「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成20年(2008年)10月23日(木曜日)
通巻第2358号 (10月22日発行)
「反米症候群」の三カ国も経済の急激な頓挫で陰り
“ヤンキー、やっつけろ”のチャベス(ベネズエラ)は意気消沈、イランは「アメリカ資本主義の終わり」を宣伝。ロシアは不気味な沈黙。
*********************
▲反米トリオに夕日
アメリカを「悪魔」と呼んできたイランのアヤトラ・ハタミ師は、テヘラン大学における宗教説話の席で、
「世界的な金融危機はアメリカの!)強い権力欲!)が経済津波を惹起したのであり、!)リベラルな民主々義!)がもたらした結果だ」とした(10月17日)。
ハタミ師はさらに「アメリカの敗北はリベラルな民主々義の『道義』の敗北であり、欧州はアメリカと距離をおけ」と余計なアドバイスを欧州に向けて発信した。
しかし反米の意気はさっぱりあがらない。
イラン国民は30%のインフレと近く予定される消費税の引き上げに不満をくすぶらせている。
ベネズエラは反米路線を顕示して中南米のリーダー格として急浮上し、チャベス大統領は自らを「マオイスト」と自称、頻繁に北京に通い、またモスクワへも足繁く訪問して武器購入を続けてきた。
その武器代金が滞りそうだという。
チャベスは中南米では人気者だ。反米の朋友達、とくにニカラグアへは巨大な経済援助を約束し、キューバにも精油所を建設し、ボリビアのモラリス大頭領を弟分と扱ってきた。
モラリスは駐在米大使を追放するほどにチェベスの子分として従った。替わりに彼がえたものは経済援助だ。
ところが過去三ヶ月、産油国を襲っているのは逆オイルショックである。この間に、原油代金は147ドルから74ドルへの急落した。ベネズエラもイランも歳入の殆どを原油輸出に依存し、ほかにこれといった輸出品目がない。
イランはピスタチオ、ベネズエラはほかにバナナ?
原油急落は、ぴかぴかの繁栄を謳歌してきた急成長=ドバイの摩天楼計画にさえ、影を投げた。夕映えのつぎは夜を迎える。
ベネズエラは野心的で放漫会計の援助プログラムの見直しを迫られた。9月にベネズエラはカリブ海でロシア艦隊と協力し海軍演習をおこなった。「ヤンキーは打ちのめしてやる」とチャベスは豪語していた。
そのベネズエラは国家予算を原油代金の高騰に比例して23%増やした。インフレは36%に達して国内不満が高まり、チャベスはそれを強圧政治と軍事弾圧で野党をつぶしてきた。
ニカラグアは1980年代に誕生したサンディニスタ=反米政権が、紆余曲折はあるもののレーガン時代から続いており、チャベスは救世主だった。
しかし、精油所プラント建設に40億ドルが約束されたが、振り込みがなされず、プロジェクトの延期が発表された。
▲イランは一バーレル=81ドルが下限
もう一度、イランに話を戻すと、最近、アハマドネジャット大統領の反米演説にトーンダウンの気配はないものの、元気がない。
世界第弐位の石油埋蔵をほこるイランは、米国の制裁をうけて、経済的に忍従を強いられて撃たれ強くなっているため、こんどの金融危機による世界同時不況、購買力減退にさほどの影響を受けないかに見えた。
「しかし原油代金の減少は国家収入の減少をもたらし、確実にイラン外交に変化を強要するだろう。専門家の計算ではイランの予算、とくに宗教政権を支える人々への優遇政策を維持するためには、一バーレル=81ドルが下限で、原油価格低迷が長期化すれば、おおきなブローがイランの宗教政権に吹くだろう」(NYタイムズ、10月22日付け)。
とりわけハマスやヒズボラといったテロリストへの軍資金提供に支障がでる。
それは産油国、とくにアラブ政治におけるイランの覇権を弱体化させ、UAEやサウジアラビアにとっては欣快な事態である。
とろろで蛇足ながらイラクは潜在的にはサウジに次ぐ原油埋蔵を誇るが、すでに十数年にわたる戦禍で、地雷が埋まった鉱区開発も遅れており、かろうじて一日200万バーレルの生産。
まだ世界の石油地図を塗り替えるほどの力量はない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成20年(2008年)10月22日(水曜日)弐
通巻第2357号
△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△
世界同時不況は中央アジアにも大津波をもたらしている
日本では等閑視されているカザフスタンとその周辺の不況入り
***************************************
金融危機は中央アジアの経済にもかなり大規模な地殻変動をもたらした。
この地域の経済的覇者は、オイルリッチのカザフスタンである。もともとソ連の衛生国家だったので、日本人にはなじみが薄いが、91年に独立以来、この国を統治しているのはナゼルバエフ大統領とその一家。
独立直後は日本に資金と技術の提供をよびかけ、ナゼルバエフは何回か日本へ来た。
日本とはウラン鉱脈の開発を原発技術提供とバーターで行うため、二年前から日本の政治家、商社マンもさかんにカザフスタンを訪問しているが、ロシアにはかなわない。メドべージェフ大統領は就任直後、初めての外国訪問をカザフスタンとした。
従来の原油買い上げばかりか、将来はカザフのウラン鉱脈開発を狙っているからである。
カザフスタンは石油とガスの天然資源に恵まれ、いきなり大発展を遂げた。
原油の高騰が原因である。
カザフスタンはまず南の隣国キルギスへ果敢に投資し、セメント工場などを開いた。麺類の工場や、観光地として世界的に有名なイシク・クル湖湖畔のホテル開発などに5億ドル近くを投じたが、それはキルギスに投下された投資の四割をしめる。実際に筆者もカザフスタンとキルギス両国を取材して、その主従関係的な経済の対比を目撃した。カザフスタンの前首都アルマトゥには豪華ホテル、ルイビュトン専門店。レストランも豪華で、人々は繁栄に酔っていた。
カザフスタンは西の隣国ウズベキスタンへも14億ドルを投資したほか、注目はグルジアへの投資なのである。
ロシアと軍事的に対立するグルジアへ電信テレコム企業への出資を皮切りに港湾施設改良、穀物ターミナル建設、首都トビリシには豪華なラディソン・ホテル建設など合計20億ドルをカザフスタンが投資したのだ。
▲ロシアの権益圏をかき荒らすかのように
さらにウクライナへ12億5千万ドル,トルコへ10億ドル。
遠くルーマニアの精油所建設へ27億ドル、リトアニア、チェコのガソリン・スタンド・チェーンにも果敢に投資を繰り返したが、これを目撃したフランスは首相を派遣してナゼルバエフ大統領とその一家にフランスへの投資も呼びかけるほどになった。
そして旧宗主国ロシアへは新都市コンスタンチノーボ建設のために、実に50億ドルをカザフBTA銀行を経由して投資を敢行した。
建設業者もカザフ系が多い。
最大の注目はカザフスタンの国家ファンドである。
いまやその規模は276億ドル。これが原油一バーレル=70ドル台が維持されれば次の五年間に1000億ドル規模への躍進し、この財力をなんと中国のCITIC(中国国際投資信託公司=国務院直営企業)と組んで、カナダ、豪州の鉱区開発へ投下しようとしているのである。
そして金融危機と原油の暴落がおきた。中央アジア経済にも冷風が吹きすさむ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(読者の声1)世界恐慌についての先生の一連のご分析は実に冴えていると思います。まさに暗黒の混乱を照らす一つの灯台です。
さて、以下のご意見に賛成ですが、一言。
貴誌2356号(読者の声1)チベット・モンゴル・ウイグル三民族連帯シンポジウムおよびデモhttp://3natioco.web.fc2.com/
世界でも初めての試みであった「3民族連帯シンポジウムおよびデモ」は予定通り執り行うことができました。10月18日のシンポジウムには200人を超える方々が参加くださいました。他人の国を侵略した中国政府が、現地でどのような支配をしているのか、チベット、モンゴル、ウイグルの代表によって詳しく説明されました。中国政府による残酷な支配をやめさせるためには3民族が連帯していかなければならない、ということを確認しました。またアジアの民主主義の先進国である日本は、彼らを助けていく道義的義務があることを確認しました。19日のデモには250人の参加者がありました。<引用終わり>
意見:「アジアの民主主義の先進国」というご意見は、「アジア諸民族の自由と独立」に代えて頂きたいと思います。というのは、日本の大東亜戦争がアジアの植民地の独立支援であり、大きな成果を挙げたからです。
また「民主主義」と言うのは意味不明の用語で共産主義の独裁者も民主主義者を自称しています。日本が欧州における英国のような立場が取れるように早く核武装したいものです。
(MARU)
(宮崎正弘のコメント)胡錦涛の言う「先進的文明」「科学的文明観」という語彙には、かならず「共産党の指導」という前置詞があり、習近平のいう「三真主義」は「愛民」が第一義などと獅子吼していますが、これは「三嘘主義」。
♪
(読者の声2)今回の金融事件が大規模になった原因の一つは、金融活動が世界的に連結されていたことがあると思います。
この結果米国のトラブルが印度にまで及んだわけです。
これは、「一つの籠に全部の卵を盛るな」というリスク分散の原則に反していたと思います。
したがって今までの世界規模の経済活動は地域とか結局、国家ごとの経済管理が可能な規模とシステムに縮小・分散されるのではないかと思いました。
(MO生)
(宮崎正弘のコメント)理論的にはそうですが、飛行機の発達した現代の地政学は、ブロック化や鎖国化を一方においては不可能にしている。縮小方向には行かないのではありませんか?
宮崎正弘の新刊
『中国がたくらむ台湾沖縄侵攻と日本支配』
KKベストセラーズ 1680円、ハードカバー
宮崎正弘『トンデモ中国、真実は路地裏にあり』(阪急コミュニケーションズ)
(全332ページ、写真多数、定価1680円)
宮崎正弘『北京五輪後、中国はどうなる』(並木書房、1680円)
宮崎正弘・黄文雄共著『世界が仰天する中国人の野蛮』(徳間書店、1575円)
宮崎正弘のロングセラー
http://miyazaki.xii.jp/saisinkan/index.html
『崩壊する中国 逃げ遅れる日本』(KKベストセラーズ、1680円)
『中国は猛毒を撒きちらして自滅する』(徳間書店、1680円)
『世界“新”資源戦争』(阪急コミュニケーションズ刊、1680円)。
『出身地でわかる中国人』(PHP新書)
『三島由紀夫の現場』(並木書房)
宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
◎小誌の購読(無料)登録は下記サイトから。(過去4年分のバックナンバー閲覧も可能)。
http://www.melma.com/backnumber_45206/
(C)有限会社・宮崎正弘事務所 2008 ◎転送自由。ただし転載は出典明示。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
元外交官の原田武夫国際戦略情報メルマガと無料公演のお知らせ↓
~いま、上海で何が起こっているのか?~
「上海レポート」明日10/23リリース!
10/20より上海にて開催の、或る国際会議。既に本メールマガジンでお知らせしていますが、
IISIA CEO・原田武夫がこの会議の様子を見極めるべく、上海に出張。
この会議が、なぜそれほどまでに重要なのか?その「意義」とは―?
この上海での国際会議は、英王立国際問題研究所(RIIA、通称チャタム・ハウス)と、中欧国際工商学院(CEIBS)との提携で10/20より開催。
しかし、気になる点があります。
IISIA CEO・原田武夫がこの会議の開催を知ったのは2008年6月。
そのテーマは信用危機の後のアジアを描くという、示唆に富むものです。
ところが、実際に開催となる現在の状況はと言えば、金融危機が叫ばれ、米欧とアジアのデカップリングの是非が問題となっています。6月から告示されていたというのに、まるで現状を見透かしていたかのようなこの開催時期、このテーマ。
実に「怪しい」と言わねばなりません。
この会議で注目すべきトピックは多々あるものの、特に重要なのは、以下の点です。
まず、中国やシンガポールの華僑・華人勢力は、マーケットに対する欧州型の規制が適当だと認知しているのか否か。つまり、カネではなく、制度面での(欧米と中国との)デカップリングが起こっているのではないのか、という根本的な問題。
さらに、アジアにおける債券の最新情勢も挙げられます。
また、この会議には米国の財務次官補であるデイヴィット・マコーミックも出席。
彼が上海に来ているという事実は、象徴的なことなのではないか。
つまり、現下の「金融危機」の次のフェーズを見据え、上海を――東京でもソウルでもなく上海を――アジアの中核的金融センターとして打ち上げようとする試みが、動き始めたのではないか、という点。
また、中国マーケットの現状について、会議でどのように語られるかも要注目です。
「遅れたマーケット」であると看做されてきた中国ですが、第2次中国バブルに向けた今後の展開が明らかにされる可能性が大。
こうした点を踏まえると、新・予測分析シナリオ“ルミエール(光)”でも述べたように、まさに米欧と東アジア経済のデカップリングをシンボライズするような会合といえるのではないでしょうか。
さらに、IISIA CEO・原田武夫が、中国の現地財界人との意見交換も行う予定です。
このように、日本を含めた東アジア・マーケットの「これから」を展望するうえで、極めて重要な意味合いを持つ、この上海での会議。まさにその様子を現地で注視したIISIA CEO・原田武夫が、
会議の「本質」を徹底分析。渾身の書き下ろしレポートとしてリリースします。
明日10/23発売。瞠目の「上海レポート」に、ぜひご期待ください。
【本文2】
~続く「金融危機」。要するに何が問題なのか?~
「IISIAスタート・セミナー(無料)」
≪ http://www.haradatakeo.com/personal/startseminar.html
≫
今回の「金融危機」は、経済紙のみならず、一般メディアでも盛んに報じられています。
けれども、そこに出てくるのは見慣れない専門用語や何のために示されたかわからないデータばかり。
「要するに、いま一体何が起こっているのか?」「これからどうなるのか?」
事の本質を、ざっくりとつかみたい方。
そんな方々に、マーケットとそれを取り巻く国内外情勢の
“大局観”、“思考の枠組”をご提供するのが
「IISIAスタート・セミナー(無料)」です。
⇒ http://www.haradatakeo.com/personal/startseminar.html
IISIA CEO・原田武夫が、現在の日本マーケットを取り巻く状況を金融・政治・軍事・テクノロジー・社会といった多面的な切り口から鮮やかに提示。何が問題となっているのかを、わかりやすく説明いたします。
大盛況となった10/18の東京セミナー。
今後開催される各地のセミナーにも、続々とお申込みいただいています。
先行き不透明な今だからこそ、「IISIAスタート・セミナー(無料)」で、
しっかりとした“思考の枠組”を身につけてください!
◆お申込みは今すぐ↓↓こちら↓↓からどうぞ
⇒ http://www.haradatakeo.com/personal/startseminar.html
~~これからの「IISIAスタート・セミナー」開催日程~~~
☆ 続々お申し込みいただいています。
先週末(10/18, 19)は満員御礼! 次回11月開催分は…
◎11月8日(土)東京
◎11月9日(日)仙台
◎11月29日(土)横浜
◎11月30日(日)さいたま・東京
※12月には“大阪”“名古屋”でも開催します!
▼お申込みは↓今すぐ↓こちらからどうぞ▼
⇒ http://www.haradatakeo.com/personal/startseminar.html
※「IISIAスタート・セミナー(無料)」は、原則として“初めてご参加
される方”を対象としております。ご参加は、お一人様1回とさせて
頂いておりますので、何卒ご了承下さい。
※当日、会場ではIISIA教材のご案内もいたします。
※IISIAは投資顧問業法にいう“投資顧問”ではありません。
個別の金融商品についておススメすることは“一切”ありません。
~~~~~~~~