕京焼売館革命委員会によって管理され、「労働人民の搾取の象徴」「資本家の牙城」と糾弾されたという。もちろん天下第一の焼売など食べられるわけがない。毛沢東のお墨付きをタテにした紅衛兵の波状攻撃を受けた名店でもトウモロコシの饅頭にスープの「労農兵メニュー」を作らざるをえなかった。筆者は当時を「旨いものなど絶対にでてくるわけはない」と怒りをこめて振り返るが、やはり彼らの“持ち味”である「旨いもの」への飽くなき欲望を失くしたら中国人ではなくなってしまうようだ。「中国人は今も昔も自分が生まれ育って食べてきた、非常に幅の狭い食文化圏から離れられない民族である」とは、中国人と中国文化に対する著者の率直な思いだろう。《QED》
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