北朝鮮は金正日独裁体制から「集団指導体制」に移行した。いよいよ始まる権力闘争と内部分裂。(じじ放 | 日本のお姉さん

北朝鮮は金正日独裁体制から「集団指導体制」に移行した。いよいよ始まる権力闘争と内部分裂。(じじ放

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▼北朝鮮は金正日独裁体制から「集団指導体制」に移行した。いよいよ始まる権力闘争と内部分裂。(じじ放談)
朝鮮労働党金正日総書記が脳内出血で倒れたとの報道が世界を駆け巡っている。中国から医師団が派遣され治療にあたっているが、術後経過については「ベッドから起き上がれない」ほどの重症説から「日常生活に復帰できる」程度の軽傷説まで諸説ふんぷんである。いずれにしても、金正日独裁体制が崩壊し、北朝鮮動乱が始まるという見解は一致しているようである。

第1.北朝鮮の崩壊を睨んだ米中・米韓協議が始まった。

1.米FOXテレビは11日、米政府高官の話として、北朝鮮の金正日総書記の重篤説を受けて、米国と中国が(北朝鮮)内部の混乱や体制の崩壊が起きた場合の対応について、協議を開始したと伝えた。

2.13日付け韓国・東亜日報ウエブサイト日本語版は、北朝鮮の急変事態に備えた韓米両国軍の対策案である「作戦計画5029」の作成作業段階に入った。韓米間の安全保障協議では、韓半島の統一過程で、韓国が主導権を行使する点を確認し、統一後の韓半島情勢や米国、中国などとの関係定立の問題も話し合われたという。(韓国)政府関係者は、米国側が「統一後の中国との関係で韓半島内の緩衝地帯が必要だという意見を述べた」と聞いている旨述べた。
(1,2は、12日付け産経ニュースより抜粋)

以上は「北朝鮮が崩壊したことを前提とした米中韓の動き」である。やや「先走り」という趣があるが、「金正日失脚」は近隣諸国の悲願であるからやむをえない。だが、金正日独裁体制が崩壊しても、即「北朝鮮が崩壊する」とはいえない。つまり、金正日独裁崩壊→集団指導体制への移行→指導各勢力の指導権争い→権力闘争の激化→内紛・内乱→北朝鮮の政治体制崩壊という順序をたどるはずだ。60年続いた金日成・金正日独裁体制の崩壊が「ある日突然」ということはありえない。

第2.金正日独裁が崩壊し「集団指導体制に移行した」と疑われる事実
13日付け韓国・朝鮮日報ウエブサイト日本語版は、12日付け朝鮮労働党機関紙労働新聞の「心を一つにして団結しよう」と題する社説を紹介している。(以下抜粋)

1.革命の首脳部(金正日総書記)を中心として、強固に団結し、首領(金正日総書記)を決死の覚悟で守りつつ、日々の闘争と生活を輝かしいものにしていかなければならない。

2.領導者(金正日総書記)を中心として、1000万国民の一心団結・主体根幹(主体思想を根幹とする体制)の象徴であり、あらゆる奇跡と変化の根本的な源だ。全党、全軍、全人民が革命の首脳部の思想と領導を、心を一つにして受け入れていかなければならない。

以上の文章で不可解なのは、括弧の部分である。おそらく朝鮮日報の記者が「金正日健在」を示すために付記したものであろう。だが、括弧に(金正日総書記)を挿入すると文意が理解できなくなる。前記1で「革命の首脳部(金正日)は強固に団結し→首領(金正日)を決死の覚悟で守るべし」というのだ。金正日が金正日自身を守護すべしということになる。つまり括弧内の(金正日総書記)という言葉は、朝鮮労働党機関紙「労働新聞」の原文に何者かが意図的に挿入した疑いが濃厚である。

前記2で、金正日総書記は「領導者」とされている。つまり、金正日は主体思想(チェチェ思想)の根幹だというのだ。精神的指導者又は「神仏化された指導者」とみなしている。これを前提とした上で、「全党、全軍、全人民は革命の首脳部の思想と領導を、受け入れるべし」と唱えているのだ。筆者は「革命の首脳部」こそ、金正日独裁体制崩壊後の暫定的な指導部であると考える。つまり「金正日を神格化して、北朝鮮の全党、全軍、全人民の心を一つにまとめて政治を行う指導部」だと考える。緊急事態であるから、おそらく「労働党や人民軍内の各勢力が暫定的に立ち上げた指導部」だと考える。豊臣秀吉没後の「徳川・毛利・前田・石田ほかの」集団指導体制と同じだ。

第3.金正日独裁体制の崩壊による権威と権力の空白
江戸時代の我が国では「権威は天皇」「権力は徳川将軍家」と二層構造であった。だから将軍が交代しても、政治形態が揺らぐことはなかった。北朝鮮は「権威も権力」もすべて金正日が独占している。北朝鮮は金正日への個人崇拝と権力の集中で維持されている国家である。誰もこれに代わることができないシステムである。金正日も権威づけのために何十年も準備して獲得した地位だ。だが、権威を継承すべき後継者は育っていない。北朝鮮において金正日は「扇の要」である。「扇の要」がはずれたならば、扇はバラバラに分解する。独裁者は自分にとって代わるおそれのある「扇の要役」を準備することは避ける。信頼できる息子でもおれば、金日成が行ったように「後継者育成」の措置をとったかもしれぬ。金正日には「おめがねにかなう」息子がいなかったのであろう。だから後継者を指名することができなかった。

第4.北朝鮮における集団指導体制の分裂と崩壊の背景
1.改革開放?自力更生?
従前から、長男の正男と義弟の張成澤は中国派(改革開放派)といわれてきた。つまり「外資導入による急激な経済発展路線」である。改革開放派の主張が一部実現したが、実効性が上がることはなかった。おそらく「強力な反対勢力」が中国やベトナム方式の改革開放政策阻止に動いたのであろう。金正日は両勢力の間で「右顧左眄せざるを得なかった」といえるのではないか。だから、すべての政策が不徹底に終わった。9月5日付け朝鮮総連機関紙朝鮮新報ウエブサイトは、8月31日付け朝鮮労働党機関紙労働新聞の「自力更生は、食糧問題解決のカギ」と題する以下の論説を報道した。(抜粋)

「国の人的、物的、技術的、財政的な潜在力を効果的に動かして活用し、社会経済生活の多くの割合を食糧および農業問題の解決に充てられるようにすることが、この事業で成果を遂げる重要な要因となる。非同盟諸国、発展途上国は集団的自力更生の原則から、南南協力をいっそう強化すべきである。」この主張は「社会主義的計画経済を放棄して資本主義経済政策を推進している中国やベトナムを意識した」ものであろう。そして、キューバやミャンマーと同様「社会主義路線を貫徹すべし」と主張するのだ。「連帯すべき相手は、米国や日本の独占資本ではなく、非同盟諸国や発展途上国である」とする旧来の主張である。朝鮮労働党における「改革開放派」と「自力更生派」の対立は、社会主義を堅持するか?資本主義化を進めるか?という思想的対立であるから、妥協できる余地はない。二者択一、二律背反の「敵対的な矛盾」である。倒すか?倒されるか?の闘争が始まる。「金正日という重しがとれた」から、日頃の不満が双方から噴き出す。

2.親中国派、親ロシア派、親米国派の争闘
改革開放政策の導入・促進を唱える長男の正男や義弟(正日の妹婿)らが「親中国派」であることを疑うものはいない。昨年だったが、義弟の張成澤が乗った高級乗用車が人民軍のトラックに追突される事件があった。張成澤は中国の病院で治療を受けると想定されるところ、モスクワの病院に入院して治療した。同時期、北京大学に在籍する北朝鮮留学生約50人が全員中退する事件があった。中国共産党胡錦涛指導部と金正日の間で、深刻な対立があったのであろう。だから、親中国派で、中国に知人も多い義弟であるが、中国で治療することを許されなかった。北朝鮮人民軍は、中国に内緒で「ミサイル発射実験と核実験」を強行した。中国人民解放軍並びに中国共産党胡錦涛指導部が激怒したことはいうまでもない。「飼い犬にかまれた」と感じたはずだ。北朝鮮が核ミサイルを配備すれば、中国の大半が射程距離に入る。何より「中国の脅し」がきかなくなる。中国を宗主国と仰がなくなる。ロシアは朝鮮半島へのシベリア鉄道の乗り入れ、鉱山開発利権獲得など着々と実績を積み重ねている。中国とは利害が競合する。北朝鮮が「中国と不和になるチャンス」を待っている。そして手を差し伸べる。親中国派と対立する軍部(一部か、全体かは不明)は、ロシアとの連携を深めざるをえない。ロシアは在北朝鮮大使館の陣容を充実させ、虎視眈眈、チャンス到来を待っている。もちろん「親ロシア派の育成」にも注力している。ロシアの北朝鮮接近政策は当然ながら「中国側に筒抜け」であるから、中国も必死の巻き返しを行い「親中国派の育成」に励む。親米派は6か国協議の首席代表金桂冠外務次官を筆頭とする外務官僚であろう。吹けば飛ぶような小勢力だ。事を起こせる力があるとは思えない。

第5.朝鮮(韓)半島統一の行方
前述した如く、韓国政府は「韓国主導の半島統一」を狙った有事即応体制の整備に励んでいる。同盟国である「米国」に対して「韓国主導による統一」を働きかけている。若干「取らぬ狸の皮算用」という感じがしないでもない。「半島統一は民族の悲願であろう」から韓国政府が「逸る気持を抱く」のも無理はない。しかし、事は単純ではない。米国政府の高官によれば中国側は「韓国が半島を統一する場合は、中国との間に緩衝地帯を設けるべき」と主張しているという。中国歴代王朝にとって半島は、国土防衛線であった。彼らは「半島は中国の藩屏」と公言した。だが、現代の戦争では朝鮮半島の役割が低下した。防衛目的の効用が低下した。という訳で、中国の狙いは「鉱物資源の世界的宝庫といわれる北朝鮮西北部の山岳地帯」を獲得することであろう。「平壌以東は韓国に譲ってもよいが、鉱物資源は中国が頂戴したい」というハラではないか。北朝鮮有事を想定していたのか、中国は何年も前から「東北工程」なる少数民族史の研究を行ってきた。「中国東北(旧満州)から北朝鮮を支配した高句麗や渤海は中国の少数民族である」という研究成果を発表した。もっとも、それ以前、漢の武帝が現在の平壌付近に「楽浪郡」をおいて直轄領としたから「歴史を鑑とするのが好きな中国」から見ると「もともと半島は中国の領土だ」という認識かもしれぬ。北朝鮮の西半分が中国の領土となれば「朝鮮人半島自治区」ということになろうか。東北部には現在でも「朝鮮人集落が多い」というから、中国は北朝鮮の一部を併合するにつき抵抗感がないのではなかろうか。米国が中国と韓国の間に入って仲介し「タシテ2で割る」方式を編み出すかもしれぬ。ロシアは不凍港を求めて、日本海沿岸部の割譲を求めてくるかもしれぬ。いずれにせよ、韓国が期待するような「半島統一」は困難といわねばならぬ。新帝国主義時代の列強は甘くはない。厳しい対決なしに半島統一が実現することはありえない。

(まとめ)
北朝鮮が「暫定的な集団指導体制」になったとする。「扇の要」を失った北朝鮮は各党派に分裂し内紛を起こす。武力衝突が起こるかもしれぬ。中国、ロシアそして米国が北朝鮮の各勢力を支援して「火に油を注ぐ」から権力闘争がますます激化する。最終段階では、中国、ロシア、米国、韓国が軍隊を派遣し「朝鮮人民軍並びに労農赤衛隊等の武装解除を行う。保有する核兵器を廃棄する。そして、周辺大国による北朝鮮の分割協議が始まる。
米中露に伍して韓国がどこまで権利を主張できるか?はなはだ心もとない。我が国は「拉致被害者の全員救出」を終えたならば、高見の見物をしておればよい。そのうち「カネと技術を出してもらえないか」と声がかかるはずだ。焦って火中の栗を拾う必要は全くない。

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