日本を棚卸して明日に備える 平井修一 | 日本のお姉さん

日本を棚卸して明日に備える 平井修一

2008.09.22 Monday

日本を棚卸して明日に備える 平井修一

小生はマーケティング職人として20年間禄を食んでいたが、成功率は5割である。つまり半分は成功し、半分は失敗したが、多分いいほうだろう。

直近の4年間は営業に専念したが、成約率は5%、つまり20件に1件はGETした。普通は1%前後だそうだから5%は驚異的な数字なのだが、なーに、有望なところにしかアプローチしなかっただけ。マーケティングの知恵が生きた。

マーケティングというのは、筋道立ててモノ、サービスを売る技術・理論(ノウハウ)で、あーだ、こーだ、御託を並べるのだが、実は「当たるも八卦、当たらぬも八卦」で、要諦は顧客企業(クライアント)の「言いだしっぺのやる気」が肝心なのである。

発案者が命懸けでやればそこそこうまくいく。命懸けだと周囲が「それほどならば、まあ、やらせてみるか」となるのである。郵政民営化の時に「死んでもいい」と小泉は言った。命懸けの人間に普通の人はあまり逆らえない。

それはさておき、せっかくの体験・知見があるから、マーケティング手法で日本を分析し、進むべき方向性を探ってみることは意味があるだろう(我が身の明日だけは、見ない、見えない、見たくない、が)。

以下は小生の判断であり、当たるも八卦ではあるものの、政治家が取捨選択して「これは」と命懸けで取り組めばそこそこうまくいくだろうとは思う。まあ、命懸けの政治家がいるかどうかは分からないが。切腹する覚悟、暗殺される覚悟をもって政治をしたのは岸信介が最後かもしれない。

前置きが長くなった。本題へ入ろう。まずは日本の強さや弱さについて。己を知り、敵を知れば、百戦危うからずと昔の人は言った。

自己分析の最初は【4つのPパワーの分析から】・・・・・・・・・

★製品(Product)パワー:
製品力、つまり日本の"売り"は何かということ。逆に日本にないもの、不足しているものは何か、を考えてみよう。エネルギー資源、鉱物資源、食糧が代表的な不足物(輸入品)で、それら以外はローテクのスプーンからハイテク・高付加価値の原子力発電所、ロケットまで生産できる。知財も豊富だ。メイドイン・ジャパンの評価は高い。

★価格(Price)パワー:
日本産品は割安か? 資源、原材料を輸入に頼っていること、人件費が高いことなどから日本産品は相対的に高く、ハイテク製品以外は価格競争力が弱いだろう。

効率性、生産性は世界有数のレベルにあるが、それだからこそコスト削減はほぼ限界にあり、低価格戦略は難しい。「安さ爆発、カメラのサクラヤ」という"価格で勝負"はBRICs(追い上げ派の急成長諸国)の進出もあり、難しいだろう。

★売場(Place)パワー:
市場とか流通チャネルのことだが、ほぼ全世界へ物流ネットワークを持ち、有力市場においては商社や代理店を通じて売り込むチャネルを利用できる体制にある。が、歴史的背景からアフリカ、中央アジア、中東におけるプレゼンスは弱い(同地域は伝統的に欧州が強い)。

★販促(Promotion)パワー:
ハイテクや知財分野ではそこそこ民間(企業)ベースでは積極的だが、それ以外(特に農業)は消極的である。情報発信がどちらかといえば不得手という国民性があるだろうが、国家として常に世界へ発信するという姿勢がすこぶる弱い。

次に【SWOT分析から】・・・・・・・・・・

自分を突き放して、高見から見たらどうなんだろう、という手法。

★S=強み(Strength):
豊富で勤勉、優秀な労働力。高い技術力。信頼性、安定性、法治国家。平均世帯年収は800万円で、安定した市場を形成している。国民の性格は温和で健康で長生き。

★W=弱み(Weakness):
原料資源の海外依存、国防の米国依存による脆弱性。相対的な価格競争力のなさ。GHQ洗脳で「相手の嫌がることはしない」という軟弱さ。つまり強引さの欠如。遵法意識が高いことも新市場開拓、競争で遅れをとっている。

★O=機会(Opportunity):
北朝鮮や紛争地、僻地、軍事国家以外は市場アクセスには支障はない。豊富な機会を持っていても価格が高いために参入できないケースは多そうだ。

★T=脅威(Threat):
原料資源(特に石油、ガス)の海上輸送ルートで海賊やテロリストの脅威がある。国民の多くは「世界は平和を求めている」と、ほとんど防衛本能がない(「脳内お花畑」現象と言われている)。台湾海峡、尖閣諸島で中共の軍事的脅威がある。

【プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)分析から】・・・

この理論は、「問題児」的な事業分野を「花形」に育て、やがては安定的な「金のなる木」にし、一方で芳しくない分野の「負け犬」は処分するという経営手法。国際競争力の視点から見ると--

★問題児(Problem Child, or Question Mark):
ベンチャービジネスに代表される、当たれば大きな利益をもたらすが、今のところは金食い虫で大きな投資が必要という分野。

IT、薬品、医療機器、ナノテク、航空宇宙、知財・コンテンツ、省エネ、環境、バイオテク、バイオマス、超伝導、リサイクルなど。

★花形(Star):
高い成長性と高いシェアを誇る分野。

原子力発電、ハイブリッド車、浄水技術、淡水化技術、液晶技術、発光ダイオードなど。
★金のなる木(Cashcow):
安定的に利益を上げているものの、これ以上の成長はそれほど望めない分野。

精密機械、自動車な輸送用機器、一般機械、電気機器、造船など。

★負け犬(Dog):
よほど環境が変わらない限り成長が難しい分野。国際競争力はほとんどない。

農林水産業、繊維加工、軽工業製品、加工食品など。いわゆるローテク分野。

さて、結論である。

日本が列強先進国という「リーダー」(勝ち組、トップグループ)の一角にとどまりたければ、必死に先頭に着いて行くことと、BRICsという二番手グループの「チャレンジャー」以下に距離を縮められないことが大事である。

上記の分析から分かることは、「得意の分野(機械)で負けない」「新分野(ベンチャー)を積極的に開拓していく」「弱い分野(農業)を強くする」ということになる。農業を強くするのは安全保障のためでもある。

「商工業国家アテネが農業国家のスパルタに負けたのは、アテネが商品(奢侈品)、労働力(奴隷)、食糧(自給率3割)、原料(戦艦のための木材)を国外に求める消費都市になってしまったからである」(堺憲一・東京経済大学教授)。開戦になってスパルタが真っ先にやったのはアテネへの食糧補給路を断つことだった。

原料資源、食糧のほとんどを海外に依存する我が国は、生存のために第一に「安全保障に努める」こと、次に上記の施策(得意分野で負けない、新分野で勝つ、不得意分野で復活する)を進めることである。具体的な施策は聞いてくれ。有料で教えます。

杜父魚ブログの全記事・索引リスト (9月20日現在2333本)) author : 古沢 襄