▼オバマ次期大統領は、覇権国家米国の「ラストエンペラー」となるか?(じじ放談) | 日本のお姉さん

▼オバマ次期大統領は、覇権国家米国の「ラストエンペラー」となるか?(じじ放談)

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▼オバマ次期大統領は、覇権国家米国の「ラストエンペラー」となるか?課題山積のアメリカ丸は座礁する可能性が高い。(じじ放談)
「希望と変革」のオバマが米国次期大統領に選出された。筆者はオバマが多民族共棲国家米国を築く礎となってくれると期待していたから、本来であれば熱狂せる米国民と共に喜びを分かち合うべきである。だが、筆者は今「複雑な心境」にある。心の底から喜べない。タイミングが悪すぎるというか、福田康夫が語った「貧乏くじをひいた」という懸念を拭い去ることができない。米国は100年の一度の経済恐慌に突入しつつある。金融機関はほとんど破産状態にあって莫大な公的資金が投入されつつある。GMを初め自動車産業は破産寸前にある。金融収縮による貸し渋り、貸しはがしが中小企業の倒産を加速させ失業者が急増している。ローンの貸出し条件が厳格になったことで住宅や自動車の売れ行きが大きくダウンした。消費マインドも大きく減退している。米国のデフレは加速している。法人税や個人所得税も大きく減るはずだ。米国の財政赤字は年間2000-3000億ドルといわれた。貿易赤字は年間約7000億ドルもあった。米国は世界最大の債務国になった。とっくの昔に債務不履行(デフォルト)になるべきところ、ドルが基軸通貨であったことと、複雑な金融技術で粉飾した「魅力ある金融商品」を陳列し、世界中から年間約8000億ドルの資金を呼び込むことに成功した。かろうじて国家破産を免れてきた。

オバマの主要な公約は以下のとおりである。(11月5日付け日本経済新聞・夕刊より抜粋)
1・税制改革・・・勤労者世帯の95%に所得税減税
2.金融・住宅政策・・・資本注入を支持。住宅差し押さえに3か月の猶予期間
3.通商政策・・・自由貿易協定に慎重
4.イラク政策・・・16か月以内に部隊を撤収

第1:中間層・低所得層に対する所得税減税
どの程度の規模か不明であるが、相当大規模な減税を行うはずである。数百億ドルの減税では「焼け石に水」ではなかろうか。住宅バブルの崩壊で、中間層以下の家計はダメージを受けている。さらに、企業倒産に伴う解雇の急増、リストラや一時休職による収入の減少で家計は大きく傷ついている。長期失業者は所得がないから減税の恩恵が及ばない。

第2:金融機関への公的資金の注入と差し押さえの3か月猶予
金融秩序を維持するために7000億ドルの公的資金注入が決定された。米国の金融機関は「時価会計ルール」を守れない状態にあるというから、どれほど資本が毀損しているか分からない。「不良債権や含み損が大きすぎて開示できない」ということだろう。真実を開示すれば、全米の銀行で「とりつけ騒ぎ」が発生し、銀行閉鎖に追い込まれると懸念しているのであろう。米国型金融資本主義は「金融派生商品(デリバティブ)」なる詐欺的商法を生み出した。デリバティブの解説書を読んでも理解できない位「ややこしい」仕組みだ。デリバティブ取引残高は、1兆円の1万5000倍から2万倍(1.5京円ー2京円)という天文学的なものである。しかも、デリバティブ取引の損失がどの程度あるのか、未だ開示されていない。仮に、デリバティブの焦げ付きが10%だとすると、1500兆円から2000兆円、5%でも750兆円から1000兆円になる。米国の国家予算の数年分が吹き飛ぶ。デリバティブの一部が焦げ付いているとして、誰が被害を受けるのか不明である。誰も口を閉ざしてモノを言わない。「死んでも言えない」ほどに恐ろしい事態が発生しているということだろう。住宅価格の暴落で、差し押さえられる危険性が高いサブプライムローン残高が150兆円といわれた。さらにプライムローン残高が約1500兆円程度あり、差し押さえ物件が急増している。競売に付される住宅物件は増えることはあっても減る見込みはない。つまり「売り手が多く、買い手が少ない」から、住宅価格が上昇に転じる見込みはない。失業者が増え、給料も下がるから「住宅ローンを返済できず」差し押さえられる人間は増える一方だ。オバマの公約「差し押さえの3か月猶予」など、問題を3か月先送りするだけで庶民の生活擁護にはほとんど効果がない。3か月後にローンの利子を払えるようになると期待する馬鹿はいない。

第3:通商政策・・・自由貿易協定に慎重
米韓の自由貿易協定は両国が合意し批准の一歩手前である。オバマは米韓自由貿易協定に反対していたから「ふりだしに戻る」のではないか。オバマの通商政策は1929年世界大恐慌時のフーバー米大統領と同じく「保護貿易主義」を採用するのではないか。輸入品に対する課徴金をかけるか、商品ごとに高率関税をかけて輸入を抑制し、米国産業の育成、雇用の創出並びに貿易赤字の削減を図るつもりではないか。米国企業を保護し、米国勤労者の仕事を確保する政策である。自動車産業を初め米国製造業の復活と再生を狙う。オバマが「国益第一主義」で通商政策を強行した場合、米国への輸出で食べていた中国、韓国、東南アジア、EUそして日本の輸出は大きく落ち込む。これらの国々では過剰設備を廃棄し、大幅な人員削減で生き残りを模索することになる。失業者が街にあふれる。作っても売れないから、「縮小再生産」のデフレスパイラルに陥る。これまで、「米国の浪費に依存してきた」国家は、国内消費を高める政策に転換せざるをえない。我が国は、中東諸国・ブラジル・中国・ロシア・インド・東南アジアそして独仏等と連携して、新しい市場を創出し生き残りを模索するほかはない。世界中が「米国依存」から脱却し、新たな世界市場の構築を目指す。結果、米国は名実ともに、「世界に必要とされない米国」となる。米国が「友達を募集しても」誰も相手にしない。

第4:イラクから16か月以内に米軍を撤退させ、アフガンに兵力を集中させる戦略
米軍のイラク駐留を保障した国連決議が本年末で期限切れとなるからブッシュも慌てている。何とか「日米安保条約」のような米国とイラクの二国間軍事同盟を締結したいとあせっている。しかし、イラク国民を初め周辺諸国は「米軍の無条件・早期全面撤退を願っている」から、傀儡政権のマリキ首相も簡単には妥協できない。幸運にも「イラクから16か月以内に撤退させる」と主張したオバマが次期大統領になるから、イラク側も粘るのではないか。中東に拠点を残しておきたいブッシュは、大統領任期中に何とかして「米軍が継続して駐留できる」二国間軍事同盟を締結したいと考えている。これから約1か月半が勝負となる。オバマが「アフガンに兵力を集中し対テロ戦を継続する」というのは理解できない。アフガンの現況は、イスラム諸国の義勇兵が加わっているタリバンが、全土を掌握する勢いにある。タリバン等のゲリラとの戦闘に従事するのは米英軍だけで、独仏などのNATO軍はアフガン国軍の教育と後方支援任務だけである。度重なる米国の増派要請に対し独仏は消極的な対応をとって時間稼ぎしている。オバマがイラク駐留米軍を撤退してアフガンに振り向けた場合、つまりアフガン派遣米軍を約10万人増強したとする。我が国の国土の2倍以上あるアフガン、山岳地帯が多いアフガンにおいて、米軍を10万人増派してタリバン等との対ゲリラ戦を戦った場合、勝ち目があるのだろうか。旧ソビエト連邦軍はアフガンの隣国であるから武器・弾薬・食糧の輸送も比較的容易であった。だが、タリバン等との対ゲリラ戦で消耗し国家崩壊の原因をつくった。旧ソビエト連邦と同じ過ちを、オバマの米国は繰り返すのであろうか。賢者の判断とは思えない。愚策である。米民主党は「日本は最も頼りになる同盟国である。アフガン戦争に、さらに協力してもらいたい」とエールを送っている。「アフガンへの経済支援を年間数千億円に増額した上で、自衛隊の派遣もお願いしたい」といっている。米民主党も当然の権利を行使するかの如き厚かましい態度で、我が国に「アフガン戦争支援」を求めている。

日米軍事同盟がプラスであった時代は冷戦終了と共に終わった。徐々に「マイナス」が大きくなっている。

当てにならない「核の傘」を見せびらかして、しかも我が国を保護国に留めておくとの米国の一方的都合で締結した日米安保条約を「存続させるか否か」について国民的議論を起こしてもよい時期ではないか。米国から「骨までしゃぶられる」前に何とか対策をとるべきである。

(まとめ)
オバマは米国発世界大恐慌時の大統領になる。米国の金融危機の闇は深い。現在、表面化している問題は氷山の一角に過ぎない。5日付け日本経済新聞・夕刊によると「米民主党ペロシ下院議長ら首脳は、ビッグ3に対する2.5兆円のつなぎ融資を検討している」とのデトロイト・ニュース電子版を紹介した。ビッグ3を初め「大きくて潰せない製造業」に対しこれからも「財政破たん」を無視した公的資金の注入を続けるのではないか。「地域経済の維持と雇用確保」を理由とする国有化政策が断行されるのではないか。5日午前、来日中のロシアのラブロフ外相と中曽根外相が会談し「金融危機に連携して取り組む。北方領土問題も協議する」ことで合意した。(5日付け日本経済新聞・夕刊)
同日、ロシア極東軍管区司令官ブルガコフ陸軍大将が北海道・北部方面総監部を訪ね酒井健陸将ら幹部と意見交換した。陸自とロシア地上軍は平成15年以来、両部隊の指揮官が相互訪問し交流を行っている。相互訪問は5回目。ブルガコフ陸軍大将は「北部方面隊との軍事レベルでの交流は重要であり、両者は今後とも友好関係を促進していくことで認識が一致した。(5日付け産経ニュースより抜粋)なお、中国海軍が我が海上自衛隊との相互訪問、交流、合同演習に積極的に乗り出しているのは周知のとおり。我が国周辺の軍事同盟・軍事協力関係が騒がしくなった。

当面、我が国は「日米同盟堅持」という看板を掲げつつ、目立たない程度に「インド、ロシア、中国そしてベトナムなど」との軍事交流を行い連携を強めておくべきだろう。「日米安保条約の終了通告」を行う場合、周辺諸国との関係改善は欠かせない。米国の脅しに屈しない経済的・軍事的・政治的環境を整えておくべきだろう。オバマは金融危機と大恐慌が発生したから「大統領になれた」ともいえる。大恐慌時の大統領に就任する宿命(さだめ)であったのかもしれぬ。これから4年、おそらく襲いくる経済危機の大波に翻弄されるはずだ。オバマが道半ばで「暗殺されないよう」そして、大津波に巻き込まれ「難破しないよう」念じたいと思う。オバマが幸運の女神に助けられ、大恐慌を乗り越えた場合、米国社会は「多民族共棲国家」に生れ変わる。ただし、北米大陸の大国として。