国際戦略コラム 09.14  田中宇の国際ニュース解説   田中宇の国際ニュース解説 | 日本のお姉さん

国際戦略コラム 09.14  田中宇の国際ニュース解説   田中宇の国際ニュース解説

ようちゃん、おすすめ記事。↓国際戦略コラム 09.14  [ 日本の特徴とその針路]     
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自民党総裁選挙も始まり、衆議院選挙が続いてくる。日本の針路を議論する必要が選挙時にある。その針路を検討しよう。  Fより

このコラムでは、日本文化の特徴とその歴史的な経緯を見てきた。日本文化は、働くことに価値を持ち、労働を人生修行と位置づけている。労働をイヤなものという欧米諸国の概念とは大きく違う。日本の自然との調和も南方系文化で、物部氏が江南の民で南方系の人たちでその系列の藤原氏が北方系の葛城氏に勝ったことでできた文化なのである。この両者の文化が混合したのが日本語である。日本語は北方系の文法体系に、江南の民や縄文人の言葉が合わさりできた。北方系言語の韓国語より母音数が少なくして発音がしやすくした。語彙的には江南の民たちが逃げ延びたベトナムやタイなどに近い。このように、日本の文化は諸外国に比べて、大きな特徴がある。グローバル化した世界では、文化的な差異が重要な武器になる。日本企業が世界で工場を展開しているが、その基礎的な考えは、工場は神聖な場所、修行の場であるという精神的な思いが出ている。整理・整頓・清掃などの基本は神聖な場であるという思いを具体的な言葉にしただけなのだ。その3Sが世界的に通用してきた。日本の文化を世界が受容できる環境が徐々に整ってきたのだ。このコラムでは拡大日本と言ってきた。やっと、企業の経営者たちも世界を視野に入れる必要を認めてきたようだ。日本の使命は世界に労働という価値を伝達することと、自然との調和が重要であるということを伝達することである。この2つの価値の基礎には平和であることが重要になる。聖徳太子は葛城系と物部氏系の争いを静めるために17ケ条の憲法を作る必要があったのだ。そして、和を第一の価値としたのだ。このような日本の良さと使命を最大限に果たすことができる日本をつくることである。それが目標である。そして、選挙であるので日本のことも重要である。日本国民全員が修行できるように労働する場を確保するのが政府の第一の役割だ。高齢者も含めて働ける人たちは健康でいるかぎり、仕事ができる環境を作ることである。これだけで年金不足問題の多くがなくなるし、健康で居られる期間が延びる。そして、日本は一部の能力ある人たちで日本の国を支えるというより、国民全員が黙々と労働という修行を行い、その成果を均等に分ける社会にするべきである。江戸時代は権力を三分割していた。財力は商人が持ち、権力は武士が持ち、権威は貴族が持つ。この3つを同時に持たせない工夫を日本はしてきた。このため、高額所得者の大幅な減税はおかしい。GDPが1990年と同様であるのに、税収が10兆円も少ない。これは高額所得者の税率を引き下げたからだ。これを最高税率を80%程度に引き上げると8兆円程度の税収UPになる。これで、税収がある程度確保できるし、道路財源の一般税化もする。道路を作ることより、徐々に維持補修が重要になっている。これを補助し、必要な道路建設以外には原則補助金を出さないことである。だんだん日本から工場がなくなり不安定で低賃金の仕事が多くなってきた。この不安定な仕事は諸外国の企業と比べて、コスト競争力を高めるために必要なのである。日雇い労働は昔からあった。それを無理に無くすことは難しいし、企業が存続できなくなる。政治家・官僚が経済を壊している。これが、また新しい官製不況にする。そして、日雇い労働者からも職場を奪い、この人たちの職場は無くなる。死に追いやることになる。どうして簡単な事実が分からないのか不思議である。論語などの素養がない人たちが政治を取り始めてから、長い歴史からのいろいろな教訓がなくなり、非常に表面的な改革を行うようになっている。欧米が文化的に高度になった後の歴史は非常に短いが、中国の長い高度文化から出た倫理や規範は価値がある。今流行のデリバティブも江戸時代に米の先物相場を見て、英国で導入したのだ。中国の論語は江戸時代に日本化して、日本版論語にしている。この解説を山本七平がおこなっている。それがもう1つの日本の強みであったが、戦後教育でその強みがなくなっている。この頃の政策を見ると欧米の低い文化から出た政策を真似しているが、それは将来に大きな禍根を残すことになる。
構造改革は必要である。それは世界全体の役割が大きく変化しているためで、特に欧米の覇権や優位性がなくなってきたことで、新しい世界秩序を作る必要があり、かつ世界の工場が中国やベトナム、バングラディシュなどに移行しているからである。日本はどういう役割を果たすのかを明確にして、それにまい進する体制を作ることである。
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*西村眞悟の時事通信
「重要な秋の福田康夫君と金正日」
       No.374 平成20年 9月14日(日)
               西 村 眞 悟

この頃、人に会えば、よく北朝鮮の金正日はどうなっていると尋ねられる。彼が九月九日の軍事パレードの観閲を欠席して以来、脳卒中による死亡説から重病説まで伝えられてきたからである。尋ねられるこちらも確固とした情報があるわけではないので、「トップとしての執務ができない状態なのは確かではないか」というくらいの答えしかできない。その後の会話は、北朝鮮の情勢と今後の拉致被害者救出問題に移ってゆく。要するに、北朝鮮はトップがどうなっているか訳の分からない國だという説明になる。この北朝鮮が訳の分からん國だと説明しているとき、一種不思議な思いにとらわれた。今説明しているのは、北朝鮮のことではなく我が日本のことではないのかと。むしろ、北朝鮮の方が脳卒中という明確な原因があり分かりやすい。しかし、日本の方はどうなっているのか、それこそ訳が分からんのではないか。また、金正日はどうなっているのかと尋ねてくる人は多いのだが、福田康夫さんはどうなっているのかと尋ねる人はない。これは、金正日の方は、彼の動向が、北朝鮮の国家方針や拉致被害者を解放するか否かの課題に直結すると判断されていることを示している。これに対して、福田康夫さんの方は、彼の動向が何かの国家的課題に直結するとは誰も思っていないのではないか。従って、金正日のことは尋ねても福田康夫さんのことは尋ねる人がない。そして、今、自民党総裁選挙をしている。これは何をしているのかと言えば、事実上、福田康夫さんの次の総理大臣を選んでいるのである。では、総理大臣を選ぶとはどういうことか。それは、衆議院の解散権を誰に保持させるのかを選ぶことに他ならない。しかし、今マスコミに連日流される情報は、解散の時期は何時かということである。これは結局、衆議院解散権をもつ者を選びながら、選ばれたその者には既に解散権はない状態にする流れである。つまり、選挙管理内閣、選挙の管理だけの権限をもつ総理を選ぼうとしている。これこそ、北朝鮮以上に訳の分からんことである。
何故、こういう訳の分からんことに気づかずに大まじめにやっているのか。その理由は、今の政局が、「内閣は、国家と国民のために為すべきことをするためにある」とう当然のことを没却しているからである。党利党略の観点から党代表を選び、総裁を選ぼうといるからである。インド洋における多国籍海軍へのサポートの継続の重要性を如何に認識しているのか(この海上自衛隊の活動を憲法違反という人物を議論もなく無投票で党代表にした民主党の国家に対する不誠実さは計り知れない)。金正日の動向を拉致被害者救出に結びつける明確な手を打つ絶好の時期は今である。東アジアの核とミサイルの脅威に対して日本は如何に対処するか覚悟を固めるのも今である。そして、これらに対処し始める日本の存在がアメリカ大統領選挙に如何なる影響を与えるのか。このことが、アジアに重要な影響を与える。秋は、「あき」と読むと同時に「とき」とも読む。この秋は、我が国と国民にとって重要な秋を迎えている。総理大臣が選ばれる前から解散の時期を流す政局専門家とそれを解説する評論家は、この秋に取り組まねばならない以上の重要な国家的課題を見て見ぬふりをしている。また、その取り組みが今の衆参のねじれの構造では無理だと解説してみせる。 しかし、これは一種のニヒリズムである。このような風潮は、決して明るく健全な國の未来を開かない。そこで、再び、金正日はどうなっていると尋ねるのならば、福田康夫さんはどうなっていると振り返りたい。そうすれば、彼は脳卒中でもなく禁治産宣告を受けたわけでもなく健康で、まだ総理大臣であることがわかる。さらに、福田さんは、総理大臣を差し置いて解散風を煽る政局とは今無縁であり、また、百害あって利権ありと言われる日朝友好議員集団とも関係ないであろう。
そうであれば、福田康夫総理は、拉致担当大臣を設けている内閣の長として次のことを実施して欲しい。即ち、日本は拉致被害者救出を断じてあきらめない。従って、金正日の今後がどうであれ、その後継者が誰であれ、拉致被害者を解放しなければ体制が崩壊し、権力者の命が危うくなる。このことを示すために、実務者協議の約束を裏切って再調査委員会の立ち上げを延期してきた北朝鮮に対して、全面的な制裁強化を実施すべきである。福田康夫さんには、日本国総理大臣である以上は、その地位にふさわしい仕事を最後までする責務がある。さらに、付け加えたいのは、今も総理は福田さんなのであるから、解散権を持っているということ。政界全体が国家的課題から目をつぶってそんなに速く解散をして欲しいのなら、福田さんには、明日にでも自らの手で解散をうつという手がある。それの方が、自ら不毛の一年を締めくくることになり、すっきりする。こういう決断ができるのも総頼大臣だと言うことを、最後に自覚し天下に示すのも意義があることかも知れない。  (了)
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田中宇の国際ニュース解説 2008年9月14日
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★イラクの石油利権を中露に与える
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2003年にアメリカがイラクに侵攻したのは、世界有数の埋蔵量をほこるイラクの石油利権をサダム・フセインから奪って獲得するためだった。多くの人が、侵攻当時から現在まで、そう考えている。グリーンスパン元米連銀議長も、昨秋に出版した回顧録で、イラク侵攻は石油利権が目的だったと書いている。
しかし、石油利権が目的だったとしたら、今、イラクで起きていることは、全く説明のつけようのない話になる。イラク政府は、今後最も多くの石油を産出しそうな2つの油田の開発権を、中国とロシアの石油会社に与える手続きを進めており、米政府はそれを黙認しているからである。イラク政府は8月末、イラクの5大油田の一つである中部のアフダブ油田(Ahdab)の採掘権を、中国の国有石油会社「中国石油天然ガス」(CNPC)に与える22年契約を結んだ。米侵攻後、イラクが外国企業と油田開発の契約を結ぶのは、これが初めてである(72年の石油国有化以来初めて)。この契約はもともと、フセイン政権時代の1997年に、イラクと中国の合弁事業として締結されたが、イラクが国連に制裁され続けたため事業が開始できないまま、03年の米イラク侵攻を迎えた。イラク政府は同時期、ロシアの石油会社ルクオイルに対し、イラク南部にある世界最大級のウエストクルナ油田開発の入札に参加してほしいと要請した。フセイン政権は、中国石油にアフダブ油田の開発権を与えたのと同じ97年に、ウエストクルナの開発権をルクオイルに与えていた。ルクオイルとの契約は、中国石油との契約と異なり、米の傀儡的なイラク政府によって8月末に無効が宣言され、入札のやり直しとなったものの、ルクオイルには入札参加権が与えられた。(イラクは91年の湾岸戦争以来、米英主導の国連から制裁されていたが、96-97年に、制裁が効きすぎてイラクの一般市民ばかりが苦しめられ、人道問題になっているとして、国際社会で対イラク支援の緩和が検討され、そのすきにイラクは中露と石油契約を結んだ。フセイン政権は、国連安保理常任理事国である中露に、気前良く石油開発権を与え、国連に制裁をやめさせようとした)

▼協力者のクルドに冷や飯、敵対者の中露に油田
中国とロシアは、03年の米イラク侵攻に際し、反対の立場を表明した。侵攻直後、米政府は「米による侵攻に協力賛同しなかった国には、イラクの石油開発など経済の利権を与えない」と公言していた。イラク政府は、米の傀儡政権として作られた。にもかかわらず今回、イラク政府は、中国に石油開発権を与え、ロシアを開発の入札に招待した。中国が開発するアフダブ油田と、ロシアが入札しそうなウエストクルナ油田は、いずれもほとんど開発されておらず、これから長期にわたって産油が可能だ。半面、現在のイラクで産油している南部のルメイラや、北部のキルクークなどの油田は、すでに何十年も産油しており、これからしだいに産油量が減っていく。イラク政府は、これからのイラクの石油利権の中核部分を、中露に与えそうな様相となっている。キルクーク油田は、クルド人とアラブ人が混住する都市キルクークの郊外にあり、クルド人は何とかしてアラブ人を追い出して石油利権を手に入れ、クルド独立の財政的な足がかりを作りたいと思っている。キルクーク油田獲得のために、クルド人は長いこと米のフセイン打倒作戦に協力してきた。だがキルクーク油田は、フセイン時代からの劣悪な管理の結果、油田の寿命が縮んでいる。しかも、シーア派アラブ人主導のイラク政府は、クルド人がキルクークを独占することを許していない。隣国トルコはクルド人の独立を嫌って軍事的圧力をかけているが、米はこれも黙認している。米に協力したクルド人には、出がらしのキルクーク油田さえ与えられず、見殺しにされている半面、米に敵対してきた中露には、おいしいまっさらな石油利権が与えられている。しかも、その一方でイラク政府は最近、米のエクソンモービルやシェブロン、英BP、仏トタールなど欧米の石油会社6社と契約していた既存油田の増産開発契約を破棄してしまった。イラク議会では、石油開発に関する新法を何年もかけて検討しており、6社との契約は、新法ができるまでの短期契約という意味合いで、石油新法が成立した後、6社に本格的な長期の油田開発契権が与えられるはずだった。しかしイラクでは、米英に対する反感が強まるばかりで、欧米企業に有利な石油利権を与えることになる石油新法に対する反対の世論が強まった。新法の成立は遅れ続け、もはや予定どおり欧米6社に石油利権を与えることが難しくなったとして、今回、予備的な短期契約も破棄された。

▼米政界もマスコミも騒がない奇妙
そして、その代わりにイラク政府は、中露に石油利権を与えた。イラク政府は、アメリカが作った従来のイラクの石油政策は、欧米企業に利権を与えすぎており、国内世論の反発が強いので、バランスをとるため中露にも利権を与えることにしたと説明している。この説明自体はもっともだが、この件について米政府は阻止も反対もしていない。1兆ドル以上の戦費を使い、100万人のイラク市民を殺し、4000人の米兵の命と引き替えに得たイラクの石油利権を、中露という敵方に取られそうだというのに、米のマスコミも議会も、全く騒いでいない。この件の奇妙さを指摘しているのは、私が知る限りでは、イラク反戦系のウェブサイト(uruknet)だけである。イラク政府が中露に石油利権を与えるのは、中露と反米勢力と見立てて親密にしているイランが、イラク政府に影響力を行使しているからだという説もある。シーア派のイランが、イラクの多数派であるシーア派を通じ、イラクの政治を操っている観は以前からあるが、イランが、イラク政府の石油利権の配分まで決められるのだとしたら、アメリカは何のためにイラクを占領しているのかという、あきれた話になる。こうした驚くべき事態が起きるのは、ブッシュ政権が「隠れ多極主義」であることを如実に示している。今後、ウエストクルナ油田の開発権がルクオイルに与えられた場合、その疑いはますます強くなる。ブッシュ政権は、イラク市民に対する殺害や誤爆、誤認逮捕による拷問などを繰り返し、イラク人(や、その他のイスラム世界の人々)を反米・親イランの方に誘導した。若造なのでそれほど尊敬されていなかったシーア派の反米的な宗教指導者ムクタダ・サドル師を、米は執拗に攻撃し、サドルを反米の英雄にしてしまった。サドルは今、イランにいるが、イラク政界で最も影響力を持っている。最近、イラク駐留司令官のミューレン海軍大将は議会で、イラク占領はアメリカの勝利に終わらないかもしれないと述べた。また、ゲイツ米国防長官は9月10日、米議会で「イラク戦争は終盤に入っている」と述べた。イラク占領は、来年の次期米政権に受け継がれるだろうが、次政権は敗北的撤退の後始末に追われることになる。米軍が撤退した後のイラクは、米の(故意の)失策の結果、世界有数の石油埋蔵量を持ったまま、イランや中露と親しい反米の国になることが確定的となっている。米金融界では今週(9月15日からの週)、大手投資銀行のリーマンブラザーズが、米当局から救済されないまま破綻しそうな流れとなっている。ファニーメイとフレディマックという公的不動産金融機関2社は、米政府が公金を使って救済することが決まったが、これは長期的に、米の財政赤字を急増させる。米政府は、イラク・アフガンなどの防衛費や、政府系健康保険(メディケア)の赤字増大もあり、いずれ財政破綻に陥る。米は金融・財政の両面でも、破綻に瀕している。次政権にかけて、米は覇権を自滅させ、世界は多極化していくだろう。次の米大統領が誰になっても、この動きを逆流させることは、ほとんど無理である。
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