【地球随感】自分の首を絞める 馬総統の中台関係発言(2008年9月9日の古い記事です。)
【地球随感】自分の首を絞める 馬総統の中台関係発言
5月20日の就任から3カ月半が経過した台湾の馬英九(ば・えいきゅう)総統(58)。当初は中国との関係改善などで、順調さを印象づけていたが、ここへ来て経済公約の実現を延期するなどで、その勢いは失速気味だ。中でも先週明らかになった「(台湾と中国は)国と国との関係ではない」という発言は、台湾の主権問題ともからむだけに、今後の展開しだいでは馬総統の致命傷ともなりかねない問題をはらんでいる。
■国と国の関係ではない
問題の発言は、9月3日付のメキシコ紙「エル・ソル(太陽)・デ・メヒコ」が掲載した馬総統とのインタビュー記事の中にあった。台湾当局の「台湾週報」によれば、馬総統は、中台関係について問われ、次のように語ったという。
「双方の関係は『2つの中国』ではなく、一種の特別な関係である。なぜなら、われわれの憲法はわれわれの領土上に別の国が存在することを許容することはできず、彼らの憲法も同様である。このため、われわれ双方は一種の特別な関係なのであるが、国と国との関係ではない」
この発言がなぜ問題かといえば、馬氏は中華民国(台湾)がいまも大陸をも支配しているという虚構を保ち、台湾の与野党がともに主張する「台湾は主権独立国家である」という立場を否定したかのように読めるからだ。
少なくとも、《一種の特別な関係だが、国と国との関係ではない》という表現は、2002年の陳水扁(ちん・すいへん)前総統(57)の「一辺一国」(中台はそれぞれ別の国)発言はおろか、1999年の李登輝(り・とうき)元総統(85)の「(台湾と中国は)少なくとも特殊な国と国との関係」といういわゆる「2国論」をも否定するものだ。台湾の主権を主張する大半の台湾有権者にとって受け入れ難いものだろう。
■李登輝氏も批判
これまで馬総統を好意的に応援してきた李登輝氏も、メールマガジン「台湾の声」によれば、「自己が主権独立国家であることを否定するような行為は、国に背き、国民の負託をも超えるものだ」と厳しく批判し、改めて「台湾は主権独立国家である」と強調したという。
また、馬総統は発言の中で双方の憲法を持ち出しているが、台湾は李登輝総統時代の91年に、憲法修正を行い、台湾の自由地区と中華人民共和国の大陸地区とを分け、それぞれが別の政治実体であることを表明したことを無視している。李氏は「2国論」を表明した際に、「91年の憲法修正以来、すでに両岸関係を国家と国家との関係だと位置付けており、少なくとも特殊な国と国との関係である」と述べている。馬氏の発言は、91年の憲法修正より前の段階に戻ったかのようだ。
馬総統は、メキシコ紙の掲載日と同じ3日、総統選で掲げた「633」(年6%以上の成長、1人当たり所得3万ドル、失業率3%以下)の公約の実現を2期目の任期が切れる2016年まで延期した。「馬上就好」(馬政権になれば経済がすぐよくなる)の選挙スローガンは早くも反故(ほご)となった格好だ。
こうしたことが、支持率の急落に関係しているのは確かだろう。ただ、景気の悪化を馬氏の責任とするのは、やや酷だ。国際経済情勢によるところが大だからだ。
それよりも今後は、今回の発言の方が深刻な影響を与えそうだ。今後、発言の撤回、ないし軌道修正をしないかぎり、馬総統はいずれ、自ら墓穴を掘ったといわれかねない。このままでは、4年後の再選も危うい?
陳前総統時代に進めた「正名運動」で「中華郵政」から「台湾郵政」に名称変更された公営企業が、以前の「中華郵政」に戻されたり、「台湾民主記念館」と改名された旧「中正紀念堂」(中正は蒋介石の本名)が旧名に戻されようとしたりしている。
馬総統は主権問題を棚上げし、実利外交を優先させる路線を掲げているが、内にあって台湾の主権問題をないがしろにするような政策を進めれば、いずれ台湾の崩壊を招く。それより前に馬政権の崩壊が先に来ることになる。
(論説委員 矢島誠司/SANKEI EXPRESS)http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/176920/
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最近、アメリカが台湾に武器を売ったので、台湾はまだアメリカに
信用されているのだと感じて安心した。チュウゴクに
合併されかけていると思ったら、まだ独立しているようだ。