軍事情報  (本の紹介) 『ルワンダ難民救援隊 ザイール・ゴマの80日』 ・ 国際戦略コラム | 日本のお姉さん

軍事情報  (本の紹介) 『ルワンダ難民救援隊 ザイール・ゴマの80日』 ・ 国際戦略コラム

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軍事情報  (本の紹介) 『ルワンダ難民救援隊 ザイール・ゴマの80日』
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■難民と化した救援隊
<「アントノフは予定通り飛んでいますか?」と私は日本通運株式会社国際協力室次長の青木誠氏に尋ねた。彼は救援隊の荷物を日本に輸送するために本社からゴマに輸送されていた。(中略)「この時間にはカイロを出発していないといけないのですがね。おかしいなあ」「アントノフは予期のとおり飛ばないと、前から言っていたじゃありませんか。注意してくださいと・・・。救援隊が予定通り帰国できないかもしれないと新聞で報道された後、予備機を四機確保したと聞いていましたが、予備機のほうはどうなったのですか?」「予備機は別のところで使われてしまったそうです」青木氏の声に力がない。彼も取り残されるのだ。><こんなこともあろうと、アントノフの七、八番機の到着が遅れたとき、『第二波は出国の遅れを予期して準備する』と嫌味と取られかねない報告をしておいたのに・・・。その直後に上級部隊から届いた、予備機を四機確保した、という情報を鵜呑みにした自分の愚かさが悔やまれた。ゴマでは全てを疑ってかかっていたのに・・・・。>状況によってはもう一晩現地に留まる必要がある状況が出てきました。しかし、撤収に向けすべての荷物の整理は終わっており、食糧は不要品としてゴミ場に出されていました。そんななか、ある二人の隊員がゴミ場からウイスキー等を取り出しました。それを見ていた隊員が一人二人とゴミ場をあさり始めます。あっという間に人数が増えていきました。<精強を誇ったルワンダ難民救援隊が、難民と化した瞬間だった>わが国初の人道的国際救援活動に派遣された部隊の指揮官は、どんな思いでその光景をご覧になっていたのでしょうか・・・。

■著者は・・・
ルワンダ難民救援隊隊長で退役陸将補の神本光伸さんです。著者紹介からご経歴を引用します。
<神本光伸
昭和22年6月10日生まれ。広島県呉市出身。
昭和45年3月、防衛大学校(基礎工学1)卒業。
昭和46年3月、第11師団武器隊(真駒内)に配属。第2後方支援連隊(旭川)、陸幕武器・化学課長。防衛医科大学校学生部長及び武器学校長(土浦)等を歴任。この間、技術系幹部として約10年、各種装備品の研究開発に従事。平成6年9月、ルワンダ難民救援隊長(ザイール、3ヶ月)として赴任。平成16年3月に退官(陸将補)し、現在は中国化薬(株)で顧問を勤める>本文中でご本人もおっしゃっていますとおり、技術畑の将校さんです。

■あるメール
<(前略)
神本氏自筆の書籍を紹介いたしたいと思いました。 『ルワンダ難民救援隊 ザイール・ゴマの80日』(神本光信・著)発行所 内外出版株式会社 定価2,100円当時の現地での活動を物語風に記録してあります。読みやすく現地活動のイメージがわき参考になる本だと思います。小生は、神本氏と同期生です。退官後自らの職務を省みることは、大事なこととは思いつつなかなか記録としてまとめるのは大変だろうと思います。そんななか、神本氏はルワンダについては書き残しておきたいと思い整理したものだといっておりました。先輩方々がいろいろな観点からの書籍を書いておられるようですが、神本氏のこの書籍を読み、当時の日本の国情から派遣部隊指揮官として、本当に『薄氷を踏む』覚悟だったものだろうと推察いたします。『情報、官邸に達せず』(麻生幾著)のなかに、「ルワンダ難民救援隊派遣」の政府決定経緯が、ドキュメンタリー風に記述されております。村山政権批判というより、わが国自体の国家としての軍事機構の欠落を指摘されたものだと思います。当時の指揮官の気持ち・心中をご理解していただく上の背景事項として、併せて読んでいただければと思います。>(退役陸自将校)本著の存在を知ったのはこのメールを通じてでした。メールを拝読し、さっそく入手しました。

■本著が出たのは昨年4月です。
何故今になって?という思いを持つ人も多いかもしれません。その疑問への回答は「はじめに」で述べられています。平成6年12月20日まで現地で展開し、同25日に原職に復帰された神本さんは、翌平成7年1月9日に陸幕に帰国報告をすませました。しかし、<連隊に復帰した翌週の一月十七日(火曜日)に阪神淡路大震災が発生した><十八日午後、私は六本木の陸幕の広報室にいた。ゴマで顔見知りのK記者に、これからルワンダ難民救援活動の特集を組むところだったのだが大震災でそれができなくなった、と申し訳なさそうに告げられた。事態はさらに急展開した。三月にオウムサリン事件が発生し、ルワンダ難民救援隊の活動は、メディア的には総括されることなく過去の話になってしまった。>わけです。国民向けに総括されないまま、わが国最初の人道的国際救援活動としておこなわれた海外派遣が、記憶のかなたに追いやられることだけはあってはならない。エイズの恐怖の下、命がけで任務に当たった部下の行動も十分伝えられていない。誰もやらないなら俺がやる。と、神本さんは、指揮官としての使命感からご自身で記録を残す決心をされたのでしょう。頭が下がります。<現地では四時間睡眠の日々が続き、帰国後も不愉快な四時間睡眠が長く続いた。>なかで本著は書き上げられ、<人道的な国際救援活動の現場で起きている実態を皆様にご理解いただき、後輩自衛官たちの活動の環境が整備されることに役立てば幸いに思う>との思いから作られた本です。冒頭で<退官後自らの職務を省みることは、大事なこととは思いつつなかなか記録としてまとめるのは大変だろうと思います。>という元将校さんの言葉を紹介しました。さぞや大変な作業だったと思いますが、こういう形で後世に残ったことをありがたくうれしく思っています。

■冷静なタッチ
指揮官らしく、冷静なタッチでルワンダ派遣部隊および周辺の人々の姿が記録されています。一人称の言葉、そして言葉づかいのわかりやすさが、本のテーマの重厚さを和らげています。あわせて軍人さん特有の乾いた文体は、いささかのじめじめ感も感じさせず、爽やかです。
後輩の方が後世目にするとも思われたのでしょう。現地の地誌、各種教訓・戦訓、そして、自衛隊特有の「国内法をはじめとする行動・決心への規制」に指揮官としていかに対処したか、といった「指揮官の心のうち」が全編を通じて記載されています。揺れ動く気持ちの中で何とか決心を行なっていた、ことなど、文章からはウソのない武人らしいお人柄を感じます。要所要所で、当時の部下の方へのインタビューも行なわれており、その点からも著者の誠実さ、歴史に対する謙虚さを感じ取ります。全編を通じて流れる「指揮官の心のうちの吐露」こそが本著最大の特徴です。全部で9章あり、うち7章がルワンダ派遣部隊の活動記録です。第8、9章は、神本さんの総括と提言です。個人的には、報告の全7章と総括・提言の2章には同じ重みを覚えました。神本さんは第8章で、派遣活動を通じて得た自分なりの教訓等を、「部隊統率」という観点からエキス抽出、示しておられます。政治への思い・提言を第9章で示しておられます。

■本著は
本著をひとことで言えばその名のとおり「国民へのルワンダ派遣報告」です。同時に「派遣先で浮かび上がった自衛隊の各種問題点を、部隊指揮官の立場から指摘した意見具申」でもあります。本来ならば、部内報告書とは性質の異なるこの種の国民向け文書は、活動を適切・的確に大所高所から評価できる見識・力量がある外部の人間が行うべきだろうなと感じます。まさにジャーナリズムが担う部分です。ところがわが国には、それだけの力量を持つ国防軍事ジャーナリズムが存在しません。それ以前に、そもそも、神本さんが書かれていることは、ジャーナリズムが担当する仕事だったはずです。地震が起きたから取りやめになっただけの話ですよね。しかし結局再開されませんでした。(その反省でしょうか、イラク支援群については産経が総括書を出していますね。私個人は、あの作品が活動報告に値するとは思えません。「あの本とひげの佐藤さんの本だけで、イラク派遣を理解することは不可能だよねえ・・・」という不満がありますけど、ルワンダの反省を形で示したのが産経のみであったことは、メディアの対国民誠実度を図る重要ポイントになるでしょう。)本著では、現地でのマスメディア(新聞ですね)の振る舞いの実態もあからさまに記されています。

自分達が暴徒に襲われる羽目になったしくじりをしたことは報じず、法律面で自衛隊がしくじりに近いことをすれば、鬼の首を取ったかのように騒いで報じて叩く。後の時代に生きる後輩のことなど何も考えない。

というわがマスコミの「分かりやすい思考」も、字になるとこりゃまた面白いものです。マスコミのこの姿勢は、今でも同じです。昨日も同じでした。明日も同じなのでしょう。笑

■印象に残った部分
あちらこちらに線引きまくり、ページ折りまくりです。そんななかで最も印象に残った部分です。
<NGOはいかに早く現場に進出するかが勝負のように思えた。早く入れば救援活動がやりやすく、広報的にもいい場所が使用できる。広報がうまくいけばスポンサーの資金提供が円滑に行く。それでNGOは「一番乗りを競う」面があるように感じた。(中略)一部のNGOに見られた反対論は、救援隊がNGOの得意分野に進出することに対する警戒心だったように思う。救援隊としてはNGOの得意分野を侵すことなく、NGOの不足する分野、補完する分野を重視して参加すれば喜ばれると感じた。自衛隊の組織力、装備力、技術力を発揮するNGOとの「相互補完関係」が、自衛隊の救援活動の一つのあり方のように思う。>(P112~113)

<千歳空港に到着してから自分の荷物のことをすっかり忘れていた。後に幕僚から聞いた話によると、帰国直後私の衣のうは誰に引き取られることもなく、千歳駐屯地の雪原に一つポツンと残されていたという。編成上、隊長や副官や専用の操縦手兼伝令という制度は設けられていなかった。さらに撤収時の混乱を乗り切るために、身の回りを世話する隊員を第一波で帰国させ、第二波の本部要員を極端にスリム化した。私が頼まなかったことに原因はあるのだが、私の身の回りを心配してくれる者が皆無となってしまっていた。しかし、この一事で私は指揮官の孤独さをしみじみと味わうことになった。そう言うと格好がいいのだが、私は状況判断と部隊の指揮のみに専念し、周囲の隊員への気配りを怠ったツケを思い知らされたような気がした。隊員たちを指揮はしたが、統御はできていなかったのだと・・・>(P253)

<私はゴマ滞在間、国会のやりとりを思い浮かべながら記者たちとの取材に対応してきた。ある意味では建前しか話せなかった。本音を話せば制約の多い中で準備された方々に、多大な迷惑をおかけすることになるからだ。戦後の日本は、いつの間にか建前社会になってしまったような気がする。派遣する側の理屈で編成等の準備が進められ、派遣される側の理屈は等閑視されている。>(P254)

■報告であり意見具申
要するに本著は、部隊指揮官からあなたへのルワンダでの活動報告であり、現地で判明して必要な環境整備を求める意見具申といえましょう。中身には、自衛隊の問題の本質に関するエキスすべてがつまっています。相当な覚悟で出されたのではないか?と思うくらい思い切ったことを書かれてます。自衛隊と法律の悪しき関係については、法律論や理詰めアプローチのみでは、どうしても「机上」の話で落ち着き、現実にそぐわない話題へと堕ちてゆきがちです。(典型が集団的自衛権行使の問題です)同じテーマでも本著のように「実体験に基く話を通じて」知ると、ウソみたいに良く把握でき、おなかの中に大切な何かがストンとはいった気持になります。いつも口にしていることですが、これこそが「本が持つ有機性」の最たる効果だろうと感じます。一年かけても五年かけても読むに値する本です。全体が有機的な連関を持っている本です。第八・九章を見るだけでも、お手元に置く価値があります。
オススメです。今回ご紹介したのは、『ルワンダ難民救援隊 ザイール・ゴマの80日』
著者:神本光伸 発行:内外出版 発行日 2007/4/25
http://tinyurl.com/5tseks
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国際戦略コラム 09.12 [大恐慌へ向う足取り]
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米国金融危機の継続で、大恐慌へ向っている。    Fより

今後、国際戦略コラム(有料版)を創設してお送りする。この理由は、徐々に国際的な状況が危機的になり、企業の海外展開を考える人たちや投資家の皆様により詳しい情報をお届けする必要が有ると見たからです。月曜日に発行しますが、ご希望の方は申し込んでください。下記にアドレスがあります。米国の金融危機は、2公社を国家管理にすることが決まり、一安心する暇もなく、韓国産業銀行からの出資ができなくなり、リーマン・ブラザースの経営破たん問題にシフトした。ここで、FRBが民間金融機関連合による米証券大手リーマン・ブラザーズの買収計画を準備している救済策を15日朝方に発表すると報じられた。この情報が出たことで、ニューヨーク市場は100ドル以上の株高になった。しかし、まだ住宅価格が低迷しているので、金融不安が解消したことにはならない。だんだん、投資銀行やファンドの経営が苦しくなってきているようだ。ファンドの閉鎖が増えている。この詳細は、月曜日の有料版のメルマガで検討することにする。
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金融機関連合がリーマン買収か=政府が準備、週末にも発表-米紙9月12日8時10分配信 時事通信
【ニューヨーク11日時事】米紙ワシントン・ポスト(電子版)は11日、米財務省と連邦準備制度理事会(FRB)が、自らおぜん立てする形で民間金融機関連合による米証券大手リーマン・ブラザーズの買収計画を準備していると報じた。詳細はまとまっていないものの、関係筋の話によれば、この買収は実現する見通しで、アジア市場が開く週明け15日朝方よりも前に発表される見込みだという。
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米リーマンへの出資交渉が事実上決裂 韓国産業銀行(nikkei)
【ソウル=島谷英明】米投資銀行大手リーマン・ブラザーズへの出資を検討していた韓国の政府系金融機関、韓国産業銀行(産銀)は10日、「(リーマンとの)交渉を中断した」と発表した。産銀は今後の交渉予定はないと説明しており、事実上の決裂となる。産銀は「現時点でリーマンと取引条件の意見が異なり、国内外の金融市場の状況を考慮した」と説明。引き受け価格が折り合わず、サブプライム問題で不安定な動きが続く米市場や韓国の景気減速などを踏まえて出資見送りを決めた。産銀の閔裕聖(ミン・ユソン)頭取は2日、「他の民間金融機関と共同での(増資)引き受けのために協議をしている」と述べ、リーマンへの出資検討を明らかにしていた。
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