宮崎正弘の国際ニュース・早読み | 日本のお姉さん

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

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   平成20年(2008年)9月17日(水曜日)
胡錦涛、「泣いて馬謖を斬る」?
  共青団の重要幹部が失脚、山西省の人事はミニ政変の可能性
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山西省といえば、石炭の産地にして、鉱山の事故多発危険地帯。仏教が栄え、聖地・五台山があることでも有名。
同省の北端は「大同」。中ソ対立の折は、この地に五十万の人民解放軍が駐屯したが、現在は石炭ビジネスの拠点。過去数年に石炭価格が四倍となったため、石炭成金が蝟集し、人口比率のベンツ保有率は北京市より高い。かつて日本軍も、この大同から五台山を南下し、太源を占拠した。さて山西省襄汾県で違法操業中の鉱山のボタ山が崩壊、大規模な土石流が起こり、254人の死亡が確認された(死者数は9月14日まで)。
この災禍の責任をとるかたちで山西省ナンバー2と言われた孟学農省長が突如、辞任するというハプニングが起きた。
不思議である。
そもそも中国人が職責の「責任」を取ること自体が奇妙ではないか。責任は必ず他人に押しつけ、自分は常に正しいと主張するのが、中国共産党幹部の生きる道だから。四川省大地震は七、八万人もの死者がでた人災だったが、四川省幹部の誰も引責辞任していない.汚職スキャンダルで逮捕された陳良宇元上海書記を例外に、最近、この種の事由で失脚した共産党幹部はいない。中国の炭鉱事故は世界的に悪名高く、毎年五千人から八千人が鉱山事故で死亡している。その安全無視のやり方は世界から非難されているが、これまではどこ吹く風の違法操業を繰り返してきた。
とくに炭坑が儲かると聞いて利にさとい浙江省温州商人が大挙して山西へ進出して、鉱山ビジネスを買収、安全を度外視した闇炭坑を地もとマフィアと組んで経営、拐かしなどでだまして連れてきた少年ら労働者を奴隷のように働かせた。戸籍も名前もない炭坑夫が存在し、当局の閉山命令を無視した違法操業が平然と行われてきた。胡錦涛政権は、違法鉱山を放置した責任を取らせることによって再発防止を謳い、自派の要人を斬った。
孟学農は能吏、共産主義青年団の幹部である。同時に張建民副省長を解任し、省長代理に王君・国家安全生産監督管理総局長が就任した。
なにもかも不思議である。第一に責任を取るというのであれば、ナンバー1の省書記(張宝順)が当然引責辞任するべきだろう。
第二は、孟学農は北京市長経験の大物で、山西副書記から、この一月に山西省長に就任したばかり。副省長は辞任ではなく「解任」。ところが夏に落下傘人事で同副省長に就任した李鵬の息子、李小勇はそのまま。代理省長となった王君は、事故の調査を担当してきた人物で政治的力量は未知数。臨時措置の観が否めない。ともかく、この突如の人事は北京中央の政変と連動しているのか、見極めが必要である。
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♪(読者の声1)石原都知事の、古賀誠の「A級戦犯」分祀論にかこつけての「日本よ」(産経随筆)には全く失望した。
憲法9条信奉者であり人権擁護法推進者であり媚中派の古賀誠の分祠論が自らの分祠論と重なるところがあると思っているとは驚きである。
古賀誠の正体は自民党にいるから誤解されているが、利権まみれの村山富市とでも言うほうが適当だろう。自民党で野中に引き立てられて幹事長になっただけで実力者風に過大評価され、戦没者遺族だから遺族会会長になれただけである。石原氏が分祀論を言うのならなぜ女房や古賀誠を引き合いに出さずに、はっきりと自分の言葉で「A級戦犯は分祀しろ」と言わないのか。以前から石原氏は靖国参拝の時のインタヴューで、心の中では手を合わせていない人物もいる、と答えているのを見てさすがにと感心していたのだが。個人の感情は別にして東京都知事が靖国参拝することの意味を分かっているのだと評価していたのだが。大東亜戦争の責任者を日本人が裁くべきだったとの意見があるが、果たして彼らを裁く資格がある日本人がいるのか。どのような日本人ならその資格があるとはっきりと明示しなければ意味はなかろう。宮崎氏も指摘されているように、主権回復後に国会で戦犯の赦免決議を全会一致で行い、受刑死の人たちも、国内法的には公務死として扱い、「戦犯」は日本には存在しなくなったのである。これは責任をあいまいにしたというよりは、大東亜戦争は国民一丸となって欧米と戦ったという認識が渦中の日本人にあったからではないのか。石原氏の分祀論は感情論でしかない。(ZEN)

(宮崎正弘のコメント)ご指摘の通りです。言ってみれば日本は“特攻の遺産”で戦後をしばらく頑張ってきた。そのことさえ忘れてしまったのでしょう。我が国に「戦犯」がいないという国会決議(全会一致)の歴史的事実を忘却したのですから。

♪(読者の声2)昨日の貴誌「大暴落、本日」という予言的報道に腰を抜かしましたが、まさに夕刊の一面トップは日本の株式市場暴落でした。
私は投資家ではありませんが、先代からの企業のつきあいで多少、株を保有しております。簿価が急減し、憂鬱です。株は景気の先行きを照らすと言います。ということは日本の経済、まだ先が暗いということですね?(BH生、埼玉)

(宮崎正弘のコメント)先行きの暗さはどの国も同じでしょう。韓国はウォン急落、中国は通貨供給量を増やします。路線変更です。日米欧に倣っての措置です。EUはユーロ高を享受した三年が終わり、ロシアも通貨ルーブルが失楽園入り。日本は、率直に言って米中という「外需」消化先が大幅な景気後退となりますから、風邪から肺炎にならないように経済の舵取りを慎重にする時期となります。麻生さんが渇をいれても、あの経済閣僚や官庁のトップを見ていると。。。。。。。。というわけで、株式市場の暴落は、不況入りの始まりに過ぎません。

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(((((( 樋泉克夫のコラム ))))))
【知道中国 187回】 ――司馬遷に呪縛された《中国》
     『中国人の歴史意識』(川勝義雄 平凡社ライブラリー 1993年)
本書は、「中国人の歴史観」を軸に中国人における歴史の意味を問う!)章。「中国前期の異端運動――道教系反体制運動を中心に」などを中心にした中国人に与えた道教の働きを論究した!)章。著者の専門である中国中世、殊に六朝社会の諸問題を扱った!)章とで構成されているが、なにはさておいても読むべきは、やはり!)章だろう。
 !)章は「司馬遷の歴史観」「司馬遷とヘロドトス」などの講演を再構成した論述で、比較的に短く、簡潔な表現で中国人にとっての《歴史の意味》が語られている。だが著者のいわんとするところは飽くまでも重い。たとえば中国人の歴史観に関する次の一節だ。
 「司馬遷の『史記』以来、二千年あまりの間、絶えることなく正史が編纂されてきた理由」を、「個々の歴史的行為のあとを整理し、一つのまとまった歴史記述として体系化することが、中国人共通の願望であり、必然的な要請であることは、もはや見やすい道理であろう」。
だから「無価値的な時の流れに価値と意味とを与えつづけた人間の行為のあとは、人間存在の証として、まさに人々が歩いてきた『道』の跡として、秩序と文明のあり方を示すものとして、正確に書き残さねばならなかった。そこには、価値づけの原理として、『礼』にもとづく政治即倫理批判が加えられるのは当然であるが、また事実の正確さを究めるために、多大の努力が払われたことも注意しておかねばならない」とする。中国とは中華人民共和国の略称ではない。太古の昔、黄河中流域の黄土高原の霞のなかから生まれでた漢民族が、数千年の時の流れの中で育んできた時間的・文化的・地理的概念の総体というべきだろう。だから中国とは極めて抽象的な存在といえる。孔子に儒教というココロを吹き込まれ、始皇帝に統一政権という制度と広大な版図というカラダを与えられ、最後に司馬遷がココロとカラダを統べて歴史というコロモで装い、初めて中国は実態を備えた。3人が中国を具体化した。だから、彼らは《中国の発明者》なのだ。
広大な大陸を流れる「無価値的な時の流れ」を「歴史記述として体系化」し「秩序と文明のあり方を示す」ことが歴史を記す目的なら、その典型である『史記』を嚆矢とする正史こそが中国としての「秩序と文明のあり方を示す」根拠ということになる。ならば「無価値的な時の流れ」を「歴史記述として体系化」する権限、いいかえるなら歴史を解釈する権限を誰が持つか――これこそが、正統中国を決定する究極の決め手だろう。『史記』から『明史』までの正史を「二十四史」と呼ぶが、秦から明までに24の王朝が存在したことを示す。これに清が加わり正統王朝は25を数え、さらに中華民国、中華人民共和国と続く「無価値的な時の流れ」を一括して中国と呼元の蒙古族、清の満州族のように異民族が支配しようが、ココロとカラダとコロモが同じであるかぎり、中国の正統王朝と看做すことになる。同じココロとカラダとコロモなら、同じく中国と呼んでも不都合はない。旧中国を否定し新中国を名乗りながらも共産党政権が中華帝国然と振る舞い続けているのも、旧中国と寸分違わないココロとカラダとコロモで装っているからである。司馬遷は「無価値的な時の流れ」を正統と異端とに峻別し『史記』を書き遺すことで中国を定める歴史のカタチを作った。以後の歴史書は『史記』のカタチを踏襲するゆえに彼に縛られ続ける。歴史解釈権を握った権力が正統中国を名乗るカラクリが、これだ。(ひいずみかつお氏は愛知県立大学教授。華僑と京劇の研究では第一人者)。

♪(宮崎正弘のコメント)『この國のかたち』とかを書いた司馬遷によく似た名前の作家は、日本史にも心と体と衣をまとわせ直して中世から近世、近代までを超特急で書きまくったが、やはり筆名のように司馬遷に遠く及ばず、ですかね。

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 平成20年(2008年)9月18日(木曜)

アジア最大規模の造船所プラントが上海に完成していた
    LNGタンカーの量産体制から十年以内に空母建造へ
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五年前の冬のこと、上海に滞在していた私は現地紙をみて驚いた。上海の北方にある中州「崇明島」に、中国最大の造船所を建設するというニュースが大きく扱われていたからだ。(崇明島は中国最大の島嶼)。
すぐに崇明島へ行った。といっても上海市内から、フェリー乗り場までおよそ一時間半バスに揺られ、鉄鋼の町、宝山を抜けて、長江の岸壁にでる。
そこで船に乗って40分ほど。崇明島へたどり着く。一日がかりである。行政区分では上海市に帰属するが、この島は時代が百年ほど戻った錯誤的風景である。島のフェリー乗り場は、まるで十九世紀末の清朝末期の駅前風景、並んでいるのはタクシーではなくて人力車。スーパマーケットなんぞ一軒もなく、ぽつんと建つホテルで食事をしたが、地元のやくざ風の男達がトランプをしていたほか、客はいなかった。そうした強烈な思い出があるので、よもや中国最大の造船所建設なんぞ夢物語ではないか、と考えたのである。 ところが。中国の造船能力はおととし1600万トン、昨年は1893万トン、世界シェア、じつに23%。日本をぬいて韓国に迫る勢い。注目すべきは日本のお家芸とされたLNGタンカーの建造に成功。第一号LNGタンカーは27ヶ月のスピードで作り上げた。

崇明島の長興島にある中国船舶工業集団公司の造船所はドック四基、一年の生産能力が450万トン、LNGのほか、コンテナ船。そして十年以内に5-6万トンクラスの空母を建設する手はずという。空母を量産できる日がくるとすれば、近未来の中国海軍力はすさまじいことになる。
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♪(読者の声1)貴マガジン2318号の樋泉克夫のコラムの書評:『上海時代(上・中・下)』(松本重治 中公新書 昭和50年)に対する宮崎先生のコメント「・・・松本に感ずる一種のいかがわしさ・・・」の文を見て、三田村武夫氏の「大東亜戦争とスターリンの謀略」の中の一節を思い出しました。
「日華事変全面和平工作を打ち壊した者」という節(同書P150)で大略以下の記述があります。孫文の革命にも協力し、蒋介石以下国民党首脳部と極めて親しい茅野長知と中国側の要人賈存得との間で全面停戦案が作成され(13年4月~6月)日中双方の最高責任者(近衛首相、板垣陸軍大臣、孔祥煕行政院長、何応欽など)の合意が得られたものの突然決裂する。途中から割り込んだ国民政府外交部亜州司長の高宗武が日中双方に相手は戦意無し、もう少し攻めれば相手は無条件に停戦・撤兵すると夫々反対の情報を与えたのが原因。この高は交渉情報を偶然得た同盟通信上海支局長の松本重治が東京に連れて行き板垣、近衛に合わせたもの。松本と尾崎は親しい間柄。高宗武の奇怪な行動を知った漢口政府は直ちに逮捕命令をだしたが、高宗武、松本重治、尾崎秀実、犬養健、西園寺公一、影佐禎昭などによる汪兆銘引き出し工作が始まる。決裂後も諦めない茅野長知は重慶工作に専念。氏の協力者謙秘書の松本蔵次が連絡途上(上海→香港)の船中で尾崎と西園寺を目撃、松本重治は香港でハノイに飛んだ高宗武との連絡に当たっていた。香港からの帰りの船中で松本蔵次氏は尾崎、西園寺、松本重治を目撃。(引用終わり)。勿論、彼らは日中戦争を泥沼にし国民政府軍及び日本軍の体力をなくすのが目的だった。 (TT生、町田市)

(宮崎正弘のコメント)三田村さんの名著、最近復刻がでて、これもロングセラーを続けているようです。

♪(読者の声2)いつも高濃度の情報を楽しみに読んでおります。
さて、「分祀」のことですが、神道においての「分祀」とは、「コピー」のようなものであり、靖国神社からいわゆるA級戦犯を分祀しても、祀る対象が増えるだけです。全国に愛宕神社や、住吉神社があるのも、祭神を分祀(コピー)しているからです。いわゆるA級戦犯の方達を靖国神社から廃祀するというのなら分かりますが、「分祀」「分祀」というのは、反対派のいうことは神道教義上おかしいと思います。神道に理解のない、変なイデオロギーに汚染されたほかの宗教団体の思惑とわかってしまいます。左翼の方々と討論する時に、いわゆるA級戦犯の方々がどんな方々だったのかと聞くと、東條英機がメインで、松岡洋右までが限界で、文官でありながら軍事参事官とかかれ、弁護側の再三の変更要求も最後まで変えられずに刑場に散った広田弘毅元首相などの名前はほとんど出ません。なぜ、彼らがA級になったのかも知らないで騒いでいる人が多すぎます。きちんとした歴史を教えないで、日本は将来どうなるのでしょうか? (MI生、福岡)

(宮崎正弘のコメント)靖国をいろいろと騒ぐのは左翼の常套手段、外国の情報工作の一環でもありますが、そんなことさえ知らない、自覚できないアホが多いですね。
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