「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成20年(2008年)10月21日(火曜日)
通巻第2353号 (10月20日発行)
ラマダン期間に、食事を強制し、メッカへの巡礼ツアーは高額の預託金を徴収
新彊ウィグル自治区の「宗教の自由」は「不自由だらけの規制」を強化していた
********************
ホータンでは金曜日の祈祷はモスク内で、一時間半以内と定められている。モスク以外、街頭での祈祷を行うと罰則が適用される。
ウィグル人公務員は宗教行為を厳重に規制されている。
新彊ウィグル自治区内には、24000ヶ所のモスクと29000人の聖職者(イマム)がシルクロードに沿って存在している。
しかしイマムと庶民との接点は、モスク内に限定され、一方、学校ではムスリムの子供達にラマダン中にも食事を取ることを強要している。だから子供達は伝来の習俗と言葉を同時に失っていく。老人らはこれを嘆き、働き盛りの大人達は生活に追われ、子供が学校に何を教わっているか知らない。
カシュガルの大学では昨年からムスリムの学生に食事を取らせ、市民にその風景を目撃させないために高い塀で囲んだ。
メッカ巡礼(ハジ)は政府が組織する「官製ツアー」で行く以外に手だてがない。
退職した公務員が、このメッカ旅行に加わった場合、以後の年金は支給されない。
パスポートはウィグル人が海外へでる場合、およそ70万円を預託金であずける必要があり、しかも官製ツアーの旅行代金は3700ドルとべらぼうな金額、とてもウィグルの人々はまかないきれない。
しかもパスポートを申請すると家族構成などの調査が入り、もし自立していない子供がいると許可にならない。子供は自立している証明に銀行の残高証明を提示しなければいけないという。それでも2006年から07年にかけて3100人の巡礼があった。
当局は「分裂主義、テロリズム、そしてイスラム過激派がウィグルを不安定にしている」ことを理由に規制を強化したわけだが、「これでは却って地域を不安定化させ、人々をさらに過激にさせるだけである」(ヘラルドトリビューン、10月20日)。
<< 書評 >>
♪
浜田和幸『石油の支配者』(文春新書662)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
世界に独自の情報ネット網をもつ著者が、今度は石油に挑んだ。
ヘッジファンドからウォーター・ビジネスという未知の領域をつねに他に先駆けてカバーしてきた浜田氏が、既知の領域である原油市場のことを、いまさら書くのは何故かと首を傾げたが、読んでみて納得である。
これは石油市場の裏側、ヘッジファンドや投機筋、つまるところ世界の権力者、アラブの金持ちとの裏のつながりを書いているのだ。
ヘッジファンドや大手投資顧問には反ブッシュ派が多く、「下落を続けるドルに対するヘッジをかけるためには、いわゆるコモディティといわれる原油や穀物などに資金を振り向けることで損出を抑え、同時に嘗てない利益を確定できるチャンス」を見いだした。
これを浜田氏は「FRBが進めている為替政策のアキレス腱につけ込み、莫大な利益を得ようとする動きを強めている」と分析する。
評者(宮崎)は或る雑誌に書いたが、北京五輪開会式のVIP席に、プーチンやブッシュの近くに座っていたアメリカからの別のVIPグループがあった。「ブラックストーン」とか「KKR」とかの名うての投機グループ、ヘッジファンドの幹部らである。
かれらは中国の繁栄を褒めそやし、五輪の成功を賞賛し、その唇が乾かぬ裡に中国から次の巨額融資を引き出すために、そこにいたのだ。
そして本書のなかで、浜田氏は絶妙なことをさらりと言ってのける。
カーライルというヘッジファンドの有力集団は「元大統領のブッシュ・ジュニアを顧問に迎え」た完全なファンド政治銘柄で、もちろん現ブッシュ政権と「きわめて密接な関係を誇り、アメリカでは非常に定評のある」(本書56p)。
このカーライル・グループは、あの「9月11日のテロに遭遇した日、ワシントンでサウジアラビアのビン・ラディン・グループの幹部を対象にした投資説明会を開いていた」事実はウォール街で知られていた。
このカーライルを狙っていた巨大ファンドがある。
中国だ。世界一の外貨準備高を背景に、
「その資金力をバックに一気にカーライルを買収しようとする動きすらみせている」という中国は、すでに投機筋の有力ヘッジファンド「ブラックストーン」に30億ドル投資している。
つまり「中国の国富ファンドにすれば、アメリカの投資ファンドを買収、あるいは吸収することによって、各地で台頭しはじめている中国脅威論を巧みに回避する」という目的があったのだ。
この他、本書には意外な情報が盛りだくさんである。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
佐賀県および北九州在住の読者の皆さんへ
<< 宮崎正弘独演会 二時間スペシャル >>
佐賀恒例の「土曜セミナー」です。二年ぶりに小生が講演します。小誌読者にはお馴染みの中国経済と中国そのものの現状とこれから。冒頭に世界同時株安、大不況到来の分析があります。
記
とき 10月25日(土曜日) 午後二時(一時半開場)
ところ 佐賀市天神三丁目 アバンセ・ホール
http://www.pref.saga.lg.jp/manabinetsaga/avance/riyo/riyo8-1.html
演題 金融危機以後の中国のゆくえ
入場無料 会合の名称は「佐賀土曜セミナー」
お問い合わせ (0952)23-5020 FAX(0952)23-5049
三島由紀夫研究会「公開講座」
@@@@@@@@@@@@@@
とき 10月31日(金曜日) 午後六時半
ところ 市ヶ谷「アルカディア市ヶ谷」四階会議室
http://www.jps.gr.jp/news/20020411map.htm
講師 佐藤 優氏(起訴休職中外務省事務官)
演題 「ロシアから吉野へ 神皇正統記から三島へ」
会場分担金 おひとり 2000円
予約方法 聴講ご希望の方は下記へメールをください。当日、直接会場に来られても構いませんが、その節は立ち席になることがありますので、なるべく予約を!
********************
(1)お名前(2)郵便番号(3)御住所を書いて(10月31日公開講座希望)としてください。
yukokuki@hotmail.com
(なお当日、会場の座席数が限られており、先着80名様で締め切ります)。
宮崎正弘の新刊
『中国がたくらむ台湾沖縄侵攻と日本支配』
KKベストセラーズ 1680円、ハードカバー
♪
宮崎正弘『トンデモ中国、真実は路地裏にあり』(阪急コミュニケーションズ)
(全332ページ、写真多数、定価1680円)
宮崎正弘『北京五輪後、中国はどうなる』(並木書房、1680円)
宮崎正弘・黄文雄共著『世界が仰天する中国人の野蛮』(徳間書店、1575円)
宮崎正弘のロングセラー
http://miyazaki.xii.jp/saisinkan/index.html
『崩壊する中国 逃げ遅れる日本』(KKベストセラーズ、1680円)
『中国は猛毒を撒きちらして自滅する』(徳間書店、1680円)
『世界“新”資源戦争』(阪急コミュニケーションズ刊、1680円)。
『出身地でわかる中国人』(PHP新書)
『三島由紀夫の現場』(並木書房)
宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
◎小誌の購読(無料)登録は下記サイトから。(過去4年分のバックナンバー閲覧も可能)。
http://www.melma.com/backnumber_45206/
平成20年(2008年)10月21日(火曜日)
通巻第2353号 (10月20日発行)
ラマダン期間に、食事を強制し、メッカへの巡礼ツアーは高額の預託金を徴収
新彊ウィグル自治区の「宗教の自由」は「不自由だらけの規制」を強化していた
********************
ホータンでは金曜日の祈祷はモスク内で、一時間半以内と定められている。モスク以外、街頭での祈祷を行うと罰則が適用される。
ウィグル人公務員は宗教行為を厳重に規制されている。
新彊ウィグル自治区内には、24000ヶ所のモスクと29000人の聖職者(イマム)がシルクロードに沿って存在している。
しかしイマムと庶民との接点は、モスク内に限定され、一方、学校ではムスリムの子供達にラマダン中にも食事を取ることを強要している。だから子供達は伝来の習俗と言葉を同時に失っていく。老人らはこれを嘆き、働き盛りの大人達は生活に追われ、子供が学校に何を教わっているか知らない。
カシュガルの大学では昨年からムスリムの学生に食事を取らせ、市民にその風景を目撃させないために高い塀で囲んだ。
メッカ巡礼(ハジ)は政府が組織する「官製ツアー」で行く以外に手だてがない。
退職した公務員が、このメッカ旅行に加わった場合、以後の年金は支給されない。
パスポートはウィグル人が海外へでる場合、およそ70万円を預託金であずける必要があり、しかも官製ツアーの旅行代金は3700ドルとべらぼうな金額、とてもウィグルの人々はまかないきれない。
しかもパスポートを申請すると家族構成などの調査が入り、もし自立していない子供がいると許可にならない。子供は自立している証明に銀行の残高証明を提示しなければいけないという。それでも2006年から07年にかけて3100人の巡礼があった。
当局は「分裂主義、テロリズム、そしてイスラム過激派がウィグルを不安定にしている」ことを理由に規制を強化したわけだが、「これでは却って地域を不安定化させ、人々をさらに過激にさせるだけである」(ヘラルドトリビューン、10月20日)。
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世界に独自の情報ネット網をもつ著者が、今度は石油に挑んだ。
ヘッジファンドからウォーター・ビジネスという未知の領域をつねに他に先駆けてカバーしてきた浜田氏が、既知の領域である原油市場のことを、いまさら書くのは何故かと首を傾げたが、読んでみて納得である。
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ヘッジファンドや大手投資顧問には反ブッシュ派が多く、「下落を続けるドルに対するヘッジをかけるためには、いわゆるコモディティといわれる原油や穀物などに資金を振り向けることで損出を抑え、同時に嘗てない利益を確定できるチャンス」を見いだした。
これを浜田氏は「FRBが進めている為替政策のアキレス腱につけ込み、莫大な利益を得ようとする動きを強めている」と分析する。
評者(宮崎)は或る雑誌に書いたが、北京五輪開会式のVIP席に、プーチンやブッシュの近くに座っていたアメリカからの別のVIPグループがあった。「ブラックストーン」とか「KKR」とかの名うての投機グループ、ヘッジファンドの幹部らである。
かれらは中国の繁栄を褒めそやし、五輪の成功を賞賛し、その唇が乾かぬ裡に中国から次の巨額融資を引き出すために、そこにいたのだ。
そして本書のなかで、浜田氏は絶妙なことをさらりと言ってのける。
カーライルというヘッジファンドの有力集団は「元大統領のブッシュ・ジュニアを顧問に迎え」た完全なファンド政治銘柄で、もちろん現ブッシュ政権と「きわめて密接な関係を誇り、アメリカでは非常に定評のある」(本書56p)。
このカーライル・グループは、あの「9月11日のテロに遭遇した日、ワシントンでサウジアラビアのビン・ラディン・グループの幹部を対象にした投資説明会を開いていた」事実はウォール街で知られていた。
このカーライルを狙っていた巨大ファンドがある。
中国だ。世界一の外貨準備高を背景に、
「その資金力をバックに一気にカーライルを買収しようとする動きすらみせている」という中国は、すでに投機筋の有力ヘッジファンド「ブラックストーン」に30億ドル投資している。
つまり「中国の国富ファンドにすれば、アメリカの投資ファンドを買収、あるいは吸収することによって、各地で台頭しはじめている中国脅威論を巧みに回避する」という目的があったのだ。
この他、本書には意外な情報が盛りだくさんである。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
佐賀県および北九州在住の読者の皆さんへ
<< 宮崎正弘独演会 二時間スペシャル >>
佐賀恒例の「土曜セミナー」です。二年ぶりに小生が講演します。小誌読者にはお馴染みの中国経済と中国そのものの現状とこれから。冒頭に世界同時株安、大不況到来の分析があります。
記
とき 10月25日(土曜日) 午後二時(一時半開場)
ところ 佐賀市天神三丁目 アバンセ・ホール
http://www.pref.saga.lg.jp/manabinetsaga/avance/riyo/riyo8-1.html
演題 金融危機以後の中国のゆくえ
入場無料 会合の名称は「佐賀土曜セミナー」
お問い合わせ (0952)23-5020 FAX(0952)23-5049
三島由紀夫研究会「公開講座」
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とき 10月31日(金曜日) 午後六時半
ところ 市ヶ谷「アルカディア市ヶ谷」四階会議室
http://www.jps.gr.jp/news/20020411map.htm
講師 佐藤 優氏(起訴休職中外務省事務官)
演題 「ロシアから吉野へ 神皇正統記から三島へ」
会場分担金 おひとり 2000円
予約方法 聴講ご希望の方は下記へメールをください。当日、直接会場に来られても構いませんが、その節は立ち席になることがありますので、なるべく予約を!
********************
(1)お名前(2)郵便番号(3)御住所を書いて(10月31日公開講座希望)としてください。
yukokuki@hotmail.com
(なお当日、会場の座席数が限られており、先着80名様で締め切ります)。
宮崎正弘の新刊
『中国がたくらむ台湾沖縄侵攻と日本支配』
KKベストセラーズ 1680円、ハードカバー
♪
宮崎正弘『トンデモ中国、真実は路地裏にあり』(阪急コミュニケーションズ)
(全332ページ、写真多数、定価1680円)
宮崎正弘『北京五輪後、中国はどうなる』(並木書房、1680円)
宮崎正弘・黄文雄共著『世界が仰天する中国人の野蛮』(徳間書店、1575円)
宮崎正弘のロングセラー
http://miyazaki.xii.jp/saisinkan/index.html
『崩壊する中国 逃げ遅れる日本』(KKベストセラーズ、1680円)
『中国は猛毒を撒きちらして自滅する』(徳間書店、1680円)
『世界“新”資源戦争』(阪急コミュニケーションズ刊、1680円)。
『出身地でわかる中国人』(PHP新書)
『三島由紀夫の現場』(並木書房)
宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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